田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし

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第23話 役所とギルドをはしごする。

「なんて言ってました?」

 さりげなく、大銅貨を店員の前に置く。いわゆるチップというものだ。これひとつで店員さんの表情が和らぐならば、安いものだ。スラムでの『お兄ちゃんどこから来たの?』の質問という情報と同じ報酬だけどね。

「夕方小屋で待ってるから、ってそれだけでした。」

 そうか、じゃぁ用事済ませて行ってみるか。一応カウンターに向かって、

「また行ってきます。今日帰ってこないかも知れませんけど。」

と告げて宿を出る。昼前にマキシムさんにお願いした内容を含めて、いろいろと話がながくなりそうだし、他にも確認したいことがあるので、今日は時間制限なしでスラムと対峙する。

 済ませる用事、まずは役所街に向かう。途中の商店で、革のバックと木のカップ、小皿、それとお金用の木箱を購入。いきなりだけど今から、サラハの役所で結界守の村の紹介状を提示して、商人ギルドに登録するための書類を作成してもらう。

 そのほか、役所ではいろいろと聞くこともある。道を聞きながら、程なくして役所に到着。受付のような場所で、手続きできる窓口をお聞きする。そのままの窓口でいいようだ。

 商業ギルドに登録したい旨を伝え、言われるがままに、結界守の村からの紹介状を提示すると、名前と生年月日聞かれる。出身地も必要そうだったので、巻き込まれ転移について話そうかと思ったが、勝手に結界守の村になったようだ。

 名前はアタール・タカムーラと、フルネーム。生年月日は単純にファガ歴632年から22を引いて、610年8月16日とした。注釈に【結界守の村の紹介状】と記され、最後に封蝋(ふうろう)印が押される。この紋章がおそらく、ジニム辺境伯のものだろう。

 ちなみに自分で字は書いていない。嘘発見器の魔道具もなし。こんなので大丈夫か、ちょっと心配なくらいだけど、嘘つくほどの情報も聞かれなかったしね。すべて役所の方が書いてくれた。

 まあ、書けと言われたら<ライティング>の魔法試したけど。

 紙は和紙のような感じ。色はクラフト紙のような感じかな。ようするに漂白されていないのだろう。手数料の銀貨1枚を渡し、書類を受け取り、聞きたいこともあらかた聞いて、他の用事に必要な要件や支払いを役所中に聞きまわって済ませた後、商人ギルドに向かう。

 日本でもそうだけど、こういう役所のある場所には、ギルドとかの施設が集まっていて楽ちんだ。冒険者ギルドはちょっと離れているけど、魔物とか取り扱うからだろうか。役所の受付でお聞きした商人ギルドを訪れると、守衛のような方にいったん止められる。

「何か御用で?」

 うん、そういや僕は旅人風の服装だったね。しかし、今日は結界守の村の紹介状だけでなく、役所の書類も持っているので、不審者扱いはされないだろう。

「商人ギルドに登録しに来ました。受付はどちらですか?」

 と言いながら、役所で作ってもらった書類を提示すると、すんなりと『登録はあの一番右の受付です』と、丁寧に指さしながら教えてくれたのでまっすぐそちらに向かう。うむ、午後は調子いいぞ。

 順番待ちもなく、受付で手続きを開始。業種に関して、貿易商と行商で登録する旨のみお伝えするだけで、スムーズに登録は進む。こういうところはほんと事務的なんだな。初めてのすごくかわいい女の子の受付なんだけど、こういう時は普通に進めるしかない。

「店舗はお持ちにならないようなので、ギルド証の発行のみになりますが、よろしいですか?店舗も同時にお持ちになる場合は、まず店舗の場所を決めていただいた後に、店舗許可証も発行させていただきます。お客様の見えるところに掲示していただくものです。それと、店舗の場合には販売品目の登録も必要になります。」

「すみません、サルハの外、領の村などに店舗を構える場合、その許可証は必要ですか?」

「いいえ、そちらは行商扱いとなります。基本許可証は必要な店舗は、領主様か代官様がいらっしゃる街中となります。ですので例えばこのサルハの街の壁の外での出店も、ギルド証の提示だけで構いません。」

 ふむふむ。ほぼ考えた通りでよさそうなので『貿易商と行商だけで構いません。』と返す。

「それでは、登録料金貨1枚と年会費として金貨1枚、そしてアタールさんの場合には、保証料大金貨20枚になります。保証料は、商売上のトラブル時、ギルドがギルド会員様に代わって賠償責任を負う場合などの保証金として預からせていただきます。詳しくは後ほどお渡しする、商人ギルドの会員規約とパンフレットをお読みください。」

 とのことなので、道中デュプリケートで複製した大金貨20枚を入れたお金用の木箱と、金貨2枚をお渡しする。ギルド証は、10分ほど待てばいただけるそうなので、少し受付を離れ、頂いたパンフレットをペラペラとめくり目を通しながら待つ。

 税金とか通関などについて書いているようなので、これは大事にしよう。スキャンしてスマホにも入れよう。

 程なくして『アタール様』と呼ばれたので、再度受付に。ギルド証を受け取ったが、血をたらしたり、魔道具に手をかざすとかのイベントはないようだ。心配になって

「これ、偽造とかされませんか?」

と聞いてみたら、カウンターに魔道具が仕込まれていて、利用制限の魔法が付与されているそうだ。いや、先に言ってよ。個人情報ダダモレかよ。もしかしたら、役所のカウンターにも何か仕込まれていたのかも。何気に思ったより、魔法のレベル高いよ。あとでじっくりギルド証も調べてみよう。

 とにかく必要手続きおよび物はそろったので、次に冒険者会館に向かうことにする。受付のお姉さんには後ろ髪を引かれるけれど。

 一時は拘束されたことがあるので、勝手知ったる冒険者会館。早速受付で登録する。ここでも最小限の質問だけで手続きは終了。手数料は商業ギルドほど高くはないが、大銀貨1枚とられた。結構高い。

 なんと受付担当は副支部長のセルゲイ氏。ついでに3人の写し絵もお渡しする。写し絵は家のインクジェットプリンタで普通紙に印刷した、汚い物。一応セービングの魔法はかけてみた。ん?セービングの魔法は、魔石なしで維持できるのだろうか?これも要検証だな。

 警備のお二人にもセルゲイさんが声をかけて集合させる。なんか受付でのやり取りを他の方が見ると、賄賂の受け渡しのように見えるであろうほど、セルゲイさんたちが悪い顔している。いや、喜んでいる顔なのか。

 いわゆる冒険者ギルドカードというのが出来上がるまで、仕組みについて説明を受ける。

 ランクは無印とB、A、Sの4つ。ランクというより信用度の表示のようだ。そのかわり、受けるレベルとかそういうのはない。無印でもドラゴンを狩ってもOKだそうだ。いや、ドラゴンもいるんですか。ランクは、達成度と信用の目安。 もちろん、強いことは最低条件だそうだ。

組合(ギルド)なので、組合員(ギルド員)への仕事のあっせんがメインだけど、A以上のランクは、領主や国からの直接依頼があるという。またB以上は各種ギルドからの指名依頼があるそうだ。ようするに、掲示板にある依頼票以外の割のいい仕事を斡旋してくれるということらしい。

 会費などは無しで、依頼金額の2割を上納することになるそうだ。魔物の素材、材料採取依頼などでも、買取カウンターで勝手に2割天引きするそうなので、税金計算は楽そうだけど商業ギルドのこともあるので、一応そこいらを聞いてみると、冒険者ギルドでも商業ギルドに加盟している商店でも、買取のときには、天引きしているってことで、納得した。

 自己使用とか、自分で行商する場合は『税務官がなんか言うだろ。』と適当な返事をいただいた。でもまあ、確かにそうだ。

 冒険者ギルドでも、パンフレットと規約の冊子をいただいたので、後でじっくり目を通すことにする。

「冒険者ギルド員は、基本的に自分の命、仲間の命についても、すべて自己責任。ギルドは、情報の提供(有料)と仕事の斡旋だけと思って間違いない。たまに訓練もやっているがな。とにかく死ぬなよ。」

 と、ありがたい言葉と無印のギルドカードを胸に、冒険者会館を後にするのだった。後ろ髪は一切引かれない。

 これで用事はほとんど済んだので、最後の用事、スラム地区へと向かうことにする。
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