88 / 406
第二章「魔法学園の劣等生 入学編」
第51話「入学式は波乱の予感」 ※イラストあり〼
しおりを挟む魔法学園はこの国の重要な教育機関だ。
いかに優秀な魔法使いを育成できるか。それが結果として国力を左右することになる。
優秀な魔法使いは百人の騎士に勝る。
人魔大戦で大きく国力の低下した折、国の再興に貢献したのは魔法使いであった。
魔法学園の生徒数は約千人。その内の五百人がシルバー以上の生徒だということだ。
オレ達は新入生ということで席についている。周囲には在校生が、新入生を歓迎するために……もしくは値踏みする為に表面上は歓迎という形でオレたちを迎え入れてくれた。
マヤとシスティーナはいない。マヤは初等部の首席合格者だ。優秀すぎる妹を持つと兄としては悩みどころが多い。
「マヤちゃんが出てきましたよ」
隣にいるミーシャがオレの肘をつつく。
「新入生代表、マヤ」
ラップ学園長の紹介。
思ったとおり、首席合格者としてマヤが姿を現すと会場がざわめいた。
可憐な容姿にあどけない笑顔。初等部のほぼ全てがブロンズという中で、シルバーであるマヤの存在は一際輝きを放っていた。
マヤが壇上に立つと同時、彼女の周囲に魔方陣が浮かび上がった。
「拡声の魔法です」
アンナがこっそりと説明してくれる。あれで音を拡大するということらしい。
マヤが小さな口を開いた。いよいよ彼女の代表者挨拶が始まるのだ。
「人との出会いは多くの輝きと感動に満ちています。ラップ学園長をはじめ、先生方、先輩方、緊張していた私達に多くの励ましの言葉をくださりありがとうございました。
私達新入生は先輩方の背中を追いかけお互い良い影響を与え、良い刺激をし合える関係になります。
魔法は世界に満ちる偉大なる力です。その力を正しく使うために私達は学ばなければなりません。
温かいご指導を、これからどうぞよろしくお願いいたします」
マヤが挨拶を述べると会場は割れんばかりの拍手で満たされた。マヤがこちらに向かって手を振る。
「素晴らしい挨拶でしたね」
立派に育って……と、ミーシャがハンカチで涙を拭う。お前はあいつのお母さんか。
新入生の挨拶を終え、講師の案内が始まる。
またも会場にざわめきが生じた。
「今回、特別講師として赴任することになりました。聖騎士のシスティーナ先生です」
ラップ学園長の紹介と共にシスティーナが姿を現す。
銀の甲冑に身を包んだシスティーナは神々しいまでの輝きを放っていた。
見慣れているオレでさえ一瞬見惚れてしまうほどだ。他の生徒からすれば崇拝レベルの粋だろう。現に周囲からはため息とも取れる声がいくつも聞こえた。
「システィーナさん、素晴らしいです」
アンナが素直な感想を口にする。
オレは頷くしかなかった。
黙って立っていれば素敵な女聖騎士様。ドレスを着せればご令嬢。ネグリジェを脱げばご淫乱。オレがバージル卿の養子になったことで、妻の座を虎視眈々と狙い始めたお嬢様である。
システィーナは教師としての心構えを説いたあとに、ゆっくりと全員を見渡した。
その力ある瞳に魅了されてしまいそうだった。
「全員がこの魔法学園の生徒であると同時にこの国の大切な宝だ。私は諸君らを育てると共に命をかけて守ることをここに誓おう!」
締めくくりの言葉と共にまたも会場は拍手で満たれた。
二人のおかげで学園は入学式から大いに盛り上がった。
式が終わったあとも、生徒たちの熱は冷めない。
入学式のあとは会場の外でマヤを待つ約束をしていた。
魔法学園は初等部、中等部、高等部と三つの学年部に別れていた。明確な年齢制限はないが、初等部が十五歳くらいまで、中等部が二〇歳くらいまでとなっている。これはあくまでも人間を基準にしたものであり、長命な種族になるとその限りではないのだ。
「すごい人ですね」
アンナが感心ようにつぶやいた。
その理由はオレがよく知っている。
本人は気づいていないだろうが、周囲に人だかりができているのはアンナとミーシャのせいでもあった。
竜人族の巫女。銀髪に紅の瞳。神秘的な雰囲気を醸し出す彼女は注目の的だ。そして何より腕に輝くミスリルのブレスレット。これで注目されない訳がない。
兎人族のミーシャも人目を引いていた。その愛くるしい容姿もさることながら、腕につけているゴールドのブレスレット。中等部はシルバーのブレスレットがほとんどだ。その中でゴールドとミスリルの存在は羨望の的でしかない。
そう、その中にいるブロンズのオレだけが異質なのだ。
――ううっ、みんなの視線痛いぜ。
「あの、死んだ魚のような目をした男は一体誰だ?」
「もしかして、召使い?」
「いや、ストーカーもしれないぞ」
「彼女たちを助けてあげないと」
ヒソヒソと周囲が勝手なことを呟いている。
彼女たちとヤリまくっているなどと言ったら……ここを生きては出られないだろう。
「お兄ちゃん!」
マヤがこちらに向かって駆けてきた。その後を何人かの男達が追いかけてくる。
マヤはオレの元にたどり着くと背中に隠れてしまった。
「お兄ちゃん! 助けてください!」
そこにあるのは兄の背に隠れるか弱い女の子の姿だった。
傍から見ればそう見えるだろうが、誰もこいつの力がそこら辺の騎士など片手で蹴散らしてしまえる程だということを知らない。
「おい、ブロンズ。そこをどけ!」
先頭の男がオレを見るなり威圧的な態度で言ってきた。
相手を格下だと認め、態度を変えてくる骨川少年のようなタイプのやつだ。だとすると剛田少年のようなやつもいるに違いない。
「おい、いったいどうしたんだ?」
なんとなく状況は分かったが、ここはしっかりとマヤの口から事情を聞いておく必要があった。
「あの人たちがいきなり私に話があるって、腕をつかまれて……」
マヤが震えながら小声で言った。
「アイザック様がマヤさんに話があるとおっしゃられているのだ」
アイザック? どちら様ですかなそれは?
「フッ、庶民の中に私のことを知らない者がいたとは……驚きだな」
髪をかきあげポーズを決める。典型的な三流キャラが目の前に現れた。
殺していいですか? とアンナが目で訴えてくる。YESと言ったら本気で殺りそうなのでやめた。
「全くです。アイザック様」
「不届き者ですね。アイザック様」
取り巻きがうるさい。
「あ~、ナップサック様」
「アイザックだ!」
「ウチの妹がどうかしましたか?」
さらりとマヤの肩を抱き引き寄せた。
「あん♡」
嬉しそうにマヤが身をスリスリしてくる。
ぶわりと周りの特に男共の殺気が増した。
あれ? 予想以上に周囲を敵に回したのか?
「こんなところで抱きつくなんて羨ましい!」
「後で私もノゾミ様に抱きしめてもらわないと!」
ミーシャとアンナの呟きはこの際無視する。
「どうやら、妹が迷惑してあるみたいなんで……リュックサック様、非常に邪魔なんでこの場から消えてもらいませんか?」
オレは丁寧にへりくだって相手にお願いしてみた。
「ふ、ふ、ふざけるなぁぁぁ!!!」
それはそれは、大変なお怒り様でございました。
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
クラスメイトの美少女と無人島に流された件
桜井正宗
青春
修学旅行で離島へ向かう最中――悪天候に見舞われ、台風が直撃。船が沈没した。
高校二年の早坂 啓(はやさか てつ)は、気づくと砂浜で寝ていた。周囲を見渡すとクラスメイトで美少女の天音 愛(あまね まな)が隣に倒れていた。
どうやら、漂流して流されていたようだった。
帰ろうにも島は『無人島』。
しばらくは島で生きていくしかなくなった。天音と共に無人島サバイバルをしていくのだが……クラスの女子が次々に見つかり、やがてハーレムに。
男一人と女子十五人で……取り合いに発展!?
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――
のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」
高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。
そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。
でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。
昼間は生徒会長、夜は…ご主人様?
しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。
「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」
手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。
なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。
怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。
だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって――
「…ほんとは、ずっと前から、私…」
ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。
恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる
