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5 地震
しおりを挟む洞窟のリビングで、Ariは古木の椅子に座り、薬草園の手入れを終えたばかりだった。容姿は変わったが、体調は少しずつよくなり、食事も普通に取れるようになった。特に仕事があるわけでもなく、自給自足が可能なこの洞窟は贅沢をしなければ、療養と言う意味でも最適な場所だった。
無理はせず中年の彼はモモンガを膝に寝かせ、穏やかな午後の光が窓から差し込む中、目を閉じていた。
すると突然、地響きが洞窟を揺らし、棚の瓶がガタガタと音を立て始めた。地震が襲来し、滝の水流が激しく乱れ、窓から見える山々が揺れる。モモンガが驚いて飛び起き、Ariは目を細めて呟いた。「大きいのが来そうだな。」
Ariは深呼吸し、胸元のペンダントを握り潰すようにして保護魔法を唱え始めた。古い呪文の言葉が口から溢れ、指先から淡い光が広がる。魔法のバリアが彼とモモンガを包み、落ちてくる石や揺れる家具から守った。どれくらい揺れていただろうか。棚の本や小箱が床に落ち、壁から滝の水が吹き出し、揺れがおさまる頃には、床にかなりの物が散乱していた。水たまりから伝わる振動にAriの足元がグラつき、突然、地響きのような轟音が洞窟内に響き渡り、Ariは咄嗟に壁に手をついて体を支えた。すると、岩の割れる鋭い音と共に、目の前の壁が崩れ落ち、土砂と岩がドアを潰し出口を完全に塞いだ。埃が舞い上がり、薄暗い光の中でAriは咳き込みながら周囲を見回した。モモンガが彼の肩で小さく震え、鋭い爪で服をぎゅっと掴んでいる。
「大丈夫。落ち着いて」と、Ariはモモンガを安心させるようにその小さな体を軽く撫でた。だが、心の中では不安が広がっていた。出口を一つ失ってしまったからだ。しかし、もう、森側からの侵入者は立ち入れないことも明らかだった。
彼は深呼吸して冷静さを取り戻し、魔法の杖を手に持って周囲を照らした。
すると、崩れた岩の隙間から、ひんやりとした風が吹き込んでくるのに気づいた。光を向けると、地面に大きな亀裂が生じ、そこから石造りの階段が姿を現していた。階段は急角度で下へと続き、闇の中に消えている。Ariは一瞬躊躇したが、モモンガが小さく鼻を鳴らすのを聞いて決意した。「行ってみようか?」と呟き、慎重に階段を降り始めた。
階段は湿った苔に覆われ、足を滑らせないよう一歩一歩慎重に進んだ。どれほど降りたか分からないほど時が過ぎ、ようやく足元が平らになった。そこには、見たこともない池が広がっていた。水が湧き出ているようで、ライトで照らした噴水のように青みがかった水面は不思議な光を放ち、水中はキラキラと、まるで星空を映しているかのようだった。池の周囲には奇妙な形の岩が並び、どこか人工的な雰囲気を漂わせていた。空気はひんやりと重く、微かな水音だけが静寂を破る。
Ariが池の縁に近づくと、水面がわずかに揺れ、波紋が広がった。するとそこには暗緑色の巨大なオオサンショウウオが水面に浮かび上がっていた。賢そうな目がAriをじっと見つめ、長い尾が水を静かに揺らす。彼は一瞬息を呑んだが、すぐに冷静さを取り戻し、モモンガを安心させるように肩を軽く叩いた。
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