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何もできない無能の宮廷召喚士として追放される

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「貴様のような何もできない無能はクビだ!」

「えっ!?」

 俺の名はランス。ランス・テスタロッサ。

召喚士学院を卒業した後、宮廷召喚士になった召喚士である。

目の前にいるのは俺が仕えている王国リンカーンの王子。名をニグレドという。

「貴様は我と地下迷宮の攻略に出向いた際に、何もしなかったではないか!」

 それは地下迷宮(ダンジョン)攻略が終わり、王国まで戻ってきた時の事だった。

 王子はそう主張してきた。

確かに俺は王国リンカーンにある地下迷宮(ダンジョン)に王子と共に出向いた。

だが、俺は何もしていなかったのではない。

王子達に対して普段使わない支援魔法を使い、影ながら役に立っていたのだ。

 目に見えた攻撃行動をとらなかったのには理由がある。

「お待ちください! 王子! 私は何もしていなかったわけではありません! 王子達の為に支援魔法で影ながら支援を……」

「見苦しい言い訳だ! 貴様は召喚士だろう! なぜ召喚魔法を使って攻撃しなかった!」

 それには理由があった。

俺の召喚魔法ではモンスターは一撃で死んでしまう。

そうなると王子及び他のパーティーメンバーにレベルUPの為の経験値が入らなくなってしまうのだ。

それ故に召喚魔法を控えていたのだ。

だが王子はそれを何もできない無能だと判断したのであった。

「正直に申せ、実は貴様は召喚士などではなく、詐称で宮廷に入ってきたのだろう! 本当は召喚魔法など使えない何もできないただの無能なのだ!」
 
 違うといってどうなる。王子はもはや考えを決め切っていた。ここから考えを覆すのは至難の技であった。

「もうよい! 貴様のような無能の顔は見たくない! 即刻我の前から消えよ!」
  
 王子はそう俺に宣告してくる。

 こうして俺――ランスは問答無用で王国リンカーンを追放処分になったのである。

 王国を追放処分になり俺は途方に暮れていた。行く当てもなく彷徨う。

「これからどうするんだ、俺は……今まで宮廷召喚士として王国の役に立ってきたのに。こんなのはあんまりだ」

 嘆いてもどうしようもなかった。不条理な理由とはいえ、宮廷を追放されてもこれからも人生は続いていくのだ。

そんな時の事であった。

「きゃあああああああああああああああああああああああああああああああ!」
 
 少女の悲鳴が聞こえてきた。

「なんだ?」
「だ、誰か! 助けて! 助けてください!」

 ともかく俺は悲鳴が聞こえてきたところへと向かう。

 道端で少女が襲われていた。
襲われていたのは狼型のモンスター、ワイルドウルフだ。

それも数十匹。厳冬で餌がなかったからか、人里まで降りてきたのであろう。

 ワイルドウルフは少女に今すぐにでも襲い掛かろうとしていた。こんなところ、見捨てられるはずもない。

「出でよ !召喚獣! イフリート!」

 俺はイフリートを召喚した。

出てきたのは真っ赤に身体が燃えた、美少女である。

こいつが俺の召喚獣炎を操る召喚獣イフリートだ。全身が真っ赤に燃えている事を除けば、ただの美少女にしか見えない。

「ご主人様、どういたしました?」

 イフリートはかしずく。

「あそこにワイルドウルフに襲われている女の子がいる! お前の力で助けてやってくれ!」
「了解しました! ご主人様! ご主人様のお役に立てる事、忠実なる僕として幸せに思います!」

 イフリートは構える。

「獄炎(ヘルフレア)!」
 
 ものすごい火柱が立ち、ワイルドウルフを焼き払った。

「「「キャウウウウウウウウウウウウウウウウウウウウンン!」」」

 まるで可愛らしい犬のように、悲鳴をあげてワイルドウルフたちは果てた。

「す、すごい威力です! こんなもの凄い炎他に見た事がありません!」

 少女は目を丸くしていた驚いた様子だった。

「怪我はありませんでしたか?」
 
 俺は彼女に駆け寄る。

改めてみるとすごい美少女だった。

流れるような金髪に青い瞳をした少女。

どことなく気品があり、育ちの良さが窺えた。

彼女が持っているのは召喚士用のスタッツだ。ローブを着ている事から彼女もまた召喚士である事が窺えた。

「は、はい。おかげ様で大丈夫です。無傷でした。ですがあなたが助けに入ってくれなかったら、私の命はなかったかもしれません」

「そうですか。それは良かったです」

 俺は胸を撫でおろす。

「よろしければお名前を教えては頂けないでしょうか?」

「俺の名はランス・テスタロッサです」

「ランス様というのですか。私の名はサラ。サラ・ユグドレシアと申します」

 こうして俺はサラと出会った。

この出会いが俺の運命を大きく変えていく事になるとはその時思ってもいなかったのである。




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