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第六話「イセカイアワー~都市伝説勇者譚~」
6-1.イセカイアワー~都市伝説勇者譚~
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「カルトー。羽根突きやろうぜー」
神社の居間で寝そべりながらマンガを読んでいた駆人の耳に声が響く。
声のする方向を見れば化け狐の天子が何やら木の板を持ってやってくる。さっきから隣の部屋でガサゴソと押し入れをあさっていたが、そんなものを探していたのだろうか。
「は、羽根突き、ですか」
「そうじゃ。押し入れの奥から羽子板が出てきてのう。どうじゃ、やらんか」
羽根突きなどきょうび正月の子供たちでもそうそうやらない。ましてこの暑さだ。あまりやりたいとは思えない。渋い顔をしていると。
「え~。やろうよやろうよ~」
などといいながら駆人の周りをドタドタと回るものだから、遂に根負けする。
「……、分かりましたよ。やりましょう」
天子の顔が光を放つほどに明るくなる。
「おお!それなら墨を用意せんとな!」
……、そこまで本格的にやるのか。この化け狐は何を考えているのだろう。
天子はウキウキと、駆人はシブシブと神社の空きスペースに出てきた。空は雲が厚く張って太陽は出ていないものの、むしろジメジメとした不快な暑さになっている。
「さてさてカルトよ。どっちの羽子板がいいかのう?」
そう問いながら見せる二枚の板には、一枚には金髪の、もう一枚には銀髪の女性が描かれている。これは……。
「これ、もしかして天子様と空子さんですか」
「そうじゃ!昔なにかの記念に作ってもらったんじゃなあ。ずっとしまい込んでいたから忘れておったが」
「……、じゃあ。天子様の絵の方で」
「お?やっぱりわしのほうがいいのか?かわいい奴じゃのう。うりうり」
天子の絵が描かれた羽子板で脇腹を小突いてくるのを、その板を奪い取ってやめさせる。
「空子さんの顔で羽根を叩くのは心苦しいですから」
「おい。どういう意味じゃ」
カン。カン。
最初のうちは不慣れな駆人がすぐに羽根を落としていたが、数度もやり直せば、長いラリーが続くようになってきた。
「お主、なかなかうまいのう」
「こういう、この先使わないであろう技術の習得は早いんです」
頬に描かれたばつ印をゆがませて羽根の行方を追う。
「なるほどのう。ではこちらも本気を出さねばな」
カン。
「うわ」
天子の打った羽根をギリギリの体勢で打ち返した。返した羽根は天子の目の前に高く上がる。
「絶好球じゃな!スマーッシュ!」
大きく体をのけぞらせ、思いきり羽根を叩く。
放たれた豪速球は、まだ体勢を整え切れていない駆人の額に直撃した。
「あ、すまん。大丈夫か」
視界に星が舞う。もやがかかったように目の前が白くなっていく。心配そうな天子の声も遠くなっていく……。
「カルト!カルト……!カルト……。……」
「……。……けて。誰か……。誰か助けて!」
誰かの声が聞こえて目を覚ます。まだ意識がはっきりとしない。おぼろげな視界には重なり合った木の葉が見える。体を起こし、周りを眺めると、明らかに神社とは違う場所だ。どうやら深い森の、少し開けた場所にいるらしい。手にはさっきまでの羽子板を持っている。
よく分からない。夢でも見ているのだろうか。
「あーれー。誰か御助けをー」
なにやら古風な口調で助ける求めを声がする。先ほどの声の主だろうか。声のする方向を向いてみると、なにやらきらびやかな姿をした女性が走っている。その後ろを追うのは、豚の頭がついた巨漢。
必死の形相で助けを求めながら走っているのだから、彼女はあの巨漢から逃げているのだろう。助けを求められれば見て見ぬふりのできない性分の駆人は、走り寄って巨漢の前に立ちはだかった。
「ブヒブヒ。なんだおめえ。邪魔するなら一緒に食っちまうぞ」
頭が豚なら喋り方も豚のようだ。豚がしゃべるのを聞いたことはないが。
言い終わるや否や、巨漢はこちらに向けて突進してきた。駆人はそれをひらりとかわし、羽子板で頭を思いきりひっぱたいた。
バチーン!
「ブヒー!」
巨漢は悲鳴をあげると、煙と共にどこかへ消える。倒したのだろうか。
「ああ。どこの誰とも知らぬお方。助けていただきありがとうございます」
巨漢に追われていた女性が駆人に近づく。その姿をまじまじと見てみると、きらびやかなドレスに、豪華な冠、それをのせた長い金髪……。しかしその顔には見覚えがあった。
神社の居間で寝そべりながらマンガを読んでいた駆人の耳に声が響く。
声のする方向を見れば化け狐の天子が何やら木の板を持ってやってくる。さっきから隣の部屋でガサゴソと押し入れをあさっていたが、そんなものを探していたのだろうか。
「は、羽根突き、ですか」
「そうじゃ。押し入れの奥から羽子板が出てきてのう。どうじゃ、やらんか」
羽根突きなどきょうび正月の子供たちでもそうそうやらない。ましてこの暑さだ。あまりやりたいとは思えない。渋い顔をしていると。
「え~。やろうよやろうよ~」
などといいながら駆人の周りをドタドタと回るものだから、遂に根負けする。
「……、分かりましたよ。やりましょう」
天子の顔が光を放つほどに明るくなる。
「おお!それなら墨を用意せんとな!」
……、そこまで本格的にやるのか。この化け狐は何を考えているのだろう。
天子はウキウキと、駆人はシブシブと神社の空きスペースに出てきた。空は雲が厚く張って太陽は出ていないものの、むしろジメジメとした不快な暑さになっている。
「さてさてカルトよ。どっちの羽子板がいいかのう?」
そう問いながら見せる二枚の板には、一枚には金髪の、もう一枚には銀髪の女性が描かれている。これは……。
「これ、もしかして天子様と空子さんですか」
「そうじゃ!昔なにかの記念に作ってもらったんじゃなあ。ずっとしまい込んでいたから忘れておったが」
「……、じゃあ。天子様の絵の方で」
「お?やっぱりわしのほうがいいのか?かわいい奴じゃのう。うりうり」
天子の絵が描かれた羽子板で脇腹を小突いてくるのを、その板を奪い取ってやめさせる。
「空子さんの顔で羽根を叩くのは心苦しいですから」
「おい。どういう意味じゃ」
カン。カン。
最初のうちは不慣れな駆人がすぐに羽根を落としていたが、数度もやり直せば、長いラリーが続くようになってきた。
「お主、なかなかうまいのう」
「こういう、この先使わないであろう技術の習得は早いんです」
頬に描かれたばつ印をゆがませて羽根の行方を追う。
「なるほどのう。ではこちらも本気を出さねばな」
カン。
「うわ」
天子の打った羽根をギリギリの体勢で打ち返した。返した羽根は天子の目の前に高く上がる。
「絶好球じゃな!スマーッシュ!」
大きく体をのけぞらせ、思いきり羽根を叩く。
放たれた豪速球は、まだ体勢を整え切れていない駆人の額に直撃した。
「あ、すまん。大丈夫か」
視界に星が舞う。もやがかかったように目の前が白くなっていく。心配そうな天子の声も遠くなっていく……。
「カルト!カルト……!カルト……。……」
「……。……けて。誰か……。誰か助けて!」
誰かの声が聞こえて目を覚ます。まだ意識がはっきりとしない。おぼろげな視界には重なり合った木の葉が見える。体を起こし、周りを眺めると、明らかに神社とは違う場所だ。どうやら深い森の、少し開けた場所にいるらしい。手にはさっきまでの羽子板を持っている。
よく分からない。夢でも見ているのだろうか。
「あーれー。誰か御助けをー」
なにやら古風な口調で助ける求めを声がする。先ほどの声の主だろうか。声のする方向を向いてみると、なにやらきらびやかな姿をした女性が走っている。その後ろを追うのは、豚の頭がついた巨漢。
必死の形相で助けを求めながら走っているのだから、彼女はあの巨漢から逃げているのだろう。助けを求められれば見て見ぬふりのできない性分の駆人は、走り寄って巨漢の前に立ちはだかった。
「ブヒブヒ。なんだおめえ。邪魔するなら一緒に食っちまうぞ」
頭が豚なら喋り方も豚のようだ。豚がしゃべるのを聞いたことはないが。
言い終わるや否や、巨漢はこちらに向けて突進してきた。駆人はそれをひらりとかわし、羽子板で頭を思いきりひっぱたいた。
バチーン!
「ブヒー!」
巨漢は悲鳴をあげると、煙と共にどこかへ消える。倒したのだろうか。
「ああ。どこの誰とも知らぬお方。助けていただきありがとうございます」
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