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第一章 その魔女はコーンスープが苦手
真実と疑問
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どうしたらいいのかわからないまま、私は一人で彼女の作った乗り物のある場所まで歩いた。
しかしそこにはあったはずの乗り物は存在せず、ただ一つ小さな箱が置いてあるだけだった。
開いてみれば、手紙が一枚入っている。
そこにはこれまでの私への感謝と、旅が楽しかったなんて感想。そして【もし自分が捕まったら、私には魔女に脅され無理やり連行されていたふりをしてほしい】といったお願いが書かれていた。
「ふざけんな……」
その憤りは、今となっては誰にもぶつけることができない。
だが、その感情の不完全燃焼ぶりは、結果だけ見たらプラスに働いた。
私たちが一度通った道はきれいに開けていたから、村に帰るのは簡単だった。村では私を待つ騎士が居て、結局ルルの作戦は失敗してるじゃないかと半ば自棄になって笑ってすら見た物の、彼らの要件は違ったようだ。
「賢者の職を得たフレン・エイビーだな?エミリス教団本部にて雇用の準備ができている。至急同行願おう」
その道中。不気味なほどにここ数日のことについては触れられなかったし、魔女についての話なんてもってのほかだった。
後に分かったことなのだが、賢者はエミリス教団にとってどうしても必要な職業らしく、また、エミリス教は魔女に対しての徹底した差別を行う宗教だったのだ。
だから、教団所属の騎士は魔女の話を忌避した。それらにかかわるここ数日のことも。
私はエミリス教団に置いての地位を、着々と上げていった。
だが、それにつれて教団への不信感も高まってきていた。
「なぜ魔女狩りを行うのか」
職業を司る神エミリス。温厚で平等と語られる彼女を祭る者たちは、なぜ魔女だけを徹底差別するのか。
「どこに魔女を狩るメリットがあるのか」
魔女なんて居てもただ、ちょっと危ない爆弾のような存在。田舎町でのんびり暮らすなら、何の害もないのではないか。
「どうして、ルルは……」
私の友人は、殺されなければならなかったのか。
大神官となった頃も、彼女のことは忘れられなかった。
教団の最高権力を握った私は、その権力をフルに使って魔女狩り文化を蹴飛ばした。
魔女には人里離れた場所へと移住してもらい、役割を定めたものに必要な物資などを運んでもらうようにしたのだ。
☆
そのシステムを作ったのはあんただったのか。
そんな目でフレンを見ると、彼女はこちらを見返した。
「今のあんたの職、私が作ったようなものなのよ」
「そう思うとなんか嫌だな。しっかし、大神官ねぇ。やっぱ敬語使ったほうがいいですか?」
すると彼女は心底不満な表情で。
「やめなさい。もう、違うから」
と。まあ、そうだろう。
大神官様が普通の休日のような時間を過ごせるはずがないのだから。
でも。
「なんでやめたんだ?そこまで上り詰めれたんだから、優秀ではあっただろうに」
「それを、これから話すのよ」
☆
そんな不振に包まれながら働く私に、ある日、聞きなれぬ声が聞こえた。
最初は途切れ途切れで意味をなさない物だったそれも、数日するとクリアに聞こえてきた。
声の主は、エミリスと名乗った。
信じがたい話ではあるが、女神エミリスは、その時確かに私に語り掛けたのだ。
「今の教団は、私の意志と正反対に動いている」
エミリスはそう言っていた。
☆
「さて、ここからは話しながらの方がいいわね。何かあったら質問してね」
「あ、ああ。わかった」
スケールがどんどん大きくなる話に必死に噛みついていく。
彼女はそんな俺の苦労も知らずに話続けた。
「結局、魔女を狩ることそのものがエミリスの意思に反してたのよ。なんでって、魔女ってのは神の現世への干渉点なの」
「干渉点?」
「そう。大災害だとか、戦争だとかが起きたときに。そして世界の監視なんかをするために。たまに神が体を借りて現世に干渉するための職業なんだって。神の力に耐えられるように作られた体だからとんでもない力を秘めてるの」
なるほど。すっかり冷めた紅茶と一緒に何とか飲み込む。
「でね、教団がわざわざ魔女を狩ることにこだわった理由なんだけど、教団は職業で人間を差別化しようとしたのよ」
「それは今も……」
そういうと彼女は激しく首を振った。
「全然違うわ!……ごめん。えっと、昔のまま計画が進んでたら、基本職の人間はみんな奴隷よ。推奨職業なんて関係ない。あるのは上級職業か、それ以外かだけよ」
それを聞いて絶句してしまう。
そんなことを本当に考えていたというなら、女神が人間に語り掛けてくるというのもありえなくはないと思った。
「で、その計画を神が宿った魔女に邪魔されるわけにはいかない。教団にとっては幸いなことに、なりたての魔女は不安定で依り代に使えるような存在ではなかったわ」
「だから、魔女が見つかり次第殺していった……と」
「そうね。その真実を知るまで、直接ではないにしろ、私が魔女を殺してしまった記録が、あの魔女狩り日記よ」
禁書指定されているのは、余りにも生々しい殺人記録だからだという。
それと、過去のエミリス教団が主神の意向に反していた真実を隠すため。
たしかに今も尚続いている宗教団体なのだ。そんな真実、ばれたら大変なことになるだろう。
「で、一通り話したわけだけど、何か質問はある?」
そう言われても、まとめてくれたおかげで大事なところだけは理解できた気がする。
が、ずっと気になっていたことがあった。
「これは全部実体験なんだろうなってのは、聞いてて分かった。でも、だからこそわからないことがあるんだ」
「言ってみなさい」
「話を聞く限り、フレンは人間だろ?なんで百年以上たった今も、あんたは元気に生きてるんだ?」
しかしそこにはあったはずの乗り物は存在せず、ただ一つ小さな箱が置いてあるだけだった。
開いてみれば、手紙が一枚入っている。
そこにはこれまでの私への感謝と、旅が楽しかったなんて感想。そして【もし自分が捕まったら、私には魔女に脅され無理やり連行されていたふりをしてほしい】といったお願いが書かれていた。
「ふざけんな……」
その憤りは、今となっては誰にもぶつけることができない。
だが、その感情の不完全燃焼ぶりは、結果だけ見たらプラスに働いた。
私たちが一度通った道はきれいに開けていたから、村に帰るのは簡単だった。村では私を待つ騎士が居て、結局ルルの作戦は失敗してるじゃないかと半ば自棄になって笑ってすら見た物の、彼らの要件は違ったようだ。
「賢者の職を得たフレン・エイビーだな?エミリス教団本部にて雇用の準備ができている。至急同行願おう」
その道中。不気味なほどにここ数日のことについては触れられなかったし、魔女についての話なんてもってのほかだった。
後に分かったことなのだが、賢者はエミリス教団にとってどうしても必要な職業らしく、また、エミリス教は魔女に対しての徹底した差別を行う宗教だったのだ。
だから、教団所属の騎士は魔女の話を忌避した。それらにかかわるここ数日のことも。
私はエミリス教団に置いての地位を、着々と上げていった。
だが、それにつれて教団への不信感も高まってきていた。
「なぜ魔女狩りを行うのか」
職業を司る神エミリス。温厚で平等と語られる彼女を祭る者たちは、なぜ魔女だけを徹底差別するのか。
「どこに魔女を狩るメリットがあるのか」
魔女なんて居てもただ、ちょっと危ない爆弾のような存在。田舎町でのんびり暮らすなら、何の害もないのではないか。
「どうして、ルルは……」
私の友人は、殺されなければならなかったのか。
大神官となった頃も、彼女のことは忘れられなかった。
教団の最高権力を握った私は、その権力をフルに使って魔女狩り文化を蹴飛ばした。
魔女には人里離れた場所へと移住してもらい、役割を定めたものに必要な物資などを運んでもらうようにしたのだ。
☆
そのシステムを作ったのはあんただったのか。
そんな目でフレンを見ると、彼女はこちらを見返した。
「今のあんたの職、私が作ったようなものなのよ」
「そう思うとなんか嫌だな。しっかし、大神官ねぇ。やっぱ敬語使ったほうがいいですか?」
すると彼女は心底不満な表情で。
「やめなさい。もう、違うから」
と。まあ、そうだろう。
大神官様が普通の休日のような時間を過ごせるはずがないのだから。
でも。
「なんでやめたんだ?そこまで上り詰めれたんだから、優秀ではあっただろうに」
「それを、これから話すのよ」
☆
そんな不振に包まれながら働く私に、ある日、聞きなれぬ声が聞こえた。
最初は途切れ途切れで意味をなさない物だったそれも、数日するとクリアに聞こえてきた。
声の主は、エミリスと名乗った。
信じがたい話ではあるが、女神エミリスは、その時確かに私に語り掛けたのだ。
「今の教団は、私の意志と正反対に動いている」
エミリスはそう言っていた。
☆
「さて、ここからは話しながらの方がいいわね。何かあったら質問してね」
「あ、ああ。わかった」
スケールがどんどん大きくなる話に必死に噛みついていく。
彼女はそんな俺の苦労も知らずに話続けた。
「結局、魔女を狩ることそのものがエミリスの意思に反してたのよ。なんでって、魔女ってのは神の現世への干渉点なの」
「干渉点?」
「そう。大災害だとか、戦争だとかが起きたときに。そして世界の監視なんかをするために。たまに神が体を借りて現世に干渉するための職業なんだって。神の力に耐えられるように作られた体だからとんでもない力を秘めてるの」
なるほど。すっかり冷めた紅茶と一緒に何とか飲み込む。
「でね、教団がわざわざ魔女を狩ることにこだわった理由なんだけど、教団は職業で人間を差別化しようとしたのよ」
「それは今も……」
そういうと彼女は激しく首を振った。
「全然違うわ!……ごめん。えっと、昔のまま計画が進んでたら、基本職の人間はみんな奴隷よ。推奨職業なんて関係ない。あるのは上級職業か、それ以外かだけよ」
それを聞いて絶句してしまう。
そんなことを本当に考えていたというなら、女神が人間に語り掛けてくるというのもありえなくはないと思った。
「で、その計画を神が宿った魔女に邪魔されるわけにはいかない。教団にとっては幸いなことに、なりたての魔女は不安定で依り代に使えるような存在ではなかったわ」
「だから、魔女が見つかり次第殺していった……と」
「そうね。その真実を知るまで、直接ではないにしろ、私が魔女を殺してしまった記録が、あの魔女狩り日記よ」
禁書指定されているのは、余りにも生々しい殺人記録だからだという。
それと、過去のエミリス教団が主神の意向に反していた真実を隠すため。
たしかに今も尚続いている宗教団体なのだ。そんな真実、ばれたら大変なことになるだろう。
「で、一通り話したわけだけど、何か質問はある?」
そう言われても、まとめてくれたおかげで大事なところだけは理解できた気がする。
が、ずっと気になっていたことがあった。
「これは全部実体験なんだろうなってのは、聞いてて分かった。でも、だからこそわからないことがあるんだ」
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