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銀狐の章

第037話「目覚め」

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 目覚ましの音でオレは目を覚ます。
 その時に感じた――違和感。
 
 ――身体が動かない!?
 
 金縛りだ。オレは力を振り絞って目を開ける。
 
「おはようモー君」

「お主様、おはようございますじゃ」

 金縛り 正体見たり 痴女二人

「ぬおおおお!何やっとんじゃ!」
 
 オレは下着姿の二人に抱きつかれたまま朝を迎えていたのだった。

「昨晩は……凄かったのじゃ」

 シェンが俯きながらのたまう。

「モー君激しすぎ♡」

 あーちゃん先輩も「お腹いっぱい」みたいな顔をしている。
 そりゃそうだ。あれから二時間オレは二人に【食の大切さ】についてコンコンと説教したのだから。

「早く服を着ろ!」

「モー君、せっかくだから続きをしよ♡」

「ははう。昨晩だけではまだ、食の大切さが分からなかったみたいですね先輩」

 オレの睨みにあーちゃん先輩は「ご、ごめんさい」とすごすごとベッドから這い出た。
 
「わ、我様は大切じゃと思うておるぞ」

 シェンはオレを見上げながら言う。

「そうか、ところでシェン……」

「ん?なんじゃ、もしかしてこの姿に欲情したのか?」

 シェンは下着姿だった。スポーツブラに白いパンツ。
 昨日買った物を早速着てみたらしい。
 昨晩はそれどころではなかったが……
 しかし、それよりも気になることがあった。
 
「この部屋のドアには鍵をかけていたはずなんだが……」

「……コン?」

 シェンが青ざめる。
 スススッとオレから離れていこうとする。
 やっぱりこいつが原因か。 

「え、ええっと……」

 シェンがオレから視線を外す。

 ガシッ!

 オレはシェンの頭を掴んだ。

「コ、コン?」

「いったい、誰が・どうやって・何のためにドアの鍵を開けたのかな?」

 ギギギギ!顔を背けそうになるシェンの顔をこちらに向かせる。

「そ、それはじゃな……小娘にそそのかされて……夜は人肌が恋しかろうと……我様の奇跡の力で鍵を開けて……じゃな……」

 空手チョップ!

「ふぉっくす!」
 
「こんなところで奇跡を起こすんじゃねぇ!」
 
 こいつ、今まで見せたことのない【力】をこんなくだらない事に使ったのか。
 
 ――アホだ……本物のアホがいる……
 
 使いどころは他にあるだろ!
 奇跡の無駄遣いをするなよ!
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