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ふじゆう

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二十五、禁断の女子寮

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 モモちゃんの愛車であるミニクーパーに乗って、目的地へと辿り着いた。言うまでもないが、車内ではすったもんだと論争が繰り広げられていた。とは言え、僕の画像は、星矢さんに送信されてしまったので、後の祭りだ。
『似合うじゃないかwww』
 星矢さんからのラインに、スマホを投げ捨ててしまいそうになった。ワラワラワラじゃない!
 警察沙汰になっても可笑しくない、一大事のはずだ。しかし、星矢さんやモモちゃんを見ていると、緊張している自分が馬鹿らしく思えてきた。
「このマンションよ」
 散々愚痴を零し、疲れてしまったので、助手席の窓から暗い景色を眺めていた。車を徐行させながら、モモちゃんがマンションを指さしていた。徐行のままマンションを通り過ぎ、少し離れたコインパーキングに車を停めた。動作があまりにもスムーズだったので、きっと下見は済ませてあるのだろう。
「翔ちゃん。いつまで、むくれてるの? 仕事では気持ちの切り替えは、必要な技術よ」
 原因を作ったモモちゃんが、それを言うか。なんだか、釈然としない。モモちゃんは、いつも店で見る格好をしている。ミニのスカートに、網タイツを履いている。僕はというと、デニムを履き、フリフリがついた花柄のワンピースを着ている。真っ赤なハイヒールでコツコツと地面を叩いているモモちゃんの後を追う。流石に革靴だとアンバランスなので、僕はスニーカーを借りた。いくらカツラを被っているからと言って、本当に女性に見えるのか心配だ。僕は、細身な方ではあるが、骨格が許さないだろう。あ、その為のワンピースか。これなら、ある程度体系は隠せるだろう。もしかしたら、ワンピースを着ている女性は、体系を隠す意図もあるのかもしれない。ついつい、そんな邪推が脳裏に過った。
 マンションの前に辿り着くと、モモちゃんは道路の反対側へと歩いていく。そして、電柱に背を預け、スマホを取り出し耳に当てた。モモちゃんが電柱の影になる場所を指さしていたので、僕はそこへ。
「スマホを見てなさい。俯いていても不自然じゃないからね」
 モモちゃんに言われた通りにする。モモちゃんは、スマホで話しているフリをしているようであった。僕達の真正面に、マンションのエントランスが見える。
「ねえ、モモちゃん。これから、どうするの?」
「入り口の自動ドアは、オートロックだから、住人の出入りに合わせて通るのよ。翔ちゃんが気を付ける事は、三つよ。顔を上げない事。声を出さない事。私の後を必ずついてくる事。常に私の足元を意識して、私の動きに合わせて、瞬時に動けるようにしておいてね」
 モモちゃんは、綺麗にネイルを施された手を、僕の視界に下ろし、三本の指を伸ばした。顔を上げるなと言われても、やはり現状が気になる。顔が上がらないように、命一杯眉を上げて、前方を見ようとした。長髪のカツラの隙間から、エントランスの扉を眺める。
 黒い大理石のような外壁に囲まれ、スライド式の自動ドアの奥が光っている。とても豪華で、お洒落な仕様になっており、家賃の高さがうかがえた。顎を引き、両眉を極限までに持ち上げていた為、おでこがツリそうになった。足元を見て、一息ついた時だった。
「行くわよ」
 コツコツと地面を叩き、赤いハイヒールがマンションへと向かった。慌てて僕も後に続く。もう一度、眉を上げると、前方のエントランス内から、こちらに向かってくる女性がいた。女性が接近すると、自動ドアが開く。モモちゃんは、スマホを耳に当てたまま、いつも以上に腰をくねらせているように見えた。ドキドキしてしまうほど、モモちゃんは堂々としていた。決して、モモちゃんのお尻にドキドキした訳ではない。
 扉の手前で、女性とすれ違い、僕は咄嗟に顔を背けた。まるで、干渉しない事が決まっているように、女性は無関心に通り過ぎていった。
 拍子抜けしてしまうほど、あっさりと二人の女装した男が、男子禁制の女子寮に潜入した。ここまで容易いと、逆にセキュリティーが心配になった。
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