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第二章「魔法学園の劣等生 入学編」
第101話「挑戦者セレス」 ※イラストあり〼
しおりを挟む「おいお前!」
朝食会場でオレはいきなりセレスに呼び止められた。
あちこち走り回ったのだろうか、はあはあと荒い息でオレに迫ってくる。その姿はまるで不審者。
「ああ、セレスさん。おはようございます」
「おはようございます。アンナ様!」
オレに向けたのとは違う輝く笑顔でアンナに挨拶するセレス。
「おはようだなセレス」
「お前に挨拶などしていない!」
厳しい対応ありとうございます。
「ノゾミ……アンナ様をかけてお前に決闘を申し込む!」
なんかこんな流れ以前にもあったな。
「それで……オレに勝ったらどうするんだ?」
「あたしがアンナ様のモノになる!」
高らかに宣言するセレス。
……ん?
「……それって、オレと決闘する意味ある?」
アンナがOKするかしないかの話ではないか?
オレの関与する余地はないように思えるのだが。
「嫌です。私は身も心もノゾミ様のモノです!」
アンナがオレの頭に抱きついてきた。
胸が頭にあたって気持ちいい。
アンナさん。ここは学生や先生方の食堂なので大きな声で叫ぶのはやめてください。
ほら、他の男子生徒がすんごい目つきでこちらを睨んでますよ。明らかにオレを睨んでますよ!
「私もノゾミ君のモノです!」
アメリア先生が腕に抱きつく。執拗に身体でスリスリしてくる。
アメリア先生止めて!話がややこしくなるから止めて!
反対側の腕にマヤとアープルがしがみついてきた。
うわっ。周囲の女生徒の目が地べたをはいずる虫を見る目だ。今にも踏み潰されそうだ。
食事会場で食事をする度にオレの評判がどんどん落ちていると思うのはオレだけだろうか。
ミーシャとシスティーナもこちらに向かってきそうだったので目で制した。
「では、あたしが負けたら……お前のモノになってやる!」
「いや、そういうのいいんで」
「なぜに断る!」
だって、セレスって面倒臭そうだし。
「大丈夫です。ノゾミ様」
アンナがオレの手を握った。
「私がきちんと躾けますので」
何を躾けるのかあえて聞かないでおこう。
あれ……そうなるとオレが勝っても負けても結果変わらないんじゃね?
お前の物はオレの物、オレの物はオレの物。
この剛田武的思想(ジャイアニズム)によれば結局はセレスはこちらに来る事になる。
「……まあいいか……」
悩んでもしょうがないことは悩まない。
「とにかく、夕方の合同練習には必ず来るんだぞ」
「わかった。その時に勝負だ!」
セレスは一人納得したように立ち去っていった。
「さて、邪魔者もいなくなったことだし」
楽しい朝食です。
◆ ◆ ◆ ◆
夕刻、日が沈み昼間の熱が冷める頃合いだ。
「あの……今日の夕方の事なんだけど……」
マヤとアープルが心配そうに声をかけてきた。
今日の夕方は二人と競技大会に向けて練習する予定なのだ。
「ああ、もちろん行くよ。お前たちの練習に付き合ってあげないとな」
オレの言葉に二人は顔を輝かせた。
しかし、すぐに怪訝そうな顔になる。
「でも、セレスさんとの約束があるんじゃ……」
アープルが心配そうに呟く。
「約束?」
オレが?はて、そんなものをいつしたのだろうか?
「いえ、昼食の時にセレスさんと夕方に勝負すると……」
おお、そうだった。
でも、みんな大いに勘違いそしているぞ。
「練習に来いとは言ったが、オレは行くとは言ってない。ついでにいうと勝負をするとも言ってない」
「えっ……でも……確かに……」
ミーシャが頭をひねった。
「……言ってないな。ノゾミは確かに勝負を受けるとも、夕方の合同練習に行くとも言っていない」
システィーナが唸る。
「しかし、それは少し卑怯ではないか?」
卑怯も何も、朝っぱらから名指しで勝負を挑んでくるような奴との約束を守る義理はない。
「怒るでしょうね彼女」
「その時はアンナに相手をしてもらうさ」
「お任せください。どうしてもというときには適切に処理いたします」
アンナは胸を張って応える。
恐ろしい巫女メイドである。
「じゃあ、夕方はお兄ちゃんと練習だね」
「お兄さんとの練習楽しみです」
マヤとアープル。癒やされるなあ。
◆ ◆ ◆ ◆
「……遅い!」
セレスはいらいらとしながらみんなと練習に参加していた。
夕刻、合同練習の際にノゾミとアンナを賭けた決闘をする予定だった。
しかし、ノゾミは一向に現れず学園祭に向けた練習も一通り終わろうとしていた。
「なぜ来ない……」
苛立ちが募る。
その時ちょうど他の練習の監督をしていたアメリア先生が近くを通りかかった。
ここぞとばかりにセレスはアメリア先生に詰め寄る。
「アメリア先生!」
「あら、セレスさんじゃないですか。きちんと練習に参加するなんて偉いですね」
「ええ、ありがとうござい……じゃなくって、ノゾミは?一緒じゃないんですか?」
「いえ、今は一緒じゃないですよ。でも今夜は私の番なので……きゃっ♡」
何やらニヤニヤとしているアメリア先生の言葉を聞きながらセレスは怒りがふつふつと湧き上がるのを感じていた。
「おのれノゾミ……あたしとの勝負から逃げやがったな!」
「勝負……ってなんのことですか?」
「え……いや……」
いい淀んだセレスだったが、しつこくアメリア先生が聞いてくるのでかのじぃは仕方なくことのあらましを説明する。
「う――ん」
セレスの話を聞いたアメリア先生は考え込んでしまった。
しばらくしてハッとなりセレスに問いかけた。
「もしかしたら……というか、絶対にノゾミ君は来ないと思います」
「なぜですか!」
セレスは叫んだ。憤慨していると言っていい。みんなの前で勝負を受けておきながら姿を現さないとは許せない。
「セレスさん……非常に言いにくいのですが……あなたはノゾミ君がちゃんと【勝負を受ける】と言ったのを聞いたんですか?」
――えっ、どういうこと?
セレスの頭は混乱した。アメリア先生の言葉の意味が一瞬理解できなかったのだ。
しかし、昼間の出来事を思い返していくうちにセレスはノゾミが「とにかく、夕方の合同練習には必ず来るんだぞ」としか言っていなかったことを思い出す。
彼は決してセレスの勝負を「受ける」とは言わなかった。
ただ、練習に来るようにとだけ言っていたのだ。
「あ――――っ!!」
ようやく自分がハメられたこのに気づいたセレスの叫び声が夕暮れの森の中に響き渡った。
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