25 / 27
2:ヴェストリオーア戦役編
5:直前直後/後
連続で虹! 連続で虹です!!!
レインボーですよー!!!
と、叫びたい気持ちはあるけれど、わたくしは女王。隣室には寝ずの番の侍女も騎士もいる。黙る。
でもね。
10連で二回連続の虹演出が見られるなんて、ありえなくない?!
排出率がナゾのままの闇ガチャだけど、虹が最高ランクなのは確定!
わたくしは期待に満ちた心のまま、結果を表示させた。一覧。
※詳細を見る場合は各項目をタップしてください
★★★ 魔法軸(回復) new
★★★ 魔法軸(回復) new
★★★ 魔法軸(回復) new
★★★ 魔法軸(回復) new
★★★ 魔法軸(回復) new
★★★★ テレポストーン new
★★★ 魔法軸(炎)
★★★★ オンセンストーン(小)
★★★ エーリカ・オルフ new
★★★★★ヴァネサ new
「new」が多い。10のうち8項目にnew表示がついてる。回復魔法軸はたしかにいままで一度も出たことはなかった。
基本的に、魔法使いの回復魔法はそう強くない。切り傷擦り傷かすり傷の応急処置くらいなものだ。軸を作ることができるのは、十大魔法使いくらいなものだろう。
回復の専門家である治癒師は魔法軸を作ることはできない。
つまり、回復の魔法軸はほぼ存在しえないものと言っていい。貴重品だ。
それから、テレポストーン。
覚えがないアイテムなのに、どういう効果なのかはっきり理解できるネーミング。メタ認知というやつか。
一応、詳細確認はする。アイテム名をタップしたら、極小ウィンドウがポップした。
【消耗アイテム】テレポストーン 10/10
マイルームに一瞬で戻ることができる
マイルーム?
わたくしの私室ということかしら。だとしたら、クラビア宮にいつでも戻れるということか。
だったらきっと使い道がある。
いつでも拠点に帰ることができるなんて、チートもいいところだ。戦場からでも帰れるのか、本当に私室なのかは検証しておく必要があるだろう。
わたくしはベッドヘッドに並べられたクッションをひとつ取り、そこに現れた魔法軸とテレポストーンを置いた。魔法軸はともかく、テレポストーンはわたくし自身が持っていなくてはいけないと思う。
そして、深呼吸。
いよいよ新人のデータだ。まずは、星3から。
223: エーリカ・オルフ 文官 ★★★ new
年齢 23:性別 女:気質 一字千金:野心 15:忠誠 20
統率 8:武勇 3:知略 25:内政 48:外政 42
騎士爵家の三女で、とても字が美しい。執政院の元清書係。
王都焼失によって怪我を負い、職も失ったが一念発起、
新王国の求人募集の試験を受けた。
辛い食べ物が好き。世の中にはもっと刺激があっていい。
早口言葉がとても得意。
ほう? ほほう? ほーほほほーう!
字がきれいな文官!!
大事なところだからもう一回。
字が! きれいな! 文官!!!!
お宝だ!!!
フォントどころか活版印刷もない世界、読みやすい文字はこれ以上ないくらい大切なことだ。悪筆な文官など抹殺案件。誤読を誘発するような文字は滅ぼさねばならない。
ちょっと苛ついてしまったけれど、とにかく、得難い貴重な人材であることは短い紹介で十分にわかる。採用試験を受けたのなら、連絡先はわかるだろう。すぐに通知を手配しよう。
ガチャ雇用二人目の文官。
やっぱりこの期間限定ガチャは文官ガチャだ。
ひいてよかった……。
ほんとに、反射でタップしてしまったけど、良かった……。元は取った。
それに、わたくしにはまだ星5の人材が残っている!
姓がない表記ということは、貴族ではないということだろうか。
わたくしは緊張しつつ詳細画面を開いた。
ヴァネサ 聖女 ★★★★★ /HB new
年齢 13:性別 女:気質 純真無敵:野心 2:忠誠 80
統率 255:武勇 2:知略 11:内政 8:外政 4
寒村ルーゲ村出身。神聖力を持つ美少女にして【聖女】。
ピンクブロンドは伊達じゃない。
『恋よ! 花よ!2 ~ときめき★Heart Beat!』のヒロイン。
死神咳が蔓延した王国中を癒やすだけの力を持っているが、
予防対策が万全となり死神咳は流行らないので活躍の場はない。
民を救う知恵を持った女王を敬愛している
「………………………………は?」
思わず声が漏れた。
いや、これ、何? どういうこと?
どこから突っ込む? 落ち着ける?
わたくしは目を閉じ、深呼吸した。鼻からゆっくり息を吸い、さらにゆっくり細く細く、唇の隙間から息を吐く。二回、三回。
薄目を開けて見ても、ウィンドウの紹介文は変わらない。当然だけど。
「聖女、聖女って、この世界にいるものなの……?」
クリキンワールドにはいなかった、はず。わたくしがプレイできなかった新作にそういう設定があったのかもしれないけれど、いないと思う。世界観が違いすぎるから。
いや、いい。わかってる。わかってるのよ。
問題は先送りしても良いことはない。気がついた時がいつも最速。対応するのは早い方が良い。
無視できないのは三行目だ。
『恋よ! 花よ!2 ~ときめき★Heart Beat!』
……わたくし、少し気を失っていたみたい。
落ち着こう。慌てたところで状況は変わらないもの。事態と事実をよく理解しなくてはならない。興奮と衝動で物事を決めてはいけない。判断もね。落ち着いて、落ち着いて。
わたくしはもう一度深呼吸した。
『恋よ! 花よ!』は乙女ゲームだ。ヒロインは「ゲルダ」。
プレイヤーが自由に名前を付けられるゲームが多かった気がするから、デフォルトネームなのかどうかはわからない。
ゲーム内容を要約すると、ピンクブロンドの少女が、見目のいい男たちを良い感じに操って侍らせるゲームだ。玉の輿ゲーと言ってもいいかもしれない。
異母妹ゲルダが書き散らしていた攻略情報メモ程度の知識でも、恋愛シミュレーションの一般的なことは知っている。
そして最大のポイントは、我が愛する『クリーグキングダム』と同じ会社が制作していたことだ。
あの会社は、とにかく続編が大好きだった。壮大な世界設定が得意だったから、一本作っただけでは物足りなかったに違いない。
メインキャラクターをしゃぶり尽くす勢いで流用し、無印、2、3、4、パワーアップ、S、R、X。ローマ数字でカウントしていたシリーズもあったはずだ。
女性向け恋愛シミュレーションゲームだって、人気があれば続編を作っていても何の不思議もない。
むしろ絶対に作るはずだ、あの会社なら。
ああ! ゲルダの話が聞きたい!
転生の記憶を持っていることに気がついていたけれど、特に話したいと思ったことがない異母妹に、わたくしは今、初めて会いたいと思っているわ!
……いや、やっぱりいいわ。
あの子、鬱陶しかったもの。
前世の記憶の有無は関係ない。自分以外の人間にも意思があることを知らないヤツは皆、同じ目をしている。
たとえばあの子の両親とかね。
ゲルダのメモは断片情報ばかりで、イケメンたちのプロフィールや重要イベントらしきものについての覚え書きだった。
ボニファツとの出会いについて、白騎士エリアス、公爵家のゲーアハルト、オスカーという大商人の初期位置、最初のフラグイベント。そのくらいの情報だ。もちろん、わたくしはすべて記憶した。
そういえば、二周目以降に開放される隠し攻略対象がいたはずだ。どこかの第二王子。どこかの、第二王子。
ついさっきまでカードゲームを要求してきた最終兵器は隣国の第二王子だ。
背中に冷たい汗がわく。口の中が干上がって、喉が痛い。
まさか。やっぱり。
「わたくしは、いつから……乙女ゲームの世界ではないと、思い込んでいた……?」
動機がする。
息が苦しい。
冷や汗が出る。
けれど思い返せば兆候はいくつもあったのだ。
ヒロイン『ゲルダ』がいて、悪役令嬢『ハイデマリー』が生まれた世界だ。攻略対象者も、暫定・候補者含めて揃っている。
最初は間違いなく乙女ゲーム『恋よ! 花よ!』の世界だった。
けれど、『クリーグキングダム』の世界でもある。イベントも起きているし、キャンペーンシナリオに沿ったマップも開いた。それもまた間違いない。
ヴェストリオーア戦役編が開幕することも、求人ガチャが教えてくれたくらいだし。
半分呆然としつつ、わたくしはそこまで考え、ふと気がついた。
Heart Beatという単語だ。
これが謎のパラメーター「HB」なのではないの?
「HB」が表示されていたのは、ネリジェラク王子、ジークムンド卿、クリームヒルト卿、それにゲーアハルトとウーゴ師だ。
わたくしは心に鞭打ち、ネリジェラク王子のデータを呼び出した。
もしも本当に「HB」がHeart Beatで、乙女ゲームの好感度ならばきっと変化があるはずだ。
だって、夜明けまでゲームしてたのだもの。
恋愛的な意味じゃなくても親密になる。ネットゲームでも、いつも同じチームで行動しているうちに、友情っぽいものが芽生えたりするじゃない。
222:ネリジェラク・エア=ジュラス 王子/騎士 ★★★★★ /HB ++++++++++
年齢 24:性別 男:気質 一騎闘戦:野心 90:忠誠 125
統率 8:武勇 255↑:知略 22:内政 40:外政 50
湖の国エアジュラス王国の第二王子。側室腹の兄がいる。
魔剣アンゲスアエシュマエの【運び手】に選ばれ、狂気に陥った。
右目は自分で、素手で抉り出した。
魔剣の力で常人離れした戦闘力を手に入れた結果、恐怖されて孤立。
『聖魔戦役』の名プレイヤーだったが、対戦して貰えなくなった。
身長:187cm 誕生日:海神月28日 猫派
王位継承の争いを優位に進めたい兄とその母の策略で、
魔剣の封印を解く羽目になった。
だが、自分なら魔剣を使いこなせると思ったのも事実。
エアジュラス王国は湖国と言われるが、湖は国土の1/6
この世のすべては遊戯であり、自分は勝者だと信じていた。
幼い思い込みは黒歴史。
内なる望みは、自分より強い相手にひれ伏したい。
素晴らしきは我が女王陛下! 嗚呼!
(初出:『恋よ! 花よ!2 ~ときめき★Heart Beat!』
出典:『一騎闘戦3/血塗れ大決戦』)
ほーらね!
と、勝ち誇ればいいのか、何なのか。ただひとつ言えることは、わたくしはまだ甘かったということ。
『一騎闘戦3/血塗れ大決戦』って、いわゆる無双系アクションゲームだったはずだ。プレイヤーキャラが何百何千という敵を倒しまくるやつ。
一時とても流行った。
乙女ゲームの攻略対象者として人気がでたイケメンキャラを、別ゲームに迎え入れて新規客層を狙ったっていうシタゴコロが見え見えだわ。マーケティング判断はともかくとして、巻き込まれたわたくしはいい迷惑じゃないの。
ネリジェラク王子のめちゃくちゃなパラメーターの意味はわかったけど。
どうするよ、わたくし。
わたくしはため息と共にベッドにひっくり返った。少しでも眠ろうと思ったからだ。
ウィンドウを消そうと思ったときだ。
金色のウィンドウがポップアップした。
【戦闘結果】クラビア宮の反乱
詳細を表示しますか?
▽はい いいえ
あなたにおすすめの小説
悪役令嬢にされたので婚約破棄を受け入れたら、なぜか全員困っています
かきんとう
恋愛
王城の大広間は、いつも以上に華やいでいた。
磨き上げられた床は燭台の光を反射し、色とりどりのドレスが揺れるたびに、まるで花畑が動いているかのように見える。貴族たちの笑い声、楽団の優雅な旋律、そして、ひそやかな噂話が、空気を満たしていた。
その中心に、私は立っていた。
――今日、この瞬間のために。
「エレノア・フォン・リーベルト嬢」
高らかに呼ばれた私の名に、ざわめきがぴたりと止む。
断罪中、味方が多すぎて王子が孤立している件について
夏乃みのり
恋愛
バーンスタイン伯爵家の令嬢ラミリアは、魔力も剣の才能もない「ごく普通」の地味な女性。
ある日のパーティーで、婚約者であるジェラルド第二王子から「地味で無能で嫉妬深い」と罵られ、身に覚えのない罪で婚約破棄を突きつけられてしまう。
しかし、断罪劇は予想外の展開へ。
【完結】断罪された悪役令嬢は、本気で生きることにした
きゅちゃん
ファンタジー
帝国随一の名門、ロゼンクロイツ家の令嬢ベルティア・フォン・ロゼンクロイツは、突如として公の場で婚約者であるクレイン王太子から一方的に婚約破棄を宣告される。その理由は、彼女が平民出身の少女エリーゼをいじめていたという濡れ衣。真実はエリーゼこそが王太子の心を奪うために画策した罠だったにも関わらず、ベルティアは悪役令嬢として断罪され、社交界からの追放と学院退学の処分を受ける。
全てを失ったベルティアだが、彼女は諦めない。これまで家の期待に応えるため「完璧な令嬢」として生きてきた彼女だが、今度は自分自身のために生きると決意する。軍事貴族の嫡男ヴァルター・フォン・クリムゾンをはじめとする協力者たちと共に、彼女は自らの名誉回復と真実の解明に挑む。
その過程で、ベルティアは王太子の裏の顔や、エリーゼの正体、そして帝国に忍び寄る陰謀に気づいていく。かつては社交界のスキルだけを磨いてきた彼女だが、今度は魔法や剣術など実戦的な力も身につけながら、自らの道を切り開いていく。
失われた名誉、隠された真実、そして予期せぬ恋。断罪された「悪役令嬢」が、自分の物語を自らの手で紡いでいく、爽快復讐ファンタジー。
死に物狂いで支えた公爵家から捨てられたので、回帰後は全財産を盗んで消えてあげます 〜今さら「戻れ」と言われても、私は隣国の皇太子妃ですので〜
しょくぱん
恋愛
「お前のような無能、我が公爵家の恥だ!」
公爵家の長女エルゼは、放蕩者の父や無能な弟に代わり、寝る間も惜しんで領地経営と外交を支えてきた。しかし家族は彼女の功績を奪った挙句、政治犯の濡れ衣を着せて彼女を処刑した。
死の間際、エルゼは誓う。 「もし次があるのなら――二度と、あいつらのために働かない」
目覚めると、そこは処刑の二年前。 再び「仕事」を押し付けようとする厚顔無恥な家族に対し、エルゼは優雅に微笑んだ。
「ええ、承知いたしました。ただし、これからは**『代金』**をいただきますわ」
隠し金庫の鍵、領地の権利書、優秀な人材、そして莫大な隠し資産――。 エルゼは公爵家のすべてを自分名義に書き換え、着々と「もぬけの殻」にしていく。
そんな彼女の前に、隣国の冷徹な皇太子シオンが現れ、驚くべき提案を持ちかけてきて……?
「君のような恐ろしい女性を、独り占めしたくなった」
資産を奪い尽くして亡命した令嬢と、彼女を溺愛する皇太子。 一方、すべてを失った公爵家が泣きついてくるが、もう遅い。 あなたの家の金庫も、土地も、働く人間も――すべて私のものですから。
婚約破棄される前に、帰らせていただきます!
パリパリかぷちーの
恋愛
ある日、マリス王国の侯爵令嬢クロナは、王子が男爵令嬢リリィと密会し、自分を「可愛げのない女」と罵り、卒業パーティーで「婚約破棄」を言い渡そうと画策している現場を目撃してしまう。
普通なら嘆き悲しむ場面だが、クロナの反応は違った。
『悪役令嬢は、二度目の人生で無言を貫く。~処刑回避のために黙っていただけなのに、なぜか冷徹宰相様から「君こそ運命の人だ」と溺愛さています~』
放浪人
恋愛
「もう、余計なことは喋りません(処刑されたくないので!)」
王太子の婚約者エリスは、無実の罪を着せられた際、必死に弁解しようと叫び散らした結果「見苦しい」と断罪され、処刑されてしまった。 死に戻った彼女は悟る。「口は災いの元。二度目の人生は、何があっても口を閉ざして生き延びよう」と。
しかし、断罪の場で恐怖のあまり沈黙を貫いた結果、その姿は「弁解せず耐え忍ぶ高潔な令嬢」として称賛されてしまう。 さらに、人間嫌いの冷徹宰相クラウスに「私の静寂を理解する唯一の女性」と盛大な勘違いをされ、求婚されてしまい……!?
「君の沈黙は、愛の肯定だね?」(違います、怖くて固まっているだけです!) 「この国の危機を、一目で見抜くとは」(ただ臭かったから鼻を押さえただけです!)
怯えて黙っているだけの元悪役令嬢と、彼女の沈黙を「深遠な知性」と解釈して溺愛する最強宰相。 転生ヒロインの妨害も、隣国の陰謀も、全て「無言」で解決(?)していく、すれ違いロマンティック・コメディ! 最後はちゃんと言葉で愛を伝えて、最高のハッピーエンドを迎えます。
一家処刑?!まっぴらごめんですわ!!~悪役令嬢(予定)の娘といじわる(予定)な継母と馬鹿(現在進行形)な夫
むぎてん
ファンタジー
夫が隠し子のチェルシーを引き取った日。「お花畑のチェルシー」という前世で読んだ小説の中に転生していると気付いた妻マーサ。 この物語、主人公のチェルシーは悪役令嬢だ。 最後は華麗な「ざまあ」の末に一家全員の処刑で幕を閉じるバッドエンド‥‥‥なんて、まっぴら御免ですわ!絶対に阻止して幸せになって見せましょう!! 悪役令嬢(予定)の娘と、意地悪(予定)な継母と、馬鹿(現在進行形)な夫。3人の登場人物がそれぞれの愛の形、家族の形を確認し幸せになるお話です。
【今さら遅い】毒で声を失い公爵に捨てられた私。妹では精霊が応えず国は滅びへ。ですが隣国皇帝に溺愛される私に、今さら縋ってきても遅いです
唯崎りいち
恋愛
国一番の歌姫だった私は、妹に毒を盛られ声を失い、婚約者に捨てられた。
すべてを奪われた私を救ったのは、隣国の皇帝。
「お前の歌がなければ国は滅びる」と言われた私の歌は、精霊に届く“本物”の力を持っていて――
一方、私を追放した国は偽物の歌では加護を失い衰退。
今さら元婚約者が縋ってきても、もう遅い。