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第72話 王城再び。

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 皆さんをお送りして、ログハウスでのんびりと寛ぐ。今日はあまりにも慌ただしかった。いや、昨日もだったか。ここのところ、慌ただしい日々が続いている。早くエレナのメイド服を誂えたり、遠目からでもいいから、この世界のお姉さんたちを眺めたりする生活がしたいな。人種についても早くメモを埋めていきたい。本来はTodoの最優先事項なのだから。

「ブーン、ブーン。」

 もうスマホが通信の魔道具と同じ機能、いやそれ以上なのはバレてしまったので、今はマナーモードにしている。って、電話取らなきゃ。

「はい、もしもし、アタールです。」

 内線表示でも相手を登録しているから、もちろん相手は分かっている。アート様だ。

「我だ。今日はご苦労だった。早速だが明日の朝、我が魔道具で連絡したらすぐ迎えに来てくれ。我、そしてサシャの順だ。そのあと以前のように、王都の外に転移して、門で先ぶれを出してもらい王城に向かう。だいたい朝7時頃連絡する予定だ。よろしくな。」

 ガチャっという音はしないが、何故という疑問を挟む余地もなくガチャ切りされた。ものすごく分かりやすく整理された内容だったけど。

「エレナ、今日はもう用事はないそうですけど、明日は朝からみんなを迎えにいったあと、王城に行くらしいので、晩御飯を食べたら早めに寝ましょう。」

「慌ただしいですね。王都でなにかあったのでしょうか。」

「理由は聞けなかったけど、また王都の外から門を通って行くらしいよ。」

「そうですか、じゃぁまた服はこの綺麗な方の服ですね。」

 ちょっとだけ嬉しそうだけど、本当に別の新しい服用意してあげなきゃな。今の服はおしとやかな感じだけど、本来猫人族はけっこう活動的なんだと思うからね。歩くと素の僕より全然速いし、力も強い。あとコスプレ界隈の定番というのもあるしな。作業服と称して、メイド服は必ず用意しないと。

 今日は夕食の前に先に順に風呂に入り、そのあとに、新作というかインベントリからオムライスを出して食卓に並べた。エレナはものすごく怪訝な顔をしていたけれど、僕が先に食べて、エレナも食べてみると、目を見開いた後、ニコニコになっていた。気に入ったらしい。ミートソースよりもオムライスのケッチャップの方が甘いからね。次はナポリタンスパゲッティにしよう。

 食事を終えてこっちの世界では早起きに自信がなくなった僕は、すこしエレナと雑談をかわした後、そのまま部屋に戻りシステムチェックだけして床に就いた。今日は新しい写真もないしね。

 どうにか、エレナや電話で起こされる前に起きることができた。部屋を出るとエレナはいつものスエットの上だけではなくもうお出かけ着に着替えていたので、すぐに朝食を用意する。毎日パンケーキでもいいけど、今日は普通にレーズンパン。小さいのが6個くらい入ってるやつね。それを3つずつと牛乳。ふたりとも瞬く間に平らげた。

 食後の紅茶で一服・・・。する間もなく電話が鳴る。というか震えたので、すぐに出て、迎えに行く旨を伝え、そのまま転移する。今日は車なし。あ、王都には前と同じように車で乗り付けるので、サシャさんのところからは車を使う。エンジンかけるのは、王都の寸前。

 サシャさんのお迎えも済み、車で王都近辺、今日は比較的近いところに転移して、周りに人眼がないのを確かめて光学迷彩風障壁を解除。これも以前と同じパターン。王都の貴族用の門でアート様が書状を渡し、先ぶれを出してもらいしばらく待つ。今回もメダルを出したときに、門番さんをはじめ、衛兵の方々が片膝付こうとするので、今回はアート様に止めてもらった。僕から言っても効果がない・・・。

 先ぶれに出た方が戻り、早速王城に車を走らせる。こないだはほぼタクシードライバーだったが、今回は、道を覚えているので周りを少し見物するつもりだったのだけれど、人々の好奇の目が怖くて全く景色を楽しむこともなく、王城に着いてしまった。もちろん門もスルー。そのまま玄関に車を止め、みんなが降りた後、一応ロックして、城の使用人さんの案内で・・・・あれ?また謁見室なの?・・・控室で待つことになった。

「あの、アート様、なぜ謁見の間の控室なんですか?」

「うむ、それはな、謁見の間に入ってからのお楽しみだ。」

 めっちゃいい顔でニカッと笑ってそう言う。これも先日と同じ何かを企んでる顔だ。不安になってサシャさんの方を窺うと、ニコっと微笑まれた。そろそろこういう場にも慣れてきたかと思ったエレナはド緊張している。まあ、王城だもんな。僕も本当に不安になってきた。

「コンコン」

 前と同じように謁見の間側のドアがノックされ、これも以前と同じようにアート様が案内役を無視するように僕たちを引き連れて進んでいく。え?なんでこんなに人が居るの?なんかすごく高そうな服を着た人たちが並んでいるんですけど・・・。あ、エレナ、足と手が一緒に出てるよ。なんとか既定のポジションにたどり着き、片膝をついて国王様を待つ。

「国王陛下のおなり~」

 お、今回は最後まで言った。国王様は荘厳に、ゆっくりと王座に座る。

「面をあげよ。」

 国王様の隣にいる、ものすごく偉そうな人が、そう言ったが、もともと面はさげてないけども。あ、サシャさんとアート様がいた。

「アタール・タカムーラおよびエレナ・タカムーラ。」

「「はい。」」

 エレナさん、なんか緊張解けた?タカムーラ効果?

「今回、王国の最大の問題であった、アーティファクトの劣化による結界崩壊の危機をサシャ・フォン・レンティエ公爵と協力し、解決と相成ったと聞く。サシャ・フォン・レンティエ公爵、アート・フォン・ジニム辺境伯、その事に相違ないか。」

「「ははっ、相違ありません。」」

「うむ、よくやった。」

 まあ、危機を知っているだろう国の重鎮に知らせることはあるとは思ったけど、何この茶番・・・。というか僕の魔法のことがバレたら問題ではないのか。主に僕の今後の静かな生活に関しての。顔が売れたら、気軽に繁華街に行けないよね。

「よって、アタール・タカムーラに大閃光宝章、エレナ・タカムーラに閃光宝章を贈るものとする。また、先日の謁見で、研究成果に対しての貴族位を打診したが、ジャーパン皇国の臣民であり本人が辞したこともあって、ふたりを名誉王国民とし、王国としておおいに歓迎するものとする。」

 名誉王国民って何?ジャーパン皇国のことは、口止めしながらもけっこうあちこちで言ってるからいいけど、貴族とか研究成果とか何?研究もまはだしてないけど・・・。

「皆のもの、今後アタール・タカムーラおよびエレナ・タカムーラに対しては、相応の対応を取るように。良いな。」

 これは有無を言わせぬ命令だよな。さすが専制君主制の国だな。

「アタール・タカムーラ様およびエレナ・タカムーラ様こちらへ。」

 国王様の隣の偉い人が横まで来て”様”までつけて呼んで、僕たちを王座の前まで連れていく。そして豪華なお盆に乗っている勲章っぽいもの・・・勲章か・・・それをそれぞれ僕とエレナの胸につけるように促した。こういうのはどうやって付けるんだろう。誰かがつけてくれるのかと思っていたけど、僕もエレナもなんとか自分で付けた。めっちゃ時間かかったけど。

「うむ、そして報奨金として、それぞれに大金貨2000枚を贈るものとする。」

 エレナはもう眩暈はして倒れるんじゃないかと思うくらい、目がグルグルしている。僕はもう開き直ってる。ここまでくれば他人ごとと同じくらい非現実的だからね。

「それでは下がってよい。皆のもの、この後はサロンで寛いでくれ。」

 そう言って国王様は去って行った・・・。まあ控室に帰ってきたとたんに電話が鳴ったんだけど。
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