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第一話「オカルトアワー~都市伝説怪奇譚~」
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化け物は完全に起き上がると、メキメキと音をたてながら口を更に大きく、牙は長く、鋭利に変形させる!更に手に持った鎌が消えたかと思うと、どこからか『タロットカードの死神の絵』で死神が持っているような巨大な大鎌を取り出し、そして少年達をまたも切り裂こうと少年達の方に向かって走り出した!
二人はほぼ同時に化け物と反対の方向へ走り出す。走りながら少年は女性に問い詰める。
「あの化け物は光線で倒れたんじゃないんですか!?」
「そのはずじゃ!わしの狐火ームはああいった手合いには効果覿面!……のはずなんじゃ!」
「むしろ元気になったように見えますけどっ!?」
少年はまたしてもあてもなく逃げ続けるほかない状況に陥ってしまった。飛び込んで割って入ったときにはとても頼もしく、大きく見えた女性が、一緒に逃げる今となってはどこか頼りなく、小さく見える。実際その女性の背丈は、平均程度の身長の少年より、少々低い。
そのまましばらく走り続け、角を曲がったところで女性が声をあげる。
「あれじゃ!あれに隠れろ!」
曲がったところにあったのはまたまたゴミ捨て場。そこに捨ててある粗大ごみのクローゼットの扉を思いきり開き、二人が同時に飛び込んだ。扉を閉め、息をひそめる。一瞬間をおいて角を曲がった化け物は、二人を見失いしばらくそのあたりをうろついた後、どちらかへ離れていったようだ。
「……どこかへ行ったようじゃな」
クローゼットを少し開け、外の様子を伺い、化け物の姿がないことが分かると二人は息をついた。少し開いた扉から、外の街灯の明かりが入り、お互いの顔くらいは見えるようになった。
「危機が去った、とは行きませんよね?」
「そうじゃなあ。こうなると家まで帰るのもままならんじゃろう」
「警察、とかに連絡したほうがいいんじゃないですか?警察だからどうにかなるとも思いませんが……」
「ああ、それなら大丈夫じゃ。ああいった手合いの対処はわしが警察から一任さてとるからの」
「警察に?じゃあ、なんとかしてくださいよ!」
「できないからこんなせまっ苦しい場所に隠れとるんじゃろうが!」
声を荒げる女性に、少年は訝し気な目線を向ける。あの化け物を倒し、自分を助けてくれようとしているというのは間違いなさそうなのだが、如何せん一緒に逃げ回り、隠れている状況では信頼しようにもそうはいかない。
「あれが化け物……というか、普通の人でないのは確かなんですよね?角材で殴ってもびくともしなかったし」
「そうじゃ。わしの狐火ームは、なんというか。お化け……とか、妖怪、とかそういう超常的な奴らを倒すことはできるんじゃが今回は…」
ずれた眼鏡を直しながら、斜め上をむいてしゃべっていた女性はもう一度少年に目線を向け、続ける。
「お主、もしかしたらあやつのこと、何か知っとらんか?」
急に話を振られるが、あいにく少年には化け物の知り合いはいない。
「そういわれても……」
「ほら、なんかあるじゃろう!怪談とか、怖いうわさとか!」
あの化け物をもう一度頭に思い浮かべるが、その姿はどちらかというと怪談というよりは怪獣映画とかエイリアン映画とか、そちら向けの見た目だ。怪談というにはあまりに凶暴すぎる。だが、そこで少年の頭にあの化け物と最初に出くわしたときの問答が浮かぶ。
『私って、キレイ?』
「あっ!……口裂け女?話で聞いた想像とはかなり違いますけど……」
「おお!やはり知っておったか!そいつの詳しい話については分かるかの?」
小難しい顔から一転、明るい顔で話の続きをねだるので、少年は噂を思い出しつつ語ることにした。
「えっと、暗い夜道を歩いてるときに、マスクをつけた女に声をかけられるんです。『自分のことがきれいか』って。それでその問いに答えると、マスクを外して裂けた口を見せながら『これでもか!』と脅かす、みたいな話のはずです」
「なるほどのう」
女性は大げさに頷きながら話を聞く。
「……でも、もしあいつが口裂け女だったとして、この話は何か役に立つんですか?」
「ふむ。その話には続きはないのかの?脅かして、どうなるのかとか」
まだ状況を理解しきれていない。しかし、同じ状況に置かれている相手が、さも解決策であるように話の続きを知りたがるので、恐怖で動きの悪い頭をどうにか回して話を続ける。
「そのあとは……脅かされた人はそのまま逃げるか、あるいは口裂け女に殺される……ああ、その時に鎌が出てきたような気もします」
「なるほど、なるほど。あやつが口裂け女であることは間違いなさそうじゃの。したらば……」
女性の口が言葉の先をつむごうとしたとき、クローゼットの扉が勢い良く開かれる。扉を外から開けたその姿は、恐ろしいほど大きく開けた口に並ぶ牙、ギラリと光る鎌の刃。 口裂け女だ。
「しまった!悠長に話しすぎたかのう!」
「どうするんですか!?さっきの話に何か、切り抜けるヒントでもあったんですか!?」
「それはこれからじゃ!とりあえず逃げるんじゃよ!狐火ナックル!」
立ちはだかる口裂け女に、女性は先ほどの光線のような光をまとわせた拳で、やはり何か技の名前のようなものを叫びながら殴りつける。角材でもひるまなかった奴が、この攻撃には体勢を崩す。二人はその隙を突き、するりとクローゼットを飛び出すと、先ほどまでのように口裂け女に背を向けて走り出した。当然奴も二人の後を追いかける。違うのは奴が口裂け女だと分かったことと、奴と出会ってなお、女性が不敵な笑みを浮かべ続けていることであった。
二人はほぼ同時に化け物と反対の方向へ走り出す。走りながら少年は女性に問い詰める。
「あの化け物は光線で倒れたんじゃないんですか!?」
「そのはずじゃ!わしの狐火ームはああいった手合いには効果覿面!……のはずなんじゃ!」
「むしろ元気になったように見えますけどっ!?」
少年はまたしてもあてもなく逃げ続けるほかない状況に陥ってしまった。飛び込んで割って入ったときにはとても頼もしく、大きく見えた女性が、一緒に逃げる今となってはどこか頼りなく、小さく見える。実際その女性の背丈は、平均程度の身長の少年より、少々低い。
そのまましばらく走り続け、角を曲がったところで女性が声をあげる。
「あれじゃ!あれに隠れろ!」
曲がったところにあったのはまたまたゴミ捨て場。そこに捨ててある粗大ごみのクローゼットの扉を思いきり開き、二人が同時に飛び込んだ。扉を閉め、息をひそめる。一瞬間をおいて角を曲がった化け物は、二人を見失いしばらくそのあたりをうろついた後、どちらかへ離れていったようだ。
「……どこかへ行ったようじゃな」
クローゼットを少し開け、外の様子を伺い、化け物の姿がないことが分かると二人は息をついた。少し開いた扉から、外の街灯の明かりが入り、お互いの顔くらいは見えるようになった。
「危機が去った、とは行きませんよね?」
「そうじゃなあ。こうなると家まで帰るのもままならんじゃろう」
「警察、とかに連絡したほうがいいんじゃないですか?警察だからどうにかなるとも思いませんが……」
「ああ、それなら大丈夫じゃ。ああいった手合いの対処はわしが警察から一任さてとるからの」
「警察に?じゃあ、なんとかしてくださいよ!」
「できないからこんなせまっ苦しい場所に隠れとるんじゃろうが!」
声を荒げる女性に、少年は訝し気な目線を向ける。あの化け物を倒し、自分を助けてくれようとしているというのは間違いなさそうなのだが、如何せん一緒に逃げ回り、隠れている状況では信頼しようにもそうはいかない。
「あれが化け物……というか、普通の人でないのは確かなんですよね?角材で殴ってもびくともしなかったし」
「そうじゃ。わしの狐火ームは、なんというか。お化け……とか、妖怪、とかそういう超常的な奴らを倒すことはできるんじゃが今回は…」
ずれた眼鏡を直しながら、斜め上をむいてしゃべっていた女性はもう一度少年に目線を向け、続ける。
「お主、もしかしたらあやつのこと、何か知っとらんか?」
急に話を振られるが、あいにく少年には化け物の知り合いはいない。
「そういわれても……」
「ほら、なんかあるじゃろう!怪談とか、怖いうわさとか!」
あの化け物をもう一度頭に思い浮かべるが、その姿はどちらかというと怪談というよりは怪獣映画とかエイリアン映画とか、そちら向けの見た目だ。怪談というにはあまりに凶暴すぎる。だが、そこで少年の頭にあの化け物と最初に出くわしたときの問答が浮かぶ。
『私って、キレイ?』
「あっ!……口裂け女?話で聞いた想像とはかなり違いますけど……」
「おお!やはり知っておったか!そいつの詳しい話については分かるかの?」
小難しい顔から一転、明るい顔で話の続きをねだるので、少年は噂を思い出しつつ語ることにした。
「えっと、暗い夜道を歩いてるときに、マスクをつけた女に声をかけられるんです。『自分のことがきれいか』って。それでその問いに答えると、マスクを外して裂けた口を見せながら『これでもか!』と脅かす、みたいな話のはずです」
「なるほどのう」
女性は大げさに頷きながら話を聞く。
「……でも、もしあいつが口裂け女だったとして、この話は何か役に立つんですか?」
「ふむ。その話には続きはないのかの?脅かして、どうなるのかとか」
まだ状況を理解しきれていない。しかし、同じ状況に置かれている相手が、さも解決策であるように話の続きを知りたがるので、恐怖で動きの悪い頭をどうにか回して話を続ける。
「そのあとは……脅かされた人はそのまま逃げるか、あるいは口裂け女に殺される……ああ、その時に鎌が出てきたような気もします」
「なるほど、なるほど。あやつが口裂け女であることは間違いなさそうじゃの。したらば……」
女性の口が言葉の先をつむごうとしたとき、クローゼットの扉が勢い良く開かれる。扉を外から開けたその姿は、恐ろしいほど大きく開けた口に並ぶ牙、ギラリと光る鎌の刃。 口裂け女だ。
「しまった!悠長に話しすぎたかのう!」
「どうするんですか!?さっきの話に何か、切り抜けるヒントでもあったんですか!?」
「それはこれからじゃ!とりあえず逃げるんじゃよ!狐火ナックル!」
立ちはだかる口裂け女に、女性は先ほどの光線のような光をまとわせた拳で、やはり何か技の名前のようなものを叫びながら殴りつける。角材でもひるまなかった奴が、この攻撃には体勢を崩す。二人はその隙を突き、するりとクローゼットを飛び出すと、先ほどまでのように口裂け女に背を向けて走り出した。当然奴も二人の後を追いかける。違うのは奴が口裂け女だと分かったことと、奴と出会ってなお、女性が不敵な笑みを浮かべ続けていることであった。
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