田舎暮らしと思ったら、異世界暮らしだった。

けむし

文字の大きさ
64 / 116

第64話 アーティファクトの劣化問題。

しおりを挟む
「叔父様、いえ陛下、ここまでのお話の中で、アタールさんについて私は信頼しても良い方だと感じています。そして彼にでしかできないことをお願いしたいという思いは、先ほどと同じです。どうでしょうか。陛下さえよろしければ、私はアタールさんに現状を語ったうえでお願いしようと思いますが。」

 なにやらかなり重要な話のようだ。襟を正してお聞きする姿勢をとる。アート様は腕を組んで真剣な顔で頷いている。エレナはポカンと口を開けているね。

「余もそれで良い。しかしアタール君、この話を聞いてしまった場合、もう後には引けんぞ。いや、結果がどうのというわけではない。同じ秘密を共有することになるということだ。この国王である余、そして公爵であるサシャ、辺境伯であるアートと同じ秘密をな。これからサシャから聞く話は、たとえどんなに親しかろうが、肉親であろうが口外無用だ。それでも聞いてくれるか?」

 うわぁ、これかなりハードル上げられてる・・・。けど、食事前も皆さん真摯に僕の話を聞いてくれて、僕のためにいろいろ考えてくれてたのだから、ここは報いるべきだろうな。アート様は知らんけど。

「わかりました。心して聞かせていただきます。エレナさんはどうしますか?」

 いきなり声を掛けたものだから、エレナはビクッと体を個話ならせたけど、僕に向き直るなり、キリっとした表情になりコクンと頷き、国王様に向き直ると、

「わたしはアタールさんに尽くすと決めております。わたしが聞いてよいのならば、一緒にお聞きしたいです。そしてアタールさんとともに、秘密を守ります。」

 と言ってくれた。だよね。ここまで来てひとりだけ仲間はずれも嫌だろうし、もう今は僕もエレナを信頼しているから、あとは国王様の判断を待つ。うん、国王様とサシャさんが頷き合っている。

「アートもそれで良いか?」

「はい。」

 どうやらエレナの希望は叶ったようだ。早速サシャさんが説明を始めた。

「ありがとう、おふたりとも。それじゃまず、現状から説明するわ。今までの話で、魔物の山と結界について、そして結界守の村の役割については分かってもらえたと思うの。問題は、500年という時の流れなの。」

 これは予想が付く。リペアはかけることで元の状態に戻るし魔法維持は必要ないけど、そこから再び劣化が始まるだろうし。セーブはおそらく魔力供給が切れると、セーブされた状態が解除されて、劣化が始まる。古の時代から発掘される間に、たとえセーブがかかっていても魔力供給が切れた状態が続いていたから、既にかなりの劣化が進んでいたのだろう。

 でももしも大昔に銀色の魔法石が存在していたとしたら、僕の魔力をチャージした魔石も研究や物語と違って、やはり何百年単位かで魔力は切れ劣化するのかもしれない・・・。

 あ、サシャさんにジト目されないうちに話の続き聞かなきゃ・・・。

「結界のための魔力チャージの魔法石が劣化していて、もうほとんど使い物にならなくなってきているの。使い物にならないというのは、壊れたということ。今使えるアーティファクトの魔法石はもうあと数個、ごく僅か・・・。その数個が今日明日に壊れてしまうというわけではないわ。でも今までの記録でアーティファクトの魔法石が壊れる期間を見てみると、数か月後、数年後には・・・。」

 それはまさしく国家の危機ですよね。東西千キロ以上の結界がある日突然消失すれば、魔物の山から魔物があふれ出てくる可能性が大きい。そもそも魔物の山側の魔物の数とか把握しているのだろうか?古の時代から約2000年、結界を張りなおして約500年、その間に魔物がかなり増えているのではないか。

「あの、お話の途中ですみません、魔物の山の魔物のおおよその数って、把握されているのですか?」

 僕の質問に、サシャさんとアート様は、首を横に振って答えた。国王様は深くため息をついている。

「地図を見ても分かる通り、北の国境線は長いわ。とても調査などできないし、魔物の山の魔物は強力だから、調査をするにしても膨大な戦力を必要とするの。とても無理だわ。それに・・・、結果守の村は対魔物の要で、これはアート君に聞いた方が詳しいけれど、他国からの結果守の村への干渉を防ぐために、周辺に密かに防衛網を敷いているわ。西の国境、南の国境、そして結果守の村。ここに既に膨大な戦力を配置していて、そんな余裕もない・・・のよ。」

 うわぁ・・・これはバイクの事も具体的に知られている可能性が大きいな・・・まあいいか。

 ん?この異世界には、サンプリング調査という概念はないのか。調査といえば全量調査なんだな。まあ、サムア王国側や、魔物の山の北側には結界がないと考えると、そちら側に異様にあふれ出ていなければ、魔物の飽和状態ではないとは思うのだけど、そこは僕は知らないからな。

「戦力の話は、あとでアート君に詳しくきいてね。それで、私も含めて、結果守の村では、アーティファクトの魔法石の代替えの研究も続けていますが、芳しい成果は上がっていません。そこで・・・、」

 サシャさんが国王様の方を見て、再び頷き合っている。

「アタールさんに、是非その研究の協力をお願いしたいの。どうかしら。」

 エレナの方を見ると、僕をじっと見つめている。ジト目ではない。期待のこもった目だな。これは引き受けるしかないだろうけど、結果守の村に張り付きは困る。週一とか不定期ならいいけどどうかな・・・。

「お手伝いさせていただきます。でも、少しだけ条件を付けさせてもらっていいですか?足元を見るようなものではありません。」

「なにかしら?内容によると思うわ。ねえ、叔父様。」

「良い、余に言ってみろ。」

「ありがとうございます。その研究なのですが、僕はここで行ってもよろしいでしょうか。もちろん定期、不定期で結果守の村を訪問して、情報の共有や研究の成果を開示しますし、魔法石の魔力チャージなどもよろしければ参加させていただきます。」

 また国王様とサシャさんがひそひそ話を始めた。でもアート様はいつも蚊帳の外なんだな、なんか少し可哀そうかも。

「わかった、それで構わん。細かいことは結果守の村で、サシャと打ち合わせしてくれ。どういう研究をしているのか、見て聞いた方が早い。それとアート、お前はアタール君がお前の領地に居る間は、サポート役だ。アタール君やエレナさんに、決して粗相のないようにな。あと報酬はあとで余が送るからお前が出しておけ・・・いや、転移ができるのだから、たまに、アタール君が顔を出せばいいのか?うむ。」

 国王様のアート様に対する扱い、やっぱりひどくない?そして、転移とはいっても、街に入るときには門番を通さなきゃいけないから、街門のかなり前から歩くなりしないといけないんだよね。まだこの国に来てから雨に当たったことはないけど、場合によっては雨の中を歩くことになるし、行くたびに先ぶれ出さなきゃいけなんだよな。で、報酬?なにそれ。あと、まだサルハの街にさえまともに住んでないんだけども・・・。あ、アート様がこっち向いた。

「では、アタール君、我らが王国のため、我が領のために力を借りるが、よろしく頼む。」

「はい。こちらこそよろしくお願いします。それでは皆さん、そろそろ王城に戻りますか。」

 僕が皆に問うと、国王様が車に乗って飛びたいとごね出したので、王都が見えるところくらいまで、飛んで行くことになった。まあ、飛ばせば2時間くらいだからね。途中、席を交代しながら、眺めを楽んだ。国王様が助手席を所望されたときいは、エレナが少しむくれていたけれど、後ろでサシャさんと盛り上がっていたので良しとする。今度四駆のワンボックスカーでも買うかな。
しおりを挟む
感想 65

あなたにおすすめの小説

愛された側妃と、愛されなかった正妃

編端みどり
恋愛
隣国から嫁いだ正妃は、夫に全く相手にされない。 夫が愛しているのは、美人で妖艶な側妃だけ。 連れて来た使用人はいつの間にか入れ替えられ、味方がいなくなり、全てを諦めていた正妃は、ある日側妃に子が産まれたと知った。自分の子として育てろと無茶振りをした国王と違い、産まれたばかりの赤ん坊は可愛らしかった。 正妃は、子育てを通じて強く逞しくなり、夫を切り捨てると決めた。 ※カクヨムさんにも掲載中 ※ 『※』があるところは、血の流れるシーンがあります ※センシティブな表現があります。血縁を重視している世界観のためです。このような考え方を肯定するものではありません。不快な表現があればご指摘下さい。

聖女召喚されて『お前なんか聖女じゃない』って断罪されているけど、そんなことよりこの国が私を召喚したせいで滅びそうなのがこわい

金田のん
恋愛
自室で普通にお茶をしていたら、聖女召喚されました。 私と一緒に聖女召喚されたのは、若くてかわいい女の子。 勝手に召喚しといて「平凡顔の年増」とかいう王族の暴言はこの際、置いておこう。 なぜなら、この国・・・・私を召喚したせいで・・・・いまにも滅びそうだから・・・・・。 ※小説家になろうさんにも投稿しています。

ボクが追放されたら飢餓に陥るけど良いですか?

音爽(ネソウ)
ファンタジー
美味しい果実より食えない石ころが欲しいなんて、人間て変わってますね。 役に立たないから出ていけ? わかりました、緑の加護はゴッソリ持っていきます! さようなら! 5月4日、ファンタジー1位!HOTランキング1位獲得!!ありがとうございました!

最難関ダンジョンをクリアした成功報酬は勇者パーティーの裏切りでした

新緑あらた
ファンタジー
最難関であるS級ダンジョン最深部の隠し部屋。金銀財宝を前に告げられた言葉は労いでも喜びでもなく、解雇通告だった。 「もうオマエはいらん」 勇者アレクサンダー、癒し手エリーゼ、赤魔道士フェルノに、自身の黒髪黒目を忌避しないことから期待していた俺は大きなショックを受ける。 ヤツらは俺の外見を受け入れていたわけじゃない。ただ仲間と思っていなかっただけ、眼中になかっただけなのだ。 転生者は曾祖父だけどチートは隔世遺伝した「俺」にも受け継がれています。 勇者達は大富豪スタートで貧民窟の住人がゴールです(笑)

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

没落した貴族家に拾われたので恩返しで復興させます

六山葵
ファンタジー
生まれて間も無く、山の中に捨てられていた赤子レオン・ハートフィリア。 彼を拾ったのは没落して平民になった貴族達だった。 優しい両親に育てられ、可愛い弟と共にすくすくと成長したレオンは不思議な夢を見るようになる。 それは過去の記憶なのか、あるいは前世の記憶か。 その夢のおかげで魔法を学んだレオンは愛する両親を再び貴族にするために魔法学院で魔法を学ぶことを決意した。 しかし、学院でレオンを待っていたのは酷い平民差別。そしてそこにレオンの夢の謎も交わって、彼の運命は大きく変わっていくことになるのだった。 ※2025/12/31に書籍五巻以降の話を非公開に変更する予定です。 詳細は近況ボードをご覧ください。

解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流
ファンタジー
「ロイ・クノール。お前はもう用無しだ」 解呪の魔法しか使えない初心者冒険者の俺は、呪いの宝箱を解呪した途端にSランクパーティーから追放され、ダンジョンの最深部へと蹴り落とされてしまう。 そこで出会ったのは封印された邪龍。解呪の能力を使って邪龍の封印を解くと、なんとそいつは美少女の姿になり、契約を結んで欲しいと頼んできた。 彼女は元は世界を守護する守護龍で、英雄や女神の陰謀によって邪龍に堕とされ封印されていたという。契約を結んだ俺は彼女を救うため、守護龍を封印し世界を牛耳っている女神や英雄の血を引く王家に立ち向かうことを誓ったのだった。 (1話2500字程度、1章まで完結保証です)

転生したら王族だった

みみっく
ファンタジー
異世界に転生した若い男の子レイニーは、王族として生まれ変わり、強力なスキルや魔法を持つ。彼の最大の願望は、人間界で種族を問わずに平和に暮らすこと。前世では得られなかった魔法やスキル、さらに不思議な力が宿るアイテムに強い興味を抱き大喜びの日々を送っていた。 レイニーは異種族の友人たちと出会い、共に育つことで異種族との絆を深めていく。しかし……

処理中です...