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第1話
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俺の名前は初瀬京一郎、16歳。
黒短髪、眼鏡、制服のシャツのボタンはきっちり上まで留め着崩すことはなく、成績は常に上位三位内にいる。
冗談も通じず、面白みがないせいもあって他の生徒との交流もほとんどなかった。
しかし、そんな俺に……こ、恋人ができた。
鈴木博文、同じく16歳。
ちゃらちゃらしていて、女子が好きでいつも話しかけている。
成績はまぁまぁ、だと本人が言っていたが実際のところは知らない。
接点がなさそうな俺たちが、その、恋人になったのは鈴木が猛烈に押して押して押して押してきたので、なぜかこうなっていて、自分でも現状把握がいまだにできていない。
高校に登校しクラスの席についてその日の準備をしてしばらくすると鈴木が登校してきた。
「初瀬ー、おはよう!」と言うなり抱きつき「あー、今日もかわいいなぁ、初瀬ー」と言い、そこからずっとべたべたしている。
俺がトイレに行こうとすると一緒についてきそうになって止めたら、「だって、かわいい初瀬が襲われたら困るもん。俺も行くー」と言ってきた。
文武両道の両親両祖父母に育てられた俺は剣道と柔道を習っているので、がっしりした体格をしている。
背も176cmと低くはないはずだ。
この俺が襲われるはずもなく、たとえ襲われたとしても自分で対処できる。
だから断ると「やだよー。初瀬のかわいいアレを他の人に晒すだなんて俺、耐えらない。守りに行く!」と言った。
最初、なんのことだかわからなかったが、やっと意味がわかると顔が赤くなってしまい「馬鹿者ー!」と振り捨ててきたはずなのに、トイレについてきた。
そして「ごめんねー、俺のかわいい初瀬の見せたくないからガードさせてー」と俺を一番端の便器の前に立たせ、その横で他の生徒が見られないように仁王立ちをする。
恥ずかしくなり「馬鹿者ー!」と言って個室に駆け込む。
そんなことを何回も繰り返し、最近では俺がトイレに行くと「初瀬、個室空いてるぞ」と他の生徒がご丁寧に教えてくれるようになった。
洒落っ気もなく、顔がいいわけでもなく、気の利いた会話もできず、体はがっしりと大きく、勉強ばかりしている俺のどこがいいのか。
俺は何度も鈴木にその疑問を投げつけてみてはいるものの「うーん、なんでだろ?俺にもよくわからない。えへへ」と言うばかりなので埒が明かない。
それなのに、「わーい、女の子大好きー!!」と女子の会話の中にするりと入っていき、「あ、ミカちゃん、シャンプー変えた?」「トモちゃん、今日のピアスかわいいじゃん」と楽しそうにしている。
根っからの女好きなのだ。
なのに、なぜ、俺?
そんななのに、なぜかキスはしている。
放課後の図書室で宿題をしていたら、「初瀬ー!」と声がしたので顔を上げるとむちゅっとされた。
唇が離れると「一緒に帰ろう」と鈴木が笑っていた。
俺が固まっていたら「そんなにかわいい顔しちゃだめ!」と俺の宿題をまとめて持ち、俺の手をひっぱり屋上に続く階段を上り始めた。
動揺していたので手を引かれるままついていってしまったが、施錠された屋上へのドアの前までやって来ると、鈴木が振り向いた。
「ほんと、そんな顔、他のヤツに見せちゃだめ」と言い、またむちゅっとキスされた。
俺はただただ立っているしかできなかった。
鈴木は俺を抱き締めると「たまんないな。止められないよ」と何度も唇を合わせてきた。
呆然と立ったままの俺に鈴木は「ね、口開けて」と熱っぽい声で言ったのでしびれた頭でのろのろとそうすると、にゅるりと舌を入れてきた。
それがディープキスだということに気がついたのは、帰宅して制服を着替えてからのことだった。
隙をつかれて何度かキスをされた後、鈴木が自宅に遊びに来い、と誘ってきた。何度も断っていたが、またもや押しに押されてしぶしぶ行くと、どういう流れかベッドに押し倒されむちゃくちゃキスをされていた。
「す、鈴木」
「ん、なに?
ああ、ほんともう、なんでこんなにかわいいの、初瀬ってば」
「ちょっと待て」
「ん、なに」
「おまえの股間に違和感を感じる」
「そりゃ、かわいい初瀬にちゅーしてたら勃つに決まってんじゃん」
俺は血の気が引いた。
そんな俺に構わず、鈴木は身体を俺に乗り上げたままキスをしてくる。
「はぁ、初瀬とえっちしたいなぁ。
いつがいい?」
「あ?」
「俺、ちゃんと待つからさー、俺とえっちしてよ。
初瀬がその気になるまで、待つからー。
他の人としないでー。
ねー、約束してー」
顔中キスされながらこんなことを言われても、誠にもって困る。
その日はそれで終わったが、それから次第にエスカレートし、今では鈴木の手や口で何度かイカされるまでになってしまった。
未だに状況がよく把握できていない。
鈴木と一緒にいるとずっとパニック状態になってしまい、冷静になれる時がないのだ。
今日も登校してくると一直線に俺のところに来てべたべたしたあと、「じゃ、ちょっと行ってくるー」と鈴木は女子の輪の中に入っていった。
俺が眺めていると、田中が「あれが本来の鈴木の姿なのに、どうしてこんなにでかい男を好きになっちゃったかねぇ」と言った。
田中は鈴木と同じ中学で、とても仲がよく、鈴木のことをよく知っていた。
「初瀬さー、鈴木のことどう思ってる?」
「どうって」
「あんまり好きじゃなかったら、きっぱりフってやってよ」
「え」
「ほんと、女子のこと大好きなんだよね、あいつ。
女子に囲まれているのが好きで、そのために中学のときバカな努力をめちゃめちゃしてたし」
「……」
「初瀬さー、あんまり鈴木のこと好きじゃなさそうじゃん。
鈴木のことうっとうしそうだし、いつも鈴木だけが声かけて誘ってばっかじゃん」
「……」
「いいヤツだからさー、真剣じゃないならフってやってくれよ。
幸せになってほしいし」
「……」
「うーん、それかあんまり反応がなかったら鈴木のほうが初瀬をフるかなぁ」
「えっ」
「だって面白くないじゃん。
自分ばっかり動いて、リアクションも薄いし、誘ってもらえないのって」
頭の中が真っ白になった。
「あー、なにやってるのー!」
鈴木が女子の輪から抜けて近づいてくると、ぐっと俺を抱き寄せた。
「いくら田中でも、かわいい初瀬は譲れなーい」
「はいはい、取りゃしねーよ」
「わかんないだろ、初瀬、かわいいもん。
男は豹変するからな」
鈴木の声は耳に入らない。
フられる?
鈴木に?
俺が?
面白みもなく、受け身の俺が?
やはり?
それからずっと、俺の頭は真っ白のままだった。
**
「ちら見せ紐・誕生編」https://etocoria.blogspot.jp/2018/04/chiramise.html
黒短髪、眼鏡、制服のシャツのボタンはきっちり上まで留め着崩すことはなく、成績は常に上位三位内にいる。
冗談も通じず、面白みがないせいもあって他の生徒との交流もほとんどなかった。
しかし、そんな俺に……こ、恋人ができた。
鈴木博文、同じく16歳。
ちゃらちゃらしていて、女子が好きでいつも話しかけている。
成績はまぁまぁ、だと本人が言っていたが実際のところは知らない。
接点がなさそうな俺たちが、その、恋人になったのは鈴木が猛烈に押して押して押して押してきたので、なぜかこうなっていて、自分でも現状把握がいまだにできていない。
高校に登校しクラスの席についてその日の準備をしてしばらくすると鈴木が登校してきた。
「初瀬ー、おはよう!」と言うなり抱きつき「あー、今日もかわいいなぁ、初瀬ー」と言い、そこからずっとべたべたしている。
俺がトイレに行こうとすると一緒についてきそうになって止めたら、「だって、かわいい初瀬が襲われたら困るもん。俺も行くー」と言ってきた。
文武両道の両親両祖父母に育てられた俺は剣道と柔道を習っているので、がっしりした体格をしている。
背も176cmと低くはないはずだ。
この俺が襲われるはずもなく、たとえ襲われたとしても自分で対処できる。
だから断ると「やだよー。初瀬のかわいいアレを他の人に晒すだなんて俺、耐えらない。守りに行く!」と言った。
最初、なんのことだかわからなかったが、やっと意味がわかると顔が赤くなってしまい「馬鹿者ー!」と振り捨ててきたはずなのに、トイレについてきた。
そして「ごめんねー、俺のかわいい初瀬の見せたくないからガードさせてー」と俺を一番端の便器の前に立たせ、その横で他の生徒が見られないように仁王立ちをする。
恥ずかしくなり「馬鹿者ー!」と言って個室に駆け込む。
そんなことを何回も繰り返し、最近では俺がトイレに行くと「初瀬、個室空いてるぞ」と他の生徒がご丁寧に教えてくれるようになった。
洒落っ気もなく、顔がいいわけでもなく、気の利いた会話もできず、体はがっしりと大きく、勉強ばかりしている俺のどこがいいのか。
俺は何度も鈴木にその疑問を投げつけてみてはいるものの「うーん、なんでだろ?俺にもよくわからない。えへへ」と言うばかりなので埒が明かない。
それなのに、「わーい、女の子大好きー!!」と女子の会話の中にするりと入っていき、「あ、ミカちゃん、シャンプー変えた?」「トモちゃん、今日のピアスかわいいじゃん」と楽しそうにしている。
根っからの女好きなのだ。
なのに、なぜ、俺?
そんななのに、なぜかキスはしている。
放課後の図書室で宿題をしていたら、「初瀬ー!」と声がしたので顔を上げるとむちゅっとされた。
唇が離れると「一緒に帰ろう」と鈴木が笑っていた。
俺が固まっていたら「そんなにかわいい顔しちゃだめ!」と俺の宿題をまとめて持ち、俺の手をひっぱり屋上に続く階段を上り始めた。
動揺していたので手を引かれるままついていってしまったが、施錠された屋上へのドアの前までやって来ると、鈴木が振り向いた。
「ほんと、そんな顔、他のヤツに見せちゃだめ」と言い、またむちゅっとキスされた。
俺はただただ立っているしかできなかった。
鈴木は俺を抱き締めると「たまんないな。止められないよ」と何度も唇を合わせてきた。
呆然と立ったままの俺に鈴木は「ね、口開けて」と熱っぽい声で言ったのでしびれた頭でのろのろとそうすると、にゅるりと舌を入れてきた。
それがディープキスだということに気がついたのは、帰宅して制服を着替えてからのことだった。
隙をつかれて何度かキスをされた後、鈴木が自宅に遊びに来い、と誘ってきた。何度も断っていたが、またもや押しに押されてしぶしぶ行くと、どういう流れかベッドに押し倒されむちゃくちゃキスをされていた。
「す、鈴木」
「ん、なに?
ああ、ほんともう、なんでこんなにかわいいの、初瀬ってば」
「ちょっと待て」
「ん、なに」
「おまえの股間に違和感を感じる」
「そりゃ、かわいい初瀬にちゅーしてたら勃つに決まってんじゃん」
俺は血の気が引いた。
そんな俺に構わず、鈴木は身体を俺に乗り上げたままキスをしてくる。
「はぁ、初瀬とえっちしたいなぁ。
いつがいい?」
「あ?」
「俺、ちゃんと待つからさー、俺とえっちしてよ。
初瀬がその気になるまで、待つからー。
他の人としないでー。
ねー、約束してー」
顔中キスされながらこんなことを言われても、誠にもって困る。
その日はそれで終わったが、それから次第にエスカレートし、今では鈴木の手や口で何度かイカされるまでになってしまった。
未だに状況がよく把握できていない。
鈴木と一緒にいるとずっとパニック状態になってしまい、冷静になれる時がないのだ。
今日も登校してくると一直線に俺のところに来てべたべたしたあと、「じゃ、ちょっと行ってくるー」と鈴木は女子の輪の中に入っていった。
俺が眺めていると、田中が「あれが本来の鈴木の姿なのに、どうしてこんなにでかい男を好きになっちゃったかねぇ」と言った。
田中は鈴木と同じ中学で、とても仲がよく、鈴木のことをよく知っていた。
「初瀬さー、鈴木のことどう思ってる?」
「どうって」
「あんまり好きじゃなかったら、きっぱりフってやってよ」
「え」
「ほんと、女子のこと大好きなんだよね、あいつ。
女子に囲まれているのが好きで、そのために中学のときバカな努力をめちゃめちゃしてたし」
「……」
「初瀬さー、あんまり鈴木のこと好きじゃなさそうじゃん。
鈴木のことうっとうしそうだし、いつも鈴木だけが声かけて誘ってばっかじゃん」
「……」
「いいヤツだからさー、真剣じゃないならフってやってくれよ。
幸せになってほしいし」
「……」
「うーん、それかあんまり反応がなかったら鈴木のほうが初瀬をフるかなぁ」
「えっ」
「だって面白くないじゃん。
自分ばっかり動いて、リアクションも薄いし、誘ってもらえないのって」
頭の中が真っ白になった。
「あー、なにやってるのー!」
鈴木が女子の輪から抜けて近づいてくると、ぐっと俺を抱き寄せた。
「いくら田中でも、かわいい初瀬は譲れなーい」
「はいはい、取りゃしねーよ」
「わかんないだろ、初瀬、かわいいもん。
男は豹変するからな」
鈴木の声は耳に入らない。
フられる?
鈴木に?
俺が?
面白みもなく、受け身の俺が?
やはり?
それからずっと、俺の頭は真っ白のままだった。
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