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034. 番外編 気怠い日曜日の朝

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腕を伸ばし、恋人のウエストに巻きつけて抱きしめる。
そうされた靖友は嫌がりもせず、むしろ嬉しそうにティグの肩を抱く。

ソファでのこういうやり取りをティグは好む。
自分に甘えているんだな、とわかるので靖友はそっとティグの目の横にキスをする。


ティグは充実していた。
靖友が心配していた「ティグのひとりの時間」は、靖友が忙しくなったことで簡単に確保できるようになった。
5月の連休も終わり、大学も本格的に始まり、バイトもあり、友達との飲みもあり、の学生生活が始まると、ティグがひとりで過ごすことも増えた。

あれから2人とも家にいるのにばらばらで寝ることはしていない。
しかし、ティグの寝袋は4階の靖友の部屋に置かれたままだった。

「ちょっと昼寝するのにいいんですよ。
ごろっとするのに。
布団じゃ部屋もカッコつかないし。
それに」

靖友はにやにやしてティグに言った。

「あの寝袋、ティグさんの匂いがするから」

寝袋は基本洗わないので陰干したり、専用のシーツを使ってそれを洗濯したりするくらいだ。
そう言われたティグは急に気恥ずかしくなってしまった。

「やっぱり靖友くんの寝袋、買おうよ」

「いやです。
あれがいいんです。
取っていかないでくださいね」

そんなふうに言われると、弱い。
ティグは靖友に押し切られることになる。






まだ18歳と半年くらいなのに、靖友はどこか大人っぽかった。
年相応の振る舞いはするのに、とてつもなく懐が広くてときどきティグも戸惑った。
思わず、「自分が18のときはどうだったかな」と考えてしまうが、すぐにそれを止める。
18のティグは例のフォトグラファーの元カレへの気持ちに気づいたばかりの頃であった。
すぐに恋人になったわけではないし、元カレ以外の人とのつきあいも、カラダだけの関係を持ったこともあった。
が、その頃は元カレに勝る人は現れなかった。

よって、ティグにとって靖友は、2人目の恋人、それも随分歳が離れた恋人、であった。


ほとんど連絡も取れず年に1回くらいしか会えなくなると、元カレとの関係がもう終わりに近づいていることはティグにもわかっていた。
しかし、関係が終わってそんなにすぐにまた誰かを好きになるとは思ってもいなかった。
当分、ひとりでいるのだと思っていた。
靖友とのことはなにもかも、予想外のことだった。



靖友と親しくなるなかで、問われるままにちらりちらりと元カレのことを話すこともあった。
まだ恋人になる前のことで、ちょっと愚痴めいた内容になっていた。
それを覚えているせいか、靖友はティグにとても甘く、そして優しい。

あんなに余裕がなさそうで切羽詰まっているにもかかわらず、丁寧にティグを抱く。
熱く激しく求められもするが、理性が飛んでしまうようなことはない。
それこそ、18のコがそれで満足しているのか気になった。

自分は身体も大きいし、丈夫だと思っている。
もう少し乱暴にしても大丈夫なのに。
と思ってはいるが、口にしたことはない。
靖友に引かれることに不安があるからだ。
でも、自分もどこかもどかしいことがある。




今も少しすれ違いの生活を経て、久しぶりに肌を合わせている。
恥ずかしいけれど、燃える。
もっともっと欲しくなる。
なのに靖友は相変わらず、ティグを優しく優しく抱く。
もどかしい。
まだそんなに回数を重ねていないとき、力の加減を誤った靖友がティグの肩に爪を立てひっかいたことがあった。
出血もなく、軽くみみず腫れになっただけなのだが、靖友は固まってしまった。
それまでも柔らかく優しく抱いていたが、それ以降ますますその傾向が強くなった。
優しいのが嫌なわけではない。
むしろ、元カレとの最後の数年にしたおざなりのセックスはティグの自尊心を踏みにじるばかりだったので、靖友のまっさらな優しさに包まれるようなセックスはティグを満たした。

しかし、それだけでは物足りないこともある。
今みたいに。

少々のことでは壊れることはないと思う。
それに靖友にありったけ求められ、その熱を受け留めてみたいとも思う。

「や、靖友くん」

あちこちいじられ、少し息の上がったティグが靖友を制した。

「はい?」

靖友は少し不満げに、でも自分がティグの嫌がることをしたのかもしれないと怖れた目をして手と口を止めた。

「あの…」

真っすぐに刺さる黒い目に恥ずかしくなり、ティグは靖友の首に腕を回し引き寄せる。

「なになに?」

靖友はティグの上から覆いかぶさる形になる。

「俺、小さくないし弱くもないから」

「うん?
知ってますよ。
カッコよくてかわいいティグさんです」

「あの、だから」

「?」

「多少乱暴に抱いても、だいじょう…ぶだから」

「えー、できませんよー!」

靖友が大きな声を上げる。

「かわいいかわいいティグさんにそんなことできません!」

「俺が」

靖友の口を塞ぐようにぐいぐいとティグは力を込め、靖友の顔を胸に抱く。

「そうしてほしいんだ。
こういうの、いや?」

「ふぁっ!」

間抜けた声が上がった。

「ちょ…っ、イっちゃうかと思った」

靖友がじたばたし、ティグの腕の力が緩んだのがわかるとぐいとベッドに肘をついてティグの顔を見た。

「どうしたの、ティグさん?
なにかあったの?」

小さな丸い耳をなでながら、靖友は少し心配そうに聞いた。

「……そうしてほしい、って思った、だけ」

「俺に?
乱暴に?」

「……」

「うーん、俺、そんなこと言われたらめちゃくちゃしますよ」

「いい。
靖友くん、めちゃめちゃにして!」

靖友はがりっと奥歯を噛み、改めてティグを見下ろした。

「えっろ。
そんなに欲情してたんだ、ティグさん。
俺、嬉しいな」

ちゅっと黒い鼻の頭にキスをする。

「本当に嫌だったら、俺を殴りつけても止めてくれる?」

「う、うん」

「俺、自信ないんだよ、自分を止めるの。
絶対に止めてよ!
ぶん殴ってよ!」

「ああ」

「俺のこと、嫌いになる前に止めて。
いい?」

「ん」

「じゃあ、最初からだ」

ちゅっと靖友が小さなキスをティグの唇の上に落とした。
ついばむようなキスから、舌を絡め、顔の角度を変え、お互いに顔や身体をまさぐりながら深いキスへと変わっていく。

いつもはそこから優しい愛撫が始まるのだが、今日は違った。
身体中を舐め、噛まれた。
お互いの全裸は見てはいるものの、ここまで執拗に見られ、舐められ、噛まれたことがなかった。

おまけに、

「ね、ティグさん、どう?」

「ど…うって…」

「どんな感じか、ちゅっ、言って……じゅるっ」

吸われたり舐められたりしながら、靖友にそんなことを聞かれるとは思わなかった。

「ん……どう?」

答えるより喘ぎ声がこぼれてしまうほうが先だ。
それに

「気持ち、い…よ…」

となんとか答えれば、

「どこが?
どんなふうに?
中、どう?」

と、深いストロークで突かれながら質問が増えていく。
戸惑い「え」となっていると、

「じゃあ、中、どう?」

「ど、どう…?
んっ、あっ」

「ぐちゃぐちゃいってるでしょ。
気持ち、い?」

「ん」

「じゃあ、さ、俺の形、わかる?」

「ふぁっ?!」

「あれ、だめかな。
これで、ど?」

さっきより力強く突かれて、「あ」や「ふ」しか言えなくなっている。

「ねー、教えて。
どんなふうに感じてるの?」

「言葉に、できな…」

「そうなの?
残念だなぁ。
いつか、きちんと教えっ、てっ。
どこを触られたらどんなふうに感じるのか、俺、知りたいっ、か、らっ」

腰を振りながら靖友は言う。

「今日さ、ティグさん、いつもより感じて、る?
なんか、中、すごくて、えろい。
俺、めちゃめちゃ、気持ちいい」

熱っぽい目でティグを射抜きながら、動きが早くなる。

「あっ、あっ」

「ぐっ、やっばっ。
それ、やばいやばいやばいっ。
中、締まるしっ、あ、もう、出ちゃうっっっ」

靖友が何か言うたびに内側が靖友をとらえ締めつけ、逃がさないように奥へと引きずり込んでいるのが自分でもわかった。

あ、っと思ったときにはドライで飛んだ。
これまでドライでイったことはあったが、それはもう随分前のことだった。
快感で全身と頭の芯が痺れ、そしてなにもできなくなった。






***
気怠い朝がやってきた。
「ん」とうめきながら、ティグが目を開くと靖友が心配そうに顔を覗いていた。
「おはよう」と言おうとしたが、声が掠れてうまく出なかった。
靖友が水の入ったグラスを渡してくれたので飲み干した。

「ごめんなさい、ティグさん、俺、やりすぎた…」

しょんぼりとする靖友はかわいかった。

「やりすぎた、って?」

「跡、すごいことになってる」

「ほんと?」

「うん」

「確認してみようか。
手、貸して」






飛んでしまったまま、眠ってしまったらしい。
靖友は赤い目をしていた。
心配させたのかもしれない。
それにこの怠さは一人で歩けないかもしれないと察した。
ティグは靖友に支えられ、バスルームへ向かった。

姿見に全裸の自分を映してみる。

「あ、ほんとだ」

無数のキスマークと幾つかの噛み傷。
最も目を惹くのが、両乳首の周りについた歯形だろう。

「すごいね」

「ごめん。ごめんなさい。
あの……痛くない?」

靖友はおっぱいが好きなんだな、と改めて思いながらティグは鏡の中の自分の身体を見直した。

「痛みはないけど…
後ろ、どうなってる?」

「………」

鏡の中の全裸の靖友はうなだれた。

「靖友くん?」

「前と同じようなことに……
ほんっとうにっ!
本当にごめんなさい!」

どんどん元気がなくなる靖友の首にティグは腕を回した。

「俺、めちゃくちゃにして、って言ったよ」

「………」

靖友の額に自分の額を合わせる。

「嬉しかったよ。
気持ちよかったし……ちょっと恥ずかしかったけど。
それに、あの……」

「?」

「昨日は……ドライでイっちゃったんだ…
久しぶりで……
そのまま落ちちゃったみたい。
ごめんね」

「……ドライ…」

「………」

「気持ちよかった、ってこと?」

「ん」

「ほんと?」

「ん、ほんと」

安心したのか、靖友もティグの背中に腕を回した。

「今、靖友くんでいっぱいだよ、俺」

「…っ」

「シャワー、一緒に浴びよっか。
身体拭いてくれたんだよね、ありがとう。
俺、重たかったでしょ」

「ううん、それは大丈夫。
あの、身体、つらくない?」

「ん」

ティグは靖友の耳に口を近づける。

「また、あんなふうに抱いてくれる?」

囁かれた言葉に靖友が反応する。

「喜んで!」


2人はバスルームのドアを閉める。
水音が聞こえる。
そして声。



気怠い日曜日の朝。











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