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サラの婚約者現る
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「よし。サラ、今日も修行に行くか」
「はい! ランス先生!」
今日も俺達が修行に向かっていた最中の事だった。
「やっと見つけました」
「ん?」
俺達の前に一人の青年が姿を現す。イケメンっぽい男だ。ローブを着ているから戦士系の職業ではなく、魔法使い系の職業である事を察することができた。
瞬間。サラの表情が今まで見た事がないほどに凍り付いていたのを感じる。
「誰ですか?」
「僕の名前はルーネス・ガーランド。ガーランド家と言えば聞いた事はあるかい?」
ガーランド家。召喚士の名家だ。やはり、サラは召喚士の名家、ユグドレンシア家のお嬢様なんだろう。
「ああ。聞いた事はある」
「そうか。僕はそこの嫡男だよ」
「それでその嫡男がサラに何の用だ?」
「僕とサラは両家が認めた婚約者なんだ」
「婚約者!?」
「だから僕は家出をしたサラを引き取る権利がある。わかってくれるよね?」
「い、いやですっ! 私はこの人と行きたくありません!」
「なぜだサラ。何が嫌なんだ?」
「匂いがします」
「匂い?」
「血の匂いがあなたからはします。人の事を何とも思わない、人形のようにしか思わない、冷たい感じがします」
「くっ……」
その瞬間、ルーネスの微笑が醜く歪んだ気がした。しかし慌てて取り繕う。
「何を言っているんだ、サラ。僕はそんな事はしない。君を大切に扱う。一生大事にするよ」
「いやっ!」
バシィ! 触れようとしてきたルーネスの手をサラは振り払う。
「ちぃっ……」
「女の子が嫌がってるんだ。それ以上はやめてくれませんかね?」
「だから、さっきから君はなんなんだ? 君は誰だ? 君はサラの何なんだ? まさか駆け落ちの相手だとでもいうんじゃないだろうな!」
「俺はランス・テスタロッサ。サラに召喚魔法を教えているんです」
「テスタロッサ……ああ。あの落ちぶれた元名門の。失敬。なんといえばいいのやら。言葉を見失ってしまったよ」
確かに俺の実家は落ちぶれた召喚士の家系だ。だからこいつの家のような名家でhない。だが、その事を露骨に見下されると流石にむかつきもする。
「ランスさん、事情は説明しただろう。家出少女を匿ってくれてありがとう。けど家出も終わりなんです。もうお家に帰る時間だ。その事くらい、大人なあなたならわかるでしょう?」
「い、いやですっ! 私はランス先生と一緒にいたいんですっ! あなたとは行きたくありません!」
サラは俺にしがみついて離れようとしない。
「くっ。聞き分けのない娘だな」
「ルーネスさん、俺と勝負をしませんか?」
「勝負?」
「ええ。勝負です。俺が召喚魔法であなたに勝ったのなら、サラを家に帰します。しかし、俺が勝ったのならサラの事を諦めてください」
「ほう……いいでしょう? 諦めるというのは、婚約の破棄を含んでの事でしょう?」
「ええ」
「それでは釣りあいが取れていない、今後あなたはサラに関わるのを一切おやめください。僕の方が召喚士として優れている事になるんです。ですから僕がサラに教えればいいんです」
「いいでしょう。その条件、飲みましょう」
「ランス先生……」
サラは不安げに俺を見た。
「大丈夫だ。サラ。俺は負けない」
俺はサラの頭を撫でる。
「随分と大した自信ではないですか。これは楽しみですよ。あなたとお手合わせするのが」
「ここは街中です。場所を変えましょうか」
「ええ。もっと平地がいい。おあつらえ向きの場所が国外にありますよ。距離があるんで連れていきます。召喚フェニックス」
手軽な感じでルーネスは召喚魔法を発動させる。それだけ練度が高いのだろう。やはり名門の出という事か。口先だけではない。相当に実力があるようだった。
「乗ってください。心配しないでも罠などありません」
「実力で俺を倒せるってわけか」
「好きにお取りください」
「ランス先生」
「大丈夫だ。サラ、俺がついている」
「はい」
俺はサラの肩を抱いた。二人でフェニックスの背に乗る。燃え盛っている背中には不思議と熱さがなかった。
「それではいきます! 飛べ! フェニックス!」
キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!
フェニックスは甲高い泣き声を放ち、大空に飛び立った。俺達が一騎打ちをする、果し合いの地へ向かう為に。
「はい! ランス先生!」
今日も俺達が修行に向かっていた最中の事だった。
「やっと見つけました」
「ん?」
俺達の前に一人の青年が姿を現す。イケメンっぽい男だ。ローブを着ているから戦士系の職業ではなく、魔法使い系の職業である事を察することができた。
瞬間。サラの表情が今まで見た事がないほどに凍り付いていたのを感じる。
「誰ですか?」
「僕の名前はルーネス・ガーランド。ガーランド家と言えば聞いた事はあるかい?」
ガーランド家。召喚士の名家だ。やはり、サラは召喚士の名家、ユグドレンシア家のお嬢様なんだろう。
「ああ。聞いた事はある」
「そうか。僕はそこの嫡男だよ」
「それでその嫡男がサラに何の用だ?」
「僕とサラは両家が認めた婚約者なんだ」
「婚約者!?」
「だから僕は家出をしたサラを引き取る権利がある。わかってくれるよね?」
「い、いやですっ! 私はこの人と行きたくありません!」
「なぜだサラ。何が嫌なんだ?」
「匂いがします」
「匂い?」
「血の匂いがあなたからはします。人の事を何とも思わない、人形のようにしか思わない、冷たい感じがします」
「くっ……」
その瞬間、ルーネスの微笑が醜く歪んだ気がした。しかし慌てて取り繕う。
「何を言っているんだ、サラ。僕はそんな事はしない。君を大切に扱う。一生大事にするよ」
「いやっ!」
バシィ! 触れようとしてきたルーネスの手をサラは振り払う。
「ちぃっ……」
「女の子が嫌がってるんだ。それ以上はやめてくれませんかね?」
「だから、さっきから君はなんなんだ? 君は誰だ? 君はサラの何なんだ? まさか駆け落ちの相手だとでもいうんじゃないだろうな!」
「俺はランス・テスタロッサ。サラに召喚魔法を教えているんです」
「テスタロッサ……ああ。あの落ちぶれた元名門の。失敬。なんといえばいいのやら。言葉を見失ってしまったよ」
確かに俺の実家は落ちぶれた召喚士の家系だ。だからこいつの家のような名家でhない。だが、その事を露骨に見下されると流石にむかつきもする。
「ランスさん、事情は説明しただろう。家出少女を匿ってくれてありがとう。けど家出も終わりなんです。もうお家に帰る時間だ。その事くらい、大人なあなたならわかるでしょう?」
「い、いやですっ! 私はランス先生と一緒にいたいんですっ! あなたとは行きたくありません!」
サラは俺にしがみついて離れようとしない。
「くっ。聞き分けのない娘だな」
「ルーネスさん、俺と勝負をしませんか?」
「勝負?」
「ええ。勝負です。俺が召喚魔法であなたに勝ったのなら、サラを家に帰します。しかし、俺が勝ったのならサラの事を諦めてください」
「ほう……いいでしょう? 諦めるというのは、婚約の破棄を含んでの事でしょう?」
「ええ」
「それでは釣りあいが取れていない、今後あなたはサラに関わるのを一切おやめください。僕の方が召喚士として優れている事になるんです。ですから僕がサラに教えればいいんです」
「いいでしょう。その条件、飲みましょう」
「ランス先生……」
サラは不安げに俺を見た。
「大丈夫だ。サラ。俺は負けない」
俺はサラの頭を撫でる。
「随分と大した自信ではないですか。これは楽しみですよ。あなたとお手合わせするのが」
「ここは街中です。場所を変えましょうか」
「ええ。もっと平地がいい。おあつらえ向きの場所が国外にありますよ。距離があるんで連れていきます。召喚フェニックス」
手軽な感じでルーネスは召喚魔法を発動させる。それだけ練度が高いのだろう。やはり名門の出という事か。口先だけではない。相当に実力があるようだった。
「乗ってください。心配しないでも罠などありません」
「実力で俺を倒せるってわけか」
「好きにお取りください」
「ランス先生」
「大丈夫だ。サラ、俺がついている」
「はい」
俺はサラの肩を抱いた。二人でフェニックスの背に乗る。燃え盛っている背中には不思議と熱さがなかった。
「それではいきます! 飛べ! フェニックス!」
キュイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイイ!
フェニックスは甲高い泣き声を放ち、大空に飛び立った。俺達が一騎打ちをする、果し合いの地へ向かう為に。
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