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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 019メザイヤ編「調査開始 ④」
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「ノゾミお兄ちゃん。本当に私たちも行っていいの?」
「ああ、二人のことを騎士団の人たちにも紹介しておかないといけないからな」
ダンベル副団長たちの話が終わってすぐにオレは起きだしたノルンとリベラに事情を説明した。
騎士団での話とは恐らくガルハン卿のことで間違いないだろう。
危険だからやめろと釘を刺されるか、もしくはすでに騎士団そのものがガルハン卿の息がかかっていてオレをどうにかしようと目論んでいる――この可能性は極めて低いだろう。アマンダ団長がそんなことを承諾するとは到底思えなかったからだ。ダンベル副団長、ミネルバ補佐官と少しの間しか接していないが、その人となりは理解できたつもりだ。それで騙されたのなら、その時は仕方ない。全力で反抗させてもらうだけだ。
◆ ◆ ◆ ◆
騎士団の詰め所に着くとすぐにオレたちは執務室に案内される。
そこには既にアマンダ団長とダンベル副団長、ミネルバ補佐官の三人が待ち構えていた。
「よく来たな。まあ座りたまえ」
アマンダ団長に促されるままソファに座る。オレの両脇にノルンとリベラが座った。
「二人は……そうか、先日盗賊の話をしてくれた冒険者だな」
アマンダ団長は二人のことを覚えていたようだ。
「ところで、わざわざ呼び出して何の話ですか?」
まどろっこしい話は抜きにして欲しかった。
オレの態度にアマンダ団長は肩をすくめ、ダンベル副団長は何も言わず平然とし、ミネルバ補佐官は烈火のごとく怒りをあらわにする。
「貴様、団長に対してなんだその態度は!」
もーいやだこのお姉様。
「ミネルバ補佐官」
ダンベル副団長がミネルバ補佐官の肩をつかむ。ミネルバ補佐官は何か言いたげだったがそれでも何とか落ち着いたようだった。
「ウチの補佐官が失礼した」
「いいえ、こちらも少し言い方が悪かったですし」
オレに正しい受け答えなど期待しないでもらいたい。オレはただの魔法学園の底辺学生なんですけど、それ以前に駆け出しの冒険者なんですけど、もっとそれ以上にただの高校生なんですけど。
「話がそれてしまったな。ところで、君のことを少しだけ調べさせてもらったよ」
ミネルバ補佐官がアマンダ団長に羊皮紙を手渡す。恐らくはオレに関することが書かれているのだろう。
――そんなことだろうと思った。
しかし、オレは何も心配してなどいない。オレにはやましいことなど何もないのだ。
アマンダ団長は手渡された報告書を一瞥し一瞬目を見開く。
「……君は今はセービル魔法学園の生徒だというじゃないか、ランクは……ブロンズ!? 君ほどの実力がありながら?」
信じられないとアマンダ団長とダンベル副団長。ミネルバ補佐官は前もって読んでいたのだろうか、その鉄面皮からは何を考えているのか想像でいない。
「バージル卿の養子となっているが……魔人族のあの男が養子を取るなど聞いたことがないぞ……」
バージル卿のことはこの街でも有名なのだろうか。
「私も一度だけお会いしたことがあったが、なんというか……強さにおいては比類なき猛者といった感じだったな」
アマンダ団長のその例えは大いに正しい。いやだってあのおっさん本気で殺しにくるんだもん。魔獣人化した時なんて何度死を覚悟したか。
「ノゾミ殿の強さの秘密が少しだけ分かった気がしますな」
ダンベル副団長がうんうんと勝手に納得して頷いている。アマンダ団長も同じ意見だったらしく納得顔だ。
「バージル領では井戸を農地改革に乗り出しているとか、今巷で有名な下着の考案者でもあると聞いているぞ」
調査内容を読みながらアマンダ団長の瞳が険しくなった。
「ノ、ンゾミ殿……このシスティーナ・マイスター嬢との婚姻との噂……とあるが?」
ずいと身を乗り出して問いかけてくる。
ちょっと顔を前に出せばキスできるくらいの距離にまでアマンダ団長の整った顔が迫った。
「シ、システィーナ……嬢とお知り合いで?」
「あ……いや、知り合いというか、彼女は妹弟子にあたるのだ」
アマンダ団長とシスティーナは同じ師の元で剣術を学んだ仲だという。
「そうか……あのシスティーナが見染めた男というのはなかなか興味をそそるものがあるな」
何故だろう。アマンダ団長の瞳が獲物を狩る狩人のそれのような錯覚を覚えた。
――えっ、オレってもしかして狙われている?
できるだけアマンダ団長のそばには寄らないようにしようとオレは心に誓うのだった。
「ああ、二人のことを騎士団の人たちにも紹介しておかないといけないからな」
ダンベル副団長たちの話が終わってすぐにオレは起きだしたノルンとリベラに事情を説明した。
騎士団での話とは恐らくガルハン卿のことで間違いないだろう。
危険だからやめろと釘を刺されるか、もしくはすでに騎士団そのものがガルハン卿の息がかかっていてオレをどうにかしようと目論んでいる――この可能性は極めて低いだろう。アマンダ団長がそんなことを承諾するとは到底思えなかったからだ。ダンベル副団長、ミネルバ補佐官と少しの間しか接していないが、その人となりは理解できたつもりだ。それで騙されたのなら、その時は仕方ない。全力で反抗させてもらうだけだ。
◆ ◆ ◆ ◆
騎士団の詰め所に着くとすぐにオレたちは執務室に案内される。
そこには既にアマンダ団長とダンベル副団長、ミネルバ補佐官の三人が待ち構えていた。
「よく来たな。まあ座りたまえ」
アマンダ団長に促されるままソファに座る。オレの両脇にノルンとリベラが座った。
「二人は……そうか、先日盗賊の話をしてくれた冒険者だな」
アマンダ団長は二人のことを覚えていたようだ。
「ところで、わざわざ呼び出して何の話ですか?」
まどろっこしい話は抜きにして欲しかった。
オレの態度にアマンダ団長は肩をすくめ、ダンベル副団長は何も言わず平然とし、ミネルバ補佐官は烈火のごとく怒りをあらわにする。
「貴様、団長に対してなんだその態度は!」
もーいやだこのお姉様。
「ミネルバ補佐官」
ダンベル副団長がミネルバ補佐官の肩をつかむ。ミネルバ補佐官は何か言いたげだったがそれでも何とか落ち着いたようだった。
「ウチの補佐官が失礼した」
「いいえ、こちらも少し言い方が悪かったですし」
オレに正しい受け答えなど期待しないでもらいたい。オレはただの魔法学園の底辺学生なんですけど、それ以前に駆け出しの冒険者なんですけど、もっとそれ以上にただの高校生なんですけど。
「話がそれてしまったな。ところで、君のことを少しだけ調べさせてもらったよ」
ミネルバ補佐官がアマンダ団長に羊皮紙を手渡す。恐らくはオレに関することが書かれているのだろう。
――そんなことだろうと思った。
しかし、オレは何も心配してなどいない。オレにはやましいことなど何もないのだ。
アマンダ団長は手渡された報告書を一瞥し一瞬目を見開く。
「……君は今はセービル魔法学園の生徒だというじゃないか、ランクは……ブロンズ!? 君ほどの実力がありながら?」
信じられないとアマンダ団長とダンベル副団長。ミネルバ補佐官は前もって読んでいたのだろうか、その鉄面皮からは何を考えているのか想像でいない。
「バージル卿の養子となっているが……魔人族のあの男が養子を取るなど聞いたことがないぞ……」
バージル卿のことはこの街でも有名なのだろうか。
「私も一度だけお会いしたことがあったが、なんというか……強さにおいては比類なき猛者といった感じだったな」
アマンダ団長のその例えは大いに正しい。いやだってあのおっさん本気で殺しにくるんだもん。魔獣人化した時なんて何度死を覚悟したか。
「ノゾミ殿の強さの秘密が少しだけ分かった気がしますな」
ダンベル副団長がうんうんと勝手に納得して頷いている。アマンダ団長も同じ意見だったらしく納得顔だ。
「バージル領では井戸を農地改革に乗り出しているとか、今巷で有名な下着の考案者でもあると聞いているぞ」
調査内容を読みながらアマンダ団長の瞳が険しくなった。
「ノ、ンゾミ殿……このシスティーナ・マイスター嬢との婚姻との噂……とあるが?」
ずいと身を乗り出して問いかけてくる。
ちょっと顔を前に出せばキスできるくらいの距離にまでアマンダ団長の整った顔が迫った。
「シ、システィーナ……嬢とお知り合いで?」
「あ……いや、知り合いというか、彼女は妹弟子にあたるのだ」
アマンダ団長とシスティーナは同じ師の元で剣術を学んだ仲だという。
「そうか……あのシスティーナが見染めた男というのはなかなか興味をそそるものがあるな」
何故だろう。アマンダ団長の瞳が獲物を狩る狩人のそれのような錯覚を覚えた。
――えっ、オレってもしかして狙われている?
できるだけアマンダ団長のそばには寄らないようにしようとオレは心に誓うのだった。
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