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第二章「魔法学園の劣等生 入学編」
閑話「ラップ学園長の憂鬱」
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夜の帳が降り、学園は静けさに包まれていた。
学園長室。
ラップ学園長は羊皮紙をにらみつけ重々しくため息をついた。
「学園長……どうされたのですか?」
隣にいたアメリアが心配そうに覗き込んでくる。
「ああ、何でもない……わけでもないな」
思わす苦笑する。孫の前では自分を偽りたくはなかった。
「例の依頼の件ですね」
「まあな。全く困ったもんじゃ。さぁ、おかわりはいるかね?」
「いただきます」
目の前に座り美味しそうにお茶を飲む孫娘にラップ学園長は思わず苦笑する。
せっかくの孫とのゆっくりした時間をため息で台無しにするとは……
「それにしても……」
ラップ学園長の目の前にあるのは催促の依頼書だった。
曰く、「早急に犯人を特定または製法を解明せよ」である。
「はぁ……」
この三千年の人生の中で一番厄介な問題だった。
一枚の地図が巻き起こした嵐のごとき怒涛の旋風。
それが今、学園長を大いに悩ませている。
何年も前のことだ、国内の四つの魔法学園には国王より直々に賜ったある一つの勅命があった。
それは、国内の精密な地図を完成させよ。というものだった。
情報は宝だ。精密な地図はそれがあるというだけで大きな力となる。
しかし、地図作製は遅々として進まなかった。
優秀な魔法使いがいようとも地図の作成ともなれば技術者が必要となる。
何年もかけ各学園は地図の作成に尽力した。
それが二カ月ほど前、アイスクラ・マイスター卿のもたらした地図によって一変する。
正確無比な地図。魔法で模写した地図がラップ学園長の元へと届けられたが、それはラップ学園長らを驚愕させるに十分なものだった。
交易都市キリムを中心としたその地図は地形まで把握できるように配慮され、その距離感覚も把握できるようになっていた。
今まで積み上げてきた地図作成のノウハウを一気に覆すほどの技術。
アイスクラ・マイスター卿の話では、その地図は一組の冒険者よりもたらされたということが判明し、事態はさらに混乱を極めた。もしかすると、その冒険者の一人なし二人は【悪魔の門】より飛来した謎の球体より生まれた者かもしれないということだったのだ。この球体は現在、王都の運ばれ調査されているとの事だったが、未だ調査結果の報告は受けていない。
五十年前、【悪魔の門】より謎の光る物体が放出され、その後、人魔大戦が勃発した。
そして、今回の騒動だ。無関係であるとは思えなかった。
そんな折、調査に向かわせていた密偵から件の冒険者の関わる情報がもたらされた。
冒険者の中でマークしている人物「ノゾミ」がバージル卿の領地へと赴いたということだ。
アイスクラ・マイスター卿の娘も同行しているということで、アイスクラ・マイスター卿も監視の意味で娘を同行させているのだろうと察しがついた(※完全なる誤解だが……)
バージル卿とは旧知の仲だ。ラップ学園長はすぐにバージル卿に連絡を取り、学園での調査という名目で「ノゾミ」を学園へと入学させることに成功した。その際、同じく監視対象だった「マヤ」の入学させることにも成功した。
二人の他にも何人かの生徒が入学したがこれはバージル卿がよこした監視の者たちだと思われた。
さすが旧友、ラップ学園長の意を察し監視の者をよこすとは気が利いている。
ならば、こちらも誠意を見せねばと孫のアメリアをノゾミにつけることにしたのだ。
ノゾミ達には偽の依頼を行った。自分たちが監視の対象であるとも知らず彼らは学園での生活とありもしないスパイの捜索を開始した。
しかし、それが波乱の始まりだった。
入学式初日、あろうことか三大領主の一人、ロイマール卿の次男と決闘を行ったというではないか。それどころか、深夜には時計塔周辺での襲撃騒ぎ、嘘か真か初等部生徒との熱愛騒動、同級生との熱愛騒動、マイスター卿の愛娘をの熱愛騒動……ラップ学園長は頭を抱えたくなった。そして、最も驚愕したことが……アメリアとの熱愛疑惑!!!
ラップ学園長は思わず己が知る全ての呪術をもってノゾミをこの世から抹消してしまおうかとも考えたくらいだ。
実力を図るためにもノゾミ達を魔法技術大会に出場させるという暴挙にも出た。
これで、彼らの実力の一端を知ることができる。
さらなる監視の目的で、メリッタ先生を付けることにしたのだが……これがまた逆効果となる。
あろうことか、あのマッドなメリッタ先生がノゾミに手なずけられてしまったのだ。
「それでね。ノゾミ君がね」
嬉しそうに宿敵ノゾミの事を語るアメリア。
ラップ学園長は複雑な思いで愛孫を見つめる。
アメリアにはノゾミが実は調査対象であるということは伝えていない。
地図の事は伝えているが、その内容をノゾミ達に伝えることは厳格に禁止している。
そのことを知られては元も子もないからだ。
これ以上、何も起こりませんように……
無駄と知りつつも、ラップ学園長は天に祈る。
その祈りが、全く天に通じていなかったことを知るのは、魔術競技大会が始まってすぐの事になる。
学園長室。
ラップ学園長は羊皮紙をにらみつけ重々しくため息をついた。
「学園長……どうされたのですか?」
隣にいたアメリアが心配そうに覗き込んでくる。
「ああ、何でもない……わけでもないな」
思わす苦笑する。孫の前では自分を偽りたくはなかった。
「例の依頼の件ですね」
「まあな。全く困ったもんじゃ。さぁ、おかわりはいるかね?」
「いただきます」
目の前に座り美味しそうにお茶を飲む孫娘にラップ学園長は思わず苦笑する。
せっかくの孫とのゆっくりした時間をため息で台無しにするとは……
「それにしても……」
ラップ学園長の目の前にあるのは催促の依頼書だった。
曰く、「早急に犯人を特定または製法を解明せよ」である。
「はぁ……」
この三千年の人生の中で一番厄介な問題だった。
一枚の地図が巻き起こした嵐のごとき怒涛の旋風。
それが今、学園長を大いに悩ませている。
何年も前のことだ、国内の四つの魔法学園には国王より直々に賜ったある一つの勅命があった。
それは、国内の精密な地図を完成させよ。というものだった。
情報は宝だ。精密な地図はそれがあるというだけで大きな力となる。
しかし、地図作製は遅々として進まなかった。
優秀な魔法使いがいようとも地図の作成ともなれば技術者が必要となる。
何年もかけ各学園は地図の作成に尽力した。
それが二カ月ほど前、アイスクラ・マイスター卿のもたらした地図によって一変する。
正確無比な地図。魔法で模写した地図がラップ学園長の元へと届けられたが、それはラップ学園長らを驚愕させるに十分なものだった。
交易都市キリムを中心としたその地図は地形まで把握できるように配慮され、その距離感覚も把握できるようになっていた。
今まで積み上げてきた地図作成のノウハウを一気に覆すほどの技術。
アイスクラ・マイスター卿の話では、その地図は一組の冒険者よりもたらされたということが判明し、事態はさらに混乱を極めた。もしかすると、その冒険者の一人なし二人は【悪魔の門】より飛来した謎の球体より生まれた者かもしれないということだったのだ。この球体は現在、王都の運ばれ調査されているとの事だったが、未だ調査結果の報告は受けていない。
五十年前、【悪魔の門】より謎の光る物体が放出され、その後、人魔大戦が勃発した。
そして、今回の騒動だ。無関係であるとは思えなかった。
そんな折、調査に向かわせていた密偵から件の冒険者の関わる情報がもたらされた。
冒険者の中でマークしている人物「ノゾミ」がバージル卿の領地へと赴いたということだ。
アイスクラ・マイスター卿の娘も同行しているということで、アイスクラ・マイスター卿も監視の意味で娘を同行させているのだろうと察しがついた(※完全なる誤解だが……)
バージル卿とは旧知の仲だ。ラップ学園長はすぐにバージル卿に連絡を取り、学園での調査という名目で「ノゾミ」を学園へと入学させることに成功した。その際、同じく監視対象だった「マヤ」の入学させることにも成功した。
二人の他にも何人かの生徒が入学したがこれはバージル卿がよこした監視の者たちだと思われた。
さすが旧友、ラップ学園長の意を察し監視の者をよこすとは気が利いている。
ならば、こちらも誠意を見せねばと孫のアメリアをノゾミにつけることにしたのだ。
ノゾミ達には偽の依頼を行った。自分たちが監視の対象であるとも知らず彼らは学園での生活とありもしないスパイの捜索を開始した。
しかし、それが波乱の始まりだった。
入学式初日、あろうことか三大領主の一人、ロイマール卿の次男と決闘を行ったというではないか。それどころか、深夜には時計塔周辺での襲撃騒ぎ、嘘か真か初等部生徒との熱愛騒動、同級生との熱愛騒動、マイスター卿の愛娘をの熱愛騒動……ラップ学園長は頭を抱えたくなった。そして、最も驚愕したことが……アメリアとの熱愛疑惑!!!
ラップ学園長は思わず己が知る全ての呪術をもってノゾミをこの世から抹消してしまおうかとも考えたくらいだ。
実力を図るためにもノゾミ達を魔法技術大会に出場させるという暴挙にも出た。
これで、彼らの実力の一端を知ることができる。
さらなる監視の目的で、メリッタ先生を付けることにしたのだが……これがまた逆効果となる。
あろうことか、あのマッドなメリッタ先生がノゾミに手なずけられてしまったのだ。
「それでね。ノゾミ君がね」
嬉しそうに宿敵ノゾミの事を語るアメリア。
ラップ学園長は複雑な思いで愛孫を見つめる。
アメリアにはノゾミが実は調査対象であるということは伝えていない。
地図の事は伝えているが、その内容をノゾミ達に伝えることは厳格に禁止している。
そのことを知られては元も子もないからだ。
これ以上、何も起こりませんように……
無駄と知りつつも、ラップ学園長は天に祈る。
その祈りが、全く天に通じていなかったことを知るのは、魔術競技大会が始まってすぐの事になる。
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