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恋心を聞かせて
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「フラれたか?」
席を立った美怜を見送った龍太は智輝へ向き直る。
「……はい、あっさりと」
頷く智輝は眉が下がった悲しげな表情で笑っている。
「そうか」
「彼氏いないって言ってたけど、欲しいとも言ってなかったんで、告白するつもりもなかったんです」
智輝の話すことは龍太には理解できた。恵美が恋愛に全く興味がないのは話の節々から感じ取れるのだ。
それをわかっていた高校時代の龍太が告白したのは一縷の望みにかけてというような諦めきれない気持ちがあったからだった。
でも、と智輝は続ける。
「なんか、話してたら、伝えたくなっちゃったんですよね。同期の子にのせられてたのもあったのかもしれないですけど」
俺の気持ちを知ってほしくなってしまった、しぼり出すような声には明確な後悔がにじむ。
「困った顔してた」
どんな感情だって、伝えてしまうと今までの関係とはすこし変わったものになる。恋愛感情の告白がその最たる例だと龍太は考えていた。
互いにおなじ感情を持っていたとしても、そうでなくても、今までの関係には戻れない。
「恵美は何て言っていたんだ?」
「それは……」
「私は恋愛はできないから。友達のままでいてほしい、じゃない?」
美怜が戻ってきた。どこから話を聞いていたのかと思うほど自然に話に混ざって来る。
驚いた顔の智輝が頷く。
「はやかったな」
「ごめんなさいね、もう少し二人で話したかった?」
龍太と智輝で話す時間を取るという目的で席を立ったにしては早いと、龍太はおもわずといった様子だ。しかし美怜は気にする様子もなく話を続けている。
「智輝くんは、恵美に告白したのね。何かあったとは思ったけれど、そういうことだったの」
そんなときに声をかけてしまってごめんなさいと神妙な顔で謝罪をする美怜は全部わかっていて行動していると知っている龍太から見ても自然な演技だ。
龍太から見た美怜は役者かそれでなければ、立派な詐欺師だった。
「いや、そんなことは。共通の知り合いが多い分話をしにくいですし、聞いてもらえるのはありがたいです」
共通の知り合いどちらかというと恵美よりだが、と龍太は思うが智輝の気遣いはありがたく受け取っておくことにした。
もうすこし智輝の話を聞かないと美怜のネタにならないと、龍太は考えながら智輝を見た。
智輝の顔からは緊張が溶けたようにこわばりがなくなっている。
――もう大丈夫そうだな。
龍太がそう思うのと美怜がメニューを手に取ったのはほぼ同時だった。
「よーし! じゃあ今日はたくさん食べて飲んで話して忘れよう! 龍太の時も公園のベンチでコーラ片手にずっと話聞いたのよ。もちろん、恵美には言わない」
――小説のネタにはするけどな。
美怜の言葉に龍太は心の中でつぶやくと、美怜は目ざとくひじでこづく。
「顔でバレバレよ」
美怜は龍太にしか聞こえない声で囁いた。
それを聞かないふりして龍太は智輝の前に出されたメニューを反対側から覗き込む。
「ほら、酒もたのもう。料理は何がいい? 好きなの選ぶといい。あ、俺はこれ」
龍太が飲み物と料理を選ぶと、智輝は遠慮しがらも酒と料理を選び、注文した。
智輝も話したいことが出てきたのか、いろいろと話しはじめて、美怜もそれに頷きながら聞いている。
龍太は今日の終電の時間を気にしながら、最初に頼んだフライドポテトの最後の一本をつまんだ。
席を立った美怜を見送った龍太は智輝へ向き直る。
「……はい、あっさりと」
頷く智輝は眉が下がった悲しげな表情で笑っている。
「そうか」
「彼氏いないって言ってたけど、欲しいとも言ってなかったんで、告白するつもりもなかったんです」
智輝の話すことは龍太には理解できた。恵美が恋愛に全く興味がないのは話の節々から感じ取れるのだ。
それをわかっていた高校時代の龍太が告白したのは一縷の望みにかけてというような諦めきれない気持ちがあったからだった。
でも、と智輝は続ける。
「なんか、話してたら、伝えたくなっちゃったんですよね。同期の子にのせられてたのもあったのかもしれないですけど」
俺の気持ちを知ってほしくなってしまった、しぼり出すような声には明確な後悔がにじむ。
「困った顔してた」
どんな感情だって、伝えてしまうと今までの関係とはすこし変わったものになる。恋愛感情の告白がその最たる例だと龍太は考えていた。
互いにおなじ感情を持っていたとしても、そうでなくても、今までの関係には戻れない。
「恵美は何て言っていたんだ?」
「それは……」
「私は恋愛はできないから。友達のままでいてほしい、じゃない?」
美怜が戻ってきた。どこから話を聞いていたのかと思うほど自然に話に混ざって来る。
驚いた顔の智輝が頷く。
「はやかったな」
「ごめんなさいね、もう少し二人で話したかった?」
龍太と智輝で話す時間を取るという目的で席を立ったにしては早いと、龍太はおもわずといった様子だ。しかし美怜は気にする様子もなく話を続けている。
「智輝くんは、恵美に告白したのね。何かあったとは思ったけれど、そういうことだったの」
そんなときに声をかけてしまってごめんなさいと神妙な顔で謝罪をする美怜は全部わかっていて行動していると知っている龍太から見ても自然な演技だ。
龍太から見た美怜は役者かそれでなければ、立派な詐欺師だった。
「いや、そんなことは。共通の知り合いが多い分話をしにくいですし、聞いてもらえるのはありがたいです」
共通の知り合いどちらかというと恵美よりだが、と龍太は思うが智輝の気遣いはありがたく受け取っておくことにした。
もうすこし智輝の話を聞かないと美怜のネタにならないと、龍太は考えながら智輝を見た。
智輝の顔からは緊張が溶けたようにこわばりがなくなっている。
――もう大丈夫そうだな。
龍太がそう思うのと美怜がメニューを手に取ったのはほぼ同時だった。
「よーし! じゃあ今日はたくさん食べて飲んで話して忘れよう! 龍太の時も公園のベンチでコーラ片手にずっと話聞いたのよ。もちろん、恵美には言わない」
――小説のネタにはするけどな。
美怜の言葉に龍太は心の中でつぶやくと、美怜は目ざとくひじでこづく。
「顔でバレバレよ」
美怜は龍太にしか聞こえない声で囁いた。
それを聞かないふりして龍太は智輝の前に出されたメニューを反対側から覗き込む。
「ほら、酒もたのもう。料理は何がいい? 好きなの選ぶといい。あ、俺はこれ」
龍太が飲み物と料理を選ぶと、智輝は遠慮しがらも酒と料理を選び、注文した。
智輝も話したいことが出てきたのか、いろいろと話しはじめて、美怜もそれに頷きながら聞いている。
龍太は今日の終電の時間を気にしながら、最初に頼んだフライドポテトの最後の一本をつまんだ。
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