僕のレークス

Kyrie

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番外編 021. Sweet! Sweet! Sweetie!(2)

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2年9月

***

晩ごはんはレネが作ってくれた。
僕もキッチンで隣に立って、手伝う。
今日はハーブとスパイスを効かせたチキンソテーだった。

レネはずっとたてがみを後ろで結んだままだ。
ときどき、うるさそうに落ちてくる前のたてがみをなで上げるのも、すごくセクシーに見えて、どきどきする。
うなじに前髪。
まともにレネが見られないかもしれない。

片づけも終わって一息つくと、「汗をかいてしまったから、先にシャワーを使ってもいいかい?」とレネはバスルームに行ってしまった。
僕はリビングのソファに座った。
TVはついていたが、内容はさっぱり頭に入らなかった。

まだ8時すぎ。
僕はなにを考えているんだろう。





レネがたてがみを大きなタオルで拭きながら,、Tシャツとラフな薄いコットンパンツ姿で出てきた。
冷蔵庫を開けて、冷えたミネラルウォーターを取り出し、飲む。
ごくりと喉を鳴らして飲む音さえ、僕をどきどきさせる。

だめだ、レネに色気にやられる…

僕は「じ、じゃあ、今度は僕、行ってくるね」と、そそくさとバスルームに向かった。



さっきまで使われていたバスルームは、湿気でもやもやしていた。
僕は服を脱いでシャワーヘッドの下に立つ。
ふんわりと香るハーブ。
あ、そうか。
もう仕事じゃないから、無香料のシャンプーじゃなくていいんだ。

レネのプライベートな時間

そう考えただけで、カッと身体が熱くなる。

僕はぬるめのお湯を出して、シャワーを浴びた。
レネと同じ、ハーブのシャンプーで髪を洗う。
だめ、これ以上刺激があると身体が反応しちゃいそうだ。

お湯の温度を上げる。
ちょっと冷静にならなくちゃ。
気合を入れるためにそうしながら、僕は身体を丹念に洗い、Tシャツと短パン姿でバスルームから出た。





リビングには誰もおらず、寝室を覗くとレネがベッドヘッドにもたれかかって書類に目を通していた。
カランと高い音がする。
ちびちびと洋酒を飲んでいる。
その氷がたてた音だ。

カッコいいなぁ、大人の余裕、みたいで。

僕は集中して書類を読むレネに見惚れた。
落ち着いた金色の目は書類を見ている。
ケーキを目の前ににしてトロトロに甘くなるレネからは想像もできない。
「仕事をしている男の顔」って感じ。

いつだったか、レネが電話対応で席を外したとき、ティグとレネの話になったことがる。
ティグが感心することの中に「レネの余裕」があるのだと話し始めた。

「どんなに困ったことが起こったって、あいつは『さぁ、いいアイディアを探ろうじゃないか。そのまえにうまいものを食べよう』と必ず、なにか食べようとするんだ。
こっちにはそんな余裕がなくて文句を言い出すと、『そうだ、あの店のケーキはどうだい?』なんて話すものんだから、ついこっちも『食べに行ったけど、大したことはなかったよ』って答えてしまって。
しばらく素敵なケーキかうまい肉の話をしているうちに、なにかひらめくんだ。
実際に食べに行けることもあるし、素敵なアイディアにとらわれて後回しになることもあるんだけど、あの余裕、俺にはないからうらやましいよ」

ティグはじっと僕を見た。

「君のレークスは素晴らしいヤツだろ?」

ゴージャスなウィンクをされ、僕は真っ赤になったけど、恥ずかしいのと誇らしい気持ちが混ざって、大きくうなずいた。


そんなことを思い出していたら、レネが寝室のドアからのぞいている僕に気づき、声をかけた。

「真人?」

僕はベッドの上にいるレネに近づく。

「なに飲んでるの?」

ベッドに上がりながら聞くと、レネは「ブランデーだよ」と答えた。
レネのそばにいくとぷんと洋酒が香る。
そしてハーブのシャンプーの匂い。

「味見」

僕は投げ出されていたレネの足をまたぎ、レネの顔を両手で包むと口に自分の唇を近づけた。
軽く重ねるとより強く香りが上がる。
いつもレネが僕にするように、僕がレネの口を舌でノックすると口がそっと開かれたので、僕はそのまま舌をレネの口に忍ばせる。
内側を舐めると、強いアルコールと強烈な香りが襲ってきてむせそう。

ひとしきりレネの口の中のブランデーの味見を終え、舌を動かすのを止めると、あっという間に僕は抱きしめられ、ベッドに押し倒されていた。
衝動に小さくうめくと、レネは僕を見ながら頬をべろりと舐めた。
さっきまでの冷静な光ではなく、欲情に濡れた金の瞳で僕を射抜いた。

「…レネ、僕、まだ髪を乾かしていない。

「あ」

レネは動きを止めた。

「それは大変だ!」

途端にレネはいつものレネに戻り、僕を抱き上げると急いでバスルームに向かった。
そこにある白い丸椅子に僕を座らせ、新しいタオルで僕の髪を拭くとドライヤーをかけ始める。

「自分でできるよ、レネ」

僕がドライヤーを奪おうとすると、レネはブランデーくさい息を吹きかけて耳元で囁いた。

「真人の髪にさわるのが好きなんだ。
やらせてくれないか」

そう言われると僕も弱い。
僕が動かなくなると、レネは上機嫌で鼻歌まじりに僕の髪を乾かし、ブラッシングをする。
なので、乾いたときにはいつもよりさらさらの髪になってしまった。

「ああ、セクシーな黒だね」

レネは僕の髪にキスをすると、今度は手を繋ぎキッチンへ連れてきた。

「風呂上りの水分補給は大切だよ」

僕はそこでミネラルウォーターを飲んだ。

そしてようやく、レネは僕を抱き上げながらキスをし、唇を離さないまま、器用に歩いて寝室に連れて行った。

ぽんっと僕をベッドの上に軽く放り投げ、スプリングでバウンドする身体を感じていると、どっかりとレネが上からのしかかってきた。

「いい?」

レネが聞く。
僕は言う。

「明かり」

「このままじゃ、だめ?」

「だめ」

レネはちょっぴりしゅんとしたが、メインの明かりを落として間接照明に切り替えてくれた。
僕は安心できて積極的にレネの首に腕を回し、身体を密着させた。







すぐに僕はレネに溶かされた。
レネは僕の全身を舐め、キスをしながら、Tシャツも短パンもはぎとっていく。
僕も彼のシャツに手をかけると、脱がしやすいように腕を動かしてくれた。
レネが僕の身体を舐める速度に合わせて、たてがみが僕の腹をなでる。
くすぐったくて、でもぞくぞくして。
身体をひねると、追いかけるようにまた舌で舐められた。

ローションで濡れた彼の指は僕のペニスやアナルを刺激し、また小指から慣らされるけど、それは比較的すんなりと終わった。
一か月半ぶりの挿入に、僕は入れられただけで少しイってしまった。
僕の身体はきちんとレネを覚えていて、怖がることはなかった。
レネも気をつけていたはずなのに、だんだん動きが激しくなり、僕は喘ぎ声を上げ、レネは咆哮のような声を出し、少し乱暴に抱かれた。
でも、気持ちよくて、僕は全然つらくなかったし、ぼんやりとする視界の中で、レネのセクシーなイキ顔を見てしまい、興奮した。

お互いに吐き出したあと、まだ僕たちは繋がったまま、抱き合いながらベッドに倒れ込んだ。

まだ荒い呼吸をしながら、久しぶりのセックスに僕たちは酔っていた。
でも。

レネの様子がヘンだ。

「レネ…?」

少しかすれ気味になってしまった声で、名前を呼ぶ。
レネは臼歯をぎりぎりと噛んで、額にしわを寄せていた。

「どうしたの?」

「…い、いや、なんでもない」

なんだか苦しそう。
僕がレネの頬に手をやると、それだけで僕の中のレネがびくびくと反応した。

「レネ?」

「すまない…
久々のせいか、止まりそうになくて…」

レネは唸りながら、言う。

「大丈夫だ」

苦しそうにレネは目を閉じて、自分を抑えている。

「レネ、僕を見て」

僕は静かに言った。
レネは目を開けない。
ぎりぎりと歯を噛みしめる音が響く。

「レネ」

僕は同じことをもう一度言う。

「僕を見て」

しばらくしてやっと、レネは目を開いた。
つらそうな目をしている。

「レネ、僕を抱いて」

「……セックスなら、今してる」

レネはむすっとして言う。

「うん、そうだね」

僕はレネのたてがみをなでる。

「あのね、明日のデート、出かけられなくなるかもしれないけど、僕はそれでもいいから」

「?」

「パパとママには月曜日にレネの家から学校に行く、って言ってきた。
制服も教科書も全部、持ってきた」

そう、僕の今朝のあの大荷物は学校に行く準備をしてきたからだ。

「明日の日曜日、一日中寝てても大丈夫。
だから、もっとして」

僕はレネに食べられる覚悟をしてきたよ。
そうされたいんだ、レネ。

「……っく」

レネはようやく僕が何を言いたのかわかったらしく、僕の中でペニスを大きく硬くした。

「抱きつぶされても構わない」

「真人、なんてこと…」

「こうしたかったんだ、ずっと」

レネがいなかったひと夏で、僕はこの機会がやってくるのを狙っていた。



去年、どうやってあまりメッセージもなく、僕はひと夏を過ごしたんだろう?

ずっと疑問に思っていた。
靖友くんやティグが言っていた「寂しい」というのは、そして「恋焦がれる」というのはこういうものか、と思った。

そして、レネが我慢することなく、僕を抱いてほしいと望んだ。

というか、僕が我慢できない。

もっと溶け合って、もっと奥までレネと繋がりたい。
気持ちよくなりたい。

「いいのかい?」

「うん」

レネは不安そうな顔で僕を見た。
やだ、その顔。
さっきみたいに、僕を求めて。
熱くなって。

「それからね、レネ、僕、試してみたいことがあるんだけど」

僕の言葉にレネはじっと僕の目を見てる。

「『上に乗る』ってどんな感じ?」








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