メスガキ神狐に憑かれたい!? いきなり現れたケモ耳 美少女はちょっと♡な福の神?※イラストあり〼

須賀和弥

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銀狐の章

閑話休題「鎧武者の娘」

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 目を覚ます。
 なんだか頭がはっきりしない。
 ひどく昔のことを思い出したような気がした。
 思い出したはずなのに、思い出したという記憶はあるのに――それが思い出せない。記憶が混濁している。
 胸の中をよぎる「懐かしい」という感覚。
 おぼろげながら心に残る少女の面影だけが、その思い出の拠り所だ。
 男は身を起こし周囲を見渡す。
 周囲は霧に包まれていた。

 一つ積んでは父のため
 二つ積んでは母のため

 どこからか歌が聞こえる。
 男がいるのは河原だった。岸では子供たちが、懸命に石を積んでいる。
 ゆっくりと身を起こす。
 カシャリと鎧のこすれる音が静かに響いた。
 
 ――ここはどこだ?

 何故ここにいあるのか煩雑として思い出せない。
 大切なことを忘れている。
 その焦りが身を焦がす。

 ――なぜオレは、小童をもっと大切にしてやらなかったのだろう。

 小童――自分を慕う妖の女童に彼はずいぶんと酷いことをしてしまった。
 彼女の親を殺し、同族である妖を倒す手伝いをさせていた。
 
 我の怨を忘れるな! 
 我の恩を忘れるな!

 最期に聞いた言葉が胸を打つ。
 胸の痛みに顔をしかめつつ男は河原にいる子供たちに向かった。

 一つ積んでは父のため
 二つ積んでは母のため

 駆けたはずの足が途中で止まる。
 ぬるりとした風がほほをなでる。

 そこに行ってはいけない。

 脳裏に言葉が響く。
 その言葉とは裏腹に足は子供たちへと向かう。

 そこで手を出してはいけない。
 
 言葉は静かに頭に響いた。
 気がつけば男は子供たちの目の前にいた。

「おい、お前ら……」

 かすれ消え入りそうな声―男レの声だ。
 緊張しカラカラになったその声は風にかき消され後方へと流れていく。
 子供たちは動かない。
 鎧を着た武者――男を見ても――誰も振り向かない。
 懸命に――憑かれたように石を積み続ける子供たち。

 ――こいつらはいったい何をしているんだ?

 子供たちの小さな指先は皮膚が裂け血が出ていた。
 寒さに震え、涙を流しながら石を積み続けている。

 ――なんだここは、何なんだ!

 こんなことが許されるはずがない。こんなことを許していいはずがない。
 男の目の前に石を積む一人の幼子がいた。

「あ、あああ……!!」

 その子供の衣に見覚えがあった。
 その足元に置かれた手垢にまみれた人形に見覚えがあった。
 それは――男の娘だった。妖に襲われ幼くして命を失った愛しい我が子だ。
 
「お鈴!」

 男の声に女童が振り返る。彼女の目が大きく見開かれた。
 大粒の涙が頬を伝い女童――お鈴がこちらへ駆け寄ろうとする。
 その前に黒い影が立ちふさがった。

「何をする!!」

 叫ぼうとしたが声が出ない。
 娘を助けようとしたが身体が鉛のように重く、動かない。
 黒い影が動いた。
 影が鞭のようにしなり娘を打つ。
 積みかけの石の塔を砕く。

「お鈴!!」

 悲鳴を上げて倒れる我が子に手を伸ばす――が、すぐそこにいるはずの娘に腕は動かず、指先は届かず。

「お父ぅ!」

 娘は悲鳴を上げた。助けを求め手を伸ばす。
 しかし――身は動かず。
 できるのは打たれるばかりの我が子をただ見ているのみ。

「なんだここは!なぜこのようなことが許されるのだ!」

 男は叫んだ。噛みしめた唇から血が噴出し、無力な自分に身を掻きむしる。 
 
「誰か助けてくれ!」

 男は叫んだ。神仏に祈りを捧げた。

「ここは、子供たちの罪を償う場所」

 不意に脳裏に声が響いた。
 凛とした鈴のような声音。

 ――子供たちの罪?

 何だそれは、子供たちにいったい何の罪があるというのか。
 子供に罪などあるものか、あるとすれば――あるとすれば自分にこそ罪はある、それ相応の罰がいる。
 
「頼む!罰はオレが受ける!罪はオレが償う!」

 娘だけは――!

 滂沱の涙を流し男は懇願した。

「親より先に死したるは最も重き罪……」

 男は見上げる――声の主を。

「幻に惑わされるな……これは過ぎたりし過去のまやかしじゃ」

 狐の面を被った銀髪の女童だった。

「娘の罪はとうの昔に許されておる」

 ――本当か!!

「だから安心せい」

 女童の声が子守歌のように響く。
 女童が男を抱きしめた。

「だがオレには……」

 約束を果たさなければならない。
 謝らなければならない。

「今はゆっくり休むのじゃ」

 兜を取り、頭を抱く。

「昔のことは……全て幻なのじゃよ……なぁ、源次郎……」

 少女の声はやがて霧の中に消えていった。
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