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なぜか吸血公爵に気に入られてしまいます
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薄暗い屋敷の中に私は足を踏み入れました。不気味なのは屋敷の中も同じでした。
人気のない屋敷の中。
「……来たようだな。今宵の生贄が……」
突如、屋敷の二階から声が聞こえてきます。
「誰ですか!?」
「この屋敷の主であるヴラド・ツェペシェ公爵だ」
カツカツカツ。階段を降りてくる足音が響きます。降りてきたのは予想だにしていなかった人物でした。金髪をした色白の美青年です。
とても吸血公爵だとか、そんな恐ろしい人物だとは思えませんでした。ですが、確かにその作り物めいた美貌には人間身というものが感じられずに、どこか人形を見ているかのようでした。
さらにはその冷徹な目でした。氷のように冷たい目。その冷たい目はとても私を人間とみているようには思えませんでした。
彼にとっては私などという存在はただの生贄でしかないのでしょう。
「貴様か……貴様が今宵の俺の生贄か?」
吸血公爵と言われるヴラド公爵は微笑んできます。やはり吸血鬼です。普通の人間ではありません。彼は鋭い犬歯を光らせるのでした。
「いいえ! 私はあなたの生贄なんかではありません!」
「……ほう、だったらなんだというのだ? お前は。何をしに俺の屋敷にきた?」
「それは――」
私は懐からある物を取り出します。
「あなたを退治しに来たんです!」
私は吸血鬼に対して効果のある十字架を取り出したのです。
「なんだ? それは?」
「十字架です! さあ! どうですか!」
「どうですか……と言われてもな」
ヴラド公爵は眉を顰めます。
「う、嘘! 効かないんですか!」
「……効いているように見えるか?」
「見えません!」
どういう事でしょうか。吸血鬼に十字架は弱点のはずです。これは困りました。
「だったら!」
私は次なる秘策を取り出す。取り出したのはある食べ物でした。
「それはなんだ?」
「知らないんですか? ニンニクです!」
そう、私が取り出したのはニンニクだったのです。独特で臭い匂いがするあのニンニクです! 食べると口臭がするあの!
「それはわかるが……なぜニンニクを取り出したのか聞いているのだ? 何が狙いだ?」
「え? 効かないんですか?」
吸血鬼にはニンニクが弱点だとはよく聞く話でした。でも不思議な話です。そんなに弱点が多い怪物(モンスター)がなぜそんなに人から恐れられているのでしょうか。もしかしたらあまり効果はないのかもしれません。
「効いているように見えるか?」
「うーん……見えませんね」
私は首を傾げました。
「こうなったら!」
私はヴラド公爵に殴りかかります。
「てやああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「なんだ? どうした? 気でも触れたか?」
「違います! 十字架もニンニクも効かないなら、この拳で退治するんです!」
用意していた手段が通じなかった私は、最後の手段として拳で殴り掛かります。
「あっ」
しかし、その攻撃もあっさりと避けられてしまうのです。
一巻の終わりかと私は思いました。私はヴラド伯爵にこのまま血を吸われてしまうのです。私は恐怖のあまり、目と瞑ります。
しかし、やってくるはずの痛みはこなかったのです。
「え?」
ヴラド公爵は私を優しく抱きしめるのです。思ってもいない対応でした。
「な、なんのつもりですか?」
「面白い……」
「え?」
「面白いな……お前のような人間の娘は初めてだ。気に入った、気に入ったぞ」
「気に入った?」
「娘よ。名を名乗る事を許そう」
「カレン・スペンサーと申します」
「カレンか。いいだろう。お前を生贄として血を吸うのはやめよう」
「はぁー……」
私は深くため息を吐く。よかった。これで自分が生贄になる心配はなくなったのだ。しかし、次にヴラド公爵から発せられる言葉で私は度肝を抜かれる事となります。
「代わりにカレン、お前は俺の妻となるがよい」
こうしてスペンサー家に寄越された一通の手紙が私の人生を大きく変革していく事になるのです。
人気のない屋敷の中。
「……来たようだな。今宵の生贄が……」
突如、屋敷の二階から声が聞こえてきます。
「誰ですか!?」
「この屋敷の主であるヴラド・ツェペシェ公爵だ」
カツカツカツ。階段を降りてくる足音が響きます。降りてきたのは予想だにしていなかった人物でした。金髪をした色白の美青年です。
とても吸血公爵だとか、そんな恐ろしい人物だとは思えませんでした。ですが、確かにその作り物めいた美貌には人間身というものが感じられずに、どこか人形を見ているかのようでした。
さらにはその冷徹な目でした。氷のように冷たい目。その冷たい目はとても私を人間とみているようには思えませんでした。
彼にとっては私などという存在はただの生贄でしかないのでしょう。
「貴様か……貴様が今宵の俺の生贄か?」
吸血公爵と言われるヴラド公爵は微笑んできます。やはり吸血鬼です。普通の人間ではありません。彼は鋭い犬歯を光らせるのでした。
「いいえ! 私はあなたの生贄なんかではありません!」
「……ほう、だったらなんだというのだ? お前は。何をしに俺の屋敷にきた?」
「それは――」
私は懐からある物を取り出します。
「あなたを退治しに来たんです!」
私は吸血鬼に対して効果のある十字架を取り出したのです。
「なんだ? それは?」
「十字架です! さあ! どうですか!」
「どうですか……と言われてもな」
ヴラド公爵は眉を顰めます。
「う、嘘! 効かないんですか!」
「……効いているように見えるか?」
「見えません!」
どういう事でしょうか。吸血鬼に十字架は弱点のはずです。これは困りました。
「だったら!」
私は次なる秘策を取り出す。取り出したのはある食べ物でした。
「それはなんだ?」
「知らないんですか? ニンニクです!」
そう、私が取り出したのはニンニクだったのです。独特で臭い匂いがするあのニンニクです! 食べると口臭がするあの!
「それはわかるが……なぜニンニクを取り出したのか聞いているのだ? 何が狙いだ?」
「え? 効かないんですか?」
吸血鬼にはニンニクが弱点だとはよく聞く話でした。でも不思議な話です。そんなに弱点が多い怪物(モンスター)がなぜそんなに人から恐れられているのでしょうか。もしかしたらあまり効果はないのかもしれません。
「効いているように見えるか?」
「うーん……見えませんね」
私は首を傾げました。
「こうなったら!」
私はヴラド公爵に殴りかかります。
「てやああああああああああああああああああああああああああああああ!」
「なんだ? どうした? 気でも触れたか?」
「違います! 十字架もニンニクも効かないなら、この拳で退治するんです!」
用意していた手段が通じなかった私は、最後の手段として拳で殴り掛かります。
「あっ」
しかし、その攻撃もあっさりと避けられてしまうのです。
一巻の終わりかと私は思いました。私はヴラド伯爵にこのまま血を吸われてしまうのです。私は恐怖のあまり、目と瞑ります。
しかし、やってくるはずの痛みはこなかったのです。
「え?」
ヴラド公爵は私を優しく抱きしめるのです。思ってもいない対応でした。
「な、なんのつもりですか?」
「面白い……」
「え?」
「面白いな……お前のような人間の娘は初めてだ。気に入った、気に入ったぞ」
「気に入った?」
「娘よ。名を名乗る事を許そう」
「カレン・スペンサーと申します」
「カレンか。いいだろう。お前を生贄として血を吸うのはやめよう」
「はぁー……」
私は深くため息を吐く。よかった。これで自分が生贄になる心配はなくなったのだ。しかし、次にヴラド公爵から発せられる言葉で私は度肝を抜かれる事となります。
「代わりにカレン、お前は俺の妻となるがよい」
こうしてスペンサー家に寄越された一通の手紙が私の人生を大きく変革していく事になるのです。
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