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第一章 その魔女はコーンスープが苦手
図書館って不思議なにおいするよね
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仲間にするために友達に!?勇気ありすぎでしょ!」
昨日と同様に業務終了の報告をしながら、今日の出来事をアルカに話すと、彼女はカウンターから身を乗り出しつつそんなことを言う。
「勇気っていうか、欲じゃないですかね」
照れくささからそんな風に誤魔化すと、彼女は少し苦笑した。
「それでもだよ。どんな運び屋も皆、あの子のことは怖がってたから」
もちろん私も。とアルカは付け足す。
その表情は若干の後悔が混じっていた。
「寂しかったんだろうな……ずっと」
アルカと魔女の間に何があったのかは知らない。だが、きっと何かがあったのだろうと邪推してしまう程度には、彼女は魔女に対して真剣に見えた。
「いつか、連れてきますよ」
気の利いた言葉は言えず、そんな不確かな口約束だけを取り付けてしまう。
しかし、アルカはそれを聞いて優しく笑ってくれた。
「ありがと。ならさっそく、魔力制御の練習について考えなきゃいけないわね」
★
魔力制御。それは魔法職を得たものが始めにやらなければいけない訓練だ。これをこなせなければ魔法の暴発や動作不良などの問題を起こす。
魔法は本来、干渉力をもとに、それを実行するだけに足る魔力を添えて発動させる。
弓矢で例えるのならば、射手が術者で、弦が魔力、矢が干渉力。そして弓が魔法職という概念そのものだ。
そんななかで、魔力制御はもう、射的制度のコントロールからそもそもの矢の形成。全てにかかわってくる。
だがしかし、魔女はそんな訓練を必要としないのだ。
訓練をしないことで多大な被害を被ることにはなるが、使いたい効果を魔法で発揮するという面においてはまず失敗はない。
なぜなら全ての面において力が有り余っているのだから。
「そもそも魔女って、職業診断直後に暴走したりして隔離されるのがほとんどだから、訓練自体を一切受けてないのよね」
とはアルカからの情報。
「じゃあ、基本の訓練を受けさせたら何か変わるかもしれない……?」
「そういうこと。て言っても、訓練ってどんなことするか知ってる?」
「いや、分からないですね……」
他の職業の情報なんて、よほどの有名なもの以外は知る由もなかった。
もしかしたらアルカは知っているのかと思って訪ねるが。
「魔法、実技に関しては分かるんだけど、知識面は私も齧ったくらいだからね。下手に教えて問題があると困るし」
とのこと。しかし彼女は有難い情報をくれた。
「この街には国立の図書館があるから、そこを探せば大抵のことは分かると思うわ。実際に魔法を使うときとかは、私に聞いてくれていいから」
親切に道まで教えてもらって、俺は頭を下げながらギルドを出た。
そして今、図書館に来ているわけだが……。
「慣れないな……」
本の匂い、大量の文字、静かすぎてむしろ落ち着かない空気。そんな何一つ自分にマッチしない空間に、思わずそう呟いてしまった。
なにせ先ほどから、目的の本どころか魔法の魔の字も見つけられていないのだ。
というか、字が読めない……。
俺、職業訓練はしっかり受けたはずだぞ。
「なにか、お探しですか?」
ふと、そんな声が背後から聞こえてきた。
周りには誰もいないし、きっと俺に向けた言葉なのだろう。
振り向くと、そこには美少年が立っていた。年齢は俺とさして変わらなそうに見える。
「えっと、魔力制御についての本を探してるんですが……」
こんな時間に図書館にいるとは、本好きの少年なのだろうか。線が細く、優しそうな眼をしている。
整った容姿に若干の劣等感を感じながらも、俺はそう伝えた。
「それなら向こうの棚にありますが……、ご案内しましょうか?」
しかし少年はそんな俺の内心など知りもせず、ただ親切にそう言ってくれた。
断る理由もないので素直に頼む。
「助かりました。なぜだかここの棚の本、文字が読めなかったので」
「そりゃあ、魔族関連の書物ですからね。読めるのは学者関係の方だけですよ」
あぁ、ベクトルはあっていたのか。
てか広すぎるんだよこの図書館。入り口付近に一般向けじゃない物を置く理由もわからないしさ……。
「魔力制御や魔法技術に関しては、こちらになります」
「ありがとうございます……。うん、今度はちゃんと読めそうです」
背表紙には見慣れた文字で【魔力の基本】【魔法職入門】なんて書かれた本たちが。
俺が冗談めかしてそう言うと、彼はクスリと笑ってくれた。
「いえいえ。司書として当然のことですので」
そう言って背を向けた彼を見送って、俺はようやく納得した。
本の場所を知ってるほど通ってるなんてどれだけ読書好きなのかと思ったが、司書ならわかるのも理解できる。確か司書のスキルには探し物をしやすくするものがあったはずだ。
「さて、いくつか借りていくか」
結局【魔力の基本】【魔法職入門】そしてふと目に着いた【魔女日記】と書かれた古びた本を手に取った。タイトルすら掠れてうまく読めないが、魔女という単語が入っている本は近くにはこれだけだった。
探せばもっとあるのだろうが、また彼を呼ぶのも申し訳なく思って、俺はまっすぐ貸し出し受付へと向かった。
昨日と同様に業務終了の報告をしながら、今日の出来事をアルカに話すと、彼女はカウンターから身を乗り出しつつそんなことを言う。
「勇気っていうか、欲じゃないですかね」
照れくささからそんな風に誤魔化すと、彼女は少し苦笑した。
「それでもだよ。どんな運び屋も皆、あの子のことは怖がってたから」
もちろん私も。とアルカは付け足す。
その表情は若干の後悔が混じっていた。
「寂しかったんだろうな……ずっと」
アルカと魔女の間に何があったのかは知らない。だが、きっと何かがあったのだろうと邪推してしまう程度には、彼女は魔女に対して真剣に見えた。
「いつか、連れてきますよ」
気の利いた言葉は言えず、そんな不確かな口約束だけを取り付けてしまう。
しかし、アルカはそれを聞いて優しく笑ってくれた。
「ありがと。ならさっそく、魔力制御の練習について考えなきゃいけないわね」
★
魔力制御。それは魔法職を得たものが始めにやらなければいけない訓練だ。これをこなせなければ魔法の暴発や動作不良などの問題を起こす。
魔法は本来、干渉力をもとに、それを実行するだけに足る魔力を添えて発動させる。
弓矢で例えるのならば、射手が術者で、弦が魔力、矢が干渉力。そして弓が魔法職という概念そのものだ。
そんななかで、魔力制御はもう、射的制度のコントロールからそもそもの矢の形成。全てにかかわってくる。
だがしかし、魔女はそんな訓練を必要としないのだ。
訓練をしないことで多大な被害を被ることにはなるが、使いたい効果を魔法で発揮するという面においてはまず失敗はない。
なぜなら全ての面において力が有り余っているのだから。
「そもそも魔女って、職業診断直後に暴走したりして隔離されるのがほとんどだから、訓練自体を一切受けてないのよね」
とはアルカからの情報。
「じゃあ、基本の訓練を受けさせたら何か変わるかもしれない……?」
「そういうこと。て言っても、訓練ってどんなことするか知ってる?」
「いや、分からないですね……」
他の職業の情報なんて、よほどの有名なもの以外は知る由もなかった。
もしかしたらアルカは知っているのかと思って訪ねるが。
「魔法、実技に関しては分かるんだけど、知識面は私も齧ったくらいだからね。下手に教えて問題があると困るし」
とのこと。しかし彼女は有難い情報をくれた。
「この街には国立の図書館があるから、そこを探せば大抵のことは分かると思うわ。実際に魔法を使うときとかは、私に聞いてくれていいから」
親切に道まで教えてもらって、俺は頭を下げながらギルドを出た。
そして今、図書館に来ているわけだが……。
「慣れないな……」
本の匂い、大量の文字、静かすぎてむしろ落ち着かない空気。そんな何一つ自分にマッチしない空間に、思わずそう呟いてしまった。
なにせ先ほどから、目的の本どころか魔法の魔の字も見つけられていないのだ。
というか、字が読めない……。
俺、職業訓練はしっかり受けたはずだぞ。
「なにか、お探しですか?」
ふと、そんな声が背後から聞こえてきた。
周りには誰もいないし、きっと俺に向けた言葉なのだろう。
振り向くと、そこには美少年が立っていた。年齢は俺とさして変わらなそうに見える。
「えっと、魔力制御についての本を探してるんですが……」
こんな時間に図書館にいるとは、本好きの少年なのだろうか。線が細く、優しそうな眼をしている。
整った容姿に若干の劣等感を感じながらも、俺はそう伝えた。
「それなら向こうの棚にありますが……、ご案内しましょうか?」
しかし少年はそんな俺の内心など知りもせず、ただ親切にそう言ってくれた。
断る理由もないので素直に頼む。
「助かりました。なぜだかここの棚の本、文字が読めなかったので」
「そりゃあ、魔族関連の書物ですからね。読めるのは学者関係の方だけですよ」
あぁ、ベクトルはあっていたのか。
てか広すぎるんだよこの図書館。入り口付近に一般向けじゃない物を置く理由もわからないしさ……。
「魔力制御や魔法技術に関しては、こちらになります」
「ありがとうございます……。うん、今度はちゃんと読めそうです」
背表紙には見慣れた文字で【魔力の基本】【魔法職入門】なんて書かれた本たちが。
俺が冗談めかしてそう言うと、彼はクスリと笑ってくれた。
「いえいえ。司書として当然のことですので」
そう言って背を向けた彼を見送って、俺はようやく納得した。
本の場所を知ってるほど通ってるなんてどれだけ読書好きなのかと思ったが、司書ならわかるのも理解できる。確か司書のスキルには探し物をしやすくするものがあったはずだ。
「さて、いくつか借りていくか」
結局【魔力の基本】【魔法職入門】そしてふと目に着いた【魔女日記】と書かれた古びた本を手に取った。タイトルすら掠れてうまく読めないが、魔女という単語が入っている本は近くにはこれだけだった。
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