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二十三、吉川さんの正体
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歪んだ女性の顔と、飛び散った鼻血の飛沫が、スローモーションで、脳裏に蘇った。僕の左頬をフルスイングで殴った女性と、星矢さんを刺した女性が、同一人物だそうだ。あまりの衝撃に、言葉を失ってしまった。数秒の空白から、現実に戻したのは吉川さんの手だ。吉川さんが、放心していた僕の顔の前で、手を振っていた。
「大丈夫ですかあ? 帰ってきて下さい」
「あ、ああ、すいません。大丈夫です。ちょっと、ビックリしちゃって」
「分かりますよ。そりゃ驚きますよね。驚いているところ申し訳ありませんが、早速ですが、仕事の話をさせて頂きます」
僕は、真っ直ぐ吉川さんの顔を見つめ、顎に力を込めて頷いた。
「この女性は、ヒメカさんと言います。働いている風俗店での源氏名であり、本名は知りません。星矢君からの情報で、間違いなくこの女性が、ターゲットです。星矢君からの依頼は、彼女を早急に見つけ出し、星矢君の前に連れて行く事です」
星矢さんが、自分を刺した女性を警察に突き出す気がない事は知っている。それ故だろうけれど、吉川さんはヒメカという女性を犯人ではなく、ターゲットと表現している事が、印象的であった。きっと、星矢さんを慮っての事だろう。
「星矢さんは、その女性をどうする気なのでしょう?」
「それは、分かりませんし、知る必要ありません。詮索もしません。私達の仕事は、彼女を連れて行き終了です。が、あなたなら、知る権利があるかもしれませんね」
たぶん、触れない方が、良いのだろう。だけど、気になって仕方がないから、星矢さんに尋ねたい。吉川さんの言う通り、僕には権利がありそうだ。僕も同一人物に顔面を殴られた被害者であり、星矢さんの手伝いをするのだから。
「ここからが本題なのですが、実はヒメカの自宅は発見しています」
「え? そうなんですか?」
「ええ、一応人探しのプロですからね。彼女は、店が用意している寮に住んでいます。寮と言っても、普通のマンションですけどね。部屋も分かっています」
少々、拍子抜けであった。吉川さんの手伝いとは、彼と一緒に彼女を探す事だと思っていた。
「居場所が分かっているのなら、もう僕の出番はないような気がするんですけど?」
「そんな事はありませんよ。部屋に居るからと言って本人とは限りませんし、先ほども言った通り、私は未加工の彼女の顔を知りません。人によっては、まるで別人ですからね。それに、暴れられたら、最悪強硬手段に出ます。向こうは、警察を呼べませんから。それに、万が一男と一緒なら、乱闘になるかもしれません。用心に越した事はないのです」
吉川さんの言葉に、途端に背筋が寒くなった。武力行使も持さない覚悟のようだ。申し訳ないが、腕っぷしにはまるで自信がないので、役に立つとは思えない。彼氏とか男性と一緒にいる可能性があるならなおさらだ。吉川さんは、万が一と言っていたが、可能性は高いのではないだろうか? しかも、夜の店で働く女性の彼氏となると、怖い人のイメージがある。
「あの・・・男性と一緒にいる可能性は、万が一ではないと思いますけど・・・」
「まあ、万が一よりは、高いかもしれませんね。ただ、星矢君を刺すほど追いかけておきながら、男と一緒にいたら殺意が湧きますね。それに彼女が住んでいるマンションは、一応女性専用なのですが、馬鹿女がそんなルールを守るとも思えませんしね・・・失礼しました。言葉が過ぎましたね」
「・・・え? 女性専用なんですか? それなら、僕達も入れませんね。外に出てくるのを待つんですか?」
「そんな、時間的猶予はありません。策はあります。少々お待ちを」
吉川さんは、ソファから立ち上がり、奥の扉の中に入って行った。僕は立ったり座ったりを繰り返し、居心地の悪い時間を過ごした。なかなか、吉川さんが戻ってこない。何度も時計を見て、三十分程経過した。扉が開く音が聞こえ、顔を向けて固まった。出てきた人物が、女性用であろう服を持って、こちらに歩み寄ってくる。
「じゃあ、コレ着てくれる? メイクは、私がしてあげる」
「・・・モ・・・モモちゃん???」
開いた僕の瞳孔に映っているのは、マーブルの常連客であるモモちゃんであった。
「大丈夫ですかあ? 帰ってきて下さい」
「あ、ああ、すいません。大丈夫です。ちょっと、ビックリしちゃって」
「分かりますよ。そりゃ驚きますよね。驚いているところ申し訳ありませんが、早速ですが、仕事の話をさせて頂きます」
僕は、真っ直ぐ吉川さんの顔を見つめ、顎に力を込めて頷いた。
「この女性は、ヒメカさんと言います。働いている風俗店での源氏名であり、本名は知りません。星矢君からの情報で、間違いなくこの女性が、ターゲットです。星矢君からの依頼は、彼女を早急に見つけ出し、星矢君の前に連れて行く事です」
星矢さんが、自分を刺した女性を警察に突き出す気がない事は知っている。それ故だろうけれど、吉川さんはヒメカという女性を犯人ではなく、ターゲットと表現している事が、印象的であった。きっと、星矢さんを慮っての事だろう。
「星矢さんは、その女性をどうする気なのでしょう?」
「それは、分かりませんし、知る必要ありません。詮索もしません。私達の仕事は、彼女を連れて行き終了です。が、あなたなら、知る権利があるかもしれませんね」
たぶん、触れない方が、良いのだろう。だけど、気になって仕方がないから、星矢さんに尋ねたい。吉川さんの言う通り、僕には権利がありそうだ。僕も同一人物に顔面を殴られた被害者であり、星矢さんの手伝いをするのだから。
「ここからが本題なのですが、実はヒメカの自宅は発見しています」
「え? そうなんですか?」
「ええ、一応人探しのプロですからね。彼女は、店が用意している寮に住んでいます。寮と言っても、普通のマンションですけどね。部屋も分かっています」
少々、拍子抜けであった。吉川さんの手伝いとは、彼と一緒に彼女を探す事だと思っていた。
「居場所が分かっているのなら、もう僕の出番はないような気がするんですけど?」
「そんな事はありませんよ。部屋に居るからと言って本人とは限りませんし、先ほども言った通り、私は未加工の彼女の顔を知りません。人によっては、まるで別人ですからね。それに、暴れられたら、最悪強硬手段に出ます。向こうは、警察を呼べませんから。それに、万が一男と一緒なら、乱闘になるかもしれません。用心に越した事はないのです」
吉川さんの言葉に、途端に背筋が寒くなった。武力行使も持さない覚悟のようだ。申し訳ないが、腕っぷしにはまるで自信がないので、役に立つとは思えない。彼氏とか男性と一緒にいる可能性があるならなおさらだ。吉川さんは、万が一と言っていたが、可能性は高いのではないだろうか? しかも、夜の店で働く女性の彼氏となると、怖い人のイメージがある。
「あの・・・男性と一緒にいる可能性は、万が一ではないと思いますけど・・・」
「まあ、万が一よりは、高いかもしれませんね。ただ、星矢君を刺すほど追いかけておきながら、男と一緒にいたら殺意が湧きますね。それに彼女が住んでいるマンションは、一応女性専用なのですが、馬鹿女がそんなルールを守るとも思えませんしね・・・失礼しました。言葉が過ぎましたね」
「・・・え? 女性専用なんですか? それなら、僕達も入れませんね。外に出てくるのを待つんですか?」
「そんな、時間的猶予はありません。策はあります。少々お待ちを」
吉川さんは、ソファから立ち上がり、奥の扉の中に入って行った。僕は立ったり座ったりを繰り返し、居心地の悪い時間を過ごした。なかなか、吉川さんが戻ってこない。何度も時計を見て、三十分程経過した。扉が開く音が聞こえ、顔を向けて固まった。出てきた人物が、女性用であろう服を持って、こちらに歩み寄ってくる。
「じゃあ、コレ着てくれる? メイクは、私がしてあげる」
「・・・モ・・・モモちゃん???」
開いた僕の瞳孔に映っているのは、マーブルの常連客であるモモちゃんであった。
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