それでも【運び屋】は剣を握る~ハズレ職を手に入れてしまった俺達だけど、努力と絆で最強パーティーへと成り上がる!~

一ノ瀬つむぎ

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第一章 その魔女はコーンスープが苦手

作戦当日

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「どうよ、この輝き。やっぱ私天才だな」

 そう言ってマドカが掲げる出来立てのリングには、よく見る宝石のように加工された海色の魔石の中に「緑の模様」が浮かび輝いているものだった。

「もうちょっとシンプルな方がかわいいじゃんか……」

 なんてとんでもない事を言う輩もいるが、分かっていない。

「完璧だろ。主張しすぎないアクセントだが手は決して抜いていない。花をモチーフにしたようなその模様は、透き通る青の魔石によく映えていて……」
「だよなぁ!ハル、お前ホントわかってるな!」

 お前もな。と拳をぶつける俺達。
 本当に、気の合う奴と知り合えたものだ……。

「んで、明日は告白なんだって?」
「そう……。そうだな。明日だ」

 特急で過ぎていったここ数日だが、思えば明日が決戦の日。
 それを伝えると、マドカもシエルも応援してくれた。

「そのプレゼントさえあれば成功するさ。お前自身もいい奴みたいだしな」
「センスはあれですけど、頑張りは絶対伝わりますよ!……もしダメだったら、愚痴くらい聞いてあげます!」
「失敗した時の話はしないでくださいよ……。でも、ありがとうございます」

「頑張ってくる」と言って、見送られつつ工房を出る。

 遠くの空には、優しい緑の魔力光を放つ【白竜】の姿が見えた。

 ★

 今日はいよいよラトナに思いを伝える日。
 数年に一度の巡回期という絶好のチャンスに、最高とまで思えるプレゼントを贈って告白をする。
 きっと白竜も祝福してくれることだろう。

 そう思いつつ晴れやかな気持ちでカーテンを開ければ……。

「曇り……だな。夜までに晴れればいいんだが」

 そこらの山なんか容易に超えられる程巨大な白竜は、雲よりはるか上空を飛行する。
 だから今空を覆っている鉛色の雲には何としてもどいてもらわなければならないわけで……。

 とにかく晴れてくれと心から願った。


 せっかくの巡回期の、しかもちょうど白竜が近づく今日に限ってこの天気なのかと。そんながっかりムードは職場に出ても同じだった。

「誰かあの雲吹き飛ばせよ」
 なんて無茶を言う者も出てくる始末。

 これ以上このムードにあてられていては、モチベーションに害がある。

 荷物をまとめて二輪車へ乗り込むと、誰かの気遣いなのだろう。雨用の防水シートが荷台に積み込まれていた。
 しかし、今はそれすらも不安要素の一つとなってしまう。

 あまり考えすぎるな……。

 俺は頭を振って思考のモヤを払うと、魔女の城へと向かった。

 ★

 城のそばへ近づくと、湖の傍らで佇む人影が見えてきた。
 曇天の下でも光をくねらせている彼女の白髪は、遠くからでもよく目立つ。
 今日は遊びに行くと伝えていたから、いつもは持っていない肩掛けのカバンを携えていた。

 服もいつもより可愛らしく、配達の制服なんてつまらないものを着ている自分が情けなくなってくる。
 いや、おしゃれしたからって彼女のように輝けるわけでも無いし、かといってここの制服がダサいわけでも無いのだが。 

「準備は完璧だな」

 速度を緩めつつ彼女に近寄ると、ラトナもまた手を顔ほどまでに上げてひらひらと振って応えた。

「どう、かな」

 それは服のことだろうか。確かに見たことのない物を着ているが、正直なんでも似合うのだから返事に困る。もちろん、この気持ちをそのまま伝えてしまえば比喩としても俺は死んでしまうだろうし、事実的にも一度は死ぬことになるだろう。

 だから彼女の後方に広がる湖なんかに視線を移したりして。

「凄くいいと思う」
「そっか!……ありがとっ!」

 喜んでくれたみたいだから、良かったってことにしよう。

「それで、今日は何して遊ぶの?」
「うーん……。巡回ルートを考えながら一番いいポジションを確保して、それから遊ぼうと思ってたんだけどな」
「雲、流れないもんね……」

 二人並んで、今にも雨をぱらつかせて来そうな空を見上げつつため息をついた。

「晴れるの待って、ゆっくりするか」
「うん。また空竜機に乗れば、それなりの距離ならすぐ行けるし!」
「それもそうか。その時は頼むぜ?」
「任せてっ! それとこの前の意見を聞いて改造してみたから、感想聞かせてね」
「わかった。……え、なんか仕組んでる?」

 その表情にいたずらっぽさを感じて尋ねれば、彼女は目を泳がせて。

「そ、そんなことないよ?」

 なにかあるんだろうな……。

「ま、まあ。家でお茶でも飲もうよ」

 彼女に腕を引かれてドキリとしつつも黙って従う。

 机に並べられた色とりどりの菓子たちをつまみながら、雑談に花を咲かせたりもして、ゆっくりと時間を過ごした。
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