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4.門前に元婚約者がいるので
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レイが屋敷の窓から外をのぞき込む。嫌なものをみたと言いたげな顔でこちらを見た。
「彼はなにをしているんだ……あれでも王子だろう」
ここからだと門前に深々と頭を下げ続けている男が見える。遠目で見てもわかるのは、少なくとも王子が着るような服装ではないことぐらいだ。
報告によると、どうやらあの男は、使用人と護衛騎士数名をつけて王城を追い出されたイアンらしい。
「元だよ、元」
兄がトリトニアに住んでいる両親への報告の手紙を書きながら答えた。イアンは私との婚約破棄後、あっという間に王太子候補から、元王子の平民になっていた。腕に巻き付いていた令嬢も行方知れずである。
イアンはそれなりに考えて、私や兄から許しを得れば王城に戻れるのではという結論に至ったようだ。
日中は付き合いきれなくなった護衛騎士に連れて行かれるまで毎日あんな調子である。
そして、その兄の机には、王からの公式文書の証である封蝋のされた封筒が何枚も置かれていた。
「一歩間違えれば国が地図から消えるんだ。あいつはともかく、王は必死だろうね。ほらこれ、すべて謝罪だよ」
「身内のやらかしだとはいえ、かわいそうにな」
レイの手にも同じ封蝋の手紙がある。あの騒ぎのあとトリトニアの外交官として正式に抗議をしたらしい。
ラクシフォリア家は隣の大国トリトニアの王家にルーツを持つ新興貴族、だとイアンは思いこんでいた。しかし、ラクシフォリア家はもともとパラディオ建国から続く子爵家である。トリトニアから来た父が婿入りした後に事業が軌道に乗り伯爵を叙爵したことを曲解して、イアンは新興貴族と勘違いしてそのままここまで走り抜けた。
イアンの最大のミスは、私たちの父がトリトニア現王弟の息子であることを知らなかったことだ。
今のトリトニアの王は私たちの大伯父に当たる。
何度か訂正はしていたが、聞く気がないイアンに何を説明しても無駄だった。
イアンは時折会いに来ていた私の祖父が隣国の王弟だとは思っておらず、やけに豪華にもてなしてるな、くらいにしか思っていなかったようだ。まったく、物を考えられないのもここまでくると恐怖すら覚える。
トリトニアへの窓口としての役割も担っているラクシフォリア家の婚姻は他の伯爵家とはわけが違う。
私の婚約には政治的な策略がかなり絡んでいたように思う。
兄が私とイアンとの婚約に口を出せなかったのは、国同士の友好関係維持のためでもあったのだ。
「母上の母国だ。悪いようにするつもりはないよ」
兄の言葉に、私はついほっと息を吐く。
「心配していたんだね。両国との交流をメインにしていきたいとは前から話していたからね。あのバカ王子を担ぎ上げていた派閥が邪魔をしていたが、これでやりやすくなるさ」
兄はそこまで言うと、慈愛に満ちた目を細め、私を見た。
「かわいいシャル。私はシャルのために出来ることは何でもしたいと思っているよ」
久しぶりに聞いた言葉だ。
兄の顔はいつもよりも清々しいものに見える。その顔を見てレイと私は顔を見合わせた。
兄の後悔が見えなくなった。そう思って私が笑う。レイも安堵の混じった顔で笑っていた。
和やかな雰囲気の中、書類や手紙の処理作業を進めていると、レイが、ん? と小さく呟いて手を止めた。
「デイヴィット、シャーロット」
「なんだい?」
「シャーロットに招待状が来ている」
レイが私たちに見せるように持っている手紙の封蝋をみて私は固まる。
「どうせ、噂好きのマダムが根掘り葉掘り聞きたいがためのお茶会だろう?」
「……それなら聞く前に断りの返事を書いている」
まだ自分の作業を続けながら話をしていた兄がやっと顔をあげて同じように固まった。
「王太后陛下から、お茶会の招待だ」
「彼はなにをしているんだ……あれでも王子だろう」
ここからだと門前に深々と頭を下げ続けている男が見える。遠目で見てもわかるのは、少なくとも王子が着るような服装ではないことぐらいだ。
報告によると、どうやらあの男は、使用人と護衛騎士数名をつけて王城を追い出されたイアンらしい。
「元だよ、元」
兄がトリトニアに住んでいる両親への報告の手紙を書きながら答えた。イアンは私との婚約破棄後、あっという間に王太子候補から、元王子の平民になっていた。腕に巻き付いていた令嬢も行方知れずである。
イアンはそれなりに考えて、私や兄から許しを得れば王城に戻れるのではという結論に至ったようだ。
日中は付き合いきれなくなった護衛騎士に連れて行かれるまで毎日あんな調子である。
そして、その兄の机には、王からの公式文書の証である封蝋のされた封筒が何枚も置かれていた。
「一歩間違えれば国が地図から消えるんだ。あいつはともかく、王は必死だろうね。ほらこれ、すべて謝罪だよ」
「身内のやらかしだとはいえ、かわいそうにな」
レイの手にも同じ封蝋の手紙がある。あの騒ぎのあとトリトニアの外交官として正式に抗議をしたらしい。
ラクシフォリア家は隣の大国トリトニアの王家にルーツを持つ新興貴族、だとイアンは思いこんでいた。しかし、ラクシフォリア家はもともとパラディオ建国から続く子爵家である。トリトニアから来た父が婿入りした後に事業が軌道に乗り伯爵を叙爵したことを曲解して、イアンは新興貴族と勘違いしてそのままここまで走り抜けた。
イアンの最大のミスは、私たちの父がトリトニア現王弟の息子であることを知らなかったことだ。
今のトリトニアの王は私たちの大伯父に当たる。
何度か訂正はしていたが、聞く気がないイアンに何を説明しても無駄だった。
イアンは時折会いに来ていた私の祖父が隣国の王弟だとは思っておらず、やけに豪華にもてなしてるな、くらいにしか思っていなかったようだ。まったく、物を考えられないのもここまでくると恐怖すら覚える。
トリトニアへの窓口としての役割も担っているラクシフォリア家の婚姻は他の伯爵家とはわけが違う。
私の婚約には政治的な策略がかなり絡んでいたように思う。
兄が私とイアンとの婚約に口を出せなかったのは、国同士の友好関係維持のためでもあったのだ。
「母上の母国だ。悪いようにするつもりはないよ」
兄の言葉に、私はついほっと息を吐く。
「心配していたんだね。両国との交流をメインにしていきたいとは前から話していたからね。あのバカ王子を担ぎ上げていた派閥が邪魔をしていたが、これでやりやすくなるさ」
兄はそこまで言うと、慈愛に満ちた目を細め、私を見た。
「かわいいシャル。私はシャルのために出来ることは何でもしたいと思っているよ」
久しぶりに聞いた言葉だ。
兄の顔はいつもよりも清々しいものに見える。その顔を見てレイと私は顔を見合わせた。
兄の後悔が見えなくなった。そう思って私が笑う。レイも安堵の混じった顔で笑っていた。
和やかな雰囲気の中、書類や手紙の処理作業を進めていると、レイが、ん? と小さく呟いて手を止めた。
「デイヴィット、シャーロット」
「なんだい?」
「シャーロットに招待状が来ている」
レイが私たちに見せるように持っている手紙の封蝋をみて私は固まる。
「どうせ、噂好きのマダムが根掘り葉掘り聞きたいがためのお茶会だろう?」
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「王太后陛下から、お茶会の招待だ」
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