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宮廷ドラゴンテイマーコストカットでクビになる

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「宮廷ドラゴンテイマー、クビになる」

「貴様はクビだ! アーク・シルヴァリエ!」
「な、なんでですか!」
 
 ある日、宮廷ドラゴンテイマーとして国の竜の調教、管理をしていたドラゴンテイマーであるアークは国王よりクビを言い渡される事となった。

「何でも糞もあるか。貴様のやっている竜の調教や管理など、そこら辺のビーストテイマーでも出来るに決まっておる。それなのに貴様に高い給金を払ってやるのは勿体なかろうて」

 アークは宮廷ドラゴンテイマーとして高い給金を貰っていた。その給金は普通のテイマーである、ビーストテイマーの10倍である。
 確かに一見破格の給金にも見えるが。果たして国王の言っていることは本当にそうであろうか。

「い、いいんですか! 俺がいなくなったら竜達が言うことを聞かなくなって、この国はとんでもない事になりますよ!」
「見苦しい言い訳だのう! アークよ。そうまでしてまで宮廷にしがみつきたいというわけか。確かにこの役職を失ったら貴様はただの無職になって、こんな好待遇で迎え入れてくれるところはなかろうて。だが、貴様のそんな言い訳などわしは聞く耳を持たぬ! さあ! 今すぐ荷物をまとめて出て行け! アークよ!」
「くっ!」

 いくら宮廷のドラゴンテイマーであるアークとはいえ、国王の言う事には逆らえない。国王の言う通りに荷物をまとめて王国から出て行かざるを得なかった。

 アークは途方に暮れていた。テイマー学校を出てからの数年。王国の為を思い竜の調教を行ってきたというのに。こんな仕打ちを受ける事になるとは夢にも思っていなかった。

 だがこれも現実である。受け入れていかなければならなかった。

 そんな時だった。国外を追放され、荒野をさまよっていた最中、一人の美少女と出くわす。 とんでもない美少女だった。宮廷ドラゴンテイマーとして宮廷勤めをしていたアークは多くの美少女や王女様と出くわす機会があった。皆美しかったが、それと比較しても彼女の方が美しいと断言できる程の美貌であった。

「君は……一体」
「アーク様」

 少女は出会うなり、涙を流し始めた。

「え? どこかであったことある?」
「アーク様、お会いしたかったです」

 少女は言うなり、アークの胸元に抱きついてきた。女の子が放つ良い匂いがした。

「ど、どうしたの? いきなり」

 彼女は感激のあまり涙を流していた。アークは彼女が泣き止むまで待つ事になる。しばらく時間を置いて、彼女は冷静になったようだった。
 改めて彼女を見やる。白い肌と黄金よりも美しい金髪。とんでもない美少女だった。そして気品があった。その気品はそこら辺の王女よりも余程上である。

「それで君は一体。どこかで俺と会った?」
「色々と説明を飛ばしてしまいました。私は怪我をしているところを助けられたホーリードラゴンです」
「ホーリードラゴン?」
「はい」
 
 彼女はそう言う。アークは思い出す。ついこの前、竜の調教の為国外を彷徨っていた際に空から怪我をしていた白竜を発見したのだ。そしてアークは竜から降り立ち、その白竜の手当をしたのだ。そして彼女は再び空へと飛ぶ事が出来たのだ。
 その時アークは思い出していた。彼女は人間の言葉で『このご恩必ず返します』と言っていた事を。その竜の治療の中で、それとなく名乗っていた事を思い出す。彼女がその竜なのだとしたらアークの名を知っている事も合点がいった。
 竜の中には人の形となれる竜種が存在する事をアークはドラゴンテイマーであるアークは当然のように知っていた。

「あの時、アーク様の使って頂いた回復魔法は見事なものでした。私の怪我が一瞬で治ってしまったのです。あれだけの回復魔法は私も見た事がありません」
「そうか……君はあの時の」

 竜は見た目の雄大さとは反比例して繊細で気難しい生き物である。その為、回復魔法ひとつをかけるにも普通の回復魔法使いではできない事であった。

「はい。私の名はラピス。竜の国の王女をしている者です」
「りゅ、竜の国の王女?」

 アークは驚いた。まさか、あの時助けた白竜が竜の国の王女だとは思ってもみなかったのである。

「ところでアーク様はお国を出られていかがされたのでしょうか?」
「それは……その」

 アークは悩んだ。宮廷をクビにされ国外追放されたと彼女に言うことに恥ずかしさを感じたのだ。だが、アークは正直な性格だった。見栄を張る事などできるはずもなかった。迷った末にアークは真実を告げる。

「国王に給料泥棒だと糾弾されてね。さっき王国を追い出されてきたのさ。今はしがないただの無職だよ」

 アークは苦笑いをする。

「な、何と! それは本当ですか!」

 ラピスは心底驚いた様子だった。
 
「アーク様を追い出すなど、考えられない事です! あなた様のようなドラゴンテイマー、私は世界で一人しか知りませぬ」
「ははっ。言い過ぎだよ」
「そんな事ありません! アーク様は偉大なドラゴンテイマーです。よろしければアーク様、私どもの竜の国に来て頂けませんか?」
「え?」
「私どもは人間の国のようには扱いませぬ。あなたの望むものを何でも与え、望むのでしたら一生我が国にいて頂いてもかまいませぬ。私達だけのテイマーになって欲しいのです!」
 
 ラピスはそう懇願してきた。迷うまでの事はなかった。こんな美少女にこうまで言われているのだ。他に行く先など思い当たらなかった。

「じゃあ、よろしく頼むよ。ラピスさん、いや、様付けの方がいいかな?」
「そんな。アーク様。私の事はどうかラピスと呼び捨てにしてくださいませ。私はあなた様をお慕いしているのです。あなた様がいなければあの時私の命はありませんでした。この身も命も全てはあなた様のものなのです」
「わ、わかった。ラピス。じゃあよろしく頼むよ。僕を竜の国のドラゴンテイマーにしてくれ」
「はい。わかりました。全てはアーク様のお望みの通りに」
「それで、どうやって竜の国に行くんだ?」
「それなら簡単です」

 ラピスはあっという間に白竜の姿に変身した。

「乗ってください。アーク様」
「あっ、ああ」

 アークはラピスの背中に乗った。

「いきますよ」

 白竜となったラピスは羽ばたく。そしてあっという間に天空へと誘われた。先ほどまでアークが生活していた王国アルカトラがどんどんと小さくなっていって最後には消えて無くなっていった。
 それと同時にアークが悩んでいた悩みの小ささに気づいていった。
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