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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 001メザイヤ編「トウゾクダンガアラワレタ」
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ガタゴトと揺れる馬車。
幌の間から見えるのは牧歌的でのどかな風景。
道の周囲に人家はなく、遠くに村の影が見える程度だ。
道――それは村と村、都市と都市とをつなぐ国の血管だ。
その中を人が行き来し、物流が盛んになり人と国が栄える。
オレはこの星を調査するために、人類移民船「カルネアデス」から派遣された調査員だ。
元は普通の高校生――だった。
もちろん、死んで転生――などといった展開ではなく。オレは過去にスキャニングされた人格のコピーらしいということなのだ。もちろんオレには自分がコピーされた人格だという自覚なんてない。
オレはオレであり、我思う故に我あり。なのだ。
そう思えるのは仲間の存在が大きい。
妹のマヤに冒険者仲間のミーシャ、女聖騎士のシスティーナに竜族巫女のアンナ、魔法学園の魔法講師のアメリア、マヤの同級生のアープル。気がつけば多くの仲間に囲まれる生活を送っていた。
しかし今は違う。
周りにオレを知る者はいない。
そう、今のオレはさすらう剣士。町から町、国から国を風の向くまま気の向くままに旅する冒険者だ。
漆黒の衣に黒い剣。フードを被ってできるだけ目立たないようにしている。
オレは今回は依頼を受けてとある都市を目指していた。
その都市の名はメザイヤ。
この国で唯一の歓楽都市だ。
この都市には賭博カジノだけでなく闘技場や娼館など様々な娯楽施設があった。
貧乏人から一夜にして大富豪となる者。商人として財を成し、カジノで一夜にして貧乏人になる者。娼婦に通いつめ身を滅ぼす者。闘剣士を目指し二度と帰ってこなかった者。
あらゆる欲を満たし、欲にまみれた者たちの繁栄と滅亡をつかさどる都市。
オレはシスティーナの依頼を受けてメザイヤを目指していた。
決して、魔法授業が面倒臭くなったとか、魔法技術競技大会の準備で忙しすぎてイヤになったとか、たまにはちょっと旅してみたいとか――そんな低レベルな理由からではない。
断じてないったらない。
メザイヤは湖に囲まれた風光明媚な都市だと聞いている。
歓楽都市という点を除けば、観光都市としても有名な都市であるらしい。
素晴らしい。実に素晴らしい。
依頼の事さえなければ、長期滞在してしまいたいくらいだ。
馬車はもちろん乗り合いだ。なので色々な客が乗っている。
親子連れ、二人の女冒険者。どう見ても堅気には見えない怪しい風体の者。
「……平和だねえ」
思わずつぶやいた言葉。
おおっと、いけない。こんなフラグめいた言葉を吐くとたいてい事件が起こるものだ。
「お兄さんお兄さん」
ちょっと寄ってらっしゃいよ。と続くには幾分若い声。
顔を上げると十五歳くらいのフードを被った少女がオレの目の前に移動してくるところだった。確か馬車の後方に乗っていた女二人組の内の一人だ。
フードでよく見えないがなかなか可愛い顔立ちの少女だ。
おお、これはいわゆるナンパか?
ふっ、オレもフードで顔を隠しているのだが、溢れる魅力は隠し切れないようだな。
仕方ない。町までならお相手してやってもいいぜBABY!
モテる男はしょうがないぜと思っていると、少女は白い紙に包まれたものを取り出す。もしかして、これはクスリか。彼女はクスリの売人なのか。
「お兄さん、死んだ魚みたいな目をしているけど大丈夫?」
なんだかひどい言われようだ。
君こそ、目の病院に行きたまえ。
「もしかして馬車に酔ったんじゃないかと思って」
彼女は革製の水袋と一緒にオレに薬を手渡そうとする。
なんと、心優しい少女だろうか。
オレを見る目はないが、その心優しさだけは受け取っておこう。
「いや、薬は必要ない。酔っているわけではないから」
オレの言葉に少女は怪訝そうな顔になる。
「……でも、なんか目が死んでるよ?」
ほっとけ!もとからこんな顔だ。
これ以上言うとみんなの目の前で引ん剝くぞ。
おおッと、いかんいかん。
ここは落ち着かねば。
みんなからは【鬼畜紳士のノゾミ】と呼ばれているオレ様だ。こんなことでいちいち目の前の少女を引ん剥いていればいずれ捕まる。
「と、とにかくオレは大丈夫だから……心配してくれてありがとう」
ひきつりそうになる顔を必死に抑えながらオレは精一杯の笑顔でお礼を言った。
「もう、本当に大丈夫?お兄さん生気がないんだからあんまり無理しちゃだめだよ」
心配されているのかけなされているのかいまいちよく分からない言い方だった。
しかし、馬車の中でやたらと元気なのは子供くらいのものだろう。大抵の冒険者は他の人と関わらない。
下手に手を出すとつつかなくてもいい藪をつついてしまう結果にもなりかねないからだ。
――まあ、これも旅のだいご味かな。
そう思っていると、突然にして馬車が止まった。
何事かと前を見ると、通りに大きな大木が横向きに倒れている。
いや、これは倒されているというべきか。
なぜなら、この大木をわざわざ倒して道端においてくれた人物がいるからだ。
その人物は――
「おい、殺されたくなかったら金目の物を出しな!」
馬車を囲む数人の剣を持った男たち。
定番の盗賊団の登場です。
幌の間から見えるのは牧歌的でのどかな風景。
道の周囲に人家はなく、遠くに村の影が見える程度だ。
道――それは村と村、都市と都市とをつなぐ国の血管だ。
その中を人が行き来し、物流が盛んになり人と国が栄える。
オレはこの星を調査するために、人類移民船「カルネアデス」から派遣された調査員だ。
元は普通の高校生――だった。
もちろん、死んで転生――などといった展開ではなく。オレは過去にスキャニングされた人格のコピーらしいということなのだ。もちろんオレには自分がコピーされた人格だという自覚なんてない。
オレはオレであり、我思う故に我あり。なのだ。
そう思えるのは仲間の存在が大きい。
妹のマヤに冒険者仲間のミーシャ、女聖騎士のシスティーナに竜族巫女のアンナ、魔法学園の魔法講師のアメリア、マヤの同級生のアープル。気がつけば多くの仲間に囲まれる生活を送っていた。
しかし今は違う。
周りにオレを知る者はいない。
そう、今のオレはさすらう剣士。町から町、国から国を風の向くまま気の向くままに旅する冒険者だ。
漆黒の衣に黒い剣。フードを被ってできるだけ目立たないようにしている。
オレは今回は依頼を受けてとある都市を目指していた。
その都市の名はメザイヤ。
この国で唯一の歓楽都市だ。
この都市には賭博カジノだけでなく闘技場や娼館など様々な娯楽施設があった。
貧乏人から一夜にして大富豪となる者。商人として財を成し、カジノで一夜にして貧乏人になる者。娼婦に通いつめ身を滅ぼす者。闘剣士を目指し二度と帰ってこなかった者。
あらゆる欲を満たし、欲にまみれた者たちの繁栄と滅亡をつかさどる都市。
オレはシスティーナの依頼を受けてメザイヤを目指していた。
決して、魔法授業が面倒臭くなったとか、魔法技術競技大会の準備で忙しすぎてイヤになったとか、たまにはちょっと旅してみたいとか――そんな低レベルな理由からではない。
断じてないったらない。
メザイヤは湖に囲まれた風光明媚な都市だと聞いている。
歓楽都市という点を除けば、観光都市としても有名な都市であるらしい。
素晴らしい。実に素晴らしい。
依頼の事さえなければ、長期滞在してしまいたいくらいだ。
馬車はもちろん乗り合いだ。なので色々な客が乗っている。
親子連れ、二人の女冒険者。どう見ても堅気には見えない怪しい風体の者。
「……平和だねえ」
思わずつぶやいた言葉。
おおっと、いけない。こんなフラグめいた言葉を吐くとたいてい事件が起こるものだ。
「お兄さんお兄さん」
ちょっと寄ってらっしゃいよ。と続くには幾分若い声。
顔を上げると十五歳くらいのフードを被った少女がオレの目の前に移動してくるところだった。確か馬車の後方に乗っていた女二人組の内の一人だ。
フードでよく見えないがなかなか可愛い顔立ちの少女だ。
おお、これはいわゆるナンパか?
ふっ、オレもフードで顔を隠しているのだが、溢れる魅力は隠し切れないようだな。
仕方ない。町までならお相手してやってもいいぜBABY!
モテる男はしょうがないぜと思っていると、少女は白い紙に包まれたものを取り出す。もしかして、これはクスリか。彼女はクスリの売人なのか。
「お兄さん、死んだ魚みたいな目をしているけど大丈夫?」
なんだかひどい言われようだ。
君こそ、目の病院に行きたまえ。
「もしかして馬車に酔ったんじゃないかと思って」
彼女は革製の水袋と一緒にオレに薬を手渡そうとする。
なんと、心優しい少女だろうか。
オレを見る目はないが、その心優しさだけは受け取っておこう。
「いや、薬は必要ない。酔っているわけではないから」
オレの言葉に少女は怪訝そうな顔になる。
「……でも、なんか目が死んでるよ?」
ほっとけ!もとからこんな顔だ。
これ以上言うとみんなの目の前で引ん剝くぞ。
おおッと、いかんいかん。
ここは落ち着かねば。
みんなからは【鬼畜紳士のノゾミ】と呼ばれているオレ様だ。こんなことでいちいち目の前の少女を引ん剥いていればいずれ捕まる。
「と、とにかくオレは大丈夫だから……心配してくれてありがとう」
ひきつりそうになる顔を必死に抑えながらオレは精一杯の笑顔でお礼を言った。
「もう、本当に大丈夫?お兄さん生気がないんだからあんまり無理しちゃだめだよ」
心配されているのかけなされているのかいまいちよく分からない言い方だった。
しかし、馬車の中でやたらと元気なのは子供くらいのものだろう。大抵の冒険者は他の人と関わらない。
下手に手を出すとつつかなくてもいい藪をつついてしまう結果にもなりかねないからだ。
――まあ、これも旅のだいご味かな。
そう思っていると、突然にして馬車が止まった。
何事かと前を見ると、通りに大きな大木が横向きに倒れている。
いや、これは倒されているというべきか。
なぜなら、この大木をわざわざ倒して道端においてくれた人物がいるからだ。
その人物は――
「おい、殺されたくなかったら金目の物を出しな!」
馬車を囲む数人の剣を持った男たち。
定番の盗賊団の登場です。
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