誰かが望んだ楽園の迷い人

AI異世界小説家

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第7章:黒の尖塔に蠢く悪意と、異世界規格外の休日

勇者の日常2

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7-3
王都グランヴェルの市場は、今日も活気に満ちていた。
俺たちは四人で石畳の大通りを歩く。
セレニティは深いフードのついたローブを羽織り、俺の背中に隠れるようにして裾を掴んで歩いている。その両脇を、エリアとリリスが完璧な陣形でガードしていた。
俺たちが向かったのは、大通りに面した高級服飾店だ。
「いらっしゃいませー……!?、貴族様ですか、今日はどういった御用ですか?」
店に入った瞬間、恰幅のいい店主が俺達を見て複雑な表情を浮かべる。
エリアはミスリルの軽鎧を着ているし、セレニティはフードを被っているし、容姿は全員この世界ではありえないくらい綺麗な出で立ちだ。店主が対応に困るのも頷ける。
俺は無言で懐から金貨を三枚取り出し、カウンターにチャリと置いた。まあチップの代わりだ。
「……! お、お客様! どうぞどうぞ、奥へ! 最高級の生地を使った新作が入っておりますよ!」
どの店もチップの威力は絶大だ。店主は瞬時に揉み手をして愛想笑いを浮かべた。
俺たちは奥の陳列棚へと進む。そこはもう、女性たちの独壇場だった。
「わあ、見てリリス! このチュニック、刺繍がすごく細かい! 可愛い!」
「本当だ……。でもエリアちゃん、剣を振るならこっちの広がるスカートの方が動きやすそうだよ」
「セレニティには何が似合うかな? シンジ、どう思う?」
いきなり話を振られ、俺はたじろぐ。
三人の美女(一人はフードで見えないが)に見つめられ、俺は腕組みをして考えた。
「えっと……セレニティは背が高くてスタイルがいいから、こういう腰のラインが出るロングスカートが似合うんじゃないか? 色は……彼女の髪に合わせて、白か淡いブルーで」
俺が選んだ淡い空色のロングドレスを当てがうと、セレニティはフードの下で頬を染め、嬉しそうに微笑んだ。
「シンジ様が、私のために選んでくださった服……。こ、これは一生の宝物にします。額に入れて飾っておきます」
「いや、普段着だから毎日着てくれよ」
その後も、雑貨屋で可愛らしい食器を選んだり、魔道具屋で便利な家事アイテムを探したりと、完全に家族の休日のような時間を過ごした。
最後に立ち寄ったのは、貴族御用達のアクセサリーショップだ。
「ここは主に冒険者の補助アイテムの宝石を売っている、女の装備できるものはないぞ」
ショーケースを覗き込んでいると、店主が小声で嘲笑うのが聞こえた。
エリアたちがムッとした顔をするが、俺は片手でそれを制し、店一番の高価な棚を指差した。
「これと、これと、あれをくれ。全部、魔力伝導率の高いやつだ」
「は……? お、お客さん、本気で言ってるのか?それはミスリルと宝石を加工したグランヴェルの最高級品で……金貨10枚は下りませんぜ?それに女はアクセサリーは持っても効果が発動しない……」
「問題ない、構わないから。包んでくれ」
ドン、とカウンターに10枚の金貨を置く。枚数を確認した店主が、目を剥いて腰を抜かした。
「ヒィッ! し、失礼しましたぁっ!!」
俺は店を出て、三人にそれぞれの色のペンダントを手渡した。
「魔力増幅効果(ブースト)がついている。お守り代わりだ」
「綺麗……。私、こんな綺麗なもの着けたことない……」
リリスが紫のアメジストのペンダントを太陽にかざし、うっとりと見つめる。
「ありがとうございます、シンジ。大切にします」
「あの……シンジ、このネックレス、今つけてみてもいいかな?」
エリアがルビーのネックレスを胸に当て、上目遣いで俺を見てくる。
「つけて」と言わんばかりの視線だ。
最近、彼女は毎朝髪のセットを俺に頼んでくるようになった。俺が魔法で温度調整したヘアアイロンを使わないと、彼女の剛毛……いや、コシのある髪はうまく巻けないのだ。
最初はセレニティのカールヘアに対抗していただけだったが、今では俺に髪をセットしてもらわないと気がすまないのだろう。
「はいはい、後ろ向いて」
「えへへ……」
エリアのうなじに触れると、彼女がビクリと肩を震わせる。留め金を止めると、彼女は自身の白い肌に輝くルビーを見て、恍惚とした表情を浮かべた。
「さあ、買い出しも終わったし、家に帰って夕飯にしよう! 今日は特製料理だ」
「はーい!」
三人の美女たちの華やかな声が重なる。
その光景は、女が呪いをかけられた世界において、あまりにも異質で、あまりにも輝いていた。
道行く冒険者たちが、信じられないものを見る目で俺たちを見送る。
「おい、あの女たち……髪が発光してないか?」「あんな綺麗な女冒険者、見たことねえぞ……」「あの男、何者だ?」
そんなざわめきを背に、俺たちは帰路についた。
この幸せな時間を、長く続けるために知らなければいけないことがあるなんて、まだ誰も知らずに。
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