【完結済】『性処理係』になった一般兵は、花屋のお兄さんにとことん愛される

senj

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揺らぐ正義

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 夢をみた。

「いいか~ウォルト?魔物が来たら、”お前が”俺をかばうんだぞ」
「…え、あっ、了解であります!」
「ははは!良い返事だ!こんな可愛い後輩に庇われたら、恋人に呆れられちまいそうだ。
 その時が来たら、絶対にかっこつけさせてくれよ」
「……了解、であります」

 3期上の代は下の代を守るような配属をされるケースが多い。
 年も近く、経験の差が程よいためペアとして機能しやすいのだ。それゆえ統率も取りやすくなる。
 僕は仲間に対しても常に警戒を怠らなかったが、討伐時の配属には従った。
 よくペアになった先輩兵は、狂人がほとんどを占める第三部隊に珍しい、カラッとした性格の男だった。
 名を、エドワードといった。

 その日も、討伐命令が出た。
 対象は街に突如現れた、子供ばかり喰らう特異型の魔物だ。
 そこには、見たことのない魔物がうごめいていた。獣型とも、人型ともいえない奇妙な動きを見せる。ゆっくり動いたかと思えば、次の瞬間には獣型を凌駕した速度で移動する。
 少数精鋭、実績トップの第三部隊ですら苦戦する魔物だった。
 特に子供をかばったとき、対象は凶暴さを加速させた。餌を横取りされたとばかりに、かばった隊員たちを投げ飛ばす。

「騎士様!!私の息子を守って…!!」

 女性が涙ながらに崩れ落ちた。その姿が母と重なる。彼女の目線の先には、小さな子供が地面に伏せていた。今まさに、対象に目を付けられていた。
 反射的に飛び出した。鎧の重さを感じない。子供を庇ったら、次は自分が死ぬまで狙われると分かっていた。でも、自分は兵士。それも、第三部隊の兵士だから。

「ウォルト!」

 エドワードが呼び止める声が聞こえる。魔物より先に、少年を庇うように自分の体を被せた。

「……ッ!!」

──覚悟していた衝撃はやってこない。代わりに聞こえたのは、金属音。

「無茶なことをするな!その子を保護して、ッ、直ちに応戦せよ!!」
「はッ!」

 エドワードだ。彼が庇ってしまった。早く応戦しないと、一人で太刀打ちできる相手ではない。
 立ち上がり、子供をかかえ、母親のもとへ送る。跳ね返るように現場に戻った。
 早く、早く向かわないと。何人もの兵士が攻撃を仕掛けようと、対象は執拗にエドワードを狙う。
 対象が吠えている。びりびりと体を震わせる叫びと同時に、肉が押しつぶされるような音が耳に響いた。まさか、そんなはずない。彼はとても強いから。

 足が止まる。
 現場には、一人の兵士が腹を裂かれて横たわっていた。

※※※

 討伐命令のアラームがけたたましく鳴った。反射的に出動態勢に入り、上官の鋭い号令に従う。

(僕は、犠牲の上に生きている)

 僕を守って先立った人の夢を、何度も見た。
 彼らが大切だから、今日も僕は闘う。

───討伐を終えると、今回も処理役として呼び出された。
 ここ3、4回の“仕事”でおとなしくしていたこともあり、呼び出した上官に乱暴な様子は見られなかった。
 チャンスなのではないか?

「上官、」
「あ?」

 欲情した目とぶつかる。反射的に体がこわばった。
 何度も浴びせられた、あのおぞましい欲。
 口元の震えをなんとか押さえ込む。

「わ、私は……こんなことをするために、第三部隊を希望したわけではありません。
 こんな制度、間違って──」

 上官の拳が即座に動いた。
 振りかぶる腕の筋が膨れ、空気が一瞬重くなる。
 ぐ、と腹筋に力を込めて身構える。
 その反応が気に障ったのか、上官の眉間がぴくりと歪んだ。

「……君ね。俺が優しいからって、口答えしてるつもりか?」

 その声は低く、地を這うように沈んだ。
 ゆっくりとした口調が圧迫感を強めた。

「そ、そのようなことは……」

 声が震えた瞬間、空気が完全に支配された。

「……あとさ、“こんな制度”って言ったけどな。これは必要なことだって、何度言わせるつもりだ?
 君も兵士だろう。俺らの同期がどうやって死んだか、忘れたわけじゃないよな?」
「は、」
「エドワードに報いろよ。君をかばって死んだんだ、あいつ。
 気前のいい奴だった。町に恋人を残して、お前の盾になって、死んだんだ。
 ……俺だって、あいつのことは気に入ってたんだよ」

 低い声に、わずかに震えが混じっていた。
 悲しんでいるのか。それなら尚更、この制度は無意味だ。
 当たり所を間違えて、仲間を侮辱している。

「わ、私は──」
「お前を使う正当な理由がある」
「ち、違います…!エドワード隊員は、兵士として……魔物と戦って殉職されたんです!」
「お前は関係ないとでも?」
「関係なくは……ありません。でも、あの方は」
「エドワードに報いるなら、今度は避けるなよ」

 拳が飛んだ。
 反射的に身を引きそうになったが、動けなかった。
 抵抗してはいけないと思った。
 エドワードが、本当に“いい奴”だったから。

──ああ、こんなことは。
(間違っている、はずだ…)









 その上官は、朝から苛立っていた。
 いや正確に言えば、ここ数日ずっとだ。何かにつけて不運に見舞われ、そのたびに鬱積した感情が渦巻いていた。今の彼の周囲には、もう誰も近づこうとしない。

「……ああっ!クソッ!! なんで俺ばかりこんな目に……!」

 野営小屋の外で、金属を蹴り飛ばすような音が響いた。すぐ近くにいた上官の同期たちが、顔を見合わせてひそひそと声をひそめる。

「おい、あいつ……」
「シッ。やめろ。今はそっとしておけ」

 誰も彼の怒りに触れたくはない。
 その気配は肌でわかるほどで、僕も息を殺していた。

「……おい!処理役はどこだ」

 不意に怒鳴り声が飛んできて、心臓が跳ねた。
 僕を探している。

「は、はい……あの、あの小屋に」

 同期のひとりが答えると、上官は吐き捨てるように言った。

「今日は俺のだ。先約があったとしても、俺が使う。いいな!」
「……はい……」

 その声が終わるのと同時に、足音がこちらへ向かってくる。
 僕のいる部屋に、怒気が近づいてくる。
 逃げようなどとは思わなかった。
 扉が乱暴に開かれ、床が軋んだ。

「おい、『処理役』」

 その呼び名に、喉の奥がきゅっと縮む。でも、声は出ない。

「……」
「返事をしろ。言うことを聞くんだ。今日の俺は機嫌が悪い」
「……は、い」

 息を吸い、言葉を吐いた。
 わかっている。反抗する気なんて、最初からない。


「立たせろ」

──どうやって。ただ目の前に立ちふさがるばかりの上官を見上げた。有無を言わさぬ怒気に瞬きを繰り返し、息を呑んだ。無理やり突っ込まれた経験しかないのだ。男根の立たせ方など分からない。

「チッ……何モタモタしてやがる!機嫌が悪いと言ったのが聞こえなかったのか?」
「す、すみま、せん。なめ、舐めさせてくだ、さい…」

 慌てて男の股座に手を伸ばす。いつだったか、喉に男根をねじ込まれ意識を失ったことがあった。

「早くしろ」
「はっ、はい」

 手の震えを抑え込み、下穿きをくつろげた。どうやっても慣れない雄の匂いにめまいがする。
 人肌より少し熱いモノを、あの時のように、喉へ押し込む。
 えづく感覚と生理的な涙で、視界が揺れた。

「へえ、仕込まれてんな」

 馬鹿にしたように嘲笑し、足の間に靴がねじ込まれる。小さく呻いたところで、何の効果も無い。

「こっちの準備はできてるんだろうな?」
「……ッ」

 返事ができない代わりに頭を軽く振った。上官の口元がさらに歪んだ。

「てめえを壊してやる」

 その声は冷たく、笑うように震えていた。音に正気の欠片を感じない。
 背筋に冷たいものが這い上がる。

 男はまず、みぞおちに拳を打ちつけた。
 抵抗の意思が無いことを充分確認したのち、服を剥ぎ取る。僕は、机上に上半身を伏せ、下半身を男に差し出すように向けた。男の手によって腰の皮膚が引きつれる。すぐさま熱いモノが後孔に当てがわれた。荒い呼吸と共に、男の象徴が体の中に入ってくる。

「おい、緩いぞ? お前の役割は何だ!」
「あが…ッ、し、処理、役…です」
「役目を、果たせ!
 俺が、手伝ってやる」

 体が後ろに引かれた。男に下から首を掴まれ、上半身が反らされる。
 苦しい。息ができなくなり、全身に力が入った。
 男は、良くなったとばかりにガツンと腰を打ち続けた。
 かすれる視界に、暖炉の残り火がぱちっと弾けたのが見えた。耳元のシルバーピアスがきらめく。男が目ざとく耳の先を掴んだ。つままれた箇所が熱い。

「お前、これはなんだ? 答えろ!」
「がっ、これは、必要な、もの…」
「処理役にこんなものは不要だ! 没収するッ!!」

 リングピアスが引っ張られ、鋭い痛みと、耳たぶが裂ける感覚がする。即座に暖炉に投げ込まれる。もう、見えなくなった。──あれは、家族の…
 髪の毛をつかまれ、しっかり見ろと命じられるので、目だけはひらく。でも、もう、見ていられない。


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