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第四章「カルネアデス編」
第173話「望月望 ②」
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本来惑星の調査とは、星の生態系に影響を及ぼさない範囲で行う必要がある。
そもそも調査員が派遣され調査を行った時点でその星の生態系には多少なりとも影響が出ている。
オレとマヤがこの星を訪れなければ、ミーシャやアランたちの人跡は変わっていたはずだ。下手をすれば全滅という――あまり考えたくない結末の可能性すらあったはずだ。
それ以降の展開を考えても猫人族のニャンやミャン、システィーナの人生にも大きく影響してくる。
それだけではない。バージル卿の件もそうだ。オレがいなければバージル領は最悪干ばつに襲われ領民の生活に多大な影響を与えた可能性がある。
竜人族の抗争についてもそうだ。オレがいなければアンナは誘拐されていた可能性があった。それでなくとも黒竜族の襲撃という事態も考えられる。
オレという存在がこの星に訪れただけで多くの人生にかかわってしまっている。
バタフライ効果でいえばオレという存在で、この星の本来辿るべき運命が大きく方向転換したことになりはしないか。
魔法学園においてもオレの影響は大きかったはずだ。
調査という大義名分があるのであればそもそも調査員は傍観者に徹すべきなのだ。
「ずっと疑問だったんだ――オレの調査はそもそも調査じゃない。あれは解剖だ」
そう。解剖――もしくは細胞レベルの解体に近い。
相手の身体内部から解析を行いその力を分析する。
オレは調査員であり実験体だ。
そう、有機調査体「望月望」は実験体――モルモットなのだ。
「オレも調査対象だったんだな」
「ごめんなさい」
マヤが小さな声で謝った。
「マヤが謝る必要なんてない」
それがオレの正直な感想だった。
むしろ感謝しているぐらいだ。オレは「望月望」の魂であるが故に調査体に選ばれた。
偶然か必然かは分からない。しかし、そのことによって得られたものは大きい。
それを知らないまま――何も知らされないままにこの世界で生きて一体何の意味がある。
「マザーにとって魔法世界は未知の領域でした」
マヤは語りだす。
軌道上から観測しうる情報だけではこの未知なるエネルギーを解析することができなかった。
「だからオレを?」
マヤは頭を振った。
「お兄ちゃんは調査員としては二番目です」
そういえばそういった話を以前されたようん気がする。でも、確かそれは失敗に終わったんだあよな。
オレがその話をするマヤは「その通りです」と肯定してくれた。
「今から宇宙標準時間で五〇年前、マザーは一人の調査員をこの惑星に派遣しました」
「しかし、調査員は失敗し消息不明になったと?」
「いいえ、調査体は生きています」
「え?」
生きている? てっきり死んだものだと思っていたが……生きているのか。
「ええ、【彼女】は生きています」
彼女ということは女性か。
「彼女はこの世界においても秀でた能力を持っていました」
調査員として未知なる惑星に派遣されたいわばオレの先輩。
「彼女のこの世界での名前は……」
「もしかして……望?」
唐突に声をかけられた。
懐かしい響き。この世界では数日もたっていないだろうが、オレにとっては数カ月ぶりの声。
もう二度と聞くことのないと思っていた声。
「調査体の名は――与えられた調査という任務を放棄し、惑星へと逃げ込んだ最悪の人間【十六夜美琴】です」
「もしかして、女とデートとなのかな?」
振り返るとそこに、オレの親友の美琴がいた。
そもそも調査員が派遣され調査を行った時点でその星の生態系には多少なりとも影響が出ている。
オレとマヤがこの星を訪れなければ、ミーシャやアランたちの人跡は変わっていたはずだ。下手をすれば全滅という――あまり考えたくない結末の可能性すらあったはずだ。
それ以降の展開を考えても猫人族のニャンやミャン、システィーナの人生にも大きく影響してくる。
それだけではない。バージル卿の件もそうだ。オレがいなければバージル領は最悪干ばつに襲われ領民の生活に多大な影響を与えた可能性がある。
竜人族の抗争についてもそうだ。オレがいなければアンナは誘拐されていた可能性があった。それでなくとも黒竜族の襲撃という事態も考えられる。
オレという存在がこの星に訪れただけで多くの人生にかかわってしまっている。
バタフライ効果でいえばオレという存在で、この星の本来辿るべき運命が大きく方向転換したことになりはしないか。
魔法学園においてもオレの影響は大きかったはずだ。
調査という大義名分があるのであればそもそも調査員は傍観者に徹すべきなのだ。
「ずっと疑問だったんだ――オレの調査はそもそも調査じゃない。あれは解剖だ」
そう。解剖――もしくは細胞レベルの解体に近い。
相手の身体内部から解析を行いその力を分析する。
オレは調査員であり実験体だ。
そう、有機調査体「望月望」は実験体――モルモットなのだ。
「オレも調査対象だったんだな」
「ごめんなさい」
マヤが小さな声で謝った。
「マヤが謝る必要なんてない」
それがオレの正直な感想だった。
むしろ感謝しているぐらいだ。オレは「望月望」の魂であるが故に調査体に選ばれた。
偶然か必然かは分からない。しかし、そのことによって得られたものは大きい。
それを知らないまま――何も知らされないままにこの世界で生きて一体何の意味がある。
「マザーにとって魔法世界は未知の領域でした」
マヤは語りだす。
軌道上から観測しうる情報だけではこの未知なるエネルギーを解析することができなかった。
「だからオレを?」
マヤは頭を振った。
「お兄ちゃんは調査員としては二番目です」
そういえばそういった話を以前されたようん気がする。でも、確かそれは失敗に終わったんだあよな。
オレがその話をするマヤは「その通りです」と肯定してくれた。
「今から宇宙標準時間で五〇年前、マザーは一人の調査員をこの惑星に派遣しました」
「しかし、調査員は失敗し消息不明になったと?」
「いいえ、調査体は生きています」
「え?」
生きている? てっきり死んだものだと思っていたが……生きているのか。
「ええ、【彼女】は生きています」
彼女ということは女性か。
「彼女はこの世界においても秀でた能力を持っていました」
調査員として未知なる惑星に派遣されたいわばオレの先輩。
「彼女のこの世界での名前は……」
「もしかして……望?」
唐突に声をかけられた。
懐かしい響き。この世界では数日もたっていないだろうが、オレにとっては数カ月ぶりの声。
もう二度と聞くことのないと思っていた声。
「調査体の名は――与えられた調査という任務を放棄し、惑星へと逃げ込んだ最悪の人間【十六夜美琴】です」
「もしかして、女とデートとなのかな?」
振り返るとそこに、オレの親友の美琴がいた。
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