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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 022メザイヤ編「調査開始 ⑦」
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「まったく、お前のせいでさんざんだ」
ミネルバ補佐官が悪態をつきながらオレの後ろを歩く。
彼女は騎士団の詰め所をでてからずっとこうだった。
もういい加減諦めろよ。と言ってやりたいがそんなことをすればさらに悪化しそうなのでやめることにする。
夕刻も近いということで通りに人通りは多かった。調査は明日から本格的に行うことになり、オレたち三人は――今は四人になってしまったが――宿に向かうことにした。
宿で夕食をとっても良かったのだが、今回は顔合わせを含めて酒屋に行くことにしたのだ。
「もちろん、お前のおごりなのだろうな?」
なんでオレを嫌う女にわざわざ奢らにゃならんのだ!と叫びたくなる気持ちを必死になって押さえ込む。
「ハイ、ヨロコンデ」
くそう今に見ていろよ。ベッドの上の魔術師と呼ばれたこのオレのテクニック(※自称)で今度攻め落としてやる。
「今……何か失礼なことを考えていなかったか?」
「イイエ、ソンナコトナイヨ」
――こいつ、オレの心が読めるのか。
ミネルバ補佐官恐るべし。
酒場に入ると何人かの男たちがすでに酒盛りをしていた。オレたちの姿を見るなり談笑を止め静かになる。舌打ちすら聞こえてきそうな程に空気が重い。
「おい、見てみろ……」
「あいつらが昨日……」
「かかわるとろくなことにならねえ……」
小声で囁かれるオレたちへの好奇心、奇異の目。
敵意こそないもののかかわるとろくなことがないとその目が訴えていた。
「あの……お客様……」
酒場の主らしき男が心配そうな顔で近づいてくる。
余計な騒ぎを起こしてくれるなと顔に書いてあった。
「本日は予約がいっぱいでして……」
下手な言い訳だった。どう見ても席には余裕があり夕方から混むことはあり得ない。これはオレたちに出て行けと暗に言っているのだ。
こうも早くにオレたちのことが広まってしまっているのか。
アマンダ団長が騎士の詰め所に泊まれといった意味がようやく理解できた。これではガルハン卿の手の者がどうこうというよりも街の人間に襲われる危険性の方が高い。
これは荒波を立てないように撤退するのが吉だろう。
「心配するな――すぐに出ていく」
こんな気分になるのは久しぶりだった。何となく学校や職場でのいじめの縮図を思い出していた。
強い者に従う。弱い者は強い者を恐れ、報復を恐れ何も言わず目立たぬようにただ嵐が過ぎ去るのを待っている――集団心理。
強者に媚を売らず、己の信念を曲げるな。
しかし、それは強者のセリフであり、弱者を守る言葉ではない。己の立場だけを主張し他の意見を取り入れない者の言葉だ。
ここは空気を読んで、荒波立てずに立ち去るのがベストだろう。
そう思っていたのだが――
ガダ――ン!
激しい音と共にテーブルが四方に弾け飛んだ。
「はん、この街の連中がこんなに腰抜けだったとは!」
「そうです、見損ないました!」
「この街の腰抜けっぷりを世界に歌として広める必要がありそうね!」
怒り心頭とばかりにミネルバ補佐官、ノルン、リベラがそれぞれにテーブルを蹴散らしたところだった。
――あれ、ここはクールの立ち去るつもりだったのに……
「なんだとぉ!!」
男たちがいきり立った。
「腰抜けを腰抜けと言って何が悪い!」
「女! 言わせておけば!」
男たちが剣を抜く。
ミネルバ補佐官は余裕の笑みを浮かべる。
――まあ、負けることはないだろう。
ミネルバ 騎士 LV44
それに比べ男たちのLVは20前後。普通に考えれば負けることはない。
「行けノゾミ殿!」
「えっ! オレ!?」
ミネルバ補佐官は「薙ぎ払え!」みたいな感じでオレをけしかけた。
「出たな幽霊男!」
「女の子とイチャイチャしやがって……お前だけは……お前だけは許せねええええ!」
なんか変な嫉妬も含まれているようだったが、仕方あるまい。
ここは本気でお相手いたしましょう。
ミネルバ補佐官が悪態をつきながらオレの後ろを歩く。
彼女は騎士団の詰め所をでてからずっとこうだった。
もういい加減諦めろよ。と言ってやりたいがそんなことをすればさらに悪化しそうなのでやめることにする。
夕刻も近いということで通りに人通りは多かった。調査は明日から本格的に行うことになり、オレたち三人は――今は四人になってしまったが――宿に向かうことにした。
宿で夕食をとっても良かったのだが、今回は顔合わせを含めて酒屋に行くことにしたのだ。
「もちろん、お前のおごりなのだろうな?」
なんでオレを嫌う女にわざわざ奢らにゃならんのだ!と叫びたくなる気持ちを必死になって押さえ込む。
「ハイ、ヨロコンデ」
くそう今に見ていろよ。ベッドの上の魔術師と呼ばれたこのオレのテクニック(※自称)で今度攻め落としてやる。
「今……何か失礼なことを考えていなかったか?」
「イイエ、ソンナコトナイヨ」
――こいつ、オレの心が読めるのか。
ミネルバ補佐官恐るべし。
酒場に入ると何人かの男たちがすでに酒盛りをしていた。オレたちの姿を見るなり談笑を止め静かになる。舌打ちすら聞こえてきそうな程に空気が重い。
「おい、見てみろ……」
「あいつらが昨日……」
「かかわるとろくなことにならねえ……」
小声で囁かれるオレたちへの好奇心、奇異の目。
敵意こそないもののかかわるとろくなことがないとその目が訴えていた。
「あの……お客様……」
酒場の主らしき男が心配そうな顔で近づいてくる。
余計な騒ぎを起こしてくれるなと顔に書いてあった。
「本日は予約がいっぱいでして……」
下手な言い訳だった。どう見ても席には余裕があり夕方から混むことはあり得ない。これはオレたちに出て行けと暗に言っているのだ。
こうも早くにオレたちのことが広まってしまっているのか。
アマンダ団長が騎士の詰め所に泊まれといった意味がようやく理解できた。これではガルハン卿の手の者がどうこうというよりも街の人間に襲われる危険性の方が高い。
これは荒波を立てないように撤退するのが吉だろう。
「心配するな――すぐに出ていく」
こんな気分になるのは久しぶりだった。何となく学校や職場でのいじめの縮図を思い出していた。
強い者に従う。弱い者は強い者を恐れ、報復を恐れ何も言わず目立たぬようにただ嵐が過ぎ去るのを待っている――集団心理。
強者に媚を売らず、己の信念を曲げるな。
しかし、それは強者のセリフであり、弱者を守る言葉ではない。己の立場だけを主張し他の意見を取り入れない者の言葉だ。
ここは空気を読んで、荒波立てずに立ち去るのがベストだろう。
そう思っていたのだが――
ガダ――ン!
激しい音と共にテーブルが四方に弾け飛んだ。
「はん、この街の連中がこんなに腰抜けだったとは!」
「そうです、見損ないました!」
「この街の腰抜けっぷりを世界に歌として広める必要がありそうね!」
怒り心頭とばかりにミネルバ補佐官、ノルン、リベラがそれぞれにテーブルを蹴散らしたところだった。
――あれ、ここはクールの立ち去るつもりだったのに……
「なんだとぉ!!」
男たちがいきり立った。
「腰抜けを腰抜けと言って何が悪い!」
「女! 言わせておけば!」
男たちが剣を抜く。
ミネルバ補佐官は余裕の笑みを浮かべる。
――まあ、負けることはないだろう。
ミネルバ 騎士 LV44
それに比べ男たちのLVは20前後。普通に考えれば負けることはない。
「行けノゾミ殿!」
「えっ! オレ!?」
ミネルバ補佐官は「薙ぎ払え!」みたいな感じでオレをけしかけた。
「出たな幽霊男!」
「女の子とイチャイチャしやがって……お前だけは……お前だけは許せねええええ!」
なんか変な嫉妬も含まれているようだったが、仕方あるまい。
ここは本気でお相手いたしましょう。
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