あきらめアイ

ふじゆう

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別れ話、四

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しばらく、外の景色を眺めていたタケルが、ゆっくりと振り返った。私は、反射的に、体が震えて硬直した。
「俺はさ・・・アリスに文句言わないでしょ? 気づいてた?」
 タケルは、柔らかい口調で、目を細めた。私は、無言のまま首を左右に振る。
「どうしてだと思う?」
「それは、タケルが優しいから、我慢してくれていたんじゃないの?」
 今度は、タケルがゆっくりと、頭を振った。
「別にアリスが完璧で非の打ちどころがない女性だった訳じゃないよ。当然、嫌なところとか、納得できないところとか、色々あるよ。まあ、それが、限界に達したんだけど」
 もう、落ち込むしかない。更に、奈落の底へと落とすのか。
「諦めたからだよ」
「・・・は?」
 それは、いったいどういう意味なのだろうか? 言っても無駄だから、諦めたってことなのだろうか? 懸命に過去の出来事を思い出そうとするけど、何も心当たりがない。諦められる程、何かを求められた記憶がない。
「諦めるってさ、今の状態を受け入れるってことだよ。つまり、変化させず、現状のままでいるってこと」
 ミシッと床が軋む音がして、ハッと顔を上げると、タケルの優しい顔が目の前にあった。私は茫然と、タケルの瞳を見つめる。彼の瞳に映る私は、あまりにも情けない顔をしていて、思わず俯いた。
「俺はね、アリス? アリスの良い所も悪い所も、全部受け止めていたんだよ。受け入れていたんだ。でも、アリスは、変わってしまった。我がままになった。だから、もう無理だって、思ったんだよ」
 タケルは、そのまま、私を抱きしめた。すると、タケルの体が小刻みに震えているのが、伝わってきた。冷静沈着を装ってはいるが、タケルも焦っているのかもしれない。緊張しているのかもしれない。彼の喉元から、唾を飲み込む音が聞こえた。
「俺はアリスと、別れたい訳じゃない。でも、今のままなら、お互いの為にも離れた方が良い。アリスは、どうしたい?」
 涙が溢れ返ってきて、タケルのシャツを濡らしてしまっている。私は懸命に頭を振って、彼の体にしがみつく。
―――離れたくない。
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