104 / 406
第二章「魔法学園の劣等生 入学編」
第67話「時計塔と襲撃者」
しおりを挟む
昼間は賑やかな魔法学園も夜になるとその姿を一変させる。普通の街のように繁華街があるわけではない。
静まり返った学園内。
オレは闇夜に紛れ時計塔へと向かっていた。
今回は目立たないように漆黒の服で来ている。
(警告。これ以上は結界エリアとなります)
オレは足を止め時計塔を見上げる。高さにして五〇メートル。周囲の建物から飛び映ればその半分の距離で済む。
魔力感知で大まかな位置を把握する。
塔の周囲には力場のような結界が張られていた。無理に入ろうとすれば弾かれるだけでなく何らかの攻撃が加えられるようだ。
結界の主はアメリア先生。一筋縄では行かないだろう。
オレはの漆黒の剣を取り出す。
さて、ここからが本番だ。
ある程度の距離をおいて時計塔に対峙する。
リミッター解除。
ぐっと体を縮め目標を見据える。
目指すは時計塔のてっぺん。
ヨーイ。ドン!
音もなく駆け出す。
数秒後には時計塔の真下近くにまで迫っていた。
接近と同時に違和感を感じる。
結界だ!
そう思うよりも早く身体が反応していた。
剣を水平に構えなんの躊躇もなく振るう。
パリンとガラスのようなものが砕け散る音。
予備動作なしの跳躍。
再度違和感を感じ、剣で結界を砕く。
僅か三秒ほどの時間で時計塔の屋根に到着した。
時間がない。結界の消失は既にバレているだろう。
屋根から身を踊らせ、時計の針につかまった。
時計の文字盤に整備用の入り口を発見する。剣でカギを破壊し中に入った。
暗視の能力のおかげで明かりがなくても平気だった。内部は複雑に歯車がかみ合い。音を立てて動いている。
手筈通り、球を文字盤の裏に仕込む。手頃な隙間にはめ込むだけの簡単なお仕事だ。
作業は簡単だったが、すぐに脱出しなければ不審に思った学園側がどういった対応をしてくるのか不明だった。
誰がスパイか分からない。
講師の先生ですらシスティーナ以外に誰を信用していいのか分からないこの状況では、この方法が確実だ。
周囲の気配を警戒しながら外に出る。
(警告!)
マザーさんの警告前に身体が動いていた。
光の矢が顔前をかすめる。
その場から飛び出し、屋根の上に着地した。
(解析。魔力を感知しました。魔法による攻撃です)
おいおい、簡単なお仕事じゃなかったのか?
自分で言っておいてなんだが、この仕事を少しなめていた。
これは学園の警備の者ではない。
警告もなしにいきなり攻撃魔法とか……普通ならば考えられない。
ワームホールによる魔法吸収はマヤが近くにいないので今回はなしだ。自力で何とかするしかない。
――敵の位置は?
(捕捉。敵の位置を特定しました。一〇〇メートル前方の建物の屋根です)
マザーさんの力で、敵がかなり遠くの屋根の上だということが分かった。
その気配がふっと消える。
高速の移動や転移の魔法などではない。
存在が消失した感じだ。
(警告。反応が消失しました)
剣を構える。
敵の気配は突然背後に現れた。
何だこいつは!
(解析。失敗しました)
敵は全身黒ずくめだった。小柄だが男か女かわからない。
種族すら不明だ。
レベルも分からない。
HP、MPの表示すらでない。
得体が知れない。
出ないはずの汗を感じた。ナノマテリアルの身体はそもそも汗をかかない。
それなのに冷や汗を感じた。
「お前は……何だ?」
異質な存在。
ヤムダの時すら感じたことのない感覚だ。
それは、恐れ。
敵が動いた。
敵の武器は……魔法のステッキ。そうアニメに出てくるような……魔法少女が持っていそうなマジカルステッキだった。
ガキッ!
剣とマジカルステッキがぶつかり合う。
ずっしりとした感触。マジカルステッキではなく巨大な岩に木刀で挑んでいるような感覚だった。
(警告。急激な温度上昇を確認。危険域です)
漆黒の剣がマジカルステッキと触れた部分で急速に白熱。
ギチチチ!
火花が散る。
剣が赤く輝き出す。
(確認。接点温度……摂氏六〇〇〇度)
周囲の温度が急激に上昇していく。
オレは剣で弾き飛び退く。
(報告。剣の破損を確認しました)
なんてことだ。
高密度のカーボンナノチューブ製の剣が破損だと!
この世界の水準でいえば、相応の加護のある伝説級の剣でない限り、この剣に傷すらつけられないはずだ。
――これはマズイ。非常にマズイ。
漆黒の服ですら防御しきれない。
漆黒の剣でも何撃耐えられるかわからない。
いや、それどころの話ではない。
相手はまだ本気ですらない。
(報告。レべル解析に成功しました)
「……………………ははははは!!」
オレはその表示を見て心が折れかけた。
LV1047 魔法少女。
おいおいおいおい!
なんの冗談だ!
LV1047ってレべルオーバーじゃないのか。
それで魔法少女って……それはないだろ!!
「なんでこんな化け物がいるんだ……」
とにかく、相手の職業は冗談だとして、これは本気で相手しても勝てる見込みがない。
オレは二の腕に手を当てた。封魔の腕輪をした状態ではどのみち勝てる見込みはない。
これ外すとバージル卿怒るんだよね。
まあ、死ぬよりはいいだろ。
魔法少女がマジカルステッキを構えた。
こうなれば玉砕覚悟で攻撃するしかない。
――腕一本で済めばいいが……
正直、勝てる気がしなかった。
刹那、二人の間に光の矢が飛んできた。
矢は足元に突き刺さり石畳をえぐる。
「そこの二人! 動かないで!」
結界の解除に気づいた警備の兵がこちらに近づいてきているところだった。
「来るな!」
思わず叫ぶ。
このままでは学園の者にまで被害が及ぶ。
一度場所を変えて距離を取るか。
とにかくこの場を離れよう。
「その声は……ノゾミ君?」
警備兵を連れた女性が呼び止める。
思わず足を止めてしまった。
失敗だった。
ここは足を止めず走り去る必要があったのだ。
(報告。敵の反応をロストしました)
マザーさんの報告を聞くまでもない。
「これは……どういうことですか?」
「えーっとですね……」
なんと説明したものか。
(提案。最適解を提示します)
おっ、さすがマザーさん。この場を乗り切る最適な言い訳を思いついたらしい。
「夜風があまりにも気持ちいいから、思わず散歩してみたくなってね」
「何をアホなことを言っているんですか? とにかく話を聞きます。ついてきなさい!」
厳しくアメリア先生に怒られました。
マザーさん。話が違いますけど!?
静まり返った学園内。
オレは闇夜に紛れ時計塔へと向かっていた。
今回は目立たないように漆黒の服で来ている。
(警告。これ以上は結界エリアとなります)
オレは足を止め時計塔を見上げる。高さにして五〇メートル。周囲の建物から飛び映ればその半分の距離で済む。
魔力感知で大まかな位置を把握する。
塔の周囲には力場のような結界が張られていた。無理に入ろうとすれば弾かれるだけでなく何らかの攻撃が加えられるようだ。
結界の主はアメリア先生。一筋縄では行かないだろう。
オレはの漆黒の剣を取り出す。
さて、ここからが本番だ。
ある程度の距離をおいて時計塔に対峙する。
リミッター解除。
ぐっと体を縮め目標を見据える。
目指すは時計塔のてっぺん。
ヨーイ。ドン!
音もなく駆け出す。
数秒後には時計塔の真下近くにまで迫っていた。
接近と同時に違和感を感じる。
結界だ!
そう思うよりも早く身体が反応していた。
剣を水平に構えなんの躊躇もなく振るう。
パリンとガラスのようなものが砕け散る音。
予備動作なしの跳躍。
再度違和感を感じ、剣で結界を砕く。
僅か三秒ほどの時間で時計塔の屋根に到着した。
時間がない。結界の消失は既にバレているだろう。
屋根から身を踊らせ、時計の針につかまった。
時計の文字盤に整備用の入り口を発見する。剣でカギを破壊し中に入った。
暗視の能力のおかげで明かりがなくても平気だった。内部は複雑に歯車がかみ合い。音を立てて動いている。
手筈通り、球を文字盤の裏に仕込む。手頃な隙間にはめ込むだけの簡単なお仕事だ。
作業は簡単だったが、すぐに脱出しなければ不審に思った学園側がどういった対応をしてくるのか不明だった。
誰がスパイか分からない。
講師の先生ですらシスティーナ以外に誰を信用していいのか分からないこの状況では、この方法が確実だ。
周囲の気配を警戒しながら外に出る。
(警告!)
マザーさんの警告前に身体が動いていた。
光の矢が顔前をかすめる。
その場から飛び出し、屋根の上に着地した。
(解析。魔力を感知しました。魔法による攻撃です)
おいおい、簡単なお仕事じゃなかったのか?
自分で言っておいてなんだが、この仕事を少しなめていた。
これは学園の警備の者ではない。
警告もなしにいきなり攻撃魔法とか……普通ならば考えられない。
ワームホールによる魔法吸収はマヤが近くにいないので今回はなしだ。自力で何とかするしかない。
――敵の位置は?
(捕捉。敵の位置を特定しました。一〇〇メートル前方の建物の屋根です)
マザーさんの力で、敵がかなり遠くの屋根の上だということが分かった。
その気配がふっと消える。
高速の移動や転移の魔法などではない。
存在が消失した感じだ。
(警告。反応が消失しました)
剣を構える。
敵の気配は突然背後に現れた。
何だこいつは!
(解析。失敗しました)
敵は全身黒ずくめだった。小柄だが男か女かわからない。
種族すら不明だ。
レベルも分からない。
HP、MPの表示すらでない。
得体が知れない。
出ないはずの汗を感じた。ナノマテリアルの身体はそもそも汗をかかない。
それなのに冷や汗を感じた。
「お前は……何だ?」
異質な存在。
ヤムダの時すら感じたことのない感覚だ。
それは、恐れ。
敵が動いた。
敵の武器は……魔法のステッキ。そうアニメに出てくるような……魔法少女が持っていそうなマジカルステッキだった。
ガキッ!
剣とマジカルステッキがぶつかり合う。
ずっしりとした感触。マジカルステッキではなく巨大な岩に木刀で挑んでいるような感覚だった。
(警告。急激な温度上昇を確認。危険域です)
漆黒の剣がマジカルステッキと触れた部分で急速に白熱。
ギチチチ!
火花が散る。
剣が赤く輝き出す。
(確認。接点温度……摂氏六〇〇〇度)
周囲の温度が急激に上昇していく。
オレは剣で弾き飛び退く。
(報告。剣の破損を確認しました)
なんてことだ。
高密度のカーボンナノチューブ製の剣が破損だと!
この世界の水準でいえば、相応の加護のある伝説級の剣でない限り、この剣に傷すらつけられないはずだ。
――これはマズイ。非常にマズイ。
漆黒の服ですら防御しきれない。
漆黒の剣でも何撃耐えられるかわからない。
いや、それどころの話ではない。
相手はまだ本気ですらない。
(報告。レべル解析に成功しました)
「……………………ははははは!!」
オレはその表示を見て心が折れかけた。
LV1047 魔法少女。
おいおいおいおい!
なんの冗談だ!
LV1047ってレべルオーバーじゃないのか。
それで魔法少女って……それはないだろ!!
「なんでこんな化け物がいるんだ……」
とにかく、相手の職業は冗談だとして、これは本気で相手しても勝てる見込みがない。
オレは二の腕に手を当てた。封魔の腕輪をした状態ではどのみち勝てる見込みはない。
これ外すとバージル卿怒るんだよね。
まあ、死ぬよりはいいだろ。
魔法少女がマジカルステッキを構えた。
こうなれば玉砕覚悟で攻撃するしかない。
――腕一本で済めばいいが……
正直、勝てる気がしなかった。
刹那、二人の間に光の矢が飛んできた。
矢は足元に突き刺さり石畳をえぐる。
「そこの二人! 動かないで!」
結界の解除に気づいた警備の兵がこちらに近づいてきているところだった。
「来るな!」
思わず叫ぶ。
このままでは学園の者にまで被害が及ぶ。
一度場所を変えて距離を取るか。
とにかくこの場を離れよう。
「その声は……ノゾミ君?」
警備兵を連れた女性が呼び止める。
思わず足を止めてしまった。
失敗だった。
ここは足を止めず走り去る必要があったのだ。
(報告。敵の反応をロストしました)
マザーさんの報告を聞くまでもない。
「これは……どういうことですか?」
「えーっとですね……」
なんと説明したものか。
(提案。最適解を提示します)
おっ、さすがマザーさん。この場を乗り切る最適な言い訳を思いついたらしい。
「夜風があまりにも気持ちいいから、思わず散歩してみたくなってね」
「何をアホなことを言っているんですか? とにかく話を聞きます。ついてきなさい!」
厳しくアメリア先生に怒られました。
マザーさん。話が違いますけど!?
0
あなたにおすすめの小説
百合ランジェリーカフェにようこそ!
楠富 つかさ
青春
主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?
ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!!
※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。
表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。
どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~
さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」
あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。
弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。
弟とは凄く仲が良いの!
それはそれはものすごく‥‥‥
「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」
そんな関係のあたしたち。
でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥
「うそっ! お腹が出て来てる!?」
お姉ちゃんの秘密の悩みです。
ヤンデレ美少女転校生と共に体育倉庫に閉じ込められ、大問題になりましたが『結婚しています!』で乗り切った嘘のような本当の話
桜井正宗
青春
――結婚しています!
それは二人だけの秘密。
高校二年の遙と遥は結婚した。
近年法律が変わり、高校生(十六歳)からでも結婚できるようになっていた。だから、問題はなかった。
キッカケは、体育倉庫に閉じ込められた事件から始まった。校長先生に問い詰められ、とっさに誤魔化した。二人は退学の危機を乗り越える為に本当に結婚することにした。
ワケありヤンデレ美少女転校生の『小桜 遥』と”新婚生活”を開始する――。
*結婚要素あり
*ヤンデレ要素あり
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
俺様上司に今宵も激しく求められる。
美凪ましろ
恋愛
鉄面皮。無表情。一ミリも笑わない男。
蒔田一臣、あたしのひとつうえの上司。
ことあるごとに厳しくあたしを指導する、目の上のたんこぶみたいな男――だったはずが。
「おまえの顔、えっろい」
神様仏様どうしてあたしはこの男に今宵も激しく愛しこまれているのでしょう。
――2000年代初頭、IT系企業で懸命に働く新卒女子×厳しめの俺様男子との恋物語。
**2026.01.02start~2026.01.17end**
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる