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ユースとの初体験
しおりを挟む俺は風呂上がりにエルフ城を歩いていた。その時、テラスにユースがいるのが見えた。
「あの時は勢いで言ってしまいました。ですがあの縁談、私が我慢していれば丸く収まったのでしょうか。これから戦争になります。きっと多くの兵士が傷つく事になるでしょう。もし負けたとあれば、女子供も陵辱されるに決まっています。あの時私が我慢していれば、何事も起きなかったのかもしれません」
ユースは独り言を呟いていた。それだけ悩みが大きいのだろう。無理もない。
「ユース」
「フェイ様」
「どうしたの? ……悩み事を抱えているみたいだね」
「聞こえましたか。フェイ様。悩まないはずがありません。私はエルフ国の王女です。国民が傷つく事に無関心でいられるはずもありません。私が我慢すれば戦争を回避できたのではないか。そう思うと自分を責めずにはいられないのです」
「……嫌だよ。けど俺はユースがあんな嫌味な王子のものになるのは」
「フェイ様……」
「そうやって自分を責めるのはわかるんだけど。それじゃユースが幸せになれないんじゃないかな? あんな嫌味な王子がいる大帝国の属国になるなんて、俺は嫌だよ。幸せにはなれない。それはユースも同じだし、エルフの民も同じじゃないか。属国になっても、きっとあいつ等は横暴な真似をしたよ。エルフの女性も兵の慰安に回される事だろう。どちらにせよ、闘って勝利する以外に幸せな未来はやってこないんだ」
「そうですね……その通りです。ですが、それが最悪の選択になるのかと恐れているのです。最善ではなくとも、それでももっとマシな未来になったのではないかとどうしても考えてしまいます」
「考えても仕方ないよ。なるようにしかならないよ。それに戦争になる事をユースの責任だなんて誰も思っていない。皆納得の上で闘うんだ」
「そうですね」
「俺も沢山役立てる武具を作って、エルフの国をサポートするつもりだ。だから安心してユース。絶対に大帝国との戦争に負けやしない。そのために皆で準備をしていくんだ。一人でも傷つく兵士や国民が減るように」
「フェイ様……」
ユースの瞳は潤んでいた。
「泣いちゃダメだよユース。泣くのは勝った時。感激の涙でないと」
「そうですね。申し訳ありません」
ユースは涙を指で拭う。
「フェイ様。ひとつだけお願いがあるのです。戦争が始まるより前に」
「なんだい?」
「私の初めてを貰って頂きたいのです」
「は、初めて! 何を言っているんだ! ユースは」
俺は慌てふためいた。俺は童貞だぞ。そんな経験がないんだ。優しくリードできるような自信はない。
「お、俺の初めてだし。そ、そんな自信がないよ。ユース」
何をへたれてるんだ。俺は男だぞ。エルフとはいえ女の子がこんなにも勇気を振り絞っているのに。俺はなんて情けない奴なんだ。
ユースは唇を重ねてきた。
「え?」
唇に柔らかい感触が走る。俺とユースの唇が重なっている。慈しむようにユースは唇を離した。
「これで私のファーストキスはフェイ様のものです」
ユースは顔を赤くしていた。
「キス……」
俺もファーストキスだった。当然だ。女の子と付き合った事すらない。ずっと男社会にいたし。仕事をしていただけだからだ。
「……キス、で終わり?」
俺はある意味あっけに取られていた。
「フェイ様……もっと大胆な事を考えていませんでしたか? 私の勇気はせいぜいここまでです」
「ご、ごめん。つい先走っちゃって」
「そういう事は私とフェイ様がちゃんとした立場になってからです。ちゃんと」
ユースは拗ねていた。やはりエルフ、特に王族は堅いのだろう。婚前交渉に厳しそうだ。
「……そうだね。けど、今回の戦争は俺達にとってある意味大きなチャンスだと思うんだ」
「チャンス?」
「ああ。この戦争で俺が大活躍すればきっとエルフの民も認めてくれるよ。貴族の連中だってそうだ。前のシャロみたいに純血派は多く残っていると思うけど、それでも多くの人々の気持ちを動かせると思うんだ。国を救った英雄が相手なら考えを改めざるを得ないだろう」
「そうですね。フェイ様が活躍するチャンスかもしれませんね。私も微力ながらお手伝いをします」
「期待しているよ。ユース」
「はい」
ユースは笑顔を浮かべた。先ほどまでの心配そうな顔はどこにいったのやら。こうしてその日の夜は過ぎていく。
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