迷子の喫茶店

える

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 店を閉めて締め作業を進めていく。レティは閉店後、いつの間にか掃除を手伝ってくれるようになっていた。
 曰く、少しでも長く俺との時間を過ごしたい、らしい。

 少し悩んでいるのが、俺がレティをチラチラ見てしまうのと、レティがずっとこっちを見ている事だ。
 とても目が合うので本当に気恥しい。

 最近は俺の満更でもない感が表に出すぎているのか、スキンシップまではかってくる。
 頭を撫でられたり、気づいたら後ろに回っていて抱き込まれたり。

 俺たちはまだ付き合ってはいないし、いくら番だからってスキンシップ早すぎると思う。
 でもムスクのような香りが鼻腔をくすぐるから、全身が溶けてしまいそうになる。

「れ、レティ、だめだ。そこまでだよ。」

「まだお預けか。早く隅々まで触れてみたいんだが。」

「まだ、だめだ。」

 時折レティは、俺にキスをしようとする。
 まだ心の準備が出来ていないと断っているが、本当は俺だってキスしたい。

 それも今日までだ。今日でレティと初めてであってから半年が経つ。
 レティは気づいてないかもしれないけど、半年ってそれなりに節目だと俺は思う。

 だから今夜、俺はレティと一晩同じ部屋で過ごそうと思う。
 だから、どうなってもいいように暫くは営業を休む張り紙も作っておいた。



「レティ、そろそろ買い出しにいこう。」

「わかった。店が閉まる前にね。」

 街に出ると、祭りが近いのか出店の準備をしている人が多い。
 そういえば、そろそろ建国祭だと聞いたことがあるような。

 賑わう人たちを尻目に、いつもの精肉店と青果店に向かう。

 買い出しと言っても、生物は毎日配達に来てもらっているし、いつもとは違うものを仕入れる時も事前に連絡を入れてあるので、基本は支払いに行くだけだ。

 支払いも済ませて、今度は店で使う消耗品を買うために雑貨店によって、自分で食べるように食材を買い込んでいく。
 荷物はレティが持ってくれているので、俺はかなり身軽だ。

 最後は酒屋に寄って、良さそうなワインを買っておく。俺じゃなくて、レティが飲むものだから1本で十分かな?

「ワインか、いいね。トウリは飲むの?」

「いや、俺は飲まないよ。レティを夕飯に誘いたくて選んでる。」

「それは嬉しいな。私はこの産地のワインに目がないんだ。ご馳走してくれるの?」

「もちろん。一本でいい?」

「うーん、、、もう一本。」

 控えめなお願いに癒されて合計で三本も買ってしまった。
 沢山買えた満足感と、待ち受けている夜に胸を膨らませながら、僕らは家路についた。



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