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第一章「いきなり冒険者」
第47話「黒竜族の陰謀 ①」
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翌日の昼。
オレたちはバージル卿の書斎に集められた。
もちろんマヤとミーシャも一緒だ。
門兵たちはこの部屋にはいない。彼らはあまり屋敷の中に入ってこないのだとリューシャさんから後で聞いた。
いるのはメイドのアンナとリューシャの二人。
「ノゾミ殿。まずは井戸の件だが、ご苦労だった。本来であれば私がしなければならない事。非常に感謝している」
バージル卿が頭を下げる。
「お待ちください。あれは私達が勝手にやったこと。礼にはおよびません」
システィーナが慌てたように言った。
そう。井戸掘りはあくまでもオレたちが勝手にやったこと。そうでなければバージル卿が国に採決も取らずに勝手に統治を行ったことになってしまう。
魔人族であるバージル卿には制限も多く、また敵も多い。下手なことはできないのだ。
「感謝する」
バージル卿は一言だけ言った。それでいいのだ。
「そうだ。メイドたちのマッサージはいかがでしたかな?」
バージル卿がニヤリと笑った。
「ああ、聞きしに勝る素晴らしいマッサージだった」
システィーナは輝くほどの笑顔。
えっ、システィーナもあのマッサージとかされたの?
マジで!
「そうだろう。稀代(きだい)の天才マッサージ師を呼んで、メイド達には技をマスターしてもらっているからな」
すごい。メイドさん達は全員プロなのか……
周りにいるメイドさんたちの顔はどこか誇らしげだった。
しかし、リューシャと何故かアンナだけは赤面している。
はて? 二人のマッサージも非常に素晴らしかったとオレは思うのだが。
もう、大満足でしたぞ。
「おかげで身体中の筋肉がほぐれ疲れが取れました」
それだけ立派なものを胸にお持ちであれば肩もこるでしょう。
「疲れを取るにはマッサージですな」
がははは。
おほほほ。
二人は顔を合わせて笑いあった。
「ノゾミ殿はいかがでしたかな?」
「ああ……オレは……」
リューシャが一生懸命にウインクしてくる。
隣ではアンナが何故かオレの腕をぎゅっとつねってきた。
なんだろう。ここは正直に話してはいけない空気を感じてしまうのは……
「ひ、非常に満足しましたよ」
リューシャは安堵したように大きくため息をついた。
「もう、身体を洗ってもらったり全身オイルまみれになったりとすごかったです!」
ぶわぁっ!
その場の空気が一瞬大きく熱を帯びた気がした。
いかん。これは地雷を踏んだか……
「あ……ええと……その……オレの故郷で使っている石鹸と香り付けのオイルですよ。このお風呂の泉質と相性がいいのか……使ってみるとすごいことになりまして……」
「なんと。そういうことですか」
バージル卿は納得したようだ。アンナが隣で小さく息をついたのを感じた。
リューシャと何故が頷き合っている。
なんか知らんが危機が脱したらしかった。
「では、本題に入ろうとしよう」
「はい……」
アンナを囲むように全員が椅子に座る。
ゆっくりと口を開き語り始めた。
「事の起こりは五〇年ほど前になります」
「ふむ。人魔大戦の頃だな……」
バージル卿が感慨深げに腕を組む。
「竜人族は亜人軍として人魔大戦に参戦しました……しかし……」
「連合軍は大敗。甚大な被害を出した」
システィーナが悔し気に言葉を吐いた。
「魔人族の力は凄まじい……戦闘に特化した魔人が相手であれば、私など足元にも及ばん」
バージル卿が言うのだからそうなのだろう。オレはバージル卿しか見ていないが、人の力であれに勝てるとは到底思えない。
「そのとおりです。私達は己の無力さを思い知ったのです」
それまでにも魔人族との争いはあったが、戦力に差はなかった。
五〇年前の人魔大戦の時に突然にして、魔人族は力を増したのだ。
「魔獣人化……」
この屋敷に来た時のことを思い出す。
LV153。圧倒的なレベルアップ。
あれは無理だ。
あれには勝てない。
少なくとも、今のままでは相手にすらならないだろう。
「魔獣人化は全ての魔人族がなれるわけではない」
バージル卿が場の雰囲気を和らげるように言ったが、あまり効果はなかったようだ。
「私達竜人族は人魔大戦の敗北を機に二つの派閥が生まれました」
それが……とアンナは言葉を続けた。
「魔人族に取り入り、闇の力で世界に君臨する派閥のノワール派と、各部族の神官たちで組織された派閥のブラン派です」
魔人族に取り入るということは連合軍に対する裏切り行為だ。それは、入れば二度と戻ることのできない闇の道へと踏み込むことになる。
「ノワール派には黒竜族と赤竜族が所属している。ヤムダはその中心に位置する人物だということだったのだが……」
バージル卿がオレを見た。
もしかして、倒したこと疑われてる?
「……これで証拠になるか?」
オレは空間転移で異空間からヤムダの腕を取り出す。鉤爪のある竜の腕だ。
「なんと!」
バージル卿が驚きの声を上げた。
「これはまさしく、黒竜族の腕! しかも、これほどに立派な物ということは……」
「黒竜族のヤムダに間違いありません」
アンナもうなずきシスティーナまでも同意した。
「まあ、首でもあれば……」
……頭は勢い余って潰しちゃいました。
今出してもグロッキーな物しか出せません。
ごめんなさい。
倒した瞬間はシスティーナも目撃している。
倒したことは間違いなかった。
「しかし……そうなると」
バージル卿が不安げな顔をオレに向けてきた。
「下手をすると仕返しにノゾミ殿が狙われる可能性が出てきますな」
「まあ、そうなることは予想していたよ」
そのあたりは想定済みだ。
今後は、周囲への警戒を怠らないように更に気を付けていかなければ。
「ノゾミの事は私に任せてもらいたい。常に監視を怠らない」
システィーナが手を握ってきた。
「私もです。ノゾミ様と誓約を結んだ以上、離れることはありません」
アンナは腕にしがみつく。
「私も……ノゾミとは仲間ですから!」
ミーシャがもう片方の腕にしがみつく。
「私は妹だから当然だよね」
マヤは正面から抱きついてきた。
みんながみんないいライバル関係になったようだった。
四人の間に火花なようなものが見えたのは……まあ気のせいだろう。
オレたちはバージル卿の書斎に集められた。
もちろんマヤとミーシャも一緒だ。
門兵たちはこの部屋にはいない。彼らはあまり屋敷の中に入ってこないのだとリューシャさんから後で聞いた。
いるのはメイドのアンナとリューシャの二人。
「ノゾミ殿。まずは井戸の件だが、ご苦労だった。本来であれば私がしなければならない事。非常に感謝している」
バージル卿が頭を下げる。
「お待ちください。あれは私達が勝手にやったこと。礼にはおよびません」
システィーナが慌てたように言った。
そう。井戸掘りはあくまでもオレたちが勝手にやったこと。そうでなければバージル卿が国に採決も取らずに勝手に統治を行ったことになってしまう。
魔人族であるバージル卿には制限も多く、また敵も多い。下手なことはできないのだ。
「感謝する」
バージル卿は一言だけ言った。それでいいのだ。
「そうだ。メイドたちのマッサージはいかがでしたかな?」
バージル卿がニヤリと笑った。
「ああ、聞きしに勝る素晴らしいマッサージだった」
システィーナは輝くほどの笑顔。
えっ、システィーナもあのマッサージとかされたの?
マジで!
「そうだろう。稀代(きだい)の天才マッサージ師を呼んで、メイド達には技をマスターしてもらっているからな」
すごい。メイドさん達は全員プロなのか……
周りにいるメイドさんたちの顔はどこか誇らしげだった。
しかし、リューシャと何故かアンナだけは赤面している。
はて? 二人のマッサージも非常に素晴らしかったとオレは思うのだが。
もう、大満足でしたぞ。
「おかげで身体中の筋肉がほぐれ疲れが取れました」
それだけ立派なものを胸にお持ちであれば肩もこるでしょう。
「疲れを取るにはマッサージですな」
がははは。
おほほほ。
二人は顔を合わせて笑いあった。
「ノゾミ殿はいかがでしたかな?」
「ああ……オレは……」
リューシャが一生懸命にウインクしてくる。
隣ではアンナが何故かオレの腕をぎゅっとつねってきた。
なんだろう。ここは正直に話してはいけない空気を感じてしまうのは……
「ひ、非常に満足しましたよ」
リューシャは安堵したように大きくため息をついた。
「もう、身体を洗ってもらったり全身オイルまみれになったりとすごかったです!」
ぶわぁっ!
その場の空気が一瞬大きく熱を帯びた気がした。
いかん。これは地雷を踏んだか……
「あ……ええと……その……オレの故郷で使っている石鹸と香り付けのオイルですよ。このお風呂の泉質と相性がいいのか……使ってみるとすごいことになりまして……」
「なんと。そういうことですか」
バージル卿は納得したようだ。アンナが隣で小さく息をついたのを感じた。
リューシャと何故が頷き合っている。
なんか知らんが危機が脱したらしかった。
「では、本題に入ろうとしよう」
「はい……」
アンナを囲むように全員が椅子に座る。
ゆっくりと口を開き語り始めた。
「事の起こりは五〇年ほど前になります」
「ふむ。人魔大戦の頃だな……」
バージル卿が感慨深げに腕を組む。
「竜人族は亜人軍として人魔大戦に参戦しました……しかし……」
「連合軍は大敗。甚大な被害を出した」
システィーナが悔し気に言葉を吐いた。
「魔人族の力は凄まじい……戦闘に特化した魔人が相手であれば、私など足元にも及ばん」
バージル卿が言うのだからそうなのだろう。オレはバージル卿しか見ていないが、人の力であれに勝てるとは到底思えない。
「そのとおりです。私達は己の無力さを思い知ったのです」
それまでにも魔人族との争いはあったが、戦力に差はなかった。
五〇年前の人魔大戦の時に突然にして、魔人族は力を増したのだ。
「魔獣人化……」
この屋敷に来た時のことを思い出す。
LV153。圧倒的なレベルアップ。
あれは無理だ。
あれには勝てない。
少なくとも、今のままでは相手にすらならないだろう。
「魔獣人化は全ての魔人族がなれるわけではない」
バージル卿が場の雰囲気を和らげるように言ったが、あまり効果はなかったようだ。
「私達竜人族は人魔大戦の敗北を機に二つの派閥が生まれました」
それが……とアンナは言葉を続けた。
「魔人族に取り入り、闇の力で世界に君臨する派閥のノワール派と、各部族の神官たちで組織された派閥のブラン派です」
魔人族に取り入るということは連合軍に対する裏切り行為だ。それは、入れば二度と戻ることのできない闇の道へと踏み込むことになる。
「ノワール派には黒竜族と赤竜族が所属している。ヤムダはその中心に位置する人物だということだったのだが……」
バージル卿がオレを見た。
もしかして、倒したこと疑われてる?
「……これで証拠になるか?」
オレは空間転移で異空間からヤムダの腕を取り出す。鉤爪のある竜の腕だ。
「なんと!」
バージル卿が驚きの声を上げた。
「これはまさしく、黒竜族の腕! しかも、これほどに立派な物ということは……」
「黒竜族のヤムダに間違いありません」
アンナもうなずきシスティーナまでも同意した。
「まあ、首でもあれば……」
……頭は勢い余って潰しちゃいました。
今出してもグロッキーな物しか出せません。
ごめんなさい。
倒した瞬間はシスティーナも目撃している。
倒したことは間違いなかった。
「しかし……そうなると」
バージル卿が不安げな顔をオレに向けてきた。
「下手をすると仕返しにノゾミ殿が狙われる可能性が出てきますな」
「まあ、そうなることは予想していたよ」
そのあたりは想定済みだ。
今後は、周囲への警戒を怠らないように更に気を付けていかなければ。
「ノゾミの事は私に任せてもらいたい。常に監視を怠らない」
システィーナが手を握ってきた。
「私もです。ノゾミ様と誓約を結んだ以上、離れることはありません」
アンナは腕にしがみつく。
「私も……ノゾミとは仲間ですから!」
ミーシャがもう片方の腕にしがみつく。
「私は妹だから当然だよね」
マヤは正面から抱きついてきた。
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