それでも【運び屋】は剣を握る~ハズレ職を手に入れてしまった俺達だけど、努力と絆で最強パーティーへと成り上がる!~

一ノ瀬つむぎ

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第一章 その魔女はコーンスープが苦手

約束

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 気づくとまた、柔らかなベッドに身を沈めていた。

「あれ、いつ死んだんだ、俺」

 こぼれ出た呟きに、どこからか答えが返ってくる。

「ごめんなさい……。まさかノックしてくるとは思わなくて」
「遊びにすら気軽に誘えないのか」
「……ごめんなさい」

 そう謝らないでくれ。まるで俺がいじめているようではないか。

 体を起こせば、申し訳なさそうな表情でこちらの様子をうかがう魔女の姿が。
 相変わらず整った顔をしているが、その口元に浮かんだ歪な笑顔は慣れなかった。

「お前、その顔はわざとやってるのか?」

 溜まらず訪ねると、彼女は首を傾げた。

「なにか、へんかな」

 変っていうか……。

「その笑い方、無駄に怖く見えるんだけど……」

 その瞬間、彼女の口元がキュッと結ばれる。

「これで大丈夫?」

 そのあまりに真剣そうな声に思わず笑ってしまった。
 彼女は不安そうに、そんな俺を見た。そしてすぐおどおどしながら、言い訳がましく何かを言い出す。

「えっと、笑ってれば怖がられないって聞いたから……」
「余計怖いわ!」
「きゃっ!?」

 瞬間、爆発音。
 顔のすぐ横で見えない何かが爆ぜた。

 うかつな突っ込みは危険だな……。

「ご、ごめんなさい!!」

 それはもうすごい勢いで立ち上がって頭を下げる魔女。そんな彼女を見ながら俺は彼女への意識を改めた。
 やっぱりこの魔女。友達が欲しいんじゃないか?と。
 だって、怖がられないためにわざわざ笑顔を作ったり、ケガさせた相手に滅茶苦茶手厚い看病をしたり、挙句には薬まで作ってくれると来た。

 彼女の心理に確証はないが、少なくとも嫌われたくないと思っていることは確実だろう。
 何を思われようがどうでもいいというのなら、死体なんざ放っておけばいいのだから。

 だから俺は、彼女に声をかけてみた。

「なあ、友達って欲しくないか?」

 質問は簡潔に。社会人としてのマナーを学んだ俺に死角はなかった。

「えっと、欲しいけど……」

 案の定、彼女は食いついてきた。
 結んだままの口元は不愛想ではあるが、それを持って有り余る期待の表情を浮かべていた。
 これは勝ったな。

 俺は餌を目前にした犬へ命令を下すように、ただシンプルに、一つの要求をした。

「なら、俺の仲間になってくれ」と。

「仲間……?」
「そうだ。冒険者としての仲間だ。俺の職業は運び屋だったから、冒険スタイルが定まるまでは運び屋として働くんだが、仲間と装備が揃ったら本格的に冒険者としてやっていこうと思ってるんだ」

 そのときに、一緒に冒険してくれればそれでいい。とそう伝えた。

 彼女はそれを聞いて……。
 静かにうつむいた。

「それは、無理だよ」

 小さくも、明確な拒絶の声が聞こえる。俺は黙って理由を待った。

「わたし、魔女だよ?冒険なんかしたら、いっぱい迷惑かけちゃう」
「今のままなら、そうなんだろうな」

 そんな答えは、想定内だった。

 今のままなら?何を言っているんだと顔を上げる彼女に、俺はひそかに温めておいた作戦を伝える。

「それなら俺を使って、魔力制御の練習をしないか?」

 どうせ生き返らせれるなら、繰り返し刺激を与えることで慣れを作れるのではないだろうか。そんな考えからの提案だった。
 あとは彼女がこれに乗ってくれるかどうかだけなのだが……。 

「……そこまで迷惑かけれないよ」

 断られたが、これならまだいける。
 彼女は別に、魔力を抑える練習が嫌な訳じゃない。ただ、誰かに迷惑をかけるのを恐れているだけだ。

「迷惑じゃない。いつか仲間になってくれるなら、それでいい」

 静かにこちらを見つめる魔女へ、俺は最後の一押しを加えた。

「とりあえず試すだけでもいいんだ。友達として、友達の悩みを解決するのは当然だろ?」

「……わかった。本当にいいなら、頑張ってみる!」

 その髪の奥に隠れた目に不安はあるが、それに勝る位のやる気が窺える。
 俺はそれを見て、力強く頷いた。

「よし、ありがとう!明日から練習法を考えてくるからな!」

 それだけ言って意気揚々と進んだ帰り道には、色とりどりの花々が咲き乱れていた。
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