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第一話「オカルトアワー~都市伝説怪奇譚~」
1-3.
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「少年!先ほどの話の続きじゃ!」
「ま、まだ続けるんですか!?追いつかれますよ!?」
「だからこそじゃ!あの話には続きがあるじゃろう!」
「続き?」
「そうじゃ!出会ってしまったときの対処法とか、弱点とかじゃ!」
少年は走りながら考えた。そうだ、ああいった話はただ怖い、とかオチがついて、とかで終わりではなく、実際に現れるので気を付けろ、対処しろ、という話がつきものだ。つまり彼女の考えはあの化け物、口裂け女の弱点・対処法を教えろということだろう。
「口裂け女の弱点……」
こういった話に興味がある方ではあるのだが、如何せん口裂け女の話が流行ったのは昔の話だ。噂も実際にある話として聞いたわけではなく、あくまで本などに書いてあるのを娯楽として読んだだけ。そんなものを走りながら思い出せというのは、いささか難しい話であった。
走り始めた時より距離を詰められ、口裂け女はその大きな鎌を振り下ろす。その一撃を二人は寸でのところで左右に避けかわした。
「危ない!……もう長くはもちませんよ!」
「ぬぬぬ。早く思い出すんじゃよ!」
「分かってます!分かってますけど……」
そんなことを言い合っている間に、口裂け女は二撃目をくらわせようと、鎌を持ち上げた。
「くっ……、狐火ーム!」
女性が振り向き足を止め、手のひらからの光線を放つ。それを口裂け女は鎌で防御する。さながら鎌と光線の鍔迫り合いだ。
「こいつはわしが抑えとるからお主は奴の弱点を思い出すんじゃ!長くはもたんぞ!」
女性が叫ぶ。光線で抑えられている鎌の切っ先は、抑えがなければ今にも胸元に突き刺さらんとする状況だ。
少年は考えた。確かに口裂け女の話は本で読んだはずだ。対処法についても書いてあった。なにか、そう、確か『合言葉』があったはずだ。それを言えば逃げられるとか、やっつけられる、みたいな話だ。問題はその『合言葉』だ。食べ物の名前?違う。薬の名前?違う。シャンプー、化粧品……。何か近づいているような気がする。話が古ければ『合言葉』も古いものだったはずだ。
「確か……髪につけるもの……。そうだ。髪につける……」
「なんじゃ!リボンとかか!?」
「違います!ヘアワックス……じゃなくて、いや、それの聞きなれない名前だったような……」
一方、口裂け女の鎌を抑える、女性が放つ光線は最初よりも少し勢いが弱くなったように見える。
「ふんぐぬぬぬ。かなりキツイぞ!もう持たん!他に何かヒントはないのか!?」
「確か、そう、古いものだった!僕は知らなくて、でもおじいちゃんの家で見て、これか、ってなった記憶が……」
「ヘアワックス……古い……もしかして、『ポマード』か!?」
「そう!『ポマード』!」
少年がそう声をあげた瞬間、口裂け女の体がビクリッ、と跳ねた。それと同時に鎌にかかる力も弱くなったようだ。
「お!?効いとるのか!?」
「ぽ、ポマード!ポマード!!ポマード!!!」
少年が『合言葉』を放つたびに口裂け女から力が抜けていく。何度も続けるうちに、遂に手に持った鎌を取り落とし、恐ろしい口も力なく閉じていく。
「よくやった少年よ!あとはわしに任せい!」
女性は体勢を直すと、今度こそという風に姿勢を正し、腕を伸ばし、右手を広げ、手のひらを力なく倒れる口裂け女の方に向けた。
「狐火ーム!!!」
やはり技の名前を言いつつ、女性は広げた手のひらから白い光線を放った。直撃した口裂け女は悲鳴をあげ、少しづつ姿が薄れていく。今度こそ効いているようで、口裂け女の体は最後には跡形もなく消え去っていた。
「き、消えた?やったんですか!?」
「そのようじゃ!わしらの勝利!危機は去った、ってところかのう」
「助かった……」
今度こそ本当の勝利と安息を手に入れた少年は、またも地面に座り込む。その傍らで女性は勝利を讃えるように少年の肩を叩くのであった。
しばらく後、少年は立ち上がり女性に礼をいう。
「本当に助かりました。多分あのまま一人だったらあいつが口裂け女だとも分らないまま切り殺されるか食い殺されるかしていたんでしょうから」
「それはこちらもじゃ。わし一人ではあやつを倒すことはできんかった。お主が奴のこと、対処法を思い出してくれたから勝てたんじゃからのう」
少年は表情を少し緩め、照れたように頭をかく。
「おおそうじゃ。少年よ、こんな夜中に出歩くのには何か訳があったんじゃなかろうか?」
「あ、そうだ。コーラを買おうと外に出たんでした」
「おお、そうか。どれ、今回の礼じゃ。わしが買ってやろう」
二人は並んで自動販売機を目指して歩き出す。口裂け女に追われてかなりの距離を走ったので、最初の自動販売機からは結構離れてしまっていたが、少年の自宅までの帰り道になるので都合は良かった。
そこまでたどり着くまで時間が少々あるので、少年は今回のことについて質問することにした。
「あいつ……口裂け女にはなぜ最初、光線が効かなかったんですか?化け物には効く、って言ってましたよね?」
「ああ、あやつは普通の化け物とはちがって……、普通の化け物ってなんかおかしな表現じゃが、お主がやったような、対処法や弱点を突いてやらねばいかんようなのじゃ」
「なるほど。でも化け物に効くような光線を撃てて、口裂け女については知らなかったんですか?」
「んむむ。痛いところを突くのう。じゃが、わしらがああいった手合いにはうといのは確かじゃし。おそらく、お主がやらねばあやつへの効き目はなかったはずじゃ」
「僕が?……というか、あなたは何者なんですか?あんな光線が撃てる時点で、タダモノじゃないのはわかりますけど」
「ん?わしか?わしは……おっと、この自販機じゃな」
そんな話をしているうちに、最初に口裂け女と出会った場所の自動販売機にたどり着いた。女性が取り出し口に何かあるのに気づき、手を伸ばすと、少年が買ったコーラがまだそこにあった。
「む、すでにコーラがあるぞ」
「ああ、そうでした。買って、取り出しそうとしたところで、あいつと出くわしたんでした」
「なるほどの。これはもうぬるくなっとるし。新しいのを買ってやろう……」
自動販売機にお金を入れ、コーラのボタンを押す。そして、落ちてきたコーラと残っていたコーラの二本を取り出し、少年に渡した。
「ほれ。ぬるくなってしまったのは持って帰って冷やしてから飲めばよいじゃろ」
「あ、ありがとうございます」
「わしも何か飲も」
お釣りとして出てきた硬貨を必要な分だけ、再度投入口に入れ直し、今度はアイスコーヒーのボタンを押した。出てきたコーヒーの缶を手に取り、飲み口を開けるとグイと缶を傾け一気に飲み干してしまった。
「ふう。さっきの質問の続きはまた会うことがあれば答えることにしよう。出会わなければ、忘れることじゃな。今日のことも、わしのことも」
「え、あ、あの……」
「さらばじゃ。少年よ。あまり遅い時間に外を出歩くでないぞ。特にこんな……」
「『オカルトアワー』にはな……」
そう言いながら、持っていた缶を自動販売機の隣に設置してあるゴミ箱に投げ入れる。投げられた缶はすっぽりと投入口に入った。缶の行方に気を取られていた少年が、女性の方に目線を戻した時、その姿はいずこかへと消え去っていた。
どこか釈然としない気持ちのまま、とにかく自宅に向かうことにした。今度こそ何事ものなく家にたどり着くと、出た時と同じように音をたてないように中に入り、ぬるい方のコーラを台所の冷蔵庫に入れてから、自室に入った。また寝間着に着替え、よく冷えたコーラの缶を開け、一口飲む。
ぼんやりと壁にかけてある時計を眺める。針は午前二時半を少々過ぎたところを指していた。長々と逃げ回り、戦っていたつもりだったが、実際に過ぎた時間は三十分ほどだったのだろう。
「オカルトアワー……、か」
女性が最後に放った言葉を思い出しつつ、布団にもぐりこんだ。走り回り、疲れた体が眠りに落ちるまで、そう時間はかからなかった。
「ま、まだ続けるんですか!?追いつかれますよ!?」
「だからこそじゃ!あの話には続きがあるじゃろう!」
「続き?」
「そうじゃ!出会ってしまったときの対処法とか、弱点とかじゃ!」
少年は走りながら考えた。そうだ、ああいった話はただ怖い、とかオチがついて、とかで終わりではなく、実際に現れるので気を付けろ、対処しろ、という話がつきものだ。つまり彼女の考えはあの化け物、口裂け女の弱点・対処法を教えろということだろう。
「口裂け女の弱点……」
こういった話に興味がある方ではあるのだが、如何せん口裂け女の話が流行ったのは昔の話だ。噂も実際にある話として聞いたわけではなく、あくまで本などに書いてあるのを娯楽として読んだだけ。そんなものを走りながら思い出せというのは、いささか難しい話であった。
走り始めた時より距離を詰められ、口裂け女はその大きな鎌を振り下ろす。その一撃を二人は寸でのところで左右に避けかわした。
「危ない!……もう長くはもちませんよ!」
「ぬぬぬ。早く思い出すんじゃよ!」
「分かってます!分かってますけど……」
そんなことを言い合っている間に、口裂け女は二撃目をくらわせようと、鎌を持ち上げた。
「くっ……、狐火ーム!」
女性が振り向き足を止め、手のひらからの光線を放つ。それを口裂け女は鎌で防御する。さながら鎌と光線の鍔迫り合いだ。
「こいつはわしが抑えとるからお主は奴の弱点を思い出すんじゃ!長くはもたんぞ!」
女性が叫ぶ。光線で抑えられている鎌の切っ先は、抑えがなければ今にも胸元に突き刺さらんとする状況だ。
少年は考えた。確かに口裂け女の話は本で読んだはずだ。対処法についても書いてあった。なにか、そう、確か『合言葉』があったはずだ。それを言えば逃げられるとか、やっつけられる、みたいな話だ。問題はその『合言葉』だ。食べ物の名前?違う。薬の名前?違う。シャンプー、化粧品……。何か近づいているような気がする。話が古ければ『合言葉』も古いものだったはずだ。
「確か……髪につけるもの……。そうだ。髪につける……」
「なんじゃ!リボンとかか!?」
「違います!ヘアワックス……じゃなくて、いや、それの聞きなれない名前だったような……」
一方、口裂け女の鎌を抑える、女性が放つ光線は最初よりも少し勢いが弱くなったように見える。
「ふんぐぬぬぬ。かなりキツイぞ!もう持たん!他に何かヒントはないのか!?」
「確か、そう、古いものだった!僕は知らなくて、でもおじいちゃんの家で見て、これか、ってなった記憶が……」
「ヘアワックス……古い……もしかして、『ポマード』か!?」
「そう!『ポマード』!」
少年がそう声をあげた瞬間、口裂け女の体がビクリッ、と跳ねた。それと同時に鎌にかかる力も弱くなったようだ。
「お!?効いとるのか!?」
「ぽ、ポマード!ポマード!!ポマード!!!」
少年が『合言葉』を放つたびに口裂け女から力が抜けていく。何度も続けるうちに、遂に手に持った鎌を取り落とし、恐ろしい口も力なく閉じていく。
「よくやった少年よ!あとはわしに任せい!」
女性は体勢を直すと、今度こそという風に姿勢を正し、腕を伸ばし、右手を広げ、手のひらを力なく倒れる口裂け女の方に向けた。
「狐火ーム!!!」
やはり技の名前を言いつつ、女性は広げた手のひらから白い光線を放った。直撃した口裂け女は悲鳴をあげ、少しづつ姿が薄れていく。今度こそ効いているようで、口裂け女の体は最後には跡形もなく消え去っていた。
「き、消えた?やったんですか!?」
「そのようじゃ!わしらの勝利!危機は去った、ってところかのう」
「助かった……」
今度こそ本当の勝利と安息を手に入れた少年は、またも地面に座り込む。その傍らで女性は勝利を讃えるように少年の肩を叩くのであった。
しばらく後、少年は立ち上がり女性に礼をいう。
「本当に助かりました。多分あのまま一人だったらあいつが口裂け女だとも分らないまま切り殺されるか食い殺されるかしていたんでしょうから」
「それはこちらもじゃ。わし一人ではあやつを倒すことはできんかった。お主が奴のこと、対処法を思い出してくれたから勝てたんじゃからのう」
少年は表情を少し緩め、照れたように頭をかく。
「おおそうじゃ。少年よ、こんな夜中に出歩くのには何か訳があったんじゃなかろうか?」
「あ、そうだ。コーラを買おうと外に出たんでした」
「おお、そうか。どれ、今回の礼じゃ。わしが買ってやろう」
二人は並んで自動販売機を目指して歩き出す。口裂け女に追われてかなりの距離を走ったので、最初の自動販売機からは結構離れてしまっていたが、少年の自宅までの帰り道になるので都合は良かった。
そこまでたどり着くまで時間が少々あるので、少年は今回のことについて質問することにした。
「あいつ……口裂け女にはなぜ最初、光線が効かなかったんですか?化け物には効く、って言ってましたよね?」
「ああ、あやつは普通の化け物とはちがって……、普通の化け物ってなんかおかしな表現じゃが、お主がやったような、対処法や弱点を突いてやらねばいかんようなのじゃ」
「なるほど。でも化け物に効くような光線を撃てて、口裂け女については知らなかったんですか?」
「んむむ。痛いところを突くのう。じゃが、わしらがああいった手合いにはうといのは確かじゃし。おそらく、お主がやらねばあやつへの効き目はなかったはずじゃ」
「僕が?……というか、あなたは何者なんですか?あんな光線が撃てる時点で、タダモノじゃないのはわかりますけど」
「ん?わしか?わしは……おっと、この自販機じゃな」
そんな話をしているうちに、最初に口裂け女と出会った場所の自動販売機にたどり着いた。女性が取り出し口に何かあるのに気づき、手を伸ばすと、少年が買ったコーラがまだそこにあった。
「む、すでにコーラがあるぞ」
「ああ、そうでした。買って、取り出しそうとしたところで、あいつと出くわしたんでした」
「なるほどの。これはもうぬるくなっとるし。新しいのを買ってやろう……」
自動販売機にお金を入れ、コーラのボタンを押す。そして、落ちてきたコーラと残っていたコーラの二本を取り出し、少年に渡した。
「ほれ。ぬるくなってしまったのは持って帰って冷やしてから飲めばよいじゃろ」
「あ、ありがとうございます」
「わしも何か飲も」
お釣りとして出てきた硬貨を必要な分だけ、再度投入口に入れ直し、今度はアイスコーヒーのボタンを押した。出てきたコーヒーの缶を手に取り、飲み口を開けるとグイと缶を傾け一気に飲み干してしまった。
「ふう。さっきの質問の続きはまた会うことがあれば答えることにしよう。出会わなければ、忘れることじゃな。今日のことも、わしのことも」
「え、あ、あの……」
「さらばじゃ。少年よ。あまり遅い時間に外を出歩くでないぞ。特にこんな……」
「『オカルトアワー』にはな……」
そう言いながら、持っていた缶を自動販売機の隣に設置してあるゴミ箱に投げ入れる。投げられた缶はすっぽりと投入口に入った。缶の行方に気を取られていた少年が、女性の方に目線を戻した時、その姿はいずこかへと消え去っていた。
どこか釈然としない気持ちのまま、とにかく自宅に向かうことにした。今度こそ何事ものなく家にたどり着くと、出た時と同じように音をたてないように中に入り、ぬるい方のコーラを台所の冷蔵庫に入れてから、自室に入った。また寝間着に着替え、よく冷えたコーラの缶を開け、一口飲む。
ぼんやりと壁にかけてある時計を眺める。針は午前二時半を少々過ぎたところを指していた。長々と逃げ回り、戦っていたつもりだったが、実際に過ぎた時間は三十分ほどだったのだろう。
「オカルトアワー……、か」
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