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第五話「クライムアワー~都市伝説捜査譚~」
5-3.
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これまでの被害が出た時刻はほとんど決まっており、その時刻までは少々あったので、作戦の確認や休憩をはさんで、それぞれの持ち場に移動することになった。
駆人と天子が見張ることになった電話ボックスは、ここよりさらに奥まった場所にあるらしい。夕暮れの住宅街の中を目印を付けた地図を見ながら更に進む。
「こっち……、のようですね」
「おおお、雰囲気のある道じゃな~……。振り向いたら死ぬとかないじゃろうなあ~」
「地図に載ってる道だから大丈夫ですよ」
「それなら安心じゃな……、安心なのか?」
「あ、あれですね。あそこにあるのがそうでしょう」
いくつかの角を曲がり、件の電話ボックスにたどり着く。それは住宅街の端あたりに鎮座しており、後ろには林が壁のように迫る。薄暗く、少々不気味だ。
「ふむ、そこの角から見張ることにしよう」
二人は壁から首を並べて出して見張る。件の都市伝説が出没するとされる時間まではまだ少しある。
「これは長期戦になりそうじゃな」
天子はアンパンを取り出し口に運ぶ。
「もう食べるんですか」
「腹が減っては戦はできぬからのう。ところで、今回の都市伝説について検討はつかぬか」
「それが……、電話が残されているだけ、というのではなんとも……」
「そうか。じゃあ、でたとこ勝負じゃな」
そのまましばらく待つが、電話ボックスの利用者はおろか、通行人も通らない。住宅街の端だから、当たり前といえば当たり前なのだろう。
「本当に来るでしょうか」
「来るかもしれんし来んかもしれん。張り込み場所も二つじゃしな。どちらにしろ気を抜かんことじゃ」
「天子様はこういう警察の捜査みたいなことはよくやってるんですか?」
「しょっちゅうじゃな。わしほどになるとあっちゃこっちゃから引っ張りだこじゃ」
雑談をして暇をつぶすも、一向に犯人が現れる気配はない。駆人も小腹がすいたので、アンパンをほおばる。
「なんで張り込みの時はアンパンってイメージがあるんですかね?」
「それはじゃな。昔、アンパン屋が店に警察が立ち寄るようにと警察官割引キャンペーンをじゃな……」
「それ、アメリカのドーナツ屋の話じゃないですか」
「なんじゃ、知っとるのか。アンパンについては、まあ片手でも食えるとかそんなところじゃろう」
「ふうん」
食べ終われば、いよいよ手持ち無沙汰だ。今までの事件が起こった時刻をいくらか過ぎれば、今日の見張りは終わりになるそうだ。もうその時刻も迫っている。
トゥルルルル……。
電話の着信音。
「あ、僕の電話だ」
「なるべく早く済ませるんじゃよ」
「分かりました。……。もしもし……、はい、そうですけど」
通話を始める駆人をよそに、天子は電話ボックスへ視線を戻す。そこにちょうど人が通りかかり、電話ボックスへ入った。
「む。電話ボックスに人が入ったぞ。犯人はあやつか?カルトよ、少し近づいてみるぞ」
駆人の返事はない。
「おい、カルト。電話はとりあえず切るんじゃ。あやつをよく見るんじゃよ」
やはり返事はない。天子のTシャツの裾を引っ張るばかりだ。
「シャツが伸びるからあまり引っ張るでない!さっさと何か言わんか……」
あまりに服を引っ張られるものだから耐えかねて振り返り、見たものは。
「な……」
携帯電話の受話口から生えた腕が天子の服をつかんでいる!
「なにいいいいい!?」
駆人の携帯電話から生えているのだから本人の腕だろう。慌ててその腕をつかむが、ものすごい力で引っ張られる。そうこうする内に、手を振りほどかれ、駆人の腕は携帯電話の中に消えた。画面には通話終了の文字が表示されている。
「な、なにが起きたんじゃ」
しばらく突然の出来事に呆然としていたが、ハッと気づき、電話ボックスに目をやる。しかしそこには誰もいない。左右の道にも。どこかへ消えたのか。
そこで、腰につけた機械から声がする。あらかじめ渡されていた連絡用の無線だ。
「天子様!大変だ。電話ボックスに入った人に目をとられている隙に、真紀奈が電話に飲み込まれた!」
「なんじゃと!こっちもじゃ!カルトも同じように消えたぞ!」
「そっちもか!?一度に二つの場所で……!?」
声から焦りがにじみ出ている。隣にいた人物が消えた、おそらく都市伝説の餌食なったのだ。
「とりあえず合流じゃ。一応、消える瞬間を見た。なにかしら助ける方法があるかもしれん」
「……分かった」
二つの電話ボックスの中間地点辺りで、二人は合流した。お互い『人を飲み込んだ』携帯電話を手にして。
「どうしたものか。電話を解体でもしてみるか」
「いや。電話の中に消えた、というよりも電話の向こう、つまり通話相手の下に連れていかれたとみるべきだろう」
「電話ボックスに現れたやつが犯人なのじゃろうか。明日、またあの電話を見張るか?」
「それで捕まればいいんだが。これ以上一度に連れ去られる数が増えれば大変なことになるぞ」
「連れ去られた者達の安否も心配じゃな……」
「くそ!」
誠はすぐそばの塀に拳を叩きつける。隣にいた後輩が連れ去られたのだから、その無念は想像するに余りある。
「こうなっては仕方あるまい。今度は人数を増やすとか、策を練らねば……」
「……そうだな。一度署にもどろう」
二人が歩き出そうとしたその時、駆人が残した携帯電話の画面に明かりがともる。
「なんじゃ。メールか」
他人の携帯電話をあまり見るのも失礼だとは思ったが、しかし、表示されている送り主の名に目を見張る。
「送り主は……、カルトじゃと!?」
「何!?」
二人がのぞき込む画面に表示されているのは、『天子様へ』というタイトルと、確かに記された『七生駆人』という送り主の名前。
「引っ張りこまれた先からメッセージを送ってきたのか?なんて根性だ」
「本当にカルトじゃと決まったわけではないが……。中を見てみよう」
ボタンを押して、メールを開く。
駆人と天子が見張ることになった電話ボックスは、ここよりさらに奥まった場所にあるらしい。夕暮れの住宅街の中を目印を付けた地図を見ながら更に進む。
「こっち……、のようですね」
「おおお、雰囲気のある道じゃな~……。振り向いたら死ぬとかないじゃろうなあ~」
「地図に載ってる道だから大丈夫ですよ」
「それなら安心じゃな……、安心なのか?」
「あ、あれですね。あそこにあるのがそうでしょう」
いくつかの角を曲がり、件の電話ボックスにたどり着く。それは住宅街の端あたりに鎮座しており、後ろには林が壁のように迫る。薄暗く、少々不気味だ。
「ふむ、そこの角から見張ることにしよう」
二人は壁から首を並べて出して見張る。件の都市伝説が出没するとされる時間まではまだ少しある。
「これは長期戦になりそうじゃな」
天子はアンパンを取り出し口に運ぶ。
「もう食べるんですか」
「腹が減っては戦はできぬからのう。ところで、今回の都市伝説について検討はつかぬか」
「それが……、電話が残されているだけ、というのではなんとも……」
「そうか。じゃあ、でたとこ勝負じゃな」
そのまましばらく待つが、電話ボックスの利用者はおろか、通行人も通らない。住宅街の端だから、当たり前といえば当たり前なのだろう。
「本当に来るでしょうか」
「来るかもしれんし来んかもしれん。張り込み場所も二つじゃしな。どちらにしろ気を抜かんことじゃ」
「天子様はこういう警察の捜査みたいなことはよくやってるんですか?」
「しょっちゅうじゃな。わしほどになるとあっちゃこっちゃから引っ張りだこじゃ」
雑談をして暇をつぶすも、一向に犯人が現れる気配はない。駆人も小腹がすいたので、アンパンをほおばる。
「なんで張り込みの時はアンパンってイメージがあるんですかね?」
「それはじゃな。昔、アンパン屋が店に警察が立ち寄るようにと警察官割引キャンペーンをじゃな……」
「それ、アメリカのドーナツ屋の話じゃないですか」
「なんじゃ、知っとるのか。アンパンについては、まあ片手でも食えるとかそんなところじゃろう」
「ふうん」
食べ終われば、いよいよ手持ち無沙汰だ。今までの事件が起こった時刻をいくらか過ぎれば、今日の見張りは終わりになるそうだ。もうその時刻も迫っている。
トゥルルルル……。
電話の着信音。
「あ、僕の電話だ」
「なるべく早く済ませるんじゃよ」
「分かりました。……。もしもし……、はい、そうですけど」
通話を始める駆人をよそに、天子は電話ボックスへ視線を戻す。そこにちょうど人が通りかかり、電話ボックスへ入った。
「む。電話ボックスに人が入ったぞ。犯人はあやつか?カルトよ、少し近づいてみるぞ」
駆人の返事はない。
「おい、カルト。電話はとりあえず切るんじゃ。あやつをよく見るんじゃよ」
やはり返事はない。天子のTシャツの裾を引っ張るばかりだ。
「シャツが伸びるからあまり引っ張るでない!さっさと何か言わんか……」
あまりに服を引っ張られるものだから耐えかねて振り返り、見たものは。
「な……」
携帯電話の受話口から生えた腕が天子の服をつかんでいる!
「なにいいいいい!?」
駆人の携帯電話から生えているのだから本人の腕だろう。慌ててその腕をつかむが、ものすごい力で引っ張られる。そうこうする内に、手を振りほどかれ、駆人の腕は携帯電話の中に消えた。画面には通話終了の文字が表示されている。
「な、なにが起きたんじゃ」
しばらく突然の出来事に呆然としていたが、ハッと気づき、電話ボックスに目をやる。しかしそこには誰もいない。左右の道にも。どこかへ消えたのか。
そこで、腰につけた機械から声がする。あらかじめ渡されていた連絡用の無線だ。
「天子様!大変だ。電話ボックスに入った人に目をとられている隙に、真紀奈が電話に飲み込まれた!」
「なんじゃと!こっちもじゃ!カルトも同じように消えたぞ!」
「そっちもか!?一度に二つの場所で……!?」
声から焦りがにじみ出ている。隣にいた人物が消えた、おそらく都市伝説の餌食なったのだ。
「とりあえず合流じゃ。一応、消える瞬間を見た。なにかしら助ける方法があるかもしれん」
「……分かった」
二つの電話ボックスの中間地点辺りで、二人は合流した。お互い『人を飲み込んだ』携帯電話を手にして。
「どうしたものか。電話を解体でもしてみるか」
「いや。電話の中に消えた、というよりも電話の向こう、つまり通話相手の下に連れていかれたとみるべきだろう」
「電話ボックスに現れたやつが犯人なのじゃろうか。明日、またあの電話を見張るか?」
「それで捕まればいいんだが。これ以上一度に連れ去られる数が増えれば大変なことになるぞ」
「連れ去られた者達の安否も心配じゃな……」
「くそ!」
誠はすぐそばの塀に拳を叩きつける。隣にいた後輩が連れ去られたのだから、その無念は想像するに余りある。
「こうなっては仕方あるまい。今度は人数を増やすとか、策を練らねば……」
「……そうだな。一度署にもどろう」
二人が歩き出そうとしたその時、駆人が残した携帯電話の画面に明かりがともる。
「なんじゃ。メールか」
他人の携帯電話をあまり見るのも失礼だとは思ったが、しかし、表示されている送り主の名に目を見張る。
「送り主は……、カルトじゃと!?」
「何!?」
二人がのぞき込む画面に表示されているのは、『天子様へ』というタイトルと、確かに記された『七生駆人』という送り主の名前。
「引っ張りこまれた先からメッセージを送ってきたのか?なんて根性だ」
「本当にカルトじゃと決まったわけではないが……。中を見てみよう」
ボタンを押して、メールを開く。
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