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第四章「カルネアデス編」
第94.5話 064メザイヤ編「騎士団襲撃 ②」
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(報告。騎士団詰所まで残り五〇〇メートル)
マザーさんの報告がやけに遠くから聞こえてくる。
オレは正面を向いたまま何度目かの爆裂魔法を放った。
空中で起こる爆風。それに吹き飛ばされながらもオレは騎士団詰所に向かう。
騎士団詰所は所々から火の手が上がっていた。
――くそっ!不甲斐ない!
もっと警戒していれば、もっと相手の動きに注意を払っていれば――
後悔があとからあとから湧き出てくる。
悔やんでも仕方ない。
後悔するよりも前進するべきだ。
オレは騎士団詰所の中庭に騎士団と襲撃者の姿を確認することができた。
ふつふつとした怒りが沸き起こる。
「オレの……」
体内に魔力が満ちるのが分かった。
怒りマックス!
「オレの仲間に何してくれとんじゃぁぁぁ!!!」
爆炎と共にオレは中庭に着地した。
爆風に巻き込まれて黒装束の男たちが吹き飛んだがオレは意に会することなく進む。
「ノゾミさん……子供たちは食堂にいます」
騎士たちはオレの姿を見、喜びの声を上げた。
何人か倒れ伏して動かない者もいる。傷は
目的地は食堂だ。
向かう途中黒装束の襲撃があったが拳で黙らせた。ゴキッという骨のひしゃげる音が聞こえたが気にすることなく進んだ。
やばい。怒りで我を忘れそうだ。
手加減ができない。
怒りが強すぎで力の制御ができない。
食堂の扉は固く閉ざされていた。内側にバリケードでもあるのだろう。中に人がいる可能性があるので扉を引く。蝶番ごと扉が外れた。
無頓着に放り投げる。
後ろから迫っていた黒装束と一緒に扉は向かい側の壁に激突した。
食堂内は煙が充満していた。
風魔法【突風】
風が室内に吹き荒れ煙を吹き飛ばす。
食堂内、台所付近に子供たちが倒れている。その姿を見た瞬間に心臓が凍り付く思いがした。
(報告。生体反応をサーチ。子供たちは眠っているようです)
マザーさんの報告に安堵のため息を一つ。
(報告。個体名「ノルン」の生体反応が確認できません)
ドクン!
胸の鼓動が大きく脈打つ。心の臓などないはずなのに鼓動が大きく耳を打つ。これは錯覚なのか。
オレは台所を探る。
子供たちの姿、リベラの姿を確認することができた。
ノルンの姿は――ない。
台所の裏口があいている。
裏口を出たすぐの所に髪飾りが落ちていた。それはオレがノルンとリベラに渡したものだった。リベラには髪飾りがついている。つまりはここに落ちているのはノルンの物ということになる。
(推測。個体名「ノルン」は何者かによって拉致されたものと推測されます)
ブワッ!
心の奥からの怒りに再び火が点いた。
オレは外に向かって一歩踏み出す。
(確認。周囲をサーチしました生体反応の微弱なものが確認されます)
それがどうした。ノルンの救出が最優先だ!
今からでもメザイヤの街全域に索敵を掛ければ追跡で知る。それができないのであればガルハン卿の屋敷に直接乗り込んで居場所を吐かせる。
それ以外に方法はない。
もう、周囲のことなど気にするのも面倒になった。
穏便に?
無理だオレはこれ以上自分を押さえることができない。
妨害があるなら排除するまで、邪魔する者がいるならその時は――
どす黒い感情が胸中に渦巻く。
渦はだんだんと大きくなりながらオレを包み込む。
もう、目的さえ達成できればそれでいい。
何事にも犠牲はつきものだ。
そのためならば――
(推測。調査体名「ノゾミ」の行動は、個体名「ノルン」の期待値に沿わないものと推測されます)
マザーさんの声が響いた。
『ノゾミお兄ちゃんなら、困った人がいたら絶対助けちゃうよね』
ノルンの無邪気な声が聞こえた気がした。
違う、オレはなんとしてもノルンを助けたいんだ。
『ノゾミ君、まずは深呼吸ですよ』
アメリアの優しい声が脳裏に響く。
『ノゾミ様であれば、これくらいの事造作もありません』
アンナの誇らしげな声。
オレは改めて周りを見渡した。
未だ燃え続ける騎士団詰所の建物、周囲にはうめき声をあげている騎士団の者たち、目覚めた子供たちが鳴き声を上げている。
今まで耳に入ってこなかった音が――否、意図的に遮断していた音が急に飛び込んできた感じだ。
――オレは何をしようとしていたんだ?
自分の行動を省みて恐ろしくなった。
ははは、最低だなオレは……
一人の女の子を救うことは大事だ。だが、そのために他の多くの者たちの命を犠牲にしていいという話ではない。
「マザーさん。生体反応の弱い者をサーチ、最優先で回復魔法を使う。魔法の必要ない者には適切な処置をオレに指示してくれ」
(了解。生命反応の弱い者を最優先に詳細を表示します)
その時のマザーさんの声は心なしか安堵しているように感じられた。
マザーさんの報告がやけに遠くから聞こえてくる。
オレは正面を向いたまま何度目かの爆裂魔法を放った。
空中で起こる爆風。それに吹き飛ばされながらもオレは騎士団詰所に向かう。
騎士団詰所は所々から火の手が上がっていた。
――くそっ!不甲斐ない!
もっと警戒していれば、もっと相手の動きに注意を払っていれば――
後悔があとからあとから湧き出てくる。
悔やんでも仕方ない。
後悔するよりも前進するべきだ。
オレは騎士団詰所の中庭に騎士団と襲撃者の姿を確認することができた。
ふつふつとした怒りが沸き起こる。
「オレの……」
体内に魔力が満ちるのが分かった。
怒りマックス!
「オレの仲間に何してくれとんじゃぁぁぁ!!!」
爆炎と共にオレは中庭に着地した。
爆風に巻き込まれて黒装束の男たちが吹き飛んだがオレは意に会することなく進む。
「ノゾミさん……子供たちは食堂にいます」
騎士たちはオレの姿を見、喜びの声を上げた。
何人か倒れ伏して動かない者もいる。傷は
目的地は食堂だ。
向かう途中黒装束の襲撃があったが拳で黙らせた。ゴキッという骨のひしゃげる音が聞こえたが気にすることなく進んだ。
やばい。怒りで我を忘れそうだ。
手加減ができない。
怒りが強すぎで力の制御ができない。
食堂の扉は固く閉ざされていた。内側にバリケードでもあるのだろう。中に人がいる可能性があるので扉を引く。蝶番ごと扉が外れた。
無頓着に放り投げる。
後ろから迫っていた黒装束と一緒に扉は向かい側の壁に激突した。
食堂内は煙が充満していた。
風魔法【突風】
風が室内に吹き荒れ煙を吹き飛ばす。
食堂内、台所付近に子供たちが倒れている。その姿を見た瞬間に心臓が凍り付く思いがした。
(報告。生体反応をサーチ。子供たちは眠っているようです)
マザーさんの報告に安堵のため息を一つ。
(報告。個体名「ノルン」の生体反応が確認できません)
ドクン!
胸の鼓動が大きく脈打つ。心の臓などないはずなのに鼓動が大きく耳を打つ。これは錯覚なのか。
オレは台所を探る。
子供たちの姿、リベラの姿を確認することができた。
ノルンの姿は――ない。
台所の裏口があいている。
裏口を出たすぐの所に髪飾りが落ちていた。それはオレがノルンとリベラに渡したものだった。リベラには髪飾りがついている。つまりはここに落ちているのはノルンの物ということになる。
(推測。個体名「ノルン」は何者かによって拉致されたものと推測されます)
ブワッ!
心の奥からの怒りに再び火が点いた。
オレは外に向かって一歩踏み出す。
(確認。周囲をサーチしました生体反応の微弱なものが確認されます)
それがどうした。ノルンの救出が最優先だ!
今からでもメザイヤの街全域に索敵を掛ければ追跡で知る。それができないのであればガルハン卿の屋敷に直接乗り込んで居場所を吐かせる。
それ以外に方法はない。
もう、周囲のことなど気にするのも面倒になった。
穏便に?
無理だオレはこれ以上自分を押さえることができない。
妨害があるなら排除するまで、邪魔する者がいるならその時は――
どす黒い感情が胸中に渦巻く。
渦はだんだんと大きくなりながらオレを包み込む。
もう、目的さえ達成できればそれでいい。
何事にも犠牲はつきものだ。
そのためならば――
(推測。調査体名「ノゾミ」の行動は、個体名「ノルン」の期待値に沿わないものと推測されます)
マザーさんの声が響いた。
『ノゾミお兄ちゃんなら、困った人がいたら絶対助けちゃうよね』
ノルンの無邪気な声が聞こえた気がした。
違う、オレはなんとしてもノルンを助けたいんだ。
『ノゾミ君、まずは深呼吸ですよ』
アメリアの優しい声が脳裏に響く。
『ノゾミ様であれば、これくらいの事造作もありません』
アンナの誇らしげな声。
オレは改めて周りを見渡した。
未だ燃え続ける騎士団詰所の建物、周囲にはうめき声をあげている騎士団の者たち、目覚めた子供たちが鳴き声を上げている。
今まで耳に入ってこなかった音が――否、意図的に遮断していた音が急に飛び込んできた感じだ。
――オレは何をしようとしていたんだ?
自分の行動を省みて恐ろしくなった。
ははは、最低だなオレは……
一人の女の子を救うことは大事だ。だが、そのために他の多くの者たちの命を犠牲にしていいという話ではない。
「マザーさん。生体反応の弱い者をサーチ、最優先で回復魔法を使う。魔法の必要ない者には適切な処置をオレに指示してくれ」
(了解。生命反応の弱い者を最優先に詳細を表示します)
その時のマザーさんの声は心なしか安堵しているように感じられた。
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