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009. キッチンでプレゼント(1)
1月10月
***
校門を出ると約束通りレネが僕を待っていた。
「スーツは迫力ありすぎるからやめて」とお願いしたので、カジュアルなジャケットを羽織っている。
いつもよりちょっとたてがみが念入りにセットされ、そして目をひく大きな赤い薔薇の花束。
一抱えもある花束を腕にして、ジャケットの袖を少しずらし時計を確認している姿はカッコいい。
「藤堂、あれ…」
自転車に乗った靖友くんが横で掠れた声で聞いてくる。
「うん、今日はレネが迎えに来てくれているから」
靖友くんは呆然としている。
だよね。
でも、両親の挨拶にスリーピースのスーツを着こみ、投げキッスの動画を撮るためにタキシードを着るレネだから。
僕の感覚もおかしくなっているのかも。
それよりレネの顔がライオンだってほうが、まだ慣れない。
出会ってから半年も経っているのに。
みんな、どう見えているんだろう。
怖くて聞けないし、最近細かいことがどうでもよくなった。
頭で考えてたら、前に進めないんだもの。
「相変わらず牽制がすげぇなぁ」
靖友くんがつぶやく。
牽制?
レネが僕の姿をとらえると、彼は僕のほうに速足で近づいてきた。
「真人!」
そして片腕で僕を抱き寄せ、いつものようにこめかみにキスをし、
「お誕生日おめでとう!」
と言って、薔薇の花束をくれた。
僕は鞄を足元に置き、両手でそれを受け取った。
ずっしりと重い。
ゴージャスな薔薇だ。
光の加減で黒にも見えそうな深い紅の花びらが幾重にも重なっている。
「ありがとう」
僕がお礼を言うとレネは満足そうに微笑み、やっと靖友くんを見た。
「やあ、靖友くん、こんにちは」
「こ、こんにちは、レネさん。
すごい花束ですね」
靖友くんは自転車から下りてレネに挨拶をした。
「初めて真人の誕生日を祝うからね」
レネの満面の笑みに靖友くんは押され気味だ。
「レネ、迎えに来てくれてありがとう。
靖友くん、今日はレネと帰るから」
「お、おう。
藤堂、また明日な」
「うん、また明日!」
いつもなら手を振るところだけど、今日は両手が塞がっているのでちょっと大きめの声でさよならした。
靖友くんは軽く手を上げ、レネに会釈をすると自転車で走らせていった。
僕の鞄を持ったレネの隣を薔薇を抱えた僕が歩く。
着いたところはレークス。
店の明かりがついていない。
疑問に思った僕に、レネは入口のドアの張り紙を見るように言う。
『親愛なるレークスを愛してくれるみなさんへ
本日は大切な人の誕生日を祝うため臨時休業とします
Love,
Leone & Tigre』
えええっ?
僕の誕生日を祝うためにレークスをお休みにしたの?
僕が驚いていると、レネは鼻息荒く気合の入った様子で「さ、行こう」と3階に上がっていった。
3階のティグの部屋に行くと、にゅっとトラの顔が飛び出した。
「待ってたよ、おかえり」
そして僕が抱えている花束を見ると、
「また派手なのにしたんだな」
と大きな花瓶を用意してくれたので、僕はそこに薔薇を活けた。
「さあ、こっちこっち」
レネは待ちきれない様子で僕をソファの定位置に座らせる。
ティグもカーテンを閉めて回り、明かりを消した。
薄暗い中、しばらくするとごそごそしていたキッチンが静かになって、ろうそくが16本灯された小ぶりのホールケーキが運ばれてきた。
オレンジの炎に照らされたケーキはホワイトチョコレートのプレートが中央に置かれていて、その周りを白いふわふわの生クリームと赤い苺で飾られていた。
「Happy birthday to you!」
レネとティグがいい声で歌い出した。
僕は恥ずかしいけどこみ上げる嬉しさのせいで、にやにやしてしまった。
二人は歌い終わると期待の籠った目をして僕を見た。
僕は軽くうなずいて、深呼吸を一度すると大きく息を吸い込んで「ふぅぅぅぅっ!」とろうそくの火を吹き消した。
「おめでとう!」
レネが腕を広げたので僕もそこにすっぽりとはまりこみ「ありがとう!」とお礼を言うとこめかみにキスをしてくれた。
次にカーテンを開け明かりをつけてくれたティグが腕を広げたので、そこにも行ってハグをし「ありがとう!」と言うと頬に親愛の挨拶のキスをしてくれた。
「ケーキをよく見せて」
僕はいそいそとスマホを取り出した。
明るいところで見ると、ケーキは苺のショートケーキのように見えた。
僕は無意識にごくっと唾を飲み込んだ。
苺のショートケーキは僕にとって特別だ。
でもそれをレネに話したことはない。
「サーヴしてもいいかい?」
「お願いします」
存分にスマホで写真を撮った僕が答えると、レネはうなずき恭しい手つきでまずチョコプレートを外し、そしてナイフを入れた。
中は二層になっていて、苺のムースとチーズのムースだった。
僕がさっぱりしたもののほうが好みだとレネがわかったみたいだった。
レネは僕に通常の一切れのケーキよりやや大きめに切り取り、プレートを添えて僕に渡してくれた。
残りを二等分して、レネとティグの皿に入れた。
ちょうどその頃、ティグが香り高い紅茶を淹れてくれた。
フォークですくったケーキを口に入れた。
甘酸っぱい苺のムースにほんのり塩味《しおみ》の効いたチーズのムースが混ざって、お互いを引き立てていた。
「おいしい!」
たださっぱりしているだけではなくて、チーズがどっしりと安定感を出していた。
見るとレネもティグも幸せそうに目を閉じてケーキを味わっている。
「このマスカルポーネは独特の塩味があるな」
「だろう?
舌の奥のほうでほんのわずかに塩味を感じて消えていくんだ」
「あまりしょっぱいと苺のムースとの相性が台無しだよね」
僕もケーキについて話しながら、ぼんやりと清楚なワンピースを着た女性をイメージしていた。
レネのケーキを食べると大体女性を思い浮かべてしまうが、彼女たちはいつもセクシーでゴージャスだ。
下品にはならないけれど、舞踏会に行けそうなクラシカルなドレスを着ているときはコルセットでウェストをぎゅっと締め、こぼれ落ちてしまうんじゃないか、と心配になるほど豊満な胸の谷間も露わになるほど胸元が開いている。
あるいは身体のラインに沿ったロングドレスで背中が大胆に開き、そして深いスリットが入っていて歩くたびに綺麗な足が見え隠れし、高いピンヒールがとてもセクシーだ。
しかし今回の彼女は違った。
大胆な露出も身体のラインが強調されたデザインでもない、ワンピース。
足元は華奢な白いサンダルを履いている。
レネは彼女にふれるかふれないかの距離でエスコートしている。
たまに見せる意味深な手つきも今回はしない。
顔を赤く染めている彼女を優しく支えているだけだ。
珍しい。
「真人?」
「あ、はい」
僕は止まっていたらしい。
ティグが心配そうに声をかけた。
「真人はケーキを食べている途中で止まってしまうことがあるんだよ。
なにを考えているのかまだ教えてもらったことはないんだけど」
レネが言う。
あれ、レネにもバレていましたか。
「味わっているんだよ」
僕はケーキをまた一口食べた。
ケーキを楽しんだ僕たちは後片付けをした。
そうしているとティグが大小の容器の入った袋をテーブルの上に置いた。
「はい、これお約束のプレゼント」
「ありがとうございます!」
底の部分が半透明で中身が薄っすらと見える。
「あ、もしかしてキッシュが入ってる?」
「入ってるよ」
ティグがニヤリとして言った。
「嬉しい。
ありがとう、ティグ!」
僕はティグをハグした。
ティグは僕の誕生日プレゼントについて「消えてなくなるものがプレゼントしたい」と言った。
いつまでも残るものではなくて、使ったり食べたりするとなくなるもの。
そこで僕はディナーをリクエストした。
料理上手のティグのキッシュが食べてみたかった。
レネが「ティグのキッシュは最高だ。素晴らしいよ!」と教えてくれるが、僕はまだそれを食べたことがなかった。
本当は三人で食べてもいいと思ったけれど、僕がレネにねだったプレゼントについてレネから聞いたらしい。
ティグは一緒にディナーを食べるのを遠慮し、「レネの家で温めればすぐに食べられるもの」を作って容器に詰める、と言い出した。
レネと僕はティグのディナーが入った袋と赤い薔薇の花束を持って、レネの車に乗り込んだ。
これからは二人で僕の誕生日を過ごす。
思いっきり平日だから、夕ご飯を食べて適当な時間になったらレネが家まで送ってくれることになっている。
ちなみにパパとママとは前の土曜日に祝っている。
「休みの日のほうがゆっくり祝えるのよね」
とママが言い、金曜日のレークスのケーキを休んで土曜日にパパと二人で「ママの好物のホールケーキ」をレークスまで買いに行っている。
ママは「奮発したわよ!」と意気込んでいて、16本のろうそくを僕が吹き消すと一番たくさんケーキを食べていた。
「こんなにたっぷり食べられるだなんて、幸せ~!」
はいはい、ママが幸せならパパも幸せで、そんな両親を見ている息子も幸せです。
二人からは、初めて誕生日プレゼントにお金をもらった。
それまでは中古のPCだったり、ちょっと大人っぽい財布だったり、僕がリクエストをしていたけれど、今年は違った。
「いろいろ迷ったんだけどね、慎一さんと話し合ってこれがいいかな、ってことになったの」
どうりで今年は「プレゼントで欲しいもの」を聞かれなかった。
「やっぱりねぇ、年上の恋人とつき合うとなるといろいろ必要なのよ。
同い年くらいのコとつき合うのとは全然違うんだから!」
ママはうっとりして何かを思い出していた。
そうなるとパパの機嫌が悪くなる。
これでもママはモテたらしいし、パパと結婚するまでに恋人が何人もいたみたい。
パパはいわゆる「ママの元カレ」に嫉妬するんだ。
まずい。
「あら、慎一さん、そんな怖い顔しなくても真人は大丈夫よ。
レネさんだって素敵な人なんだから」
知ってか知らずか、ママはにっこりとパパに笑いかけた。
「そうだね。
真人も16歳か。
すっかり大人になったな」
パパはママにつき合ってあげたのか、「ママの元カレ」への嫉妬を隠して僕のほうを見た。
こんな感じで僕の家でのお祝いは終わった。
***
校門を出ると約束通りレネが僕を待っていた。
「スーツは迫力ありすぎるからやめて」とお願いしたので、カジュアルなジャケットを羽織っている。
いつもよりちょっとたてがみが念入りにセットされ、そして目をひく大きな赤い薔薇の花束。
一抱えもある花束を腕にして、ジャケットの袖を少しずらし時計を確認している姿はカッコいい。
「藤堂、あれ…」
自転車に乗った靖友くんが横で掠れた声で聞いてくる。
「うん、今日はレネが迎えに来てくれているから」
靖友くんは呆然としている。
だよね。
でも、両親の挨拶にスリーピースのスーツを着こみ、投げキッスの動画を撮るためにタキシードを着るレネだから。
僕の感覚もおかしくなっているのかも。
それよりレネの顔がライオンだってほうが、まだ慣れない。
出会ってから半年も経っているのに。
みんな、どう見えているんだろう。
怖くて聞けないし、最近細かいことがどうでもよくなった。
頭で考えてたら、前に進めないんだもの。
「相変わらず牽制がすげぇなぁ」
靖友くんがつぶやく。
牽制?
レネが僕の姿をとらえると、彼は僕のほうに速足で近づいてきた。
「真人!」
そして片腕で僕を抱き寄せ、いつものようにこめかみにキスをし、
「お誕生日おめでとう!」
と言って、薔薇の花束をくれた。
僕は鞄を足元に置き、両手でそれを受け取った。
ずっしりと重い。
ゴージャスな薔薇だ。
光の加減で黒にも見えそうな深い紅の花びらが幾重にも重なっている。
「ありがとう」
僕がお礼を言うとレネは満足そうに微笑み、やっと靖友くんを見た。
「やあ、靖友くん、こんにちは」
「こ、こんにちは、レネさん。
すごい花束ですね」
靖友くんは自転車から下りてレネに挨拶をした。
「初めて真人の誕生日を祝うからね」
レネの満面の笑みに靖友くんは押され気味だ。
「レネ、迎えに来てくれてありがとう。
靖友くん、今日はレネと帰るから」
「お、おう。
藤堂、また明日な」
「うん、また明日!」
いつもなら手を振るところだけど、今日は両手が塞がっているのでちょっと大きめの声でさよならした。
靖友くんは軽く手を上げ、レネに会釈をすると自転車で走らせていった。
僕の鞄を持ったレネの隣を薔薇を抱えた僕が歩く。
着いたところはレークス。
店の明かりがついていない。
疑問に思った僕に、レネは入口のドアの張り紙を見るように言う。
『親愛なるレークスを愛してくれるみなさんへ
本日は大切な人の誕生日を祝うため臨時休業とします
Love,
Leone & Tigre』
えええっ?
僕の誕生日を祝うためにレークスをお休みにしたの?
僕が驚いていると、レネは鼻息荒く気合の入った様子で「さ、行こう」と3階に上がっていった。
3階のティグの部屋に行くと、にゅっとトラの顔が飛び出した。
「待ってたよ、おかえり」
そして僕が抱えている花束を見ると、
「また派手なのにしたんだな」
と大きな花瓶を用意してくれたので、僕はそこに薔薇を活けた。
「さあ、こっちこっち」
レネは待ちきれない様子で僕をソファの定位置に座らせる。
ティグもカーテンを閉めて回り、明かりを消した。
薄暗い中、しばらくするとごそごそしていたキッチンが静かになって、ろうそくが16本灯された小ぶりのホールケーキが運ばれてきた。
オレンジの炎に照らされたケーキはホワイトチョコレートのプレートが中央に置かれていて、その周りを白いふわふわの生クリームと赤い苺で飾られていた。
「Happy birthday to you!」
レネとティグがいい声で歌い出した。
僕は恥ずかしいけどこみ上げる嬉しさのせいで、にやにやしてしまった。
二人は歌い終わると期待の籠った目をして僕を見た。
僕は軽くうなずいて、深呼吸を一度すると大きく息を吸い込んで「ふぅぅぅぅっ!」とろうそくの火を吹き消した。
「おめでとう!」
レネが腕を広げたので僕もそこにすっぽりとはまりこみ「ありがとう!」とお礼を言うとこめかみにキスをしてくれた。
次にカーテンを開け明かりをつけてくれたティグが腕を広げたので、そこにも行ってハグをし「ありがとう!」と言うと頬に親愛の挨拶のキスをしてくれた。
「ケーキをよく見せて」
僕はいそいそとスマホを取り出した。
明るいところで見ると、ケーキは苺のショートケーキのように見えた。
僕は無意識にごくっと唾を飲み込んだ。
苺のショートケーキは僕にとって特別だ。
でもそれをレネに話したことはない。
「サーヴしてもいいかい?」
「お願いします」
存分にスマホで写真を撮った僕が答えると、レネはうなずき恭しい手つきでまずチョコプレートを外し、そしてナイフを入れた。
中は二層になっていて、苺のムースとチーズのムースだった。
僕がさっぱりしたもののほうが好みだとレネがわかったみたいだった。
レネは僕に通常の一切れのケーキよりやや大きめに切り取り、プレートを添えて僕に渡してくれた。
残りを二等分して、レネとティグの皿に入れた。
ちょうどその頃、ティグが香り高い紅茶を淹れてくれた。
フォークですくったケーキを口に入れた。
甘酸っぱい苺のムースにほんのり塩味《しおみ》の効いたチーズのムースが混ざって、お互いを引き立てていた。
「おいしい!」
たださっぱりしているだけではなくて、チーズがどっしりと安定感を出していた。
見るとレネもティグも幸せそうに目を閉じてケーキを味わっている。
「このマスカルポーネは独特の塩味があるな」
「だろう?
舌の奥のほうでほんのわずかに塩味を感じて消えていくんだ」
「あまりしょっぱいと苺のムースとの相性が台無しだよね」
僕もケーキについて話しながら、ぼんやりと清楚なワンピースを着た女性をイメージしていた。
レネのケーキを食べると大体女性を思い浮かべてしまうが、彼女たちはいつもセクシーでゴージャスだ。
下品にはならないけれど、舞踏会に行けそうなクラシカルなドレスを着ているときはコルセットでウェストをぎゅっと締め、こぼれ落ちてしまうんじゃないか、と心配になるほど豊満な胸の谷間も露わになるほど胸元が開いている。
あるいは身体のラインに沿ったロングドレスで背中が大胆に開き、そして深いスリットが入っていて歩くたびに綺麗な足が見え隠れし、高いピンヒールがとてもセクシーだ。
しかし今回の彼女は違った。
大胆な露出も身体のラインが強調されたデザインでもない、ワンピース。
足元は華奢な白いサンダルを履いている。
レネは彼女にふれるかふれないかの距離でエスコートしている。
たまに見せる意味深な手つきも今回はしない。
顔を赤く染めている彼女を優しく支えているだけだ。
珍しい。
「真人?」
「あ、はい」
僕は止まっていたらしい。
ティグが心配そうに声をかけた。
「真人はケーキを食べている途中で止まってしまうことがあるんだよ。
なにを考えているのかまだ教えてもらったことはないんだけど」
レネが言う。
あれ、レネにもバレていましたか。
「味わっているんだよ」
僕はケーキをまた一口食べた。
ケーキを楽しんだ僕たちは後片付けをした。
そうしているとティグが大小の容器の入った袋をテーブルの上に置いた。
「はい、これお約束のプレゼント」
「ありがとうございます!」
底の部分が半透明で中身が薄っすらと見える。
「あ、もしかしてキッシュが入ってる?」
「入ってるよ」
ティグがニヤリとして言った。
「嬉しい。
ありがとう、ティグ!」
僕はティグをハグした。
ティグは僕の誕生日プレゼントについて「消えてなくなるものがプレゼントしたい」と言った。
いつまでも残るものではなくて、使ったり食べたりするとなくなるもの。
そこで僕はディナーをリクエストした。
料理上手のティグのキッシュが食べてみたかった。
レネが「ティグのキッシュは最高だ。素晴らしいよ!」と教えてくれるが、僕はまだそれを食べたことがなかった。
本当は三人で食べてもいいと思ったけれど、僕がレネにねだったプレゼントについてレネから聞いたらしい。
ティグは一緒にディナーを食べるのを遠慮し、「レネの家で温めればすぐに食べられるもの」を作って容器に詰める、と言い出した。
レネと僕はティグのディナーが入った袋と赤い薔薇の花束を持って、レネの車に乗り込んだ。
これからは二人で僕の誕生日を過ごす。
思いっきり平日だから、夕ご飯を食べて適当な時間になったらレネが家まで送ってくれることになっている。
ちなみにパパとママとは前の土曜日に祝っている。
「休みの日のほうがゆっくり祝えるのよね」
とママが言い、金曜日のレークスのケーキを休んで土曜日にパパと二人で「ママの好物のホールケーキ」をレークスまで買いに行っている。
ママは「奮発したわよ!」と意気込んでいて、16本のろうそくを僕が吹き消すと一番たくさんケーキを食べていた。
「こんなにたっぷり食べられるだなんて、幸せ~!」
はいはい、ママが幸せならパパも幸せで、そんな両親を見ている息子も幸せです。
二人からは、初めて誕生日プレゼントにお金をもらった。
それまでは中古のPCだったり、ちょっと大人っぽい財布だったり、僕がリクエストをしていたけれど、今年は違った。
「いろいろ迷ったんだけどね、慎一さんと話し合ってこれがいいかな、ってことになったの」
どうりで今年は「プレゼントで欲しいもの」を聞かれなかった。
「やっぱりねぇ、年上の恋人とつき合うとなるといろいろ必要なのよ。
同い年くらいのコとつき合うのとは全然違うんだから!」
ママはうっとりして何かを思い出していた。
そうなるとパパの機嫌が悪くなる。
これでもママはモテたらしいし、パパと結婚するまでに恋人が何人もいたみたい。
パパはいわゆる「ママの元カレ」に嫉妬するんだ。
まずい。
「あら、慎一さん、そんな怖い顔しなくても真人は大丈夫よ。
レネさんだって素敵な人なんだから」
知ってか知らずか、ママはにっこりとパパに笑いかけた。
「そうだね。
真人も16歳か。
すっかり大人になったな」
パパはママにつき合ってあげたのか、「ママの元カレ」への嫉妬を隠して僕のほうを見た。
こんな感じで僕の家でのお祝いは終わった。
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