それでも【運び屋】は剣を握る~ハズレ職を手に入れてしまった俺達だけど、努力と絆で最強パーティーへと成り上がる!~

一ノ瀬つむぎ

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第一章 その魔女はコーンスープが苦手

選ばれし系譜

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「こんにちは! いい物見つかりました?」

 シエルの家を訪ねれば、やはりぴょこりと跳ねた癖毛が俺を迎えた。
 差し出された手のひらに、とりあえず本命の海色の魔石を乗せる。

「はい。それなりに使えると思うんですが」
「ほほー? ……おお!これはなかなか綺麗な魔石!」

 反応は上々。ならば黄色のほんのり濁った魔石はどうだろうか。
 てっきり綺麗さは無いから酷評されると思ったが、彼女はその淀んだ魔石を興味深そうに眺める。

「これは、混魔石ですねぇ……。珍しいですよ」
「混魔石? なんですか? それ」

 聞いたことがない言葉に首をかしげると、彼女は指を立てて説明してくれた。

「魔石には属性が宿ることがほとんどなんですが、それがまだ定まっておらずに、属性を持った魔力と無の魔力が混ざった魔石のことを【混魔石】と言うんです」
「なるほど……。でも、汚いうえに性質も混ざってるって、正直使えなくないですか?」

 だって要するに混ざりものだろ?
 そんなことを思ってしまうが、魔石に詳しい物にとってはそうではないようだ。

「そこはあたし達の腕の見せ所ってことですね。無の魔力に方向性を持たせて性質を変える。それが魔石加工の醍醐味ですから!」

 まあ、やるのはあたしじゃないですが。なんて呟いて、彼女は綿の入った筒に魔石を入れた。
 そういう風に運ぶのか……。

「じゃあ、マドカちゃんのとこまで案内しますね。癖の強い子ですけど、悪い子ではないですから!」
「よろしくおねがいします……。多分、大丈夫です」
「そうですか~? 最初はみんなそう言うんですよね~」

 身近にいる女性は皆何かしら癖があるから、ある程度の慣れは持ち合わせていると思うのだが……。果たしてどうなることやら。

 彼女に連れられて、俺はその少女の元へと向かった。

 ★

 マドカちゃん。とやらの家に連れられてきてまず思ったのは「趣味が合いそうだな」だった。
 周りの家が軒並み煉瓦でつくられている中、その家だけは継ぎ接ぎしたような金属製だし、何よりも「秘密基地」のような雰囲気がひしひしと伝わってくる。

 扉も金庫のハッチのような形状で、シエルが特徴的な円状のドアノブをまわすと、ギィと鳴いて扉が開く。
 踏み込んだ瞬間、壁に埋め込まれた灯りが自動的に灯った。

「すっげえ。最高だ……!」

 思わず手放しの称賛を送った俺に、シエルは呆れたような視線を向ける。

「えぇ、ハルさんも「そっち」なんですか?あたしはそのセンス、わからないですねぇ……」

 彼女はそう言いつつ、地面に膝をついた。
 確かにこの玄関には椅子も机もありはしないが、一体何を?

 そう思っていると、光沢のある石で覆われた床の一部分が「シャコっ」と小気味いい音を立てて飛び出した。出てきたのは金属製の取っ手?

 それを横に引くと、床の一部分が取り払われ、おそらく地下へと続いているのであろう梯子が出現した。

「なんて顔してるんですか……。告白の時、それ絶対やっちゃダメですからね」
「……え、はい」

 思わぬ毒を吐かれたが、それすらすぐ忘れるほどの衝撃。
 なんたってこの家、九十九点のロマン。

 え? 何が一点分減らしているのかって?
 俺、螺旋階段派なんです。梯子より、螺旋。響きもかっこいいでしょう?

「いつまで見てるんですか? 行きますよ?」

 いつの間にか穴の部分から顔だけをのぞかせた彼女の後を慌てて追った。梯子の長さは体感三メートルほど。そこからさらに数段程度の階段を下れば、金属製の重厚な扉が現れる。

「この中です。マドカちゃん、入るよ」

 返事は待たずに押し入るシエル。そんな彼女の頭部には、柔らかそうな球状の何かが降ってきた。

「ノックの意味ないだろうが、そんなん」

 部屋の方から声が聞こえた。
 あちこちに作りかけの機械類が転がっているその部屋の中心で、少女は触手のように何本もの「鉄の腕」を操りつつそう文句を言う。
 おそらく彼女がマドカという人物なのだろう。

 幾重にも重なったロマンの塊のようなモノクルの奥の目は、静かに俺を見つめていた。
 きっとあれ、何倍にも拡大して見れたりするんだろうな。

「お前……。この工房、どう思う」

 そう言って自分の背後。つまりは【透明なパイプがあちこちを駆け巡り、色とりどりの液体が蠢き、カラフルな煙をあちこちから噴き出してる用途不明の特大装置】を指さした。

 どう思うかなんて、決まっている。

「最高。来るときの隠し通路も良かったですが、この装置のロマンは格別ですね」

 すると彼女はうんうんと数回頷いて。

「歓迎しよう、友よ。名はハルと言ったな?」
「ああ、はい。マドカさん、ですよね?」
「違う」

 ……え?
 訝しむような視線でシエルを見れば、彼女はバツが悪そうに目を逸らす。

「私はマギドミリカ。それはそいつが勝手に呼んでるだけだ。だがまあ、友になら許そう。敬語もいらん」
「え!? あたし未だに許可貰ってないよ!?」

 普段とは違った見た目相応のテンションで、マドカへと駆け寄るシエルだったが、傍らから伸びてきた日本の鉄の手でピタリと動きを止められた。

「で、魔石加工だったか? 見せてみろ」
「ああ、わかった。この二つだ」

 海色と黄色。直前にシエルから受け取っておいた魔石を手渡すと、彼女は直に手で取って眺める。

「リングには断然、海色(こっち)だろうが……。そうだな、混魔石も加工できなくはない」
「難しいのか?」

 眉間にしわを寄せながら言うものだからそう訪ねると、彼女は首を横に振る。

「難しいというか、もったいないんだ。この混魔石、無の比率が高いからな。機械に組み込めば、良い変換機になる」
「簡単に言えば実用向けってことですよー。アクセには向かないですー」
「そ、そうですか……」

 宙ぶらりんになっている彼女を視界から外すと、目の前には黄色の魔石が差し出されていた。

「冒険者ギルドにでも持っていけばまあまあの額で買ってもらえるだろう。うちで直接買いたいのは山々なのだが、規約がな……」
「直接交渉は禁止されてるんだっけか。聞いたことあるな」

 そうは言いつつも、俺は彼女の差し出した手を押し返す。
 すると彼女は不思議そうな顔で首をかしげる。モノクルとは逆側の青色のサイドテールが揺れた。

「それは貰ってくれ。同じセンスをもつ仲間だろ?」
「お、おお!そうかそうかっ!」
「その代わりって言ってはなんだけど、リングの方、最高のを頼むぜ?」
「任せろ!おいシエル!今すぐやるぞ!」

 テンションが上がってきたのか足の生えた椅子をかさかさと動かして作業台の元へと進む。
 そこからはマドカの加工技術とシエルのセンスのぶつかり合いだった。

 普通の女性にとっては、俺達のセンスは致命的らしいが……。
 まあそこは、シエルが何とかしてくれると言うのだから任せよう。

 俺は作業台の横にあった椅子へ座って、ただただ作業が終わるのを見守っているしかなかった。
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