あきらめアイ

ふじゆう

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別れ話、二

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「そう。まさに、それだよ」
 タケルが、私を指さし、見つめてくる。
 どれだよ? 色々言って、どれのことを指しているのか、見当がつかない。
「私の言うことを聞いてくれないって何? アリスは、俺を支配したいの?」
「は? どうして、そうなるのよ? 私は、ただお願いしているだけじゃない!」
 感情が先立ってしまい、まるで叫び声のようになった。声の大きさに、驚いた。
「うん。つまり、自分がムカついたから、自分がもっと楽をしたいから、文句を言っているんでしょ? 俺の意思は度返しで、俺の言動を制限して、自分の思うがままに支配しようとしているよね?」
 そんなこと・・・支配だなんて。支配と言う言葉に、脳味噌が支配されたかのように、支配という言葉が、グルグルと駆け回っている。なかなかに、凶悪な言葉だ。そんなつもりはないけれど、出すべき言葉が見当たらない。
「アリスは、気づいていないかもしれないけど、最近日に日に文句が増えているよ。文句ばっかり言っていて楽しいの? 楽しい訳ないよね? 俺も楽しくない。楽しい訳がない。文句言われる為に生きている訳じゃないんだからね」
「で、でも。そんなの仕方ないじゃない? 共同生活なんだから、お互いルールは守るべきでしょ?」
 何故だか、すっかり意気消沈してしまい、キレの良い言葉が出てこない。
「それは、アリスの都合で決められたルールだよ。ルールと言うか、勝手に決められた命令だね。まあ、ちゃんと否定しなかった俺にも責任は、あるんだけどね」
 タケルは、立ち上がってキッチンへと歩いていく。冷蔵庫を開け、コップにお茶を注いで戻ってきた。私も喉が渇いていたけれど、『私にもお茶入れて』と、言えなかった。タケルは、元の位置に戻り、胡坐の上でクッションを抱く。
「俺はアリスの都合良く動けないし、動く気もない。アリスは、死ぬまで文句を言い続けるつもり? そんな人生下らないし、精神衛生上不健康だ。だから・・・」
 別れようと言うのか。苛立ちと悲しみがごちゃ混ぜになって、意味が分からない涙が溢れそうになる。奥歯を噛み締めて、ギリギリのところで涙を堪える。
「もう、私の事が好きじゃないってこと? 他に好きな人ができたの?」
「ん? 大好きだよ。他の女は、特に興味ないよ。そもそも、好きならなんでも想い通りにできるって発想が子供だよ。それは、愛情の搾取で、感情を人質に取ってるようなもんだ」
 返す言葉が見つからない。言われてみれば、私の都合でお願いして、聞き入れてもらえないとムカついて。私ばかりが損をしているような気になっていた。でも、実際そうだ。二人で生活して、二人とも仕事をしているのに、家事は全部私で、言ったことしかしてくれない。言ったことも嫌々こなしている感じで、腹が立つこともある。特に、近頃は、タケルの態度に腹が立って、文句ばかりを並べていた。でも、それは、全部タケルが悪いのではないのか?
 どうして、悪いのだろう? 私の思い通りに、動いてくれないからだ。これが、支配しようとしているということなのだろうか?
「今も私は悪くない。悪いのは俺だって思ってる?」
 心を読まれたみたいで、背筋がビクンと跳ねた。
「俺は俺だから。アリスの色には、染まらないよ。だって、それなら、俺じゃなくても良いでしょ? 最初からアリスの理想通りの奴か、言いなりになる奴を見つけた方が早いし、建設的だと思うけど?」
 タケルはお茶を口に含み、テーブルに両肘を置いた。両手で左右の頬を包んで、真っ直ぐに私を見る。私は真っ直ぐ向けられる視線から逃げるように、顔を背けた。
「性格の不一致。別れる理由としては、十分だ」
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