4 / 10

王子、国王に激しく叱責される! ※ざまぁ回

しおりを挟む

「今何と申した? 我が息子、ニグレドよ」

 王国リンカーンでの出来事である。玉座の間で王子は父である国王に報告をしていた。
 事後報告をしていたのである。

「はい。父上。あの役立たずの無能の召喚士を追い出してやった次第であります。あいつは私との地下迷宮への攻略の際、何もせずに後をついてきただけの役立たずであります。あの召喚士は自分は支援魔法を使っていたなどと言い訳をしていましたが、嘘っぱちでしょう。恐らくは召喚魔法が使える事も詐称だと思われます。あんな嘘つきをいつまでもこの王国おいておく必要性はないでしょう。その為私がランス・テスタロッサを追い出してやりました。っはっはっはっは」

 王子ニグレドは笑みを浮かべる。

「この馬鹿者めがっ!」

「ひ、ひぃっ!」

 国王の怒声は異様な程のボリュームであった。それなりに体面している距離の差はあるが、それでも十二分に鼓膜に響く程だった。その声量は買った怒りの大きさを表していた。

「無能とは貴様のことだ! ニグレド! この馬鹿息子めっ!」

「な、なぜですかっ! なぜあの召喚士をそこまで評価されるのですかっ!」

「奴は名門の召喚士学院を首席で卒業した天才であるぞっ! それどころか学院始まって以来の天才と言われこの宮廷に入ってきたのだっ!」

「な、なんですと! それほどの者だったのですかっ!」

「地下迷宮での攻略の際もわしが命令をしてランス殿を貴様につかせたのだっ! ランス殿がいれば万が一強敵に遭った場合でも貴様の命は救われるとっ! 恐らくランス殿が召喚魔法を使わずに支援魔法に徹していたのにも理由がある事だろうっ! ランス殿の召喚魔法は強力すぎ、モンスターを一撃で倒してしまう。そうなれば貴様に経験値が入らないであろう。その事を考慮して、ランス殿は召喚魔法を控えていたのだっ!」

「な、なんですと! そ、そんな事を奴は考えていたのにっ!」

「くっ! ランス殿が我が王国にいれば今後十数年は安泰だったというものをっ! 貴様のような馬鹿息子を持ったが故に彼を無意味に失ってしまったというのか。うううっ……うううっ」

 国王は涙を流し始めた。

「父上……そんな泣くような事なのでは。些か大袈裟なのでは?」
「うるさいっ! この馬鹿者! それほどの大事なのじゃ! 我が王国にとって彼を失うという事は」
「は、はぁ……」

 ニグレドは釈然としていなかった。何となく現状をあまり受け止め切れていない様子。

 一介の召喚士をクビにしたくらいで父である国王にこんな反応をされるとは夢にも思っていなかったのである。

「ニグレド! 貴様! この落とし前どうやって取ってくれるのだ!?」

「……どうやってと申しましても。うーむ」

「今すぐランス殿を探しにいけ! 貴様の足でっ!」

「な、なんですとっ! 私が行くのですかっ!」

「当たり前だろうが! 全ては貴様の落ち度だっ! 幾人か兵士を引き連れていけっ! 連れ戻せるまで帰ってくるなっ! そうでなければ貴様の王位の継承権を剥奪する!」
「な、なんですと! 王位の継承権を剥奪!」

 それはつまり、自分が国王になれないという事を意味していた。流石に脳天気なニグレドにも危機感を感じてくる。

「それはやめてくださいっ! 父上! いえ! 国王陛下!」

 国王になれば国民の税金で贅沢三昧に暮らし、生涯が安泰だと何となく思い描いていたのに。その人生計画が高々一介の召喚士をクビにしたくらいでご破算になるとは思ってもみなかった事だ。

「だったらランス殿を連れ戻してくるのだっ! 貴様自らの手で! いいか! それまで決して帰ってくるなよ!」

「はっ! 国王陛下! 必ずやランス殿をこの王国に連れ戻しに参ります」

 ニグレドは表情を歪ませた。くそっ! こんなつもりじゃなかったのに!
 こうしてニグレドは手下となる数名のパーティーメンバーを引き連れ、ランスを探す旅に出る事になったのである。
しおりを挟む
感想 8

あなたにおすすめの小説

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

戦場帰りの俺が隠居しようとしたら、最強の美少女たちに囲まれて逃げ場がなくなった件

さん
ファンタジー
戦場で命を削り、帝国最強部隊を率いた男――ラル。 数々の激戦を生き抜き、任務を終えた彼は、 今は辺境の地に建てられた静かな屋敷で、 わずかな安寧を求めて暮らしている……はずだった。 彼のそばには、かつて命を懸けて彼を支えた、最強の少女たち。 それぞれの立場で戦い、支え、尽くしてきた――ただ、すべてはラルのために。 今では彼の屋敷に集い、仕え、そして溺愛している。   「ラルさまさえいれば、わたくしは他に何もいりませんわ!」 「ラル様…私だけを見ていてください。誰よりも、ずっとずっと……」 「ねぇラル君、その人の名前……まだ覚えてるの?」 「ラル、そんなに気にしなくていいよ!ミアがいるから大丈夫だよねっ!」   命がけの戦場より、ヒロインたちの“甘くて圧が強い愛情”のほうが数倍キケン!? 順番待ちの寝床争奪戦、過去の恋の追及、圧バトル修羅場―― ラルの平穏な日常は、最強で一途な彼女たちに包囲されて崩壊寸前。   これは―― 【過去の傷を背負い静かに生きようとする男】と 【彼を神のように慕う最強少女たち】が織りなす、 “甘くて逃げ場のない生活”の物語。   ――戦場よりも生き延びるのが難しいのは、愛されすぎる日常だった。 ※表紙のキャラはエリスのイメージ画です。

ゲームの悪役パパに転生したけど、勇者になる息子が親離れしないので完全に詰んでる

街風
ファンタジー
「お前を追放する!」 ゲームの悪役貴族に転生したルドルフは、シナリオ通りに息子のハイネ(後に世界を救う勇者)を追放した。 しかし、前世では子煩悩な父親だったルドルフのこれまでの人生は、ゲームのシナリオに大きく影響を与えていた。旅にでるはずだった勇者は旅に出ず、悪人になる人は善人になっていた。勇者でもないただの中年ルドルフは魔人から世界を救えるのか。

勇者パーティーを追放されました。国から莫大な契約違反金を請求されると思いますが、払えますよね?

猿喰 森繁
ファンタジー
「パーティーを抜けてほしい」 「え?なんて?」 私がパーティーメンバーにいることが国の条件のはず。 彼らは、そんなことも忘れてしまったようだ。 私が聖女であることが、どれほど重要なことか。 聖女という存在が、どれほど多くの国にとって貴重なものか。 ―まぁ、賠償金を支払う羽目になっても、私には関係ないんだけど…。 前の話はテンポが悪かったので、全文書き直しました。

妻からの手紙~18年の後悔を添えて~

Mio
ファンタジー
妻から手紙が来た。 妻が死んで18年目の今日。 息子の誕生日。 「お誕生日おめでとう、ルカ!愛してるわ。エミリア・シェラード」 息子は…17年前に死んだ。 手紙はもう一通あった。 俺はその手紙を読んで、一生分の後悔をした。 ------------------------------

魔王を倒した勇者を迫害した人間様方の末路はなかなか悲惨なようです。

カモミール
ファンタジー
勇者ロキは長い冒険の末魔王を討伐する。 だが、人間の王エスカダルはそんな英雄であるロキをなぜか認めず、 ロキに身の覚えのない罪をなすりつけて投獄してしまう。 国民たちもその罪を信じ勇者を迫害した。 そして、処刑場される間際、勇者は驚きの発言をするのだった。

友人(勇者)に恋人も幼馴染も取られたけど悔しくない。 だって俺は転生者だから。

石のやっさん
ファンタジー
パーティでお荷物扱いされていた魔法戦士のセレスは、とうとう勇者でありパーティーリーダーのリヒトにクビを宣告されてしまう。幼馴染も恋人も全部リヒトの物で、居場所がどこにもない状態だった。 だが、此の状態は彼にとっては『本当の幸せ』を掴む事に必要だった 何故なら、彼は『転生者』だから… 今度は違う切り口からのアプローチ。 追放の話しの一話は、前作とかなり似ていますが2話からは、かなり変わります。 こうご期待。

処理中です...