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贋作鍛冶師として追放される

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「貴様はクビだ! フェイ・レプリカ!」

 ある日、国王に呼び出された俺はいきなりそう宣言される。

「ええ!!? なんでですか!? 国王!」

 俺の名はフェイ・レプリカ。宮廷で鍛治師をしている。鍛治師学院を卒業してからの数年、必死に宮仕えをしていたのだ。

 主な仕事は贋作の鍛造である。本物の聖剣や魔剣の模造品(レプリカ)を鍛造し、献上する事、それが主な仕事だった。

 作られる聖剣や魔剣は当然のように贋作の為、評価は低かった。俺の事を贋作師として馬鹿にする連中は大勢いた。その上に給料もあまり高くなく、長時間の労働をせざるを得なかったのだ。

「なんでも糞もあるかっ! 貴様のような贋作師は世の中にいくらでもおるっ! ちょうど鍛治師学校から卒業する若いのが数人採れそうでの。そいつ等の方が何年も勤めてきた貴様より安く使えそうだからじゃっ! 貴様の代わりはいくらでもいるからだっ!」

 あんまりだと思った。これでも贋作を何個も作ってきた中で、その腕は明確に上がってきたと自負している。今では贋作を一日で何十個も作る事だってできるのだ。

「ま、待ってください。これでも贋作を沢山作って王国に貢献してきたつもりです! それなのにいきなりクビなんて、私も困りますよ!」

 俺は国王にそう陳情する。

「ぐふふっ! だからなんじゃっ! 貴様の生活など知った事かっ! わしがクビと言ったらクビなんじゃっ! なにせこの国ではわしが法律だからのっ! わしの言うことは絶対なんじゃっ!」

 国王は俺を馬鹿にしたような笑みを浮かべる。

 くそっ! 贋作師だと思って人を馬鹿にしやがって! 代わりなら誰でもいるからただの使い捨てだと思っている! 

「いいから荷物をまとめて即刻出て行け! 出て行かないというなら兵士を使って無理矢理にでも追い出してやるからのっ。ぐふふっ!」

 結局俺は国王の命令に従い、王宮を出ていかざるを得なくなる。

 ◆

「はぁ……これから一体俺はどうすればいいんだ」

 俺は苦悩していた。生活の糧である仕事を失い、そして人生の意義を失った。退屈な時間が増えると人はよく考えるし、悩むようになる。

 当然気分は落ち込んでいた。これからどうすればいいんだろうか。

 ともかく元いた王国ハイゼルにはいたくなかった。宮廷の関係者にも顔を会わせたくなかったのだ。別の国へ行こうと思っていた。

 その方がいい。新たな人生が開けるかもしれない。だが、贋作しか作れない鍛治師を一体、どこの誰が雇うというのか。俺にだって技術(スキル)はある。だから雇われないという程の心配はない。だが、贋作だという事でまた安く不当な待遇で買い叩かれるのではないか、そんな気しかしなかった。不安だった。

「はぁ……」

 俺が再度の溜息をした時の事だった。

「ん? なんだ、あれは」

 馬車が襲われていた。男の人達数名が何者かに襲われている。

「へっ! 知ってるんだぜっ! 馬車の中にはエルフのお姫様がいるんだろっ!」

「くっ! 貴様達がなぜそんな事を知ってるんだっ!」

「決まってるだろ! その情報を買ったんだよ! 情報屋から、高かったんだぜ! くっひっひっ!」

「でも元はとれらぁ! なにせエルフのお姫様だからよっ! たっぷりと俺達で楽しんだ後、どっかの奴隷商人にでも売ってやらぁ! とんでもない儲けになるぜっ!」

「エルフの王様に身代金を要求してもいいなっ! どっちらにせよ俺達は大金持ちだっ! これだから盗賊ライフはやめられねぇぜっ!」

 どうやら馬車を襲っているのは盗賊達だ。そして男達の耳は長い。男達も武器を持っているがボロボロの剣や槍でとても盗賊相手には敵いそうにもなかった。

 どうやらお忍びの外出を狙われたのだろう。用意周到に進められた襲撃を防げる程の力はエルフの男達にはなかったのである。

 なんて卑劣な連中だっ! 俺は大変憤っていた。

 だが、俺に何ができる。贋作師と馬鹿にされていたただの鍛冶師の俺が。

 俺の腰にあるのは魔剣グラムの贋作だ。ただの模造品だ。

 だが、魔剣の形は一応していた。剣は剣だ。斬れば斬れるかもしれない。

 無論あの盗賊達を倒せるとは思えない。だが、逃げるきっかけくらい作れるかもしれない。

「やめろ!」

「……ん? なんだてめーは?」

「俺達の邪魔するなんて殺されてーのか?」

「エルフが相手だろうが何だろうが! 人を襲って傷つける事を見逃せるわけもない!」

「へっ。言ってくれるじゃねぇかよ! 野郎ども! まずはあのいけ好かない人間の男を殺せ! その後でお楽しみだっ!」

「「「おう」」」

 男達は俺にターゲットを切り替えた。まずい。失敗した。あれだけの盗賊に襲われたら俺は死んでしまう。

 しかしろくでもない人生だった。だが最後に少しだけ誰かの役に立てたのなら本望だった。少しは報われるというものだった。

「はあああああああああああああああああああああああああ!」

 俺は夢中で剣を振るう。その時だった。魔剣グラムの模造品からもの凄いエネルギーが放たれる。光が盗賊達を襲う。

「「「ぐわあああああああああああああああああああ」」」」
「そんな馬鹿なっ!」
「ありえねぇぜこんなのっ!」

 盗賊達は一瞬で吹き飛んでいった。遥か彼方に吹き飛び、星となる。

「な、なんだったんだ……これは」

 俺は魔剣グラムの模造品を見やる。確かに魔剣グラムには特別な効果があった。破壊の魔剣と言われ、あらゆるものを破壊する能力が。

 しかし、俺が作ったのはあくまでも模造品。本来、そんな力は存在しないはずなのに。

 一体、これはどういう事なのだ。

「ひ、姫様。盗賊達は倒されました」

「ほ、本当ですか。もの凄い音がしましたが」

「は、はい。突如現れた人間の男性が我々を助けてくれたのです」

「そ、そうだったのですか。でしたらお礼を言わなければなりませんね」

 荷台から一人の少女が姿を現す。思わず見惚れてしまう程の絶世の美少女だった。黄金よりも美しく映える流れるような金髪。新雪よりも白い肌。整った顔立ちは世の女性全員が羨む程のものであろう。気品のあるドレスを身に纏った彼女がそれでも明確に人間でないと分かるのは、エルフ特有の長い耳だった。この外見的特徴があるが故に、俺は彼女をエルフなのだと判断できた。
 
「ありがとうございます。あなた様のおかげで私達は救われました。私の名はユースティアと申します。ユースと呼んでください。是非あなた様のお名前を聞かせて頂けないでしょうか?」

「俺の名はフェイと言います。フェイ・レプリカです」

「そうですか。フェイ様とおっしゃるのですか。改めまして私達の命をお救い頂き、誠にありがとうございます。あなた様は私達の恩人です」

 彼女はどんな人間でも絆すような暖かい太陽のような笑みを浮かべた。

 これがエルフの王女であるユースと、贋作師として宮廷に勤めていた俺ーーフェイの最初の出会いだった。

 この出会いが俺の後の人生を大きく変えていくとはこの時はまだ思ってもみなかったのである。
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