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第4話 あなたのそばでもっと
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なにがどうしてこんなことになっているのか。
理解を越えている。
「馬鹿者馬鹿者馬鹿者ーーーー!!!」
こ、こんな屈辱的な格好。
鈴木の部屋で上半身は全部脱がされ、下は下着と靴下で正座しつつ、両手首はネクタイで縛られている。
「早くネクタイ外せ」
「だあめ。
初瀬がイキ顔見せてくれないんだもん」
そんなこ…と、言うなあ、馬鹿者!
***
もしかしたら鈴木に愛想を尽かされるかもしれない。
それを阻止すべく、自分が考え得る限りをもって策を講じ実行に移した。
それは功を奏して、鈴木は俺に愛想を尽かすどころか、「ますます初瀬にハマっちゃったよ。ほんと、かわいいー!」と離してくれなくなった。
一安心したが、俺もそれに甘んじることなく、た、たまに俺から鈴木を誘うように努力している。
ここまではよかった。
しかし、だ。
鈴木の俺への接触が増えてきた。
以前からべたべたとさわってきていたが、それがその、それにいやらしさが加わり……
い、いや、いやらしくさわることはあったが、それは人目がないところだったのに、最近は学校でも下校途中でもさわさわとしてくる。
おまけに「イキ顔が凶暴的にかわいい!見逃すなんて、だあめ。そんなの許されない」と鈴木の家に連れていかれ、全身をまさぐられこすられイかされる。
そのときの顔を凝視されるのには耐えられない。
鈴木は宣言した通り、無理矢理俺とセックスをしようとはしない。
「ちゃんと待つ、って言ったしね」と約束を守る鈴木は漢気があって好感が持てる。
だが気がつけばキスをされ、「そんなにとろんとした顔になっちゃってー。初瀬のえっちー!」と言い出し押し倒され、「ねぇ、俺も一緒に気持ちよくなっていい?」と聞いてくる。
そ、そんなの、俺ひとりで気持ちよくなるのも申し訳ないと思っているので、うなずくのだが、そうすると2本握らされて、俺の手の上から鈴木も手を添えて動かす。
「初瀬、ひとりえっちのときそんなふうにいじるんだぁ。ふーん」
と実況と観察が始まり、空いている手で他にもあちこちをいじられる。
「ねぇ、声聞かせてよー。初瀬の声、えろくて好きぃ~!」
「お、俺は…聞きた…くっ、なっ、あぁんっ」
「そうそう、そ…れそれ。今の腰にキたぁ」
事実、手の中の鈴木は大きくびくびくとなって、非常に驚いた。
というのが、ここ最近のことであった。
***
そのあとくらいから、イキ顔を見せろ、と言い出した。
ばっ、ばっ、馬鹿者がぁぁぁぁっ!
「いいから、ネクタイ外せ」
「やーん、初瀬、怒っちゃだめ。
怒ってもかわいいんだけど、笑ってるほうが俺、好きなんだ」
ちゅっと派手な音をたててキスをする。
そして床に押し倒すと、手首を縛った俺の腕の中に頭をずぼっと入れてきた。
こ、これでは、俺が鈴木の首に腕を回しているようではないか。
「んふふ、密着ぅー」
鈴木は隙間なく俺を抱きしめてきた。
そっちは制服着たまんまで、お、俺だけ、こんな、間抜けなかっこ…んん……
「ほんとたまんないなぁ、初瀬ってば。
ね、舌出して」
「い、いやだ」
「えー、やなのー?
俺、初瀬の可愛い舌が見たいなぁ。
んー、残念だなぁ。
じゃあ、軽いキスしようね」
身体を密着させ、ちゅっちゅっと何度も短いキスをされる。
「初瀬はかわいいなぁ」
汗ばんだ鈴木のシャツで胸や腹がこすれる。
「お、おまえも、脱げ」
「んー?初瀬、ハダカで抱き合いたいのー?
やーん、積極的ー!
嬉しいな。
脱ぐ脱ぐーーーー!」
鈴木は嬉しそうに言うとずぼっと俺の腕の中から抜け出て潔くシャツを脱いだ。
へらへらしているばかりのくせに、ぐっと引き締まった身体をしている。
勿体無い。
運動部に入って心身ともに鍛えろ、馬鹿者ー!
そしてまた、ずぼっと俺の腕の中に戻ってきてぎゅーっと抱きしめてきた。
「背中、痛くない?
ラグの上だから大丈夫?」
鈴木の部屋はフローリングだが、ベッドの側には毛足の長いラグが敷いてある。
「ん。痛くはない」
「そっか、よかった。
じゃあ心置きなく、ぎゅううううう!」
鈴木はとろけるような笑みを浮かべ、抱きついてきた。
「ね、ちゅーしよ。すごいヤツ」
は、恥ずかしいこと言うな……と思う前に唇は塞がれ、なめられたりはむはむされたりする。
気を抜いてうっかりしているところを狙って、鈴木が舌を入れてきた。
なにがどうなってどういう仕組みかはわからないが、す、鈴木はキスがうまい…と思う。
毎回、軽くパニックになってわけがわからなくなるくらい、舌で口の中をまさぐられ、気がつくと息が上がって力が入らなくなっている。
う?ううう???
「初瀬、気持ちよさそうな顔してる。
顔赤くしてとろんとなって。
うわぁー、ほんと理性と忍耐を試されてるわー、俺!」
そんなことを言いながら、鈴木は俺の足の間に自分の足を割り入れ、小さなキスをしながら股間を股間にずりずりとこすりつけてきた。
「おまえだけ、ズボンはいたまま!」
こっちは半裸、というより全裸に近いというか、下着と靴下という中途半端に恥ずかしい格好だというのに!
「ばかぁ、これは俺なりのストッパーなの。
これも脱いだら、理性保てなくなるかもしれないし。
もう自覚のないエンジェルちゃんは困ったなぁ。
天国見えそうだよ、初瀬」
「ならネクタイ外せ」
「だーめ。
今日は俺が全部やってあげる。
2人で気持ちよくなろうね」
う?あ?
鈴木はキスをしながら器用に俺のボクサーの前をずらし、取り出す。
そしてジッパーを下ろす音がして、熱いのが2本、鈴木の手で握られた。
なにしてやがる、んっ!
「任せて。
俺が上手いの知ってるでしょ。
はい、初瀬、あーん」
あーん?
つられて口を開けてしまうと鈴木の舌が口の中に突っ込まれ、俺の舌をべろりと舐めた。
「なっ!」
「ねぇ、もっとよくしてあげるから、舌出して」
さっき驚いたとき、思わず鈴木の舌を噛みそうになってしまった。
それは危険だ。
恐る恐る舌を出すと鈴木も舌先で、それをつついてくる。
「初瀬の舌、気持ちいいね」
ぐっと鈴木が顔を近づけてきたとき、かちんと音がした。
「あー、失敗失敗。
せっかくうまく初瀬の眼鏡をかわしていたのに。
どうする?
眼鏡外す?
つけたままにしとく?」
「まずネクタイを外せ」
「やだぁ。
今日は初瀬をしっかり捕まえておきたい気分なの。
ね」
「く、ふぅん」
「そうそう。
初瀬、もうべっとべとにしちゃってて、ごめんね。
おあずけ状態だったもんね」
そう言うと、鈴木は器用に眼鏡にぶつからないように、深い深いキスをしながら、大きくて熱い手で2本を扱き、たまに空いている手で尻を揉んだり、乳首の先をいじったりし始めた。
そうされるともう俺は、なにも考えられなくなる。
鈴木が「かわいいよぉ」「すっごい大きくなってきたね」「気持ちいい?」「俺も、気持ちいいよ」「ん、今日もぷりてぃひっぷ気持ちいいなぁ」「いっぱい出てる。こんなところまでたらして、初瀬、気持ちいいんだね」「も、イきそう?」と恥ずかしい言葉を並べあげる。
それだけ言えるならなぜ現国の点数があれだけなんだ!
おまえは運動部に入って心身ともに鍛え直し、国語の点数を上げてもっと違う大学を狙ったほうがいいのだ、馬鹿者ーーー!
「やぁっ、いやぁ」
なのに、出てくるのは喘ぎ声しかないとは情けないぞ、初瀬京一郎!
「イヤ、じゃないでしょ。イイ、って言って」
「やだ」
「気持ちいいでしょ?
俺、一生懸命、初瀬を気持ちよくしてるのに、イヤって言われたら、悲しいなぁ。
気持ちよくないのかなぁ」
ぎゅっと閉じていた目を開けると、欲情しているはずの鈴木の目が少し寂しそうに見えた。
「…ぃ」
「ん、なに?」
「……ぃ…ぃ」
「ほんと?
俺、嬉しい!!!」
手がっ!
鈴木のしごき上げる手がっ!
速くなって、熱くて、気持ちよくて。
あ。
あ。
あ。
だめだ。
「っくぅっ!」
「っふぅ、やっぱ初瀬のイキ顔ヤバいよ。
ほんとかわいいかわいいかわいい。
俺も、も、限界。イくっ!!!」
俺たちは自分の腹の間に射精した。
生温かくて、なんとも言えない気持ちになる。
***
「ねぇねぇ、拗ねないで、初瀬ぇ」
結局、最後までネクタイを外してくれなかったので、俺は腹を立てている。
シャワーを借り、さっぱりしたあと、口をきいてやらなかった。
「だってイキ顔見せてほしかったしぃ。
ごめんね、初瀬ぇ。
拗ねないで、こっち見て」
鈴木は鬱陶しくぐったりしてベッドに横になっている俺をぎゅうぎゅう抱きしめながらあれこれ言っている。
「初瀬ぇ、俺が悪かったからぁ。
もうネクタイ使わない。
ごめんなさい」
俺は歪んだ顔を見られたくなくて鈴木の肩に顔を押しつけ、鈴木の首に腕を回し、抱きついた。
じ、自分で抱きつけなかったじゃないか、馬鹿者ー。
「ごめん、初瀬ぇ。ごめんねぇ」
鈴木はずっと謝りながら抱きしめてくる。
何も言わない代わりにこちらも力の限り抱きしめてやった。
「ぐっ、初瀬、嬉しいけど、ちょっとくるし……」
俺のほうが力があるのだ、馬鹿者ー!
もっと心身を鍛えろ、馬鹿者ー!
一方的なのはいやだ、馬鹿者ー!
しかしこういうことをはっきりと言えない俺が一番の馬鹿者ー!
理解を越えている。
「馬鹿者馬鹿者馬鹿者ーーーー!!!」
こ、こんな屈辱的な格好。
鈴木の部屋で上半身は全部脱がされ、下は下着と靴下で正座しつつ、両手首はネクタイで縛られている。
「早くネクタイ外せ」
「だあめ。
初瀬がイキ顔見せてくれないんだもん」
そんなこ…と、言うなあ、馬鹿者!
***
もしかしたら鈴木に愛想を尽かされるかもしれない。
それを阻止すべく、自分が考え得る限りをもって策を講じ実行に移した。
それは功を奏して、鈴木は俺に愛想を尽かすどころか、「ますます初瀬にハマっちゃったよ。ほんと、かわいいー!」と離してくれなくなった。
一安心したが、俺もそれに甘んじることなく、た、たまに俺から鈴木を誘うように努力している。
ここまではよかった。
しかし、だ。
鈴木の俺への接触が増えてきた。
以前からべたべたとさわってきていたが、それがその、それにいやらしさが加わり……
い、いや、いやらしくさわることはあったが、それは人目がないところだったのに、最近は学校でも下校途中でもさわさわとしてくる。
おまけに「イキ顔が凶暴的にかわいい!見逃すなんて、だあめ。そんなの許されない」と鈴木の家に連れていかれ、全身をまさぐられこすられイかされる。
そのときの顔を凝視されるのには耐えられない。
鈴木は宣言した通り、無理矢理俺とセックスをしようとはしない。
「ちゃんと待つ、って言ったしね」と約束を守る鈴木は漢気があって好感が持てる。
だが気がつけばキスをされ、「そんなにとろんとした顔になっちゃってー。初瀬のえっちー!」と言い出し押し倒され、「ねぇ、俺も一緒に気持ちよくなっていい?」と聞いてくる。
そ、そんなの、俺ひとりで気持ちよくなるのも申し訳ないと思っているので、うなずくのだが、そうすると2本握らされて、俺の手の上から鈴木も手を添えて動かす。
「初瀬、ひとりえっちのときそんなふうにいじるんだぁ。ふーん」
と実況と観察が始まり、空いている手で他にもあちこちをいじられる。
「ねぇ、声聞かせてよー。初瀬の声、えろくて好きぃ~!」
「お、俺は…聞きた…くっ、なっ、あぁんっ」
「そうそう、そ…れそれ。今の腰にキたぁ」
事実、手の中の鈴木は大きくびくびくとなって、非常に驚いた。
というのが、ここ最近のことであった。
***
そのあとくらいから、イキ顔を見せろ、と言い出した。
ばっ、ばっ、馬鹿者がぁぁぁぁっ!
「いいから、ネクタイ外せ」
「やーん、初瀬、怒っちゃだめ。
怒ってもかわいいんだけど、笑ってるほうが俺、好きなんだ」
ちゅっと派手な音をたててキスをする。
そして床に押し倒すと、手首を縛った俺の腕の中に頭をずぼっと入れてきた。
こ、これでは、俺が鈴木の首に腕を回しているようではないか。
「んふふ、密着ぅー」
鈴木は隙間なく俺を抱きしめてきた。
そっちは制服着たまんまで、お、俺だけ、こんな、間抜けなかっこ…んん……
「ほんとたまんないなぁ、初瀬ってば。
ね、舌出して」
「い、いやだ」
「えー、やなのー?
俺、初瀬の可愛い舌が見たいなぁ。
んー、残念だなぁ。
じゃあ、軽いキスしようね」
身体を密着させ、ちゅっちゅっと何度も短いキスをされる。
「初瀬はかわいいなぁ」
汗ばんだ鈴木のシャツで胸や腹がこすれる。
「お、おまえも、脱げ」
「んー?初瀬、ハダカで抱き合いたいのー?
やーん、積極的ー!
嬉しいな。
脱ぐ脱ぐーーーー!」
鈴木は嬉しそうに言うとずぼっと俺の腕の中から抜け出て潔くシャツを脱いだ。
へらへらしているばかりのくせに、ぐっと引き締まった身体をしている。
勿体無い。
運動部に入って心身ともに鍛えろ、馬鹿者ー!
そしてまた、ずぼっと俺の腕の中に戻ってきてぎゅーっと抱きしめてきた。
「背中、痛くない?
ラグの上だから大丈夫?」
鈴木の部屋はフローリングだが、ベッドの側には毛足の長いラグが敷いてある。
「ん。痛くはない」
「そっか、よかった。
じゃあ心置きなく、ぎゅううううう!」
鈴木はとろけるような笑みを浮かべ、抱きついてきた。
「ね、ちゅーしよ。すごいヤツ」
は、恥ずかしいこと言うな……と思う前に唇は塞がれ、なめられたりはむはむされたりする。
気を抜いてうっかりしているところを狙って、鈴木が舌を入れてきた。
なにがどうなってどういう仕組みかはわからないが、す、鈴木はキスがうまい…と思う。
毎回、軽くパニックになってわけがわからなくなるくらい、舌で口の中をまさぐられ、気がつくと息が上がって力が入らなくなっている。
う?ううう???
「初瀬、気持ちよさそうな顔してる。
顔赤くしてとろんとなって。
うわぁー、ほんと理性と忍耐を試されてるわー、俺!」
そんなことを言いながら、鈴木は俺の足の間に自分の足を割り入れ、小さなキスをしながら股間を股間にずりずりとこすりつけてきた。
「おまえだけ、ズボンはいたまま!」
こっちは半裸、というより全裸に近いというか、下着と靴下という中途半端に恥ずかしい格好だというのに!
「ばかぁ、これは俺なりのストッパーなの。
これも脱いだら、理性保てなくなるかもしれないし。
もう自覚のないエンジェルちゃんは困ったなぁ。
天国見えそうだよ、初瀬」
「ならネクタイ外せ」
「だーめ。
今日は俺が全部やってあげる。
2人で気持ちよくなろうね」
う?あ?
鈴木はキスをしながら器用に俺のボクサーの前をずらし、取り出す。
そしてジッパーを下ろす音がして、熱いのが2本、鈴木の手で握られた。
なにしてやがる、んっ!
「任せて。
俺が上手いの知ってるでしょ。
はい、初瀬、あーん」
あーん?
つられて口を開けてしまうと鈴木の舌が口の中に突っ込まれ、俺の舌をべろりと舐めた。
「なっ!」
「ねぇ、もっとよくしてあげるから、舌出して」
さっき驚いたとき、思わず鈴木の舌を噛みそうになってしまった。
それは危険だ。
恐る恐る舌を出すと鈴木も舌先で、それをつついてくる。
「初瀬の舌、気持ちいいね」
ぐっと鈴木が顔を近づけてきたとき、かちんと音がした。
「あー、失敗失敗。
せっかくうまく初瀬の眼鏡をかわしていたのに。
どうする?
眼鏡外す?
つけたままにしとく?」
「まずネクタイを外せ」
「やだぁ。
今日は初瀬をしっかり捕まえておきたい気分なの。
ね」
「く、ふぅん」
「そうそう。
初瀬、もうべっとべとにしちゃってて、ごめんね。
おあずけ状態だったもんね」
そう言うと、鈴木は器用に眼鏡にぶつからないように、深い深いキスをしながら、大きくて熱い手で2本を扱き、たまに空いている手で尻を揉んだり、乳首の先をいじったりし始めた。
そうされるともう俺は、なにも考えられなくなる。
鈴木が「かわいいよぉ」「すっごい大きくなってきたね」「気持ちいい?」「俺も、気持ちいいよ」「ん、今日もぷりてぃひっぷ気持ちいいなぁ」「いっぱい出てる。こんなところまでたらして、初瀬、気持ちいいんだね」「も、イきそう?」と恥ずかしい言葉を並べあげる。
それだけ言えるならなぜ現国の点数があれだけなんだ!
おまえは運動部に入って心身ともに鍛え直し、国語の点数を上げてもっと違う大学を狙ったほうがいいのだ、馬鹿者ーーー!
「やぁっ、いやぁ」
なのに、出てくるのは喘ぎ声しかないとは情けないぞ、初瀬京一郎!
「イヤ、じゃないでしょ。イイ、って言って」
「やだ」
「気持ちいいでしょ?
俺、一生懸命、初瀬を気持ちよくしてるのに、イヤって言われたら、悲しいなぁ。
気持ちよくないのかなぁ」
ぎゅっと閉じていた目を開けると、欲情しているはずの鈴木の目が少し寂しそうに見えた。
「…ぃ」
「ん、なに?」
「……ぃ…ぃ」
「ほんと?
俺、嬉しい!!!」
手がっ!
鈴木のしごき上げる手がっ!
速くなって、熱くて、気持ちよくて。
あ。
あ。
あ。
だめだ。
「っくぅっ!」
「っふぅ、やっぱ初瀬のイキ顔ヤバいよ。
ほんとかわいいかわいいかわいい。
俺も、も、限界。イくっ!!!」
俺たちは自分の腹の間に射精した。
生温かくて、なんとも言えない気持ちになる。
***
「ねぇねぇ、拗ねないで、初瀬ぇ」
結局、最後までネクタイを外してくれなかったので、俺は腹を立てている。
シャワーを借り、さっぱりしたあと、口をきいてやらなかった。
「だってイキ顔見せてほしかったしぃ。
ごめんね、初瀬ぇ。
拗ねないで、こっち見て」
鈴木は鬱陶しくぐったりしてベッドに横になっている俺をぎゅうぎゅう抱きしめながらあれこれ言っている。
「初瀬ぇ、俺が悪かったからぁ。
もうネクタイ使わない。
ごめんなさい」
俺は歪んだ顔を見られたくなくて鈴木の肩に顔を押しつけ、鈴木の首に腕を回し、抱きついた。
じ、自分で抱きつけなかったじゃないか、馬鹿者ー。
「ごめん、初瀬ぇ。ごめんねぇ」
鈴木はずっと謝りながら抱きしめてくる。
何も言わない代わりにこちらも力の限り抱きしめてやった。
「ぐっ、初瀬、嬉しいけど、ちょっとくるし……」
俺のほうが力があるのだ、馬鹿者ー!
もっと心身を鍛えろ、馬鹿者ー!
一方的なのはいやだ、馬鹿者ー!
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