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番外編 騎士が花嫁こぼれ話
41. 薔薇に滴 (1)
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新居に越してきて何人か来客はあったが、こんなに朝早くの訪問は初めてだ。
それも繰り返されるノックの音は切羽詰まっていた。
リノは朝食を食べる手を止め、ドアを開けた。
暗い色の外套のフードを目深にかぶった人物がなだれ込んできて、リノに抱きついた。
「インティア、どうしたの?!」
ほのかに漂う香りですぐに誰だかわかったリノがインティアの細い身体を抱き留めた。
ジュリアスもそばに来てドアを閉めると、リノごとインティアをうながし長椅子に座らせた。
リノがフードを取ってやると、ふわふわの髪が現れた。
背中を優しくたたきながら、インティアの腕をほどき、顔を覗いてぎょっとした。
インティアは声を出さずに泣きじゃくっていた。
目の下のひどい隈。
かさかさのほっぺ。
青い顔色。
抱きしめた感触からするとちょっと痩せていた。
そんなインティアを見て、ジュリアスはすぐに湯を沸かし直し紅茶を淹れ始めた。
リノはインティアの背中を優しくなで続けた。
「ジュリさんが紅茶を淹れてくれているよ。
きっとインティアのために砂糖が入った甘いヤツ。
もう少し待ってね」
涙の止まらないインティアは微かにうなずいた。
ほどなくして、ジュリアスがソーサーつきのカップを運んできた。
ラバグルトが探してくれ、リノとジュリアスが新居として構えた家にはインティアのために高級な紅茶と砂糖、そして一脚だけの磁器のカップとソーサーがおいてあった。
「飲めるか?」
インティアはようやくリノから腕を離し、そっとジュリアスからカップを受け取ると一口飲んで、すぐにソーサーに置いてリノにしがみついた。
それでもジュリアスは満足そうにし、自分はテーブルに戻って朝食の続きを食べ、手早く終わらせた。
「リノ、行ってくる」
「あ、ジュリさん、いってらっしゃい」
ジュリアスは長椅子のリノのところに行き、短いキスを唇に落とした。
それからインティアのぼさぼさになっている髪を何度か大きな手で梳き、
「昼には戻ってくる。
昼食を作ってやる。
それまで寝ていろ」
と言うと、優しくこめかみにキスをした。
「では、インティアのこと、よろしくお願いします」
「はい。
ジュリさんもお休みの日なのに気をつけてね」
「買い物は俺が行く」
「え、でも俺行くし」
「インティアを一人にしないほうがいい。
そばにいてやってくれ」
「そうだね。
じゃあ、お願いします」
「はい」
そうしてジュリアスは出かけていった。
インティアはひとしきり泣いて、すっかり冷めてしまった甘い紅茶を飲むと少し落ち着いたようだった。
ふらふらしていたので、リノはインティアを自分のベッドに寝かしてやった。
しばらくは不安そうにしていたが、手を握ってやるとやがて安心したのか眠り始めた。
一体、なにがあったんだろう?
リノは心配そうにやつれたインティアを見た。
自分たちがクラディウスの離れから出るきっかけはインティアとクラディウスとが想いを通わせたことがわかったからだ。
それから何度か会ったが、インティアは幸せそうだった。
辛辣なことを言ったり、我儘でラバグルトを困らせることもあったが、かわいらしいものだった。
自分の男娼館アルティシモを閉じ、男娼を辞めてから、インティアはますます白い天使のようになっていった。
リノと一緒に救護室でユエの手伝いをしていたときに歌った子守唄は評判がよく、今でもたまにユエが手伝う街の病院へリノと一緒に行き歌うことがあった。
クラディウスのことを話すときのインティアは、頬を薔薇色に染め、まるで少女のようだった。
「一夜の夢を見せる相手」ではなく、クラディウスにたっぷりと甘く愛されているのがよくわかるような変化に、リノも赤面することが多かった。
そのインティアがこんなになっちゃうだなんて、なにがあったの?
リノはインティアの目の端に残っていた涙を指で拭ってやると、髪を何度かなで、そしてベッドのそばに椅子を持ってきて本を開き読み始めた。
それはリノが今、関心を持っていることについて書かれているもので、リノの思いを知ったユエが人から借りてきてくれた本だった。
まだすらすらとは読めないし、難しい言葉がたくさん出てきたが、リノは夢中になって読んでいた。
コトンというドアをそっと開ける音で、リノは本から顔を上げた。
ジュリアスが顔を覗かせた。
トレイの上にはサンドイッチとスープが二人分載っていた。
「どうだ?」
「おかえり、ジュリさん。
あれからすぐに寝たよ。
全然起きない」
二人は小声で話しながら、ジュリアスのベッドに並んで腰かけ、おかえりのキスを交わした。
「よっぽど寝ていないな。
それに食べてもいない」
こんこんと眠るインティアを見て、ジュリアスが言った。
二人はジュリアスが作ったチーズとピクルスのサンドイッチを食べ、柔らかな味の野菜スープを飲んだ。
「このスープなら、あまり食べていないインティアにも飲めるね」
「好きならミルクを入れてもいい」
「あ、ミルクも買ってきたんだ。
ジュリさん、インティアにあまーい」
「ミルクティーにもできるしな」
「やっさしーい」
「リノにも優しくしているつもりだが」
拗ねたのかと思い、ジュリアスはリノに甘いキスを落とした。
リノは笑いながらそれを受けながら思った。
インティアに甘いのは二人ともだけどね。
昼過ぎにインティアは目が覚めた。
二人が甲斐甲斐しく世話をし、インティアはジュリアスの野菜スープを半分飲み、パンをひとかけら食べた。
三日ぶりにまともに食事をした、という。
二人はインティアを心配そうに見た。
インティアはまた不安そうにしていた。
リノはベッドの端にに座りインティアの肩を抱いた。
するとインティアはまた泣き出した。
それをジュリアスが柔らかな布で拭きとってやった。
「そんなに泣いて、どうした?
クラディウスが意地の悪いことをしたのか?」
ジュリアスがその名前を口にするとインティアの身体に緊張が走った。
「……そんなこと、しない」
「しかし原因はあいつだろう?」
「あ、ジュリさん、今日クラディウス様に会ったんだよね?
どうだった?」
「大荒れだ。
仕事にならないから、放ってきた」
「ええっ!
もしかして、インティア、黙って出てきちゃったの?」
「らしいな。
憔悴した顔で居場所を知らないか、と尋ねてきた」
「ジュリアス、言っちゃったの?
僕、どうしよう…」
「それは言うだろう」
ジュリアスはインティアの頭をなでた。
「愛する人が行方不明だなんて、気がどうにかなりそうだろう?」
「…あ」
「心配するな。
ここにいることは言ったが、インティアが自分で帰りたいと思うまで送ってもいかないし、迎えにもこないでほしいと言ってある」
「クラディウス様はそれで納得したの?」
「さあ。
でも『よろしく頼む』と言っていた。
居場所がわかって、まずは一安心したのかもな。
だから、インティア、安心してここにいるといい」
「そうだよ、インティア、好きなだけいてよ。
今晩は俺とジュリさんとでトマト煮込みを作るからね。
食べてみて」
視線を合わせ、微笑み合う二人を見て、インティアはぽそりと言った。
「いいな」
「ん?インティアも一緒に作る?」
「そうじゃなくて」
「?」
「仲がよくていいな」
「インティアもクラディウス様と仲がいいでしょ?」
インティアは大きく首を振った。
そしてうなだれながら言った。
「最近、ろくにしゃべってない。
なんとなく避けられている気がする」
「まさか!」
「でも、僕も避けていたかも」
インティアは膝を抱えて、顔を埋めた。
「怖いんだ」
「?」
「僕、人を好きになるのは初めてなんだ…」
「え、だって、そんな…?」
インティアは色恋に長けていると思っていたのでリノが驚いているとジュリアスがリノに代わって頭をなでた。
「そうか、インティアは『一夜の夢』を見せるのが仕事だったから、これまで人を好きになったことがないのか」
男娼として甘い時間と身体を売る仕事。
疑似恋愛のようなものはしてきたが、仕事だと割り切っていた。
もし本気になったら辛すぎると思ったのか。
それとも高級男娼になってから回数を重ねて会う人物も限られていて、その中にはクラディウスのために情報を得るために抱かれることも多かったせいなのか。
ジュリアスが言うように、インティアはこれまで人を好きになったことがなかった。
「怖い。
どんどん好きになっていく。
だんだんクラディウスがいなくちゃダメになっていく気がする。
止めたくても止まらない」
「ダメになんかならないよ」
「なるよ!
クラディウスが騎士団に行ったら、僕はずっと一人だ。
一人でクラディウスが帰ってくることだけを待っている。
それだけだ。
それしかない」
クラディウスが時折見せる優しい言動に、呆れるほど反応する。
いつもそれを期待している。
一人になるとクラディウスのことばかり考えてしまう。
かといって、インティアが気軽に屋敷の外に出るには危険が多すぎた。
「花街のインティア」はとても有名だったし、そんな彼がどこかで働くにも雇ってもらえそうにない。
それに「男娼狂いの騎士団長」の噂はまだ街なかでは色濃く話されている。
その噂を助長したくはない。
そんなことをインティアは泣きながら話した。
「僕には居場所がない。
僕は僕を保てない。
こんなことは初めてだ。
つらくて、でもクラディウスの前では平気なふりをしていた。
でも、もうどうにもならなくなって。
どんどん好きになっていくのに、怖くて。
待つしかできないのにも怖くなって。
だんだんクラディウスの前にいることもつらくなってきて、僕がちょっと距離を取ったんだ。
そうしたら、クラディウスも距離を取ってくれて。
しゃべらないしハグもしないし、だんだん近づきもしなくなった。
だけど寂しくて、もっとそばにいたいのに、視界にクラディウスが入ると怖くなって…」
話していると感情が高ぶったのか、落ちる涙が多くなり、しまいには話せなくなってしまった。
「それで逃げ出してきたのか」
膝に顔を埋めてしまったが、ジュリアスの問いにインティアは頷いた。
リノは肩をずっとなでている。
しばらくしてインティアは絞り出すように言った。
「こんなこと、今までなかった。
こんなに自分が弱いとは知らなかった。
こんなに振り回されるとは知らなかった。
人を好きになることがこんなに怖いことだなんて知らなかった。
こういうこと話せる人もいなくて。
でも一人で抱えているのがもう難しくなってきて」
「そうか。
クラディウスも恋愛がうまかったら、インティアももう少し楽だったかもしれないな」
ジュリアスはインティアの髪をなでた。
「人を好きになるのは、自分が自分でいられなくなって恐ろしいものだ。
クラディウスも同じように思っているはずだ」
「クラディウスも?」
「ああ。
あんなふうに寝不足になり疲れを見せているクラディウスはそう見えるがな」
「ねぇ、ジュリアスも怖い?」
「ああ、俺も人を好きになることは怖いよ」
「でもどうしてそんなに平気でいられるの?」
「そうだな。
リノに救われているかな」
突然のジュリアスの告白にリノが慌てる。
ジュリアスはそれに気づかないふりをして続ける。
「俺は行くところも帰るところも失ってしまった。
けれどリノはここにいていい、と自分の場所に招き入れてくれた。
それは大きなことだった」
「素敵だね」
インティアは少し顔を上げ、うっとりと言った。
そして、リノをちらりと見た。
「ねぇ、リノは?
人を好きになるって怖い?」
「ううん、だって気がついたら好きになっていて、どんどん好きになっていって幸せだよ」
あっけらかんというリノにインティアは顔を全部上げ、ジュリアスと共に彼を見た。
二人の反応に驚き、少し照れながらリノは言った。
「え、なんで?
どんどん好きになっていってもさ、ジュリさんがそれを受け留めてくれるし、俺が『好き』って言ったら『好き』って返してくれるし、すっごく幸せじゃん。
そうしたら幸せがどんどん大きくなっていくんだよ。
俺、すっごく嬉しい」
ジュリアスもインティアも、リノの言葉と大きくにっこり笑う姿に顔を真っ赤にした。
ここまでストレートに言われると照れてしまう。
しかし当の本人は二人が赤くなっている理由がわからなかった。
「ね、インティアも『好き』って言ってる?」
「あ…」
「あ?」
「僕、一度も言ってない」
「えええええええ!!
なんで?
言ってあげなよ」
「だって恥ずかしい」
「いやいやいやいや、それは言ってあげてよ」
「……う、気が向いたら」
「もう!」
「だってクラディウスだってそんなに言わないし!
僕のことを求めてもこないし!」
「え?」
今度はリノが真っ赤になる番だった。
「リノ、なに赤くなってるの?
さっきまであんなに恥ずかしいこと言ってたのに、急にここで赤くなるなんて」
「いや、クラディウス様ってインティアとその…たくさんあの…」
「もういい!
聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ、リノ!」
インティアも顔が赤いままリノに言った。
が、ふと悲しげな表情を浮かべる。
「ね、その…全然してないの?」
リノがまたもやストレートに問う。
「……」
「ほんとに…?」
「……」
「まじで?!」
「そ、そうだよ!
王都警備に行く前に乱暴に抱かれて以来、一度もしてない!」
あまりに顔の間近で聞かれ、いたたまれなくなってインティアもヤケ気味に答えた。
「それって、ちょっと待ってよ…
えー!もう8か月くらい経つじゃん!」
「そうだよ!
恥ずかしいから何度も聞かないで!」
「いや…ごめん。
ってか、クラディウス様がすごい…」
「は?」
「好きな人がそばにいるんでしょ?
警備の5か月は仕方なかったとしても、3か月だよ!
俺たちがここに来て2か月くらい経つのに、まだ一度もって…やっぱりすごい…」
「いやー、もうやめて!
こんなのリノじゃないよ!
ジュリアスがリノをこんなにしたんだ!」
赤くなった顔を両手で隠しながらインティアが声を上げた。
ジュリアスは、ジャスティの言う「わんことにゃんこ」のやりとりを面白そうに見ていたが、そろそろかと思い口を開いた。
「なにかクラディウスにも考えがあるのかもしれないな。
欲しいものはどうやってでも手に入れる男が、触れてこないなんて」
「ジュリアスまで、もう!」
インティアが上掛けの中に潜ってしまったので、この場はそれで終わりになった。
ほどなくしてジュリアスが甘いミルクティーを淹れてきて、三人で飲んだ。
そのあとジュリアスは夕飯のトマト煮込みの仕込みを始めた。
手伝いを申し出たリノをやんわりと断り、インティアと一緒にいさせた。
二人はひさしぶりに同じベッドに横になり手を繋いだ。
それはまるでクラディウスとジュリアスが留守の間、支え合っていたときのようだった。
「ねぇ、インティア」
「ん?」
「怖くないからね。
不安かもしれないけど、怖くはないからね」
インティアの手を握るリノの手にぐっと力が入った。
「クラディウス様はきちんとインティアのことを好きだと思うよ。
俺にはそう見える」
「ん」
「ね、クラディウス様のこと、好き?」
相変わらずのストレートな質問にインティアの息が軽く止まった。
その短い時間に、クラディウスの負傷を知って信じられないくらい動揺した自分や、ただただクラディウスの無事を祈りながら夜を越したことを思い出した。
「うん、好き。
大好き。
好き……」
言いながらインティアはまた泣き始めた。
「おいで」
リノは慣れたようにインティアを抱き寄せ、あの頃のように背中をなでてやった。
「クラディウスが好き…」
「うん」
「好き…
会いたい…」
「ん。
呼んでこようか?」
「会いたい…」
「うん。インティア、会いに行こう。
好きって言いに行こう。
たまにはインティアから会いにいってあげるといいよ。
きっと喜んでくださるよ」
「うん…」
「よし!」
リノは起き上がり、台所のジュリアスのところに行った。
日もとっぷりと暮れた頃、外套のフードをすっぽりかぶったインティアはジュリアスとリノに連れられて、クラディウスの屋敷に戻った。
三人の来訪の知らせを受けて、クラディウスは走って玄関へ向かった。
その姿が見えるとインティアもふらつきながらも走り出し、両手を伸ばした。
クラディウスはインティアを抱き留めると熱い口づけをした。
インティアは驚いて身体を縮こませた。
これまでクラディウスが人前でこんなことをすることはなかった。
しかし、苦しいほど抱きしめられた腕や激しくなる口づけに嬉しくなって、インティアもクラディウスの背中に腕を回し、久しぶりの胸の中の感触に安堵を覚えた。
ほどなくして、唇と腕を解くとそこにはまだジュリアスとリノがいることに気づいて、インティアは赤面した。
リノはうるうると泣いていた。
クラディウスは二人に礼を言っていた。
インティアも礼を言った。
「また来るといい」
ジュリアスが優しく言い、クラディウスの腕の中にいるインティアのこめかみにキスをしながら、ちらりと流すような視線でクラディウスを見た。
「今日はうちに来てくれてありがとう。
頼りにしてくれて嬉しかった。
いつでも来てね。
俺たち、インティア一人くらい食わせていけるから」
リノはインティアの両手を取りぶんぶん上下に振りながら、ぎらりとクラディウスを見て言った。
そして二人は帰っていった。
クラディウスは苦笑いをしながら二人を見送り、袖口でそっとインティアのこめかみを拭うと横抱きにした。
インティアは小さな声を上げ、クラディウスの首にかじりついた。
「そうやって落ちないように俺につかまっていろ」
インティアはクラディウスの首筋に顔を埋めてうなずいた。
クラディウスは歩き出し、自室へ向かった。
それも繰り返されるノックの音は切羽詰まっていた。
リノは朝食を食べる手を止め、ドアを開けた。
暗い色の外套のフードを目深にかぶった人物がなだれ込んできて、リノに抱きついた。
「インティア、どうしたの?!」
ほのかに漂う香りですぐに誰だかわかったリノがインティアの細い身体を抱き留めた。
ジュリアスもそばに来てドアを閉めると、リノごとインティアをうながし長椅子に座らせた。
リノがフードを取ってやると、ふわふわの髪が現れた。
背中を優しくたたきながら、インティアの腕をほどき、顔を覗いてぎょっとした。
インティアは声を出さずに泣きじゃくっていた。
目の下のひどい隈。
かさかさのほっぺ。
青い顔色。
抱きしめた感触からするとちょっと痩せていた。
そんなインティアを見て、ジュリアスはすぐに湯を沸かし直し紅茶を淹れ始めた。
リノはインティアの背中を優しくなで続けた。
「ジュリさんが紅茶を淹れてくれているよ。
きっとインティアのために砂糖が入った甘いヤツ。
もう少し待ってね」
涙の止まらないインティアは微かにうなずいた。
ほどなくして、ジュリアスがソーサーつきのカップを運んできた。
ラバグルトが探してくれ、リノとジュリアスが新居として構えた家にはインティアのために高級な紅茶と砂糖、そして一脚だけの磁器のカップとソーサーがおいてあった。
「飲めるか?」
インティアはようやくリノから腕を離し、そっとジュリアスからカップを受け取ると一口飲んで、すぐにソーサーに置いてリノにしがみついた。
それでもジュリアスは満足そうにし、自分はテーブルに戻って朝食の続きを食べ、手早く終わらせた。
「リノ、行ってくる」
「あ、ジュリさん、いってらっしゃい」
ジュリアスは長椅子のリノのところに行き、短いキスを唇に落とした。
それからインティアのぼさぼさになっている髪を何度か大きな手で梳き、
「昼には戻ってくる。
昼食を作ってやる。
それまで寝ていろ」
と言うと、優しくこめかみにキスをした。
「では、インティアのこと、よろしくお願いします」
「はい。
ジュリさんもお休みの日なのに気をつけてね」
「買い物は俺が行く」
「え、でも俺行くし」
「インティアを一人にしないほうがいい。
そばにいてやってくれ」
「そうだね。
じゃあ、お願いします」
「はい」
そうしてジュリアスは出かけていった。
インティアはひとしきり泣いて、すっかり冷めてしまった甘い紅茶を飲むと少し落ち着いたようだった。
ふらふらしていたので、リノはインティアを自分のベッドに寝かしてやった。
しばらくは不安そうにしていたが、手を握ってやるとやがて安心したのか眠り始めた。
一体、なにがあったんだろう?
リノは心配そうにやつれたインティアを見た。
自分たちがクラディウスの離れから出るきっかけはインティアとクラディウスとが想いを通わせたことがわかったからだ。
それから何度か会ったが、インティアは幸せそうだった。
辛辣なことを言ったり、我儘でラバグルトを困らせることもあったが、かわいらしいものだった。
自分の男娼館アルティシモを閉じ、男娼を辞めてから、インティアはますます白い天使のようになっていった。
リノと一緒に救護室でユエの手伝いをしていたときに歌った子守唄は評判がよく、今でもたまにユエが手伝う街の病院へリノと一緒に行き歌うことがあった。
クラディウスのことを話すときのインティアは、頬を薔薇色に染め、まるで少女のようだった。
「一夜の夢を見せる相手」ではなく、クラディウスにたっぷりと甘く愛されているのがよくわかるような変化に、リノも赤面することが多かった。
そのインティアがこんなになっちゃうだなんて、なにがあったの?
リノはインティアの目の端に残っていた涙を指で拭ってやると、髪を何度かなで、そしてベッドのそばに椅子を持ってきて本を開き読み始めた。
それはリノが今、関心を持っていることについて書かれているもので、リノの思いを知ったユエが人から借りてきてくれた本だった。
まだすらすらとは読めないし、難しい言葉がたくさん出てきたが、リノは夢中になって読んでいた。
コトンというドアをそっと開ける音で、リノは本から顔を上げた。
ジュリアスが顔を覗かせた。
トレイの上にはサンドイッチとスープが二人分載っていた。
「どうだ?」
「おかえり、ジュリさん。
あれからすぐに寝たよ。
全然起きない」
二人は小声で話しながら、ジュリアスのベッドに並んで腰かけ、おかえりのキスを交わした。
「よっぽど寝ていないな。
それに食べてもいない」
こんこんと眠るインティアを見て、ジュリアスが言った。
二人はジュリアスが作ったチーズとピクルスのサンドイッチを食べ、柔らかな味の野菜スープを飲んだ。
「このスープなら、あまり食べていないインティアにも飲めるね」
「好きならミルクを入れてもいい」
「あ、ミルクも買ってきたんだ。
ジュリさん、インティアにあまーい」
「ミルクティーにもできるしな」
「やっさしーい」
「リノにも優しくしているつもりだが」
拗ねたのかと思い、ジュリアスはリノに甘いキスを落とした。
リノは笑いながらそれを受けながら思った。
インティアに甘いのは二人ともだけどね。
昼過ぎにインティアは目が覚めた。
二人が甲斐甲斐しく世話をし、インティアはジュリアスの野菜スープを半分飲み、パンをひとかけら食べた。
三日ぶりにまともに食事をした、という。
二人はインティアを心配そうに見た。
インティアはまた不安そうにしていた。
リノはベッドの端にに座りインティアの肩を抱いた。
するとインティアはまた泣き出した。
それをジュリアスが柔らかな布で拭きとってやった。
「そんなに泣いて、どうした?
クラディウスが意地の悪いことをしたのか?」
ジュリアスがその名前を口にするとインティアの身体に緊張が走った。
「……そんなこと、しない」
「しかし原因はあいつだろう?」
「あ、ジュリさん、今日クラディウス様に会ったんだよね?
どうだった?」
「大荒れだ。
仕事にならないから、放ってきた」
「ええっ!
もしかして、インティア、黙って出てきちゃったの?」
「らしいな。
憔悴した顔で居場所を知らないか、と尋ねてきた」
「ジュリアス、言っちゃったの?
僕、どうしよう…」
「それは言うだろう」
ジュリアスはインティアの頭をなでた。
「愛する人が行方不明だなんて、気がどうにかなりそうだろう?」
「…あ」
「心配するな。
ここにいることは言ったが、インティアが自分で帰りたいと思うまで送ってもいかないし、迎えにもこないでほしいと言ってある」
「クラディウス様はそれで納得したの?」
「さあ。
でも『よろしく頼む』と言っていた。
居場所がわかって、まずは一安心したのかもな。
だから、インティア、安心してここにいるといい」
「そうだよ、インティア、好きなだけいてよ。
今晩は俺とジュリさんとでトマト煮込みを作るからね。
食べてみて」
視線を合わせ、微笑み合う二人を見て、インティアはぽそりと言った。
「いいな」
「ん?インティアも一緒に作る?」
「そうじゃなくて」
「?」
「仲がよくていいな」
「インティアもクラディウス様と仲がいいでしょ?」
インティアは大きく首を振った。
そしてうなだれながら言った。
「最近、ろくにしゃべってない。
なんとなく避けられている気がする」
「まさか!」
「でも、僕も避けていたかも」
インティアは膝を抱えて、顔を埋めた。
「怖いんだ」
「?」
「僕、人を好きになるのは初めてなんだ…」
「え、だって、そんな…?」
インティアは色恋に長けていると思っていたのでリノが驚いているとジュリアスがリノに代わって頭をなでた。
「そうか、インティアは『一夜の夢』を見せるのが仕事だったから、これまで人を好きになったことがないのか」
男娼として甘い時間と身体を売る仕事。
疑似恋愛のようなものはしてきたが、仕事だと割り切っていた。
もし本気になったら辛すぎると思ったのか。
それとも高級男娼になってから回数を重ねて会う人物も限られていて、その中にはクラディウスのために情報を得るために抱かれることも多かったせいなのか。
ジュリアスが言うように、インティアはこれまで人を好きになったことがなかった。
「怖い。
どんどん好きになっていく。
だんだんクラディウスがいなくちゃダメになっていく気がする。
止めたくても止まらない」
「ダメになんかならないよ」
「なるよ!
クラディウスが騎士団に行ったら、僕はずっと一人だ。
一人でクラディウスが帰ってくることだけを待っている。
それだけだ。
それしかない」
クラディウスが時折見せる優しい言動に、呆れるほど反応する。
いつもそれを期待している。
一人になるとクラディウスのことばかり考えてしまう。
かといって、インティアが気軽に屋敷の外に出るには危険が多すぎた。
「花街のインティア」はとても有名だったし、そんな彼がどこかで働くにも雇ってもらえそうにない。
それに「男娼狂いの騎士団長」の噂はまだ街なかでは色濃く話されている。
その噂を助長したくはない。
そんなことをインティアは泣きながら話した。
「僕には居場所がない。
僕は僕を保てない。
こんなことは初めてだ。
つらくて、でもクラディウスの前では平気なふりをしていた。
でも、もうどうにもならなくなって。
どんどん好きになっていくのに、怖くて。
待つしかできないのにも怖くなって。
だんだんクラディウスの前にいることもつらくなってきて、僕がちょっと距離を取ったんだ。
そうしたら、クラディウスも距離を取ってくれて。
しゃべらないしハグもしないし、だんだん近づきもしなくなった。
だけど寂しくて、もっとそばにいたいのに、視界にクラディウスが入ると怖くなって…」
話していると感情が高ぶったのか、落ちる涙が多くなり、しまいには話せなくなってしまった。
「それで逃げ出してきたのか」
膝に顔を埋めてしまったが、ジュリアスの問いにインティアは頷いた。
リノは肩をずっとなでている。
しばらくしてインティアは絞り出すように言った。
「こんなこと、今までなかった。
こんなに自分が弱いとは知らなかった。
こんなに振り回されるとは知らなかった。
人を好きになることがこんなに怖いことだなんて知らなかった。
こういうこと話せる人もいなくて。
でも一人で抱えているのがもう難しくなってきて」
「そうか。
クラディウスも恋愛がうまかったら、インティアももう少し楽だったかもしれないな」
ジュリアスはインティアの髪をなでた。
「人を好きになるのは、自分が自分でいられなくなって恐ろしいものだ。
クラディウスも同じように思っているはずだ」
「クラディウスも?」
「ああ。
あんなふうに寝不足になり疲れを見せているクラディウスはそう見えるがな」
「ねぇ、ジュリアスも怖い?」
「ああ、俺も人を好きになることは怖いよ」
「でもどうしてそんなに平気でいられるの?」
「そうだな。
リノに救われているかな」
突然のジュリアスの告白にリノが慌てる。
ジュリアスはそれに気づかないふりをして続ける。
「俺は行くところも帰るところも失ってしまった。
けれどリノはここにいていい、と自分の場所に招き入れてくれた。
それは大きなことだった」
「素敵だね」
インティアは少し顔を上げ、うっとりと言った。
そして、リノをちらりと見た。
「ねぇ、リノは?
人を好きになるって怖い?」
「ううん、だって気がついたら好きになっていて、どんどん好きになっていって幸せだよ」
あっけらかんというリノにインティアは顔を全部上げ、ジュリアスと共に彼を見た。
二人の反応に驚き、少し照れながらリノは言った。
「え、なんで?
どんどん好きになっていってもさ、ジュリさんがそれを受け留めてくれるし、俺が『好き』って言ったら『好き』って返してくれるし、すっごく幸せじゃん。
そうしたら幸せがどんどん大きくなっていくんだよ。
俺、すっごく嬉しい」
ジュリアスもインティアも、リノの言葉と大きくにっこり笑う姿に顔を真っ赤にした。
ここまでストレートに言われると照れてしまう。
しかし当の本人は二人が赤くなっている理由がわからなかった。
「ね、インティアも『好き』って言ってる?」
「あ…」
「あ?」
「僕、一度も言ってない」
「えええええええ!!
なんで?
言ってあげなよ」
「だって恥ずかしい」
「いやいやいやいや、それは言ってあげてよ」
「……う、気が向いたら」
「もう!」
「だってクラディウスだってそんなに言わないし!
僕のことを求めてもこないし!」
「え?」
今度はリノが真っ赤になる番だった。
「リノ、なに赤くなってるの?
さっきまであんなに恥ずかしいこと言ってたのに、急にここで赤くなるなんて」
「いや、クラディウス様ってインティアとその…たくさんあの…」
「もういい!
聞いてるこっちが恥ずかしくなるよ、リノ!」
インティアも顔が赤いままリノに言った。
が、ふと悲しげな表情を浮かべる。
「ね、その…全然してないの?」
リノがまたもやストレートに問う。
「……」
「ほんとに…?」
「……」
「まじで?!」
「そ、そうだよ!
王都警備に行く前に乱暴に抱かれて以来、一度もしてない!」
あまりに顔の間近で聞かれ、いたたまれなくなってインティアもヤケ気味に答えた。
「それって、ちょっと待ってよ…
えー!もう8か月くらい経つじゃん!」
「そうだよ!
恥ずかしいから何度も聞かないで!」
「いや…ごめん。
ってか、クラディウス様がすごい…」
「は?」
「好きな人がそばにいるんでしょ?
警備の5か月は仕方なかったとしても、3か月だよ!
俺たちがここに来て2か月くらい経つのに、まだ一度もって…やっぱりすごい…」
「いやー、もうやめて!
こんなのリノじゃないよ!
ジュリアスがリノをこんなにしたんだ!」
赤くなった顔を両手で隠しながらインティアが声を上げた。
ジュリアスは、ジャスティの言う「わんことにゃんこ」のやりとりを面白そうに見ていたが、そろそろかと思い口を開いた。
「なにかクラディウスにも考えがあるのかもしれないな。
欲しいものはどうやってでも手に入れる男が、触れてこないなんて」
「ジュリアスまで、もう!」
インティアが上掛けの中に潜ってしまったので、この場はそれで終わりになった。
ほどなくしてジュリアスが甘いミルクティーを淹れてきて、三人で飲んだ。
そのあとジュリアスは夕飯のトマト煮込みの仕込みを始めた。
手伝いを申し出たリノをやんわりと断り、インティアと一緒にいさせた。
二人はひさしぶりに同じベッドに横になり手を繋いだ。
それはまるでクラディウスとジュリアスが留守の間、支え合っていたときのようだった。
「ねぇ、インティア」
「ん?」
「怖くないからね。
不安かもしれないけど、怖くはないからね」
インティアの手を握るリノの手にぐっと力が入った。
「クラディウス様はきちんとインティアのことを好きだと思うよ。
俺にはそう見える」
「ん」
「ね、クラディウス様のこと、好き?」
相変わらずのストレートな質問にインティアの息が軽く止まった。
その短い時間に、クラディウスの負傷を知って信じられないくらい動揺した自分や、ただただクラディウスの無事を祈りながら夜を越したことを思い出した。
「うん、好き。
大好き。
好き……」
言いながらインティアはまた泣き始めた。
「おいで」
リノは慣れたようにインティアを抱き寄せ、あの頃のように背中をなでてやった。
「クラディウスが好き…」
「うん」
「好き…
会いたい…」
「ん。
呼んでこようか?」
「会いたい…」
「うん。インティア、会いに行こう。
好きって言いに行こう。
たまにはインティアから会いにいってあげるといいよ。
きっと喜んでくださるよ」
「うん…」
「よし!」
リノは起き上がり、台所のジュリアスのところに行った。
日もとっぷりと暮れた頃、外套のフードをすっぽりかぶったインティアはジュリアスとリノに連れられて、クラディウスの屋敷に戻った。
三人の来訪の知らせを受けて、クラディウスは走って玄関へ向かった。
その姿が見えるとインティアもふらつきながらも走り出し、両手を伸ばした。
クラディウスはインティアを抱き留めると熱い口づけをした。
インティアは驚いて身体を縮こませた。
これまでクラディウスが人前でこんなことをすることはなかった。
しかし、苦しいほど抱きしめられた腕や激しくなる口づけに嬉しくなって、インティアもクラディウスの背中に腕を回し、久しぶりの胸の中の感触に安堵を覚えた。
ほどなくして、唇と腕を解くとそこにはまだジュリアスとリノがいることに気づいて、インティアは赤面した。
リノはうるうると泣いていた。
クラディウスは二人に礼を言っていた。
インティアも礼を言った。
「また来るといい」
ジュリアスが優しく言い、クラディウスの腕の中にいるインティアのこめかみにキスをしながら、ちらりと流すような視線でクラディウスを見た。
「今日はうちに来てくれてありがとう。
頼りにしてくれて嬉しかった。
いつでも来てね。
俺たち、インティア一人くらい食わせていけるから」
リノはインティアの両手を取りぶんぶん上下に振りながら、ぎらりとクラディウスを見て言った。
そして二人は帰っていった。
クラディウスは苦笑いをしながら二人を見送り、袖口でそっとインティアのこめかみを拭うと横抱きにした。
インティアは小さな声を上げ、クラディウスの首にかじりついた。
「そうやって落ちないように俺につかまっていろ」
インティアはクラディウスの首筋に顔を埋めてうなずいた。
クラディウスは歩き出し、自室へ向かった。
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