Commander

Kyrie

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第4話

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ゲオルグは扱いが難しい男だった。
無表情、無感情、不感症。
奥になにか秘めているような力強さを持ち、見た目もまずまず、立派な身体もしているので、店では人気の男になり得る要素はたくさん持っている。
しかし、店で働き始めた当初は客からの苦情も多かった。
すぐにへたることなく加虐に耐え得るのは好ましかったが、反応がなく、客は全く性的興奮を持てなかった。
ある程度の手応えはほしいが、あれではただのでかい人形のようだ。

人は反応がないと、つまらなく感じてしまう。
当然のことだ。

アルベルトはある人物にゲオルグをしばらく預けることにした。
特別研修と名づけられたそれを経たゲオルグは多少は反応を見せるようになった。
報告によるとぐずぐずに蕩けて想像もしなかった痴態を見せたということだったが、その後も店ではその欠片を感じ取ることもできなかった。
以前指名した客はゲオルグを指名しようとは思わなかったし、新規の指名でも思うような反応がないので客の関心は離れていった。

4人の男もそれを知って若宮にゲオルグをあてがった。






「こんなに反応しているのに。
ねえ、ゲオルグ、乳首は立っていますか」

「はい」

さわってほしい。その手袋がはまった手でさわってほしい。
ゲオルグの胸筋は大きく、こんもりとして形もきれいだった。
揉めば弾力があり、少し下向きの乳首は感じれば三角に尖る。

「胸をさわられるのは好き?」

「はい」

「腹筋も割れていそうだなぁ。
シックスパック?」

首を振る。

「フォー?」

「はい」

「それは素敵だ。
この服の下はどうなっているんでしょうね」

熱くて堪らなかった。
胸も尖り、下着の中では半立ちになっていた。
しかしそれらはすべていかつい上着に覆われて、身体の反応を知っているのはゲオルグだけだ。
思わず腰を動かしそうになるのを我慢する。

「貴方の四つに割れた腹筋の筋に沿って指を滑らせるのは楽しそうだ。
腹筋弱そうですから」

目の奥で若宮が笑う。
すべてを見透かされているのに、気がつかないふりをされているようでゲオルグはもどかしくなってきた。
しかし、コマンドは厳守だ。

「そのまま鼠径部までなぞるのはどうですか」

「はい」

耐えきれなくなって、思わずゲオルグは若宮が自分にふれるのを想像してしまった。
まずは胸の真ん中の谷間のラインをすぅっと黒革に覆われた人差し指で。
それから乳首を中心にして円を描くように胸筋を。
「ここは乱暴なのがいいですか」
「はい」
返事をすると乳首をぎゅうぎゅうと摘ままれ、ペニスがぐんと上向きになる。
「やっぱりここ、好きなんですね」
若宮はくすくすと笑うと左右の胸を同じようにさわり、最後には掌で揉みしだく。
息が上がり、身体が熱く赤くなる。
若宮の指はゲオルグの腹筋の割れ目をたどっていく。
その頃にはアナルも反応を始める。
自分の内側が厚ぼったくなり、ひどくうねっているのを感じる。
鼠径部をたどり、指が毛の近くに来そうになると思わず生唾を飲んでしまった。




恐ろしく大きな音で、ゲオルグが生唾を飲む音が辺りに響いた。
若宮は涼しい顔をして目の前に立っていた。

「やっぱりかわいい人じゃないですか」

4人の男も、息を潜めて覗き見をしていた他のテーブルの客も、そしてアルベルトも初めてゲオルグの蕩けそうな顔を見た。
ちらりと若宮が視線を走らせたのは、分厚く重い上着の上からでもわかるほど限界まで反応したゲオルグの股間だった。

「きっとアナルの奥もすごいことになっているんでしょうね」

疼きがぐんぐん増した。
早く。
早く挿れてほしい。
こすってほしい。
思わず腰が浮きそうになる。

「だめです。
座っていなさい」

すかさず若宮が声をかけると、ゲオルグは悶えそうになりながら、座り直した。

「はい」

そんなになってからも背筋は伸びたままだった。
耐えに耐えて目の縁を赤くして若宮を睨むが色気が増すだけであった。
つらくて眉根を寄せながらも、無表情を保とうとするゲオルグの姿に、覗き見をしている客の中には興奮する者もいた。



つらくてつらくて、目の前が真っ白になりそうだった。
どこも乱れることのない若宮は、気がつくとゲオルグの右側にいた。
そして腰を折るとゲオルグの耳元に口を寄せた。
そっとかかる息でさえ、身体が動きそうになる。

「最後のコマンドを言いましょう」

若宮が他の者には聞こえないように囁いた。

「いきなさい」

「は………っっっっ」

ゲオルグは返事を最後まで言うことができないまま、射精した。
大声を出しそうになるのを奥歯を噛みしめて耐える。
思いっきり自由にできない分、爆ぜて発散するのではなく、内へ内へと深く深く感じていく。

もうだめだった。
ゲオルグは体勢を保てなくなり、遂に椅子から落ちて床に倒れ込んでしまった。
アルベルトが駆けつける。

それを冷ややかな目で見下ろし、若宮は手袋を外すとテーブルの上に投げた。

「お陰様で十分愉しませていただきました。
ありがとうございます。
それでは失礼いたします」

4人の男に挨拶をし、アルベルトにゲオルグのことを頼むと若宮は帰り支度をして席を立った。
黒服たちとゲオルグを介抱していたアルベルトが見ると、4人の男たちはただただ呆然とソファに座っているだけだった。

「さすがに2人とも一力さんの息がかかっているだけありますね」

聞こえないようにしたつもりだが、アルベルトまでもぼそりと心の内を呟いてしまっていた。








<了>



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