それでも【運び屋】は剣を握る~ハズレ職を手に入れてしまった俺達だけど、努力と絆で最強パーティーへと成り上がる!~

一ノ瀬つむぎ

文字の大きさ
13 / 33
第一章 その魔女はコーンスープが苦手

真実と疑問

しおりを挟む
 どうしたらいいのかわからないまま、私は一人で彼女の作った乗り物のある場所まで歩いた。
 しかしそこにはあったはずの乗り物は存在せず、ただ一つ小さな箱が置いてあるだけだった。

 開いてみれば、手紙が一枚入っている。

 そこにはこれまでの私への感謝と、旅が楽しかったなんて感想。そして【もし自分が捕まったら、私には魔女に脅され無理やり連行されていたふりをしてほしい】といったお願いが書かれていた。

「ふざけんな……」

 その憤りは、今となっては誰にもぶつけることができない。
 だが、その感情の不完全燃焼ぶりは、結果だけ見たらプラスに働いた。

 私たちが一度通った道はきれいに開けていたから、村に帰るのは簡単だった。村では私を待つ騎士が居て、結局ルルの作戦は失敗してるじゃないかと半ば自棄になって笑ってすら見た物の、彼らの要件は違ったようだ。

「賢者の職を得たフレン・エイビーだな?エミリス教団本部にて雇用の準備ができている。至急同行願おう」

 その道中。不気味なほどにここ数日のことについては触れられなかったし、魔女についての話なんてもってのほかだった。

 後に分かったことなのだが、賢者はエミリス教団にとってどうしても必要な職業らしく、また、エミリス教は魔女に対しての徹底した差別を行う宗教だったのだ。

 だから、教団所属の騎士は魔女の話を忌避した。それらにかかわるここ数日のことも。

 私はエミリス教団に置いての地位を、着々と上げていった。
 だが、それにつれて教団への不信感も高まってきていた。

「なぜ魔女狩りを行うのか」

 職業を司る神エミリス。温厚で平等と語られる彼女を祭る者たちは、なぜ魔女だけを徹底差別するのか。

「どこに魔女を狩るメリットがあるのか」

 魔女なんて居てもただ、ちょっと危ない爆弾のような存在。田舎町でのんびり暮らすなら、何の害もないのではないか。

「どうして、ルルは……」

 私の友人は、殺されなければならなかったのか。

 大神官となった頃も、彼女のことは忘れられなかった。

 教団の最高権力を握った私は、その権力をフルに使って魔女狩り文化を蹴飛ばした。
 魔女には人里離れた場所へと移住してもらい、役割を定めたものに必要な物資などを運んでもらうようにしたのだ。

 ☆

 そのシステムを作ったのはあんただったのか。
 そんな目でフレンを見ると、彼女はこちらを見返した。
「今のあんたの職、私が作ったようなものなのよ」
「そう思うとなんか嫌だな。しっかし、大神官ねぇ。やっぱ敬語使ったほうがいいですか?」
 すると彼女は心底不満な表情で。

「やめなさい。もう、違うから」

 と。まあ、そうだろう。
 大神官様が普通の休日のような時間を過ごせるはずがないのだから。

 でも。

「なんでやめたんだ?そこまで上り詰めれたんだから、優秀ではあっただろうに」
「それを、これから話すのよ」

 ☆

 そんな不振に包まれながら働く私に、ある日、聞きなれぬ声が聞こえた。
 最初は途切れ途切れで意味をなさない物だったそれも、数日するとクリアに聞こえてきた。
 声の主は、エミリスと名乗った。
 信じがたい話ではあるが、女神エミリスは、その時確かに私に語り掛けたのだ。

「今の教団は、私の意志と正反対に動いている」

 エミリスはそう言っていた。

 ☆ 

「さて、ここからは話しながらの方がいいわね。何かあったら質問してね」
「あ、ああ。わかった」

 スケールがどんどん大きくなる話に必死に噛みついていく。
 彼女はそんな俺の苦労も知らずに話続けた。

「結局、魔女を狩ることそのものがエミリスの意思に反してたのよ。なんでって、魔女ってのは神の現世への干渉点なの」
「干渉点?」
「そう。大災害だとか、戦争だとかが起きたときに。そして世界の監視なんかをするために。たまに神が体を借りて現世に干渉するための職業なんだって。神の力に耐えられるように作られた体だからとんでもない力を秘めてるの」

 なるほど。すっかり冷めた紅茶と一緒に何とか飲み込む。

「でね、教団がわざわざ魔女を狩ることにこだわった理由なんだけど、教団は職業で人間を差別化しようとしたのよ」
「それは今も……」

 そういうと彼女は激しく首を振った。

「全然違うわ!……ごめん。えっと、昔のまま計画が進んでたら、基本職の人間はみんな奴隷よ。推奨職業なんて関係ない。あるのは上級職業か、それ以外かだけよ」

 それを聞いて絶句してしまう。
 そんなことを本当に考えていたというなら、女神が人間に語り掛けてくるというのもありえなくはないと思った。

「で、その計画を神が宿った魔女に邪魔されるわけにはいかない。教団にとっては幸いなことに、なりたての魔女は不安定で依り代に使えるような存在ではなかったわ」
「だから、魔女が見つかり次第殺していった……と」
「そうね。その真実を知るまで、直接ではないにしろ、私が魔女を殺してしまった記録が、あの魔女狩り日記よ」

 禁書指定されているのは、余りにも生々しい殺人記録だからだという。
 それと、過去のエミリス教団が主神の意向に反していた真実を隠すため。

 たしかに今も尚続いている宗教団体なのだ。そんな真実、ばれたら大変なことになるだろう。

「で、一通り話したわけだけど、何か質問はある?」

 そう言われても、まとめてくれたおかげで大事なところだけは理解できた気がする。
 が、ずっと気になっていたことがあった。

「これは全部実体験なんだろうなってのは、聞いてて分かった。でも、だからこそわからないことがあるんだ」
「言ってみなさい」

「話を聞く限り、フレンは人間だろ?なんで百年以上たった今も、あんたは元気に生きてるんだ?」

 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

追放された俺のスキル【整理整頓】が覚醒!もふもふフェンリルと訳あり令嬢と辺境で最強ギルドはじめます

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の【整理整頓】なんてゴミスキル、もういらない」――勇者パーティーの雑用係だったカイは、ダンジョンの最深部で無一文で追放された。死を覚悟したその時、彼のスキルは真の能力に覚醒する。鑑定、無限収納、状態異常回復、スキル強化……森羅万象を“整理”するその力は、まさに規格外の万能チートだった! 呪われたもふもふ聖獣と、没落寸前の騎士令嬢。心優しき仲間と出会ったカイは、辺境の街で小さなギルド『クローゼット』を立ち上げる。一方、カイという“本当の勇者”を失ったパーティーは崩壊寸前に。これは、地味なスキル一つで世界を“整理整頓”していく、一人の青年の爽快成り上がり英雄譚!

大根令嬢の雑学無双、王弟殿下を添えて。~ 前世を思い出したので、許婚をほったらかして人助けしまくります!!

古森真朝
恋愛
気弱な伯爵令嬢のカレンは、自分勝手な婚約者レナートに振り回されていた。耐え続けていたある日、舞踏会で何者かに突き飛ばされ、階段から落ちてしまう。 その傷が元で儚く……なるかと思いきや。衝撃で前世を思い出したカレンは一転、かの『ド根性大根』みたいな超・ポジティブ人間になっていた。 『モラハラ婚約者の思惑なんぞ知るか!! 今度こそ好きなことやって、目いっぱい幸せに長生きするんだから!!!』 昔ひたすら読書に耽って身に着けた『雑学』を武器に、うっかり採れ過ぎた作物や、開墾しようとすると不幸に見舞われる土地、不治の病にかかった王族、等々の問題をどんどん解決。 領地の内外で心強い友人が出来たり、いつの間にかものすごく有名になっていたり、何かと協力してくれる王弟ヴィクトルから好意を寄せられたり(注:気付いてない)する中、温かい家族と共に仕事に励んでいく。 一方、前世から因縁のある人々もまた、こちらに転生していて――

追放された無能鑑定士、実は世界最強の万物解析スキル持ち。パーティーと国が泣きついてももう遅い。辺境で美少女とスローライフ(?)を送る

夏見ナイ
ファンタジー
貴族の三男に転生したカイトは、【鑑定】スキルしか持てず家からも勇者パーティーからも無能扱いされ、ついには追放されてしまう。全てを失い辺境に流れ着いた彼だが、そこで自身のスキルが万物の情報を読み解く最強スキル【万物解析】だと覚醒する! 隠された才能を見抜いて助けた美少女エルフや獣人と共に、カイトは辺境の村を豊かにし、古代遺跡の謎を解き明かし、強力な魔物を従え、着実に力をつけていく。一方、カイトを切り捨てた元パーティーと王国は凋落の一途を辿り、彼の築いた豊かさに気づくが……もう遅い! 不遇から成り上がる、痛快な逆転劇と辺境スローライフ(?)が今、始まる!

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~

くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】 その攻撃、収納する――――ッ!  【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。  理由は、マジックバッグを手に入れたから。  マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。  これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。

「お前の代わりはいる」と追放された俺の【万物鑑定】は、実は世界の真実を見抜く【真理の瞳】でした。最高の仲間と辺境で理想郷を創ります

黒崎隼人
ファンタジー
「お前の代わりはいくらでもいる。もう用済みだ」――勇者パーティーで【万物鑑定】のスキルを持つリアムは、戦闘に役立たないという理由で装備も金もすべて奪われ追放された。 しかし仲間たちは知らなかった。彼のスキルが、物の価値から人の秘めたる才能、土地の未来までも見通す超絶チート能力【真理の瞳】であったことを。 絶望の淵で己の力の真価に気づいたリアムは、辺境の寂れた街で再起を決意する。気弱なヒーラー、臆病な獣人の射手……世間から「無能」の烙印を押された者たちに眠る才能の原石を次々と見出し、最高の仲間たちと共にギルド「方舟(アーク)」を設立。彼らが輝ける理想郷をその手で創り上げていく。 一方、有能な鑑定士を失った元パーティーは急速に凋落の一途を辿り……。 これは不遇職と蔑まれた一人の男が最高の仲間と出会い、世界で一番幸福な場所を創り上げる、爽快な逆転成り上がりファンタジー!

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

地味な薬草師だった俺が、実は村の生命線でした

阿里
ファンタジー
恋人に裏切られ、村を追い出された青年エド。彼の地味な仕事は誰にも評価されず、ただの「役立たず」として切り捨てられた。だが、それは間違いだった。旅の魔術師エリーゼと出会った彼は、自分の能力が秘めていた真の価値を知る。魔術と薬草を組み合わせた彼の秘薬は、やがて王国を救うほどの力となり、エドは英雄として名を馳せていく。そして、彼が去った村は、彼がいた頃には気づかなかった「地味な薬」の恩恵を失い、静かに破滅へと向かっていくのだった。

S級クラフトスキルを盗られた上にパーティから追放されたけど、実はスキルがなくても生産力最強なので追放仲間の美少女たちと工房やります

内田ヨシキ
ファンタジー
[第5回ドラゴンノベルス小説コンテスト 最終選考作品] 冒険者シオンは、なんでも作れる【クラフト】スキルを奪われた上に、S級パーティから追放された。しかしシオンには【クラフト】のために培った知識や技術がまだ残されていた! 物作りを通して、新たな仲間を得た彼は、世界初の技術の開発へ着手していく。 職人ギルドから追放された美少女ソフィア。 逃亡中の魔法使いノエル。 騎士職を剥奪された没落貴族のアリシア。 彼女らもまた、一度は奪われ、失ったものを、物作りを通して取り戻していく。 カクヨムにて完結済み。 ( https://kakuyomu.jp/works/16817330656544103806 )

処理中です...