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第四章 自由の羽
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「あなたが、アルプ=ウィント様ですか? ようやくお目にかかれて光栄です」
「ええ、私も光栄でございます。『闘神』ノア=キッシュベル様とお会いできて」
「シーッ! シーッ! シーッ!」
ノアは、全力で唇の前に、人差し指を立てる。アルプは、クスクスと笑いながら、口元を押さえている。ホルンとビッシュは、『闘神?』と首を捻って見合っていた。すると、ビッシュが走り出し、アルプの前に行く。
「アルプ=ウィント様! 俺、『外の世界』に行く事に決めました。連れてって下さい!」
「それがあなたの選択なのですね? 本当に宜しいのですか? もう二度と、ここへは帰ってこられないでしょう。もう二度と、家族や友人とも会えないでしょう。それでも、本当に行きますか?」
「はい! 覚悟の上です! 俺は自由になりたい! 好きな時に好きな場所へ行きたい! 自分の意志で、自由に行動したい! この世界は、息が詰まりそうだ! まるで籠の中の鳥だ! 生かされるんじゃなくて、自分の意志で生きたい!」
「加護の鳥ですよ。衣食住とルールさえ守れば、命の保証だってされています。安全安心という最低限の保証の上に立っているからこそ、好きな事ができるのですよ」
「危険な事は、百も承知です! それでも、俺は行きたい!」
「・・・分かりました」
アルプは、ビッシュの真っ直ぐな眼差しを受け、大きく息を吐いた。
「アルプ様? 聞きたい事があるのですが、宜しいですか?」
「ええ? なんでございましょう?」
「どうして、私はあなたに会えなかったのですか?」
一瞬、キョトンとした顔をしたアルプが、小さく噴き出し、ノアの傍に歩み寄る。そして、アルプはノアに耳打ちをした。
「怖かったからでございますよ。あなたには、全盛期の女神と同じくらいの魔力があります。その証拠に、『マスイノトリ』があなたの周囲に集まるでしょう? 魔力はあの鳥の餌なのです。今の私は、思念体です。興味本位で襲ってこられれば、ひとたまりもありません」
「魔力。なるほどなるほど。人知を超えた力って事ですね? どうりで、素手で岩を砕けると思いました。私だけ、皆と違うなあと薄々感づいてはいたのですがね。これで納得できました」
「それは、よかったです。それで、あなたは、いかがなさいますか?」
「勿論、私もビッシュ君と一緒に、外に出ますよ。楽しそうだ」
「宜しいのですか? この国に、あなたがいるのと、いないのとでは、大違いです。シュガーホープ政権が、根底から崩れるかもしれませんよ?」
「それは、心苦しいところではあるのだけれど・・・まあ、仕方がない。それもまた人生って事で! 好奇心には抗えない!」
「あなたも自由を求めて外へ?」
「いや、どちらかというと、不自由を求めてかな? 私の自由の定義は、自分にとって都合が良い事だからね。この世界は、私にとって都合が良過ぎるのさ」
「そうでございますか。かしこまりました」
アルプは、小さく頭を下げた。ノアは、ニカリと白い歯を見せて、腕を腰に当てた。
「そういう訳だから、ビッシュ君! 私も君の旅に同行させてもらう事にするよ!」
「え!? 本当に!? それは嬉しいような、ちょっと怖いような」
「どういう意味だい?」
ビッシュは、苦笑いを浮かべて、誤魔化している。会って間もなく、下水道に投げ飛ばされた事が、軽いトラウマになっていた。ホルンは笑いながら、ビッシュとノアのやりとりを楽しんでいた。すると、アルプが突然、ホルンの方へと体を向けた。
「あなたは・・・お会いするのは、初めてですね。改めまして、アルプ=ウィントと申します」
「初めまして、ホルン=ベイスホームです」
ホルンは、慌てて身なりを整えて、深々と頭を下げた。伝説の氷雪の女神であり、世界に混乱と争いを与えている冬の魔女が目の前にいる。創造の人物であると思っていたホルンにとって、目の前にいる女性に違和感を覚えていた。そこにいるのに、そこにいないような儚さを感じていた。伝説とか法律とか、あまりにも現実味がないひとごとのようだ。世界最大の犯罪者と呼ばれている『魔女の落とし子』を文字通り産み落とした張本人だ。
「あなたにも、説明は不要ですね? きっと、私の意図は、友人から伝わっている事でしょう」
アルプに見つめられ、ホルンは目を逸らしながら遠慮がちに頷いた。
「あなたは、いかがなさいますか?」
「・・・僕は・・・」
ホルンは、呆然とアルプを見つめている。すると、ビッシュが勢いよくホルンに駆け寄った。まるで体当たりをするように、ビッシュはホルンにぶつかり、肩に腕を回す。
「勿論、行くよな!? 一緒に行こう! 俺達二人でいたら、絶対楽しいさ! また、前のように一緒に遊ぼうぜ! ホルンは、命の恩人だ。ホルンがいなかったら、俺の命も夢もなくなっていた。俺達は、子供の頃からずっと一緒だったんだ! これからも、ずっと一緒だ!」
満面の笑みを浮かべるビッシュに、ホルンも笑みが零れる。ビッシュと一緒に外の世界へと旅立つ。ビッシュが言うように、絶対に楽しいに決まっている。ホルンは、ビッシュと一緒にいたいが為に、危険を冒してまで救い出した。ホルンの願いは、ビッシュと共に生きていく事だ。ホルンの肩に腕を回してはしゃいでいたビッシュが、急に動きを止め目を伏せた。
「白状するとさ。俺が外の世界に憧れを持った時、『魔女の落とし子』なんて呼ばれるようになった。世界最大の犯罪者だと言われた。確かに、あの時は、ホルンに辛く当たってしまった。でも、それは、ホルンを巻き込みたくなかったからなんだ。ホルンを犯罪者にしちゃいけないって、歯を食いしばっていた。でも、ホルンはそんな俺を見捨てる事なく、信じ続けてくれて助けてくれた。ありがとう。それから、ごめんな。勝手だとは十分分かっているんだけど、やっぱり俺は、ホルンと一緒にいたいんだよ」
ビッシュが真っ直ぐにホルンを見つめている。ホルンは、思わず目頭が熱くなった。想いは届いている。
「ありがとう、ビッシュ。凄く嬉しいよ」
「じゃあ、ホルン! 一緒に行ってくれるんだな!?」
歓喜の声を上げるビッシュに、ホルンは泣きそうな顔で、ゆっくりと顔を左右に振った。
「・・・ごめん。僕は、行けないよ」
「ええ、私も光栄でございます。『闘神』ノア=キッシュベル様とお会いできて」
「シーッ! シーッ! シーッ!」
ノアは、全力で唇の前に、人差し指を立てる。アルプは、クスクスと笑いながら、口元を押さえている。ホルンとビッシュは、『闘神?』と首を捻って見合っていた。すると、ビッシュが走り出し、アルプの前に行く。
「アルプ=ウィント様! 俺、『外の世界』に行く事に決めました。連れてって下さい!」
「それがあなたの選択なのですね? 本当に宜しいのですか? もう二度と、ここへは帰ってこられないでしょう。もう二度と、家族や友人とも会えないでしょう。それでも、本当に行きますか?」
「はい! 覚悟の上です! 俺は自由になりたい! 好きな時に好きな場所へ行きたい! 自分の意志で、自由に行動したい! この世界は、息が詰まりそうだ! まるで籠の中の鳥だ! 生かされるんじゃなくて、自分の意志で生きたい!」
「加護の鳥ですよ。衣食住とルールさえ守れば、命の保証だってされています。安全安心という最低限の保証の上に立っているからこそ、好きな事ができるのですよ」
「危険な事は、百も承知です! それでも、俺は行きたい!」
「・・・分かりました」
アルプは、ビッシュの真っ直ぐな眼差しを受け、大きく息を吐いた。
「アルプ様? 聞きたい事があるのですが、宜しいですか?」
「ええ? なんでございましょう?」
「どうして、私はあなたに会えなかったのですか?」
一瞬、キョトンとした顔をしたアルプが、小さく噴き出し、ノアの傍に歩み寄る。そして、アルプはノアに耳打ちをした。
「怖かったからでございますよ。あなたには、全盛期の女神と同じくらいの魔力があります。その証拠に、『マスイノトリ』があなたの周囲に集まるでしょう? 魔力はあの鳥の餌なのです。今の私は、思念体です。興味本位で襲ってこられれば、ひとたまりもありません」
「魔力。なるほどなるほど。人知を超えた力って事ですね? どうりで、素手で岩を砕けると思いました。私だけ、皆と違うなあと薄々感づいてはいたのですがね。これで納得できました」
「それは、よかったです。それで、あなたは、いかがなさいますか?」
「勿論、私もビッシュ君と一緒に、外に出ますよ。楽しそうだ」
「宜しいのですか? この国に、あなたがいるのと、いないのとでは、大違いです。シュガーホープ政権が、根底から崩れるかもしれませんよ?」
「それは、心苦しいところではあるのだけれど・・・まあ、仕方がない。それもまた人生って事で! 好奇心には抗えない!」
「あなたも自由を求めて外へ?」
「いや、どちらかというと、不自由を求めてかな? 私の自由の定義は、自分にとって都合が良い事だからね。この世界は、私にとって都合が良過ぎるのさ」
「そうでございますか。かしこまりました」
アルプは、小さく頭を下げた。ノアは、ニカリと白い歯を見せて、腕を腰に当てた。
「そういう訳だから、ビッシュ君! 私も君の旅に同行させてもらう事にするよ!」
「え!? 本当に!? それは嬉しいような、ちょっと怖いような」
「どういう意味だい?」
ビッシュは、苦笑いを浮かべて、誤魔化している。会って間もなく、下水道に投げ飛ばされた事が、軽いトラウマになっていた。ホルンは笑いながら、ビッシュとノアのやりとりを楽しんでいた。すると、アルプが突然、ホルンの方へと体を向けた。
「あなたは・・・お会いするのは、初めてですね。改めまして、アルプ=ウィントと申します」
「初めまして、ホルン=ベイスホームです」
ホルンは、慌てて身なりを整えて、深々と頭を下げた。伝説の氷雪の女神であり、世界に混乱と争いを与えている冬の魔女が目の前にいる。創造の人物であると思っていたホルンにとって、目の前にいる女性に違和感を覚えていた。そこにいるのに、そこにいないような儚さを感じていた。伝説とか法律とか、あまりにも現実味がないひとごとのようだ。世界最大の犯罪者と呼ばれている『魔女の落とし子』を文字通り産み落とした張本人だ。
「あなたにも、説明は不要ですね? きっと、私の意図は、友人から伝わっている事でしょう」
アルプに見つめられ、ホルンは目を逸らしながら遠慮がちに頷いた。
「あなたは、いかがなさいますか?」
「・・・僕は・・・」
ホルンは、呆然とアルプを見つめている。すると、ビッシュが勢いよくホルンに駆け寄った。まるで体当たりをするように、ビッシュはホルンにぶつかり、肩に腕を回す。
「勿論、行くよな!? 一緒に行こう! 俺達二人でいたら、絶対楽しいさ! また、前のように一緒に遊ぼうぜ! ホルンは、命の恩人だ。ホルンがいなかったら、俺の命も夢もなくなっていた。俺達は、子供の頃からずっと一緒だったんだ! これからも、ずっと一緒だ!」
満面の笑みを浮かべるビッシュに、ホルンも笑みが零れる。ビッシュと一緒に外の世界へと旅立つ。ビッシュが言うように、絶対に楽しいに決まっている。ホルンは、ビッシュと一緒にいたいが為に、危険を冒してまで救い出した。ホルンの願いは、ビッシュと共に生きていく事だ。ホルンの肩に腕を回してはしゃいでいたビッシュが、急に動きを止め目を伏せた。
「白状するとさ。俺が外の世界に憧れを持った時、『魔女の落とし子』なんて呼ばれるようになった。世界最大の犯罪者だと言われた。確かに、あの時は、ホルンに辛く当たってしまった。でも、それは、ホルンを巻き込みたくなかったからなんだ。ホルンを犯罪者にしちゃいけないって、歯を食いしばっていた。でも、ホルンはそんな俺を見捨てる事なく、信じ続けてくれて助けてくれた。ありがとう。それから、ごめんな。勝手だとは十分分かっているんだけど、やっぱり俺は、ホルンと一緒にいたいんだよ」
ビッシュが真っ直ぐにホルンを見つめている。ホルンは、思わず目頭が熱くなった。想いは届いている。
「ありがとう、ビッシュ。凄く嬉しいよ」
「じゃあ、ホルン! 一緒に行ってくれるんだな!?」
歓喜の声を上げるビッシュに、ホルンは泣きそうな顔で、ゆっくりと顔を左右に振った。
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